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第一章
21 激高
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「マティアス様、どうかされましたか?」
「今、ライラ元副団長の事を話していただろう?悔しく聞かせてくれないか?」
2人組の団員たちは顔を見合わせて、驚いていた表情をしている。
「えーっと……、ライラ様の家に荒くれ者の男3人組が押し入ったそうです」
「ライラ元婚約者副団長を狙ってか?」
「いや、それがちょうど姪御さんがいらしてて、どうやらその子を狙ってのことらしいです。いま、取り調べを受けてますが……、金を貰ってやっただけだ。誰の指示かは分からないと言ってるらしいです」
姪はオリビアではないか……。オリビアが誰かに狙われていただと……?
もし、ライラさんがいなかったら……。
私は背中に冷や汗が流れた。
「囚われた者たちはどこにいる?」
「確か今団長が取り調べしてるはずです」
「そうか、ありがとう。呼び止めてすまなかったな……」
「いえ……」
団員達は不思議そうな顔をして、去っていった。
「おい、大丈夫か……?」
グレンが肩をつかんで聞いてきた。
「お前変だぞ……」
「悪い!午後は騎士団長と会議だといっといてくれ!」
「おい!そんな言い訳あるかよ!」
私はグレンの言葉に返答もせず走り出していた。
「騎士団長はいるか?」
私は騎士団の中にある取調室の前に立っており、扉の横に立っている団員に声をかけた。
「今は取り調べ中ですが、お呼びしますか?」
「いや、私が訪ねて行っても大丈夫だろうか?」
「はい、マティアス様なら問題ないかと思います」
アストラ騎士団長とは時々手合わせをしてもらっており、王宮勤めを始めたころから可愛いがってもらっている。
40歳の年齢を感じさせない身のこなしと、強靭な肉体の持ち主だ。身長も高く190㎝はあり、私もいつも見上げている。
赤い短髪で赤い瞳で、鋭い目つきから鬼の団長と呼ばれている。新人の団員達は、最初の顔合わせで必ず何人か失神するのが恒例行事となっている。
オリビアの叔母はこの団長の教育係だった。まさに鬼の育ての親であり、団長ですら頭が上がらないため、ある意味最強と恐れられていた。
キィ……。取調室の重い金属の扉を開ける。
「あぁ?だれだ……。おお、マティアスじゃねぇか。久しぶりだな! かみさんに夢中で剣の鍛錬もサボりがちだとグレンがこぼしていたぞ……。わははは……」そう言って、団長が豪快に笑った。
「すみません。今日、鍛錬に来たので許して下さい」
「いや、お前は秘書官なんだから、鍛錬しなくてもいいんだけどよ。顔が見られないのはさみしいからな」
「はい……」
「ところで、こんな所までどうしたんだ?」
「ライラ元副団長を襲った者について、お聞きしたくて参りました」
「あぁ……、こいつらか……」
団長とテーブルを挟んで、男三人が小さくなって座っていた。
いかにも荒くれ者といった風貌だが、ここ数日の取り調べですっかり毒気を抜かれてしまったようだ。
「団長さんのよぉ……、俺らは本当になんも知らないんだよー。ただ、お金を渡されてオリビアって女と関係を持ってくれって言われただけなんだ……。あのババ…、おねえ様にボコボコにされて……、俺らなんもしてないだよ……」
「オリビアだと!? 関係を持つとはどういうことだ!?」
荒ぶる気持ちを抑えながら、なるべく冷静に私は聞いた。
「旦那……、わかってるだろ?男女の関係って言ったら、一つしかないじゃないか? しかも、相手は王都に愛人をたくさん作っているアバズレっていうしよ。顔もかわいいし体もエロかった……」
「貴様ごときがオリビアを語るな!!」
「マティアス待つんだ!」と団長は叫び、右手は掴まれていた。
私は理性より先に体が動いており、左手は胸ぐらを掴み右手はあと数センチの所で荒くれ者の男の顔面を殴ってる所だった。
