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第五章 別れと出会い、旅再び編

102.実質奴隷

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 親の決めた養子縁組によって一生閉じ込められて働かされる、そんなことが許されていいのだろうか。いいや許されるはずがない。たとえ取り締まる法が無くても倫理的、人道的に許してはいけない。

 ナウィンが泣きそうな顔で話を始める。

「あの、えっと、あの……
 まず最初に、ジョイポンのとある商人が子宝の種を私の親へ渡しました。
 それによって私は産まれたのです。
 ヨカンドで産まれてすぐに細工の修行をはじめました。
 来る日も来る日も毎日ずっとです。

 三年ほど経ったある日のこと、親が教えてくれたのです。
 二十歳になったらジョイポンへ養子に行くのだと。
 今はそのために細工修行をさせている、ジョイポンへ行ったら二度と出られないだろうとも。
 細工の他に秀でたものがあれば止められるかもしれないとも言われました」

「ちょっとそれって本当の話なの?
 いくらなんでもひどいじゃないの。
 初めから自分のところで働かせるために産ませたってことでしょ?」

「はい、えっと、あの……
 そういうことになります。
 別に私が初めてではなく、ヨカンドでは今までに鍛冶師の家からも養子に出ています。
 そうやって腕を磨かせた者を集めているようなんです」

「ひどいやつね…… 許せないわ!
 ちょっと殴り込みに行きましょうよ!」

 興奮して立ち上がったミーヤは、慌てたレナージュに抑えつけられてまた座った。だってそんなひどい話を聞いて平常心ではいられないに決まってる。だが周囲は意外に冷静だった。

「あのさ、心情的にはひどいってわかるんだけどよ。
 子宝の種はめちゃくちゃ高価な品なわけ。
 それをなんの制限もなく使わせてくれるわけないだろ?
 親もそんなことわかってて引き受けたに決まってるじゃないか」

「それは、えっと、あの……
 その通りです…… その分仕事もお金も貰ってるみたいですし。
 でも私はジョイポンで閉じ込められて生きるなんて嫌なんです」

 イライザの言うことはもっともだが、ナウィンの気持ちもわかってあげたい。ミーヤだったらきっとやっぱり嫌だろう。だがしかし……

「それで細工以外の道を探したかったのね。
 だからと言って冒険者はちょっと無謀じゃないかしら……」

「まあ、えっと、あの……
 やっぱり無理でしょうかね……
 うすうすは気付いていたのでショックは無いんですけど残念です」

「そのジョイポンの出資者? は何の目的で細工師を囲うのかしら。
 前には鍛冶師も連れて行ったんでしょ?
 ヨカンドで作らせて買い取るんじゃダメなのかしら」

「それは、えっと、あの……
 詳しくは知りませんが、なにか大きなものを作っていて運べないとは聞いてます。
 なので結構な数の職人を集めているらしいです」

 商人と言ってたはずだけど、そんな運べないほど大きなものを作ったって売ることができないだろう。いったい何のために何を作っているのだろうか。まさか大量殺戮兵器みたいな物騒なものだったらどうしよう。

「あ、そう言えばジョイポンの商人と言えば知り合いがいたんだった!
 ナウィンはノミーってエルフの商人知ってる?」

「あ、えっと、あの……
 その人です」

「えっ!? ナウィンの養父になる予定の人ってノミーなの?
 まさかあの人がそんなひどい事するなんて……
 凄くいい人だと思ったのに残念だわ」

 商人長の館で話をした感じでは嫌な雰囲気はなく、高価な巻物もあっさり譲ってくれた。いや別に物を貰ったから擁護するわけではないが、あの人ならそんなことをしなくてもお金を積んで解決できそうに思えたのだ。

 ミーヤは居てもたってもいられずノミーへメッセージを送った。しかしすぐに返事は来ない。まあ忙しそうな人だから仕方ない。返信が来たらその時にでもまた考えることにしよう。

「それにしても、そんな奴隷みたいなひどい話ありふれてるの?
 どうにも納得できないわ」

「無くはないだろうけど、子宝の種は数千万以上はするって話だし、そうそうないだろ。
 そこまでするなら、すでに開業しているような職人を店ごと買えるんじゃないか?」

「それもそうよね、何のために養子にするのかさっぱりわからないわ。
 お嫁に迎えると言うならまだわからなくもないけど……
 いやいやいや、それもダメ、ゼッタイダメ!」

 イライザの言う通り、どうにも無駄なことをしているように感じて仕方ない。きっと何か思惑があるに違いないのだ。かと言ってそれを知ってどうなるものでもないし、人の家庭に口を出しすぎるのも良くない。だがしかしせめてその日が来るまでは、ナウィンを連れて歩くと決心したのだから事実を知ることを恐れてはならない。

 ひとまずこの話は頭に入れておくとして、これからどうするかを考えるとしよう。しばらく滞在するか、ジスコへ戻るか、ヨカンドやジョイポンを目指すのか。

「レナージュ達はこれからどうするの?
 何日かしたらジスコへ戻るんでしょ?」

「そうね、武具の補充をしてから帰るつもりよ。
 ジスコの店が無くなってからまったく不便で仕方ないわ。
 革の鎧が売ってると良いんだけどねえ」

「チカマの武器もいいのがなかったのよ。
 王都と言っても大したことないわね。
 やっぱり作ってる人がいないとダメなのかしら」

 レナージュとそんな話をしていると、イライザが言いにくそうに言葉を発した。

「あのさ、アタシらは明日の昼には帰るんだよ。
 治療院閉めたままだからな。
 明日の朝から報酬支払いがあるから、それ貰ってすぐに立つ予定だ」

「そっかあ、まあでも私も後からジスコへ戻るんだし、すぐ会えるもんね。
 それまではたまにフルルを冷やかしに行ってあげてね」

「いやいや、あの店には恐ろしくて近寄れないよ。
 毎日冒険者組合の前まで並んでるし、なんだか殺気を感じるからな」

 ミーヤは思わず頭を抱えた。もしかしたらハルはもう野外食堂の店を始めたのかもしれない。と言うことは今はフルルとモウブだけで切り盛りしているはずだ。そう考えただけでもここまで殺気が流れ込んでくるような気がした。

 それを考えると早く戻ってあげた方がいいかもしれないが、それではミーヤが奴隷になりに行くようなものだ。まったく、人のことを心配してないで、自分の身の振り方をちゃんと考えなければいけないとミーヤは頭を悩ませるのだった。

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