106 / 162
第五章 別れと出会い、旅再び編

97.明かされた理由

しおりを挟む
 激しかったバタバ村での戦いが終わって、ミーヤたちはまた六日かけて王都へ戻ることになった。行きは王国軍の後をつけて行ったので神経を使ったが、帰りはみんな一緒なので足取りは軽い。

「それにしてもすごい戦いだったね。
 あんなの初めてだったからすごく恐かったよ」

「恐いならなんでつけてきたのよ。
 私とイライザが黙って参加した意味がまったくなくてガックリしてるんだからね」

「それは悪かったと思ってるわよ?
 でもそもそもなんでレナージュ達はこの作戦に参加してたの?
 ずっとジスコで一緒だったのにそんな気配無かったじゃない?」

 その疑問にはイライザが答えてくれた。

「もうずいぶん前から神術師には声がかかってたんだよ。
 神術でバタバ村全体を封鎖するのに相当人数が必要だからってさ。
 王都だけじゃ人手が足りないからってジスコとヨカンドにもな。
 まあ最後は突破されちまったのは悔しかったけどな」

「途中まではすごく順調だったのにね。
 あのまま進んでいたら……」

 あの戦いで犠牲になった多くの人たちを思い出すと、ミーヤの胸はチクリと痛むのだった。なにより目の前で人が死ぬのを見たのは初めてだった。さらに言えば仲間が人を殺したのも……

 そう言えばチカマは自分を棄てた相手とはいえ親を殺してしまった。そのこと自体はすでに気にしている様子はないが、人を殺したと言うことは殺人者になってしまったということになる。このまま街へ戻ったら殺人者として処罰されてしまうのか。まさかそんなことあるわけない。だってミーヤたちを助けるためにやったことなのだ。


 その夜、ミーヤはチカマを部隊と少し離れたところへ連れて行った。

「ミーヤさま、どうしたの?」

「ねえチカマ? スマメ出してみてくれる?」

 チカマはうなずいてスマメを取り出した。すると――

『赤くなってない! 殺人者にはなっていなかった!』

「ミーヤったら心配性なんだから。
 それだけチカマのことが心配なんでしょうけど、相変わらず焼けるわね」

 はっとして振り向くとそこにはレナージュが立っていた。二人でこっそりやってきたはずなのにつけられていたらしい。いや、他の誰でもなくレナージュで良かったのかもしれない。

「きっと殺人者になったんじゃないかって心配したんでしょ?
 でもね、殺人者を殺しても殺人者にはならないのよ?
 この戦いの前からかもしれないけど、少なくともあの時に戦士団員数人は殺してたからね。
 だから心配する必要なんて無かったってわけ」

「そっか、そう言うことだったのね。
 やっぱりレナージュは物知りで頼りになるよ」

「それよ! そうやってなんでも聞いていちゃだめだと思って少し突き放したってのもあるのよね。
 今回みたいに自分たちで考えるってのも大切だもの。
 あとね、考え込むのと考えるのは違うってこともわかって欲しかったのよ」

 難しいことはよくわからないが、チカマと二人になってからはなんでもミーヤが決めなければならなかった。それがくだらない内容だったとしても、自分の意思で自分たちの方向性を決めるいい経験になったことは確かだ。

「でも私にはまだまだレナージュが必要なのよ!
 だからこれからも――」

「あら、そんなことわざわざ言わなくてもいいわよ?
 だって私たちは戦乙女四重奏の仲間じゃないの」

 レナージュからその言葉を聞いたミーヤは。いてもたってもいられずおもいっきり抱きついてしまった。まったくどうも最近誰にでも抱きついてしまう良くない癖が出来てしまった気がする。でも他の感情表現が思いつかず、ついついくっついてしまうのだ。

