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第六章 未知の洞窟と新たなる冒険編
118.適材適所
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まったく、屈強な男性冒険者六人の胃袋を舐めていた。フルルの店以外ではこんなに沢山作ったことが無いってくらいの量を用意したつもりだったのに、すでに鍋はなめとられたかのようにピカピカである。まあそれは、最後にチカマが手で拭い取って食べつくしたせいではあるのだが……
「それにしてもあなた達ホント良く食べるわねえ。
ま、おいしいから当然だろうし食べっぷりがそれを物語っているわね。
この味なら街で散財するよりはるかに得だと言うのも頷けるでしょ?」
「確かにおおげさじゃなかったぜ。
こんなうめえ料理は産まれて始めて食ったもんなあ。
あのそっけない麦粥が乳と合うなんて驚きだぜ」
「トラックの言う通り白い麦粥には驚いたな。
でも俺はハムと野菜の辛口の料理が気に入ったぜ」
「おうおう、あれもうまかったな。
街へ引き上げたら二度と食えねえかもしれねえよ。
だからお嬢さん方が帰るまで俺たちも粘ってみるのも悪くねえ」
「ちょっと随分図々しいじゃないのよ。
誰も毎日作ってあげるなんて言ってないのにさ」
確かにミーヤは明日以降も作るとは言ってないが、そもそもトラックたちと会話をしているのがレナージュなのだから当たり前のことだ。もちろん頼まれれば全員分作ることは構わないが、そうすると食材が早くなくなってしまいそうなので滞在期間が短くなってしまう。ミーヤは正直にそのことを伝えた。
「料理を気に入ってくれたのはとても嬉しいわ。
王都でも受け入れられる十分な可能性があるってことだしね。
でも残念ながら毎日六人分追加で作るほどの食材は持ってきてないのよ」
「可能性? そりゃなんの話だ?
それより食材が足りないなら狩りに行ってくるぜ。
猪か熊でも仕留めりゃ一週間は余裕で持つだろ」
「そうね、生肉があればハムで作るよりも辛し炒めがもっとおいしくなるわ。
野菜がもっとあればシチューも毎日作れるんだけどさすがにそこまでは無理ね」
「ミーヤさま、村の外に畑あるよ。
勝手にとってもへいき?」
「どうでしょうねえ、ここを管理している人に聞かないとまずいかもね。
警備兵へ聞いてみたらわかるかもしれないから明日にでも相談してみましょうか」
「バタバ村は今王国管理のはずね。
だから私が許可するわ、どうせ手入れしなければダメになってしまうのだし構わないでしょ」
「ちょっとヴィッキー、勝手にそんなことして叱られない?
王様って怖い人じゃないみたいだけど、さすがにまずいんじゃないかしら」
「食材があればそれだけ長く調査できるのよ?
つまり必要経費ってことじゃないの。
絶対文句なんて言われないわ」
結局ヴィッキーに押し切られる形で畑を利用することに決めてしまった。明日にでもチカマと見に行くとしよう。そんなことを話していたらトラックが恐る恐る口を開いた。
「もしかしてそこの赤毛のアンタはトコストの姫様なのか?
なんで王族が直接調査に参加してるんだよ。
やっぱりここにはなにかあるってことなんだな?」
「いいえ、別に理由なんてないわ。
暇だったから面白そうな人たちについて来たのよ」
「なんだそんな理由じゃやっぱり期待できねえな。
今日はひでえ目にあったし明日は休みにして狩りを頑張るぜ。
むやみに潜るよりもうまいもん食えた方が嬉しいしな」
トラックがそういうと六鋼のメンバーたちが全員頷いた。その中から例のドワーフが立ち上がりチカマへ歩み寄っていく。直してもらった剣の具合でも確認するのだろうか。
「魔人のお嬢ちゃん、明日は探索が休みになったからちゃんと打ち直してやろう。
砥いだだけでも大分マシだとは思うが切れ味が良いに越したことはない」
「わーい、おひげのおじさんありがと。
ボクも頑張って畑へ行って来るね」
「えっとドワーフのおじさま、チカマの剣を作ってくださるの?
