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第七章 慌ただしく忙しいスローライフ編

139.順調で退屈な日々

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 暇で暇で仕方のない日々が続き、サラヘイたちが帰った後は王都からビス湖へ向かう小規模キャラバンが立ち寄ったくらいである。だがこのキャラバン隊でも料理の評判がよく、てれすこのすり身で作ったさつま揚げを大量に買ってもらうことが出来た。

 ビス湖周辺の集落では魚を食べるのが一般的なため、きっと気に入ってもらえるだろうとお墨付きをもらい、今後も不定期ではあるが立ち寄ってくれるそうだ。それに帰りにはビス湖からの物資も下ろしてくれると約束してくれたのは大きな収穫だった。

「はあ、これでオオウナギが手に入る算段が付いたわ。
 できればそのままが良かったけど干物にせず蒸してくれるなら十分よ」

「ミーヤは変わってるわねえ。
 オオウナギなんてそんなにおいしいものとは思わないわ。
 しかも干物じゃなくて蒸した物なんて本当に食べられるの?」

「それは作ってみないとわからないけど、まあ楽しみにしておいてよ。
 きっとガッカリさせることは無いと思うわ」

 ああ、念願のかば焼きが食べられるかもしれない。他にもエビが獲れるらしいので仕入れてもらうようお願いしておいた。ただし種類はイセエビのような大きなものではなく、手長エビのような淡水性の小さな種らしい。

 もちろん生のまま運ぶのは難しいので、フードドライヤーで乾燥させたものをお願いしておいた。素揚げにしておつまみでもいいし、生地に混ぜて焼けばお好み焼きのように食べられるかもしれない。とにかく未知の食材は楽しみでしょうがない。


 さらに数日が経ちようやくトラックたちがやってきた。約ひと月振りの再会である。土産と称して大きな猪を持ちこんできたので牡丹鍋風に調理して村中に振舞うことにする。味噌がないので塩味だったがこれはこれでおいしかった。

「持ちこんでくれた猪の代金はちゃんと払うわよ。
 それに魔鉱があったら王都と同じ相場で買取できるからね」

「なるほど、無一文でやってきても何とかなるってことだな。
 それじゃそこから差し引いてもらって構わねえが、工房を貸してもらえるか?
 武器が大分傷んじまったから修理したいんだ」

「それなら炉の燃料代だけで使っていいわ。
 自分で薪を集めてくるならタダで構わないわよ」

 ヴィッキーにしては随分と気前がいい。これもきっと宣伝費用だと考えているのだろう。トラックたちは結局二泊滞在し、土産と称してさつま揚げを大量に持って帰っていった。どうやらこの味や食感は好評のようだ。

「さつま揚げはもっと推していってもいいかもしれないわね。
 干物以外の魚料理が珍しいのかしら」

「違うわよ、肉でも魚でもないこのふわふわした食感に決まってるじゃないの。
 こんなのどこに行っても食べられっこないもの」

「それじゃはんぺんならもっと人気が出るかもしれないわね。
 このあたりで山芋は採れないのかしら」

「はんぺん? 山芋? 普通の芋とは違うものなの?
 聞いたことも見たこともないわねえ。
 レナージュは知ってる?」

「ううん、私も知らないわね。
 どういうものなのか想像もつかないわよ」

 博識のレナージュですら知らないなんて、もしかしたら存在しないのかもしれない。しかし念のためと思いなんとなくどんなものかを説明しておいた。ミーヤも実際に掘ったことは無いのであやふやな知識だが、確か森のようなところで採れて地上にはつる草が生えていたはず。

 一生懸命探す必要はなく、狩りの途中で見かけたら掘ってみる程度でいいだろう。もし見つかれば儲けものである。だが新たな食材への興味を持つのはミーヤだけではないらしく、ヴィッキーは手配書のように懸賞金を付けて戦士団へ周知していた。


 トラックたちが訪れてからまた一週間ほどが過ぎたある日、ヴィッキーのところへ商工組合から連絡が有り宿泊の予約が入った。どうやらマーケットを取り仕切る重鎮たちが慰安旅行と称して見に来るらしい。

「きっとさつま揚げが大量に必要になるわ。
 今日からはてれすこ狩りを頑張ってちょうだい。
 それと引き続き山芋探しも続けてね」

 ヴィッキーは初の予約に興奮しているのか、張り切って戦士団へ指示を出していた。本来ならば数日の道のりに護衛をつけるのだが、今やすっかり安全になった街道ではそれも最低限で済む。つまり一般の人でも気軽に旅行ができる。

 だが残党が残っているとも限らないし、新たな盗賊が出てくる可能性もある。そう言ったことを考え相談した結果、戦士団の交代時期をずらしてマーケット関係者たちを護衛しながら来てもらうこととなった。

「ねえヴィッキー、今回の戦士団交代だけどさ、乗合馬車にしたらどうかしら。
 三日に一度くらいで交代するようにして一緒に観光客を乗せてくるのよ。
 そうしたら馬を持ってない人でも気楽に来られるじゃない?
 それに次の乗合馬車が出るまでの間宿泊してくれるわよ」

「それはいい案ね、でもお客さんがいなかったら大赤字にならないかしら。
 移動中は戦士団員が遊んでいるようなものだしねえ」

「でもさ、今だって街道警備はしているでしょ?
 馬で行ったり来たりしている団員を無くせばいいじゃない」

「さすがレナージュ、いいこと言うわね。
 戦士団長へ相談してみるわ。
 もし赤字になったらレナージュに補填してもらおうっと」

「ちょっとなんで私が!
 ヴィッキーの小遣いで何とかしなさいよ!」

 冗談が言い合えるくらい気持ちに余裕があるのはいいことだ。思ったように売り上げが上がらずヴィッキーは落胆しているかと思ったが、これなら心配なさそうである。

 その後の相談により王都とバタバ村間には定期便が敷かれることとなった。乗合馬車の準備や人員の選定等で時間がかかるため今すぐにとはいかないが、今後の売り上げ向上について目途が立ったと言えるだろう。

 何よりみんなでアイデアを出し合って色々な問題が解決に向かうと言うのが喜ばしい。ヴィッキーは王族だからと言って一人でなんでも決めようなんてこともないし、レナージュとチカマは素直に手伝いをしてくれている。ナウィンは黙々と必要なものを作り、合間を見て錬金術の修行をすると言う充実した日々だ。

 唯一暇を持て余しているのはミーヤ位なものだが、それでも運んできてもらった羊皮紙を使って書術の修行を頑張っているつもりだ。それでもまだ暇を持て余していて退屈なのは事実だ。

 だが、こうして順調にリゾート開発が進んでいくのを見ていると、決してカナイ村の開発も夢物語ではないと思えてくる。きっとうまくいってマールやチカマとのんびり楽しく過ごせる日が来る、ミーヤはそう考えるだけで楽しくなってくるのだった。

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