「ミーヤったらホント甘えん坊なんだから。
 でも大分汚れてしまってせっかくきれいな白い毛皮が台無しね。
 帰ったらみんなで水浴びしましょ」

「そうね、なんだかすごく久し振りな気がして楽しみだわ。
 そう言えば、王都の宿屋の水浴び場は外から水が流れてくるんだから凄いわよね」

「あれはいいわね、ジスコももっと井戸を作ればいいんだろうけど難しいのかもね。
 あの仕組みは大農業都市のトコストならではなのかもしれないわ」

「でもカナイ村みたいな釣瓶式(つるべしき)の井戸よりはマシよ。
 ジスコならレバー動かすだけで水汲みができるんだもの。
 あれも村へ持ち帰りたいくらいよ」

「まったくミーヤはいつもカナイ村のことばっかりね。
 あんまり楽しそうに話すものだから、私もカナイ村までついて行こうかって思うこともあるわ」

「いい考えじゃないの。
 そしたらきっと楽しく過ごせるわよ。
 なんと言っても、マールが作るのウサギのシチューは絶品なんだから!」

「ミーヤさまいっつもマールの自慢ばっか。
 ボクだって役に立てるのに」

「チカマったらヤキモチ焼いてるの?
 それぞれにそれぞれの良さがあるんだから気にしちゃだめよ?
 今回だって私たちのこと助けてくれたじゃない。
 私、すごく嬉しかったわよ」

「そうよね、アレは凄かったわ。
 あんな強い術師を一撃で真っ二つにするなんて驚いたわよ」

「ボク凄かった? えらい?
 ミーヤさまの役に立てるくらい強くなれて良かったあ」

 レナージュがミーヤの言葉に賛同してくれたのがよほど嬉しかったのか、チカマは上機嫌で聞き返してくる。こういうところがまたかわいいのだ。誤解も解けてすっかり元通りの仲になったミーヤとレナージュは、チカマも交えて夜遅くまでたわいもない話を続けたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

若返った老騎士の食道楽~英雄は銀狼と共に自由気ままな旅をする~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
あるところに、数百年周期で現れる魔王がいた。 人族から生まれ、闇に魅入られし者、妖魔を統べる魔王と呼ばれる存在。 度々現れては、人々を恐怖のどん底に貶めてきた。 此度、その魔王との戦いに終止符を打った男がいた。 名をシグルド卿といい、六十歳を迎えた老人の男だ。 元平民にも関わらず、爵位を得て史上初の将軍にまで上り詰めた英雄である。 しかし、魔王と一騎討ちの末に相打ちになった……と世間では言われていた。 当の本人は実は生きており、しかも若返っていた。 そして自分が生きていることが知られると、色々と面倒なことになると悟った。 それにどうせなら、自由の身になって世界を旅したいと。 これは役目を終えた英雄が旅をし、様々な人と出会い、美味い物を食べていく物語。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―

愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。 彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。 魔法は使えない。 体は不器用で、成長も人より遅い。 前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。 けれどこの世界には、 見守り支えてくれる両親と、 あたたかい食卓があった。 泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、 彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。 これは、 最強でもチートでもない主人公が、 家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す 生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。 ……の、予定です。 毎日更新できるように執筆がんばります!

記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護
ファンタジー
11歳・小学5年生の唯は交通事故に遭い、気がついたら何処かの部屋にいて、目の前には黒留袖を着た女性-鈴がいた。ここが死後の世界と知りショックを受けるものの、現世に未練があることを訴えると、鈴から異世界へ転生することを薦められる。理由を知った唯は転生を承諾するも、手続き中に『記憶の覚醒が11歳の誕生日、その後すぐにとある事件に巻き込まれ、数日中に死亡する』という事実が発覚する。 異世界の神も気の毒に思い、死なないルートを探すも、事件後の覚醒となってしまい、その影響で記憶喪失、取得スキルと魔法の喪失、ステータス能力値がほぼゼロ、覚醒場所は樹海の中という最底辺からのスタート。これに同情した鈴と神は、唯に統括型スキル【料理道[極み]】と善行ポイントを与え、異世界へと送り出す。 持ち前の明るく前向きな性格の唯は、このスキルでフェンリルを救ったことをキッカケに、様々な人々と出会っていくが、皆は彼女の料理だけでなく、調理時のスキルの使い方に驚くばかり。この料理道で皆を振り回していくものの、次第に愛される存在になっていく。 これは、ちょっぴり恋に鈍感で天然な唯と、もふもふ従魔や仲間たちとの異世界のんびり物語。

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

処理中です...