「マティアス……、落ち着け。こいつらはお前が手を汚す価値もない人間だ……。手を放すんだ……。彼女も望んでないのではないか?」
オリビアは望まない……。そうだな……、団長の言うとおりだ。オリビアは私が殴った事で、かえって自分を責めてしまうかもしれない。心の優しい私の妻だから……。
私は脱力して、手を離した。
ガタン!胸ぐらを掴まれていた男が、椅子から落ち床に転がった。
私は下を向き、雫が顎を伝って床に落ちた。
こんな事をしてもオリビアは帰ってこない……。
「ほ、本当に俺らはなんもしらないいんだ!あの女に聞いてくれ!名前はわかんないが、若い貴族の女で長い赤髪だった。なんか香水もすごかった!あれはたしか蜂蜜……、そう!蜂蜜みたいな甘ったるい香水をつけていた!」
男は勢いよくそう言うと、息を切らし肩で呼吸をした。
「わかった。おい、こいつらを牢へ戻せ。また後日取り調べる」
他の団員がやってきて、三人の男たちはほっとした顔をして連れて行かれた。
「まぁ、茶でも飲むか……」
そう言って、団長が狭い部屋から連れ出してくれた。
「これはハーブティなんだが、心を静めるらしいぞ。残り少しだから貴重な品だ、心して飲めよ」
そういって団長が白い歯を見せた。
騎士団の休憩室で団長自らお茶を入れてくれた。今の時間は皆出払っていて、私と団長の二人きりだった。
「ありがとうございます、頂きます」
ふわっと香ったハーブティに覚えがあった。一口飲んでみる……、これはオリビアが寝る前に良く入れてくれたハーブティに似ている。
「団長……、このハーブティどこで手に入れたんですか?」
「あぁ、気に入ったか?これはライラ元副団長に頂いたんだ」
オリビアの叔母から……。
「こいつをお前に渡す」
向かい合ったテーブルに、大き目の封筒が置かれた。
「これは……?」
「おれもよくわかんないんだが、俺宛の手紙に入っていたんだ。マティアスが訪ねてくることがあったら、渡してほしいと……」
渡された封筒を手に取り差出人をみた、……そこにはライラと書かれていた。
「今、ライラ元副団長の事を話していただろう?悔しく聞かせてくれないか?」
2人組の団員たちは顔を見合わせて、驚いていた表情をしている。
「えーっと……、ライラ様の家に荒くれ者の男3人組が押し入ったそうです」
「ライラ元婚約者副団長を狙ってか?」
「いや、それがちょうど姪御さんがいらしてて、どうやらその子を狙ってのことらしいです。いま、取り調べを受けてますが……、金を貰ってやっただけだ。誰の指示かは分からないと言ってるらしいです」
姪はオリビアではないか……。オリビアが誰かに狙われていただと……?
もし、ライラさんがいなかったら……。
私は背中に冷や汗が流れた。
「囚われた者たちはどこにいる?」
「確か今団長が取り調べしてるはずです」
「そうか、ありがとう。呼び止めてすまなかったな……」
「いえ……」
団員達は不思議そうな顔をして、去っていった。
「おい、大丈夫か……?」
グレンが肩をつかんで聞いてきた。
「お前変だぞ……」
「悪い!午後は騎士団長と会議だといっといてくれ!」
「おい!そんな言い訳あるかよ!」
私はグレンの言葉に返答もせず走り出していた。
「騎士団長はいるか?」
私は騎士団の中にある取調室の前に立っており、扉の横に立っている団員に声をかけた。
「今は取り調べ中ですが、お呼びしますか?」
「いや、私が訪ねて行っても大丈夫だろうか?」
「はい、マティアス様なら問題ないかと思います」
アストラ騎士団長とは時々手合わせをしてもらっており、王宮勤めを始めたころから可愛いがってもらっている。
40歳の年齢を感じさせない身のこなしと、強靭な肉体の持ち主だ。身長も高く190㎝はあり、私もいつも見上げている。
赤い短髪で赤い瞳で、鋭い目つきから鬼の団長と呼ばれている。新人の団員達は、最初の顔合わせで必ず何人か失神するのが恒例行事となっている。