ありがとう、王都では丁度いいものが手に入らなかったので助かります。
ねえレナージュ? 剣を作るのって高そうだし、これはご飯代もらえないわね」
「それはそれ、これはこれよ。
でももちろんミーヤがいいようにしてくれていいわ。
こんなところで儲けようなんて思ってないしね」
ついさっきまでそろばんをはじいていたはずなのにこの言いよう。ホントにレナージュったら調子がいいんだから。それにしてもこんなに親切にされてしまうと明日からの調理にも気が抜けない。毎日同じものを作るわけにもいかないので何か考えておくことにしよう。
明日は休みと決め込んだ六鋼の面々につられたのか、レナージュとヴィッキーも一緒になって飲んだくれている。ということはミーヤたちもきっと休みと言うことになりそうだ。
ミーヤはレナージュへ声をかけてから、うとうとし始めているチカマとナウィンを連れて寝台馬車へと向かった。明日は二日酔いの二人をほっといて畑を見に行こう、そう考えながら床についた。
翌朝起きてみるとレナージュとヴィッキーの姿が無い。ということはせっかくの寝台を使わずに表で酔いつぶれたに違いない。
「あの、えっと、あの……
外に全員転がってます……
起こしますか?」
「ほっといていいわよ。
起こしたら頭が痛いって騒ぎ出して面倒だしね」
そうはいいながらも何もしないのはかわいそうなので、レナージュの枕元へ酔い覚ましを置いておくことにした。こんな事もあろうかとちゃんと用意してきて良かった。さらに鍋を用意して水を貯めてすぐ飲めるように準備をしておく。
「さあこれでよしっと。
それじゃ畑まで行ってみましょうか。
チカマ、案内よろしくね」
「はーい、やっぱりミーヤさまはやさしいね。
おひげのおじさんもやさしいしナウィンもやさしい。
みんなやさしくてボク幸せ」
「あの、えっと、あの……
みなさん本当にお優しいです。
私なんかを一緒に連れて来てくれて感謝してます。
お役に立てるよう頑張ります」
「二人ともホントいい子ね。
チカマは強くて頼りになるし、ナウィンは器用で役立つものを作ってくれる。
とても助かってるわ。
それに何より酒癖が悪くないのもいいところね」
それを聞いたチカマは胸を張り、ナウィンは照れている。こういう素直で子供らしいところもまた愛らしい。レナージュも素直で正直な性格なので付き合いやすいことを考えると、ミーヤはつくづく出会いに恵まれていると感じるのだった。
雑談しながらトコトコと歩いて畑までやってくると、多少荒れているものの作付けされていた作物はまだ枯れていないようだ。あちらこちら掘ってみると芋やニンジン等の根菜類が、その先には葉物野菜も栽培されていた。それに少量だがトウモロコシもあった。
畑は森に隣接するように開墾されており日当たりは良くなさそうである。それでもきちんと育っていたようでなかなか立派な野菜が収穫できた。畑を掘り起こしながらふと森のほうを見ると木々の間に何かいるような気配を感じる。
「チカマ! 森の中を探知してみて。
なにかいるような気がするの」
チカマが頷いて探索スキルを使い周囲の確認を始めた。するとキラキラと光るものが浮遊しているように見える。いったいあれはなんだろう。
「ミーヤさま、敵意は無いみたい。
だけど動物じゃないよ? 魔獣なのかなあ」
「敵意の無い魔獣? そんなのいるのかしら。
んもう! こういうときにレナージュがいたら教えてもらうのに。
危なくなさそうなら見に行ってみようか」
「あの、えっと、あの……
ミーヤさまは怖くないんですか?
私は怖いです……」
「うーん、怖くはないわね。
だって新しいこととか知らないことってワクワクするでしょ?
それにいざとなったら仲間もいるし、今なら六鋼の人たちもいるわ」
「あの、えっと、あの……
私はとてもそんな風に考えられません。
やっぱり冒険者は無理そうです……」
「ナウィンにはナウィンにあった生き方があるんじゃない?