オリビアの叔母はこの団長の教育係だった。まさに鬼の育ての親であり、団長ですら頭が上がらないため、ある意味最強と恐れられていた。
キィ……。取調室の重い金属の扉を開ける。
「あぁ?だれだ……。おお、マティアスじゃねぇか。久しぶりだな! かみさんに夢中で剣の鍛錬もサボりがちだとグレンがこぼしていたぞ……。わははは……」そう言って、団長が豪快に笑った。
「すみません。今日、鍛錬に来たので許して下さい」
「いや、お前は秘書官なんだから、鍛錬しなくてもいいんだけどよ。顔が見られないのはさみしいからな」
「はい……」
「ところで、こんな所までどうしたんだ?」
「ライラ元副団長を襲った者について、お聞きしたくて参りました」
「あぁ……、こいつらか……」
団長とテーブルを挟んで、男三人が小さくなって座っていた。
いかにも荒くれ者といった風貌だが、ここ数日の取り調べですっかり毒気を抜かれてしまったようだ。
「団長さんのよぉ……、俺らは本当になんも知らないんだよー。ただ、お金を渡されてオリビアって女と関係を持ってくれって言われただけなんだ……。あのババ…、おねえ様にボコボコにされて……、俺らなんもしてないだよ……」
「オリビアだと!? 関係を持つとはどういうことだ!?」
荒ぶる気持ちを抑えながら、なるべく冷静に私は聞いた。
「旦那……、わかってるだろ?男女の関係って言ったら、一つしかないじゃないか? しかも、相手は王都に愛人をたくさん作っているアバズレっていうしよ。顔もかわいいし体もエロかった……」
「貴様ごときがオリビアを語るな!!」
「マティアス待つんだ!」と団長は叫び、右手は掴まれていた。
私は理性より先に体が動いており、左手は胸ぐらを掴み右手はあと数センチの所で荒くれ者の男の顔面を殴ってる所だった。
「マティアス……、落ち着け。こいつらはお前が手を汚す価値もない人間だ……。手を放すんだ……。彼女も望んでないのではないか?」
オリビアは望まない……。そうだな……、団長の言うとおりだ。オリビアは私が殴った事で、かえって自分を責めてしまうかもしれない。心の優しい私の妻だから……。
私は脱力して、手を離した。
ガタン!胸ぐらを掴まれていた男が、椅子から落ち床に転がった。
私は下を向き、雫が顎を伝って床に落ちた。
こんな事をしてもオリビアは帰ってこない……。
「ほ、本当に俺らはなんもしらないいんだ!あの女に聞いてくれ!名前はわかんないが、若い貴族の女で長い赤髪だった。なんか香水もすごかった!あれはたしか蜂蜜……、そう!蜂蜜みたいな甘ったるい香水をつけていた!」
男は勢いよくそう言うと、息を切らし肩で呼吸をした。
「わかった。おい、こいつらを牢へ戻せ。また後日取り調べる」
他の団員がやってきて、三人の男たちはほっとした顔をして連れて行かれた。
「まぁ、茶でも飲むか……」
そう言って、団長が狭い部屋から連れ出してくれた。
「これはハーブティなんだが、心を静めるらしいぞ。残り少しだから貴重な品だ、心して飲めよ」
そういって団長が白い歯を見せた。
騎士団の休憩室で団長自らお茶を入れてくれた。今の時間は皆出払っていて、私と団長の二人きりだった。
「ありがとうございます、頂きます」
ふわっと香ったハーブティに覚えがあった。一口飲んでみる……、これはオリビアが寝る前に良く入れてくれたハーブティに似ている。
「団長……、このハーブティどこで手に入れたんですか?」
「あぁ、気に入ったか?これはライラ元副団長に頂いたんだ」
オリビアの叔母から……。
「こいつをお前に渡す」
向かい合ったテーブルに、大き目の封筒が置かれた。
「これは……?」
「おれもよくわかんないんだが、俺宛の手紙に入っていたんだ。マティアスが訪ねてくることがあったら、渡してほしいと……」
渡された封筒を手に取り差出人をみた、……そこにはライラと書かれていた。
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