だから無理して冒険者になる必要なんてないわよ。
一緒に旅をしながらそれを見つけて行きましょ」
いつも自信無さげでうつむいてばかりのナウィンだが細工の腕は確かなものだ。いつかその技術が役立つ場面が来るかもしれない。そのことをうまく伝えられない自分のことがもどかしかった。
「それにしてもあなた達ホント良く食べるわねえ。
ま、おいしいから当然だろうし食べっぷりがそれを物語っているわね。
この味なら街で散財するよりはるかに得だと言うのも頷けるでしょ?」
「確かにおおげさじゃなかったぜ。
こんなうめえ料理は産まれて始めて食ったもんなあ。
あのそっけない麦粥が乳と合うなんて驚きだぜ」
「トラックの言う通り白い麦粥には驚いたな。
でも俺はハムと野菜の辛口の料理が気に入ったぜ」
「おうおう、あれもうまかったな。
街へ引き上げたら二度と食えねえかもしれねえよ。
だからお嬢さん方が帰るまで俺たちも粘ってみるのも悪くねえ」
「ちょっと随分図々しいじゃないのよ。
誰も毎日作ってあげるなんて言ってないのにさ」
確かにミーヤは明日以降も作るとは言ってないが、そもそもトラックたちと会話をしているのがレナージュなのだから当たり前のことだ。もちろん頼まれれば全員分作ることは構わないが、そうすると食材が早くなくなってしまいそうなので滞在期間が短くなってしまう。ミーヤは正直にそのことを伝えた。
「料理を気に入ってくれたのはとても嬉しいわ。
王都でも受け入れられる十分な可能性があるってことだしね。
でも残念ながら毎日六人分追加で作るほどの食材は持ってきてないのよ」
「可能性? そりゃなんの話だ?
それより食材が足りないなら狩りに行ってくるぜ。
猪か熊でも仕留めりゃ一週間は余裕で持つだろ」
「そうね、生肉があればハムで作るよりも辛し炒めがもっとおいしくなるわ。
野菜がもっとあればシチューも毎日作れるんだけどさすがにそこまでは無理ね」
「ミーヤさま、村の外に畑あるよ。
勝手にとってもへいき?」
「どうでしょうねえ、ここを管理している人に聞かないとまずいかもね。
警備兵へ聞いてみたらわかるかもしれないから明日にでも相談してみましょうか」
「バタバ村は今王国管理のはずね。
だから私が許可するわ、どうせ手入れしなければダメになってしまうのだし構わないでしょ」
「ちょっとヴィッキー、勝手にそんなことして叱られない?
王様って怖い人じゃないみたいだけど、さすがにまずいんじゃないかしら」
「食材があればそれだけ長く調査できるのよ?
つまり必要経費ってことじゃないの。
絶対文句なんて言われないわ」
結局ヴィッキーに押し切られる形で畑を利用することに決めてしまった。明日にでもチカマと見に行くとしよう。そんなことを話していたらトラックが恐る恐る口を開いた。
「もしかしてそこの赤毛のアンタはトコストの姫様なのか?
なんで王族が直接調査に参加してるんだよ。
やっぱりここにはなにかあるってことなんだな?」
「いいえ、別に理由なんてないわ。
暇だったから面白そうな人たちについて来たのよ」
「なんだそんな理由じゃやっぱり期待できねえな。
今日はひでえ目にあったし明日は休みにして狩りを頑張るぜ。
むやみに潜るよりもうまいもん食えた方が嬉しいしな」
トラックがそういうと六鋼のメンバーたちが全員頷いた。その中から例のドワーフが立ち上がりチカマへ歩み寄っていく。直してもらった剣の具合でも確認するのだろうか。
「魔人のお嬢ちゃん、明日は探索が休みになったからちゃんと打ち直してやろう。
砥いだだけでも大分マシだとは思うが切れ味が良いに越したことはない」
「わーい、おひげのおじさんありがと。
ボクも頑張って畑へ行って来るね」
「えっとドワーフのおじさま、チカマの剣を作ってくださるの?
ありがとう、王都では丁度いいものが手に入らなかったので助かります。
ねえレナージュ? 剣を作るのって高そうだし、これはご飯代もらえないわね」
「それはそれ、これはこれよ。
でももちろんミーヤがいいようにしてくれていいわ。
こんなところで儲けようなんて思ってないしね」
ついさっきまでそろばんをはじいていたはずなのにこの言いよう。ホントにレナージュったら調子がいいんだから。それにしてもこんなに親切にされてしまうと明日からの調理にも気が抜けない。毎日同じものを作るわけにもいかないので何か考えておくことにしよう。
明日は休みと決め込んだ六鋼の面々につられたのか、レナージュとヴィッキーも一緒になって飲んだくれている。ということはミーヤたちもきっと休みと言うことになりそうだ。
ミーヤはレナージュへ声をかけてから、うとうとし始めているチカマとナウィンを連れて寝台馬車へと向かった。明日は二日酔いの二人をほっといて畑を見に行こう、そう考えながら床についた。
翌朝起きてみるとレナージュとヴィッキーの姿が無い。ということはせっかくの寝台を使わずに表で酔いつぶれたに違いない。
「あの、えっと、あの……
外に全員転がってます……
起こしますか?」
「ほっといていいわよ。
起こしたら頭が痛いって騒ぎ出して面倒だしね」
そうはいいながらも何もしないのはかわいそうなので、レナージュの枕元へ酔い覚ましを置いておくことにした。こんな事もあろうかとちゃんと用意してきて良かった。さらに鍋を用意して水を貯めてすぐ飲めるように準備をしておく。
「さあこれでよしっと。
それじゃ畑まで行ってみましょうか。
チカマ、案内よろしくね」
「はーい、やっぱりミーヤさまはやさしいね。
おひげのおじさんもやさしいしナウィンもやさしい。
みんなやさしくてボク幸せ」
「あの、えっと、あの……
みなさん本当にお優しいです。
私なんかを一緒に連れて来てくれて感謝してます。
お役に立てるよう頑張ります」
「二人ともホントいい子ね。
チカマは強くて頼りになるし、ナウィンは器用で役立つものを作ってくれる。
とても助かってるわ。
それに何より酒癖が悪くないのもいいところね」
それを聞いたチカマは胸を張り、ナウィンは照れている。こういう素直で子供らしいところもまた愛らしい。レナージュも素直で正直な性格なので付き合いやすいことを考えると、ミーヤはつくづく出会いに恵まれていると感じるのだった。
雑談しながらトコトコと歩いて畑までやってくると、多少荒れているものの作付けされていた作物はまだ枯れていないようだ。あちらこちら掘ってみると芋やニンジン等の根菜類が、その先には葉物野菜も栽培されていた。それに少量だがトウモロコシもあった。
畑は森に隣接するように開墾されており日当たりは良くなさそうである。それでもきちんと育っていたようでなかなか立派な野菜が収穫できた。畑を掘り起こしながらふと森のほうを見ると木々の間に何かいるような気配を感じる。
「チカマ! 森の中を探知してみて。
なにかいるような気がするの」
チカマが頷いて探索スキルを使い周囲の確認を始めた。するとキラキラと光るものが浮遊しているように見える。いったいあれはなんだろう。
「ミーヤさま、敵意は無いみたい。
だけど動物じゃないよ? 魔獣なのかなあ」
「敵意の無い魔獣? そんなのいるのかしら。
んもう! こういうときにレナージュがいたら教えてもらうのに。
危なくなさそうなら見に行ってみようか」
「あの、えっと、あの……
ミーヤさまは怖くないんですか?
私は怖いです……」
「うーん、怖くはないわね。
だって新しいこととか知らないことってワクワクするでしょ?
それにいざとなったら仲間もいるし、今なら六鋼の人たちもいるわ」
「あの、えっと、あの……
私はとてもそんな風に考えられません。
やっぱり冒険者は無理そうです……」
「ナウィンにはナウィンにあった生き方があるんじゃない?
だから無理して冒険者になる必要なんてないわよ。
一緒に旅をしながらそれを見つけて行きましょ」
いつも自信無さげでうつむいてばかりのナウィンだが細工の腕は確かなものだ。いつかその技術が役立つ場面が来るかもしれない。そのことをうまく伝えられない自分のことがもどかしかった。
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