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結局吐いた
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リリアムは外遊から戻っても、まだ外に出る仕事ばかりをしていた。
グリアと顔を合わせるのは気まずい。それでも気になって部室に顔を出して、そっと昼食を置く。グリアの好みを把握した今では、食べ残されることは少ない。
部室でグリアが忙しくしている横で、メモ書きを見ながらリリアム宛の仕事を素早く済ませる。
別の部員の用意した黒魔術隊らしい仕事もする。新しい保存食の試食をしながらメモを書き、新しい武器を持つ。警邏隊に加わった時に、武器を試す機会を待つのだ。
武器を試したくて率先して捕り物に参加するので、自然とリリアムの活躍は増えた。よく働くと評判になれば、常には呼ばれない部署からも声がかかる。今のリリアムにとっては、仕事が忙しいのは良いことだった。
鬼薔薇で失敗してから、娼館には一度も行っていない。代わりに暇があればギルドの訓練に参加して、極限まで体を酷使して気を紛らわせている。
午後に、警護に加わる予定があったが、夫人の体調不良のせいで取りやめになった。
部に帰ることも出来たが、リリアムは外部で訓練を受ける届けを出して、ギルドに向かう。
ギルドの訓練所では、屈強な組合員たちが怯えた顔をしながら訓練が始まるのを待っていた。
ギルドの職員、ロイ・アデルアの訓練は悪名高い。
どんなに腕に自信がある者が参加しても、訓練がきつすぎて吐くと評判だ。
体力的にキツいが、精神的にもっとキツい。
ニコラに罰として強制的に参加させられてから、リリアムは外部参加者では常連だ。
今回は、脱出訓練をさせられた。
縄で縛り上げられて、脱出すると次は床にトラップが仕掛けられている。
縄抜けを力でどうにかできる者は稀にいるが、訓練で使われている縄は太い。しかもどう縛ったのかロイの縛った縄は外れない。
参加者は、強制的に肩をはずすことを選ばされる。それ以外の解決法がないのだ。
肩が外れて罠の解除をするのは困難を極めるが、間に合わなければ子どもの人形に矢が刺さる。
人質の人形には幼子の姿絵が貼ってある。かなり表情が描きこまれていて、矢が当たると悲鳴が聞こえるようにできている。事前に家族構成や将来の夢、明日楽しみにしていることなどが説明され、感情移入した時点で訓練が始まる。射られるのを見るのはとても辛い。
外れた肩をぶら下げて、何度も何度も罠の解除に向かわされ、大の男が何人も泣いている。
やっと訓練をクリアできたとしても、心理的な圧迫は終わらない。
一度外した関節は自分では処置できないから、ペアになった相手に嵌めてもらわなければならない。うまく嵌めてやらないと相手は激痛で泣くし、以後脱臼を繰り返すことになるので責任が重い。
皆、精神的にきつくて青い顔をしている。リリアムのペアだった男は脱臼が怖くて途中で脱落したので、肩はロイに嵌めてもらった。
リリアムは一番に薬を飲むところまでたどりついて、休憩時間に無駄話をするくらいの余裕がある。参加し始めた頃は情緒がおかしくなって、ミアに泣きついてばかりいた。
「ガーウィン騎士、動きが良くなったな」
「はい、体術を習いまして」
「珍しい体術だ。ギルドの誰かから教わったのか?」
「いえ、騎士団の上司に習いました」
「たしか、警邏隊の所属だったか?」
「今は技術振興部にいます」
「ああ、グッドヘン部長か……」
ロイは時間を確認しながら次々に脱落していく参加者を見守っている。
リリアムは最近になってやっとロイ・アデルアがどんな顔をしているのか認識した。訓練の過酷さで、あまり見た目の良し悪しまで考えが至らなかったのだ。
よく見るとロイの配色とグリアの配色は少し似ている。
この間まで、おかしな髪色に染めていたが、ようやく色が落ちて類似点が観察できるようになった。ロイは酒場や花街で持てはやされそうな美しい顔をしている。夜の雰囲気が強すぎて、街の娘たちからは遠巻きにされるかもしれない。
グリアが白い熊なら、ロイは銀狐のようだなと、リリアムは拾った矢で地面に狐とクマを描いた。
訓練所からは他の参加者の悲鳴がやまない。弓が刺さって悲鳴を上げる人形の声と重なって阿鼻叫喚だ。皆、垂れ下がった腕で泣く泣く罠の解除をしているのが痛ましい。
(アデルア教官のヤバさはうちの糞爺とは方向性が違うな。こんな実践的な訓練ばかりさせられてるからギルド組合員の質が上がるのか。騎士団じゃ肩はずしてまで任務遂行できる騎士は一握り……先輩やニコラ隊長は場面が来たらやるだろうけど、他は判断が遅いだろうな)
騎士団の訓練との比較をしながらロイを眺めていると、グリアを思い出す。
短く刈り上げられた髪や、フードつきの技術振興部の騎士服の印象が強くてわかりづらいが、その実グリアも繊細な目鼻立ちをしている。
ロイのように前髪を垂らしてみれば似ているのかもしれないなと、想像の中で毛を足してみたりする。
「もしかしてアデルア教官はグッドヘン家の血縁者か何かですか?」
暇を持て余してロイに尋ねてみると、ため息をつかれる。
「そんなわけねぇだろ。色合いは似ているかもしれないが、グッドヘン家はお貴族だ。俺は父も母もいない根無草だ」
ロイは死屍累々の訓練所を見渡して、時間がかかりそうだと思ったのか、だるそうに椅子に腰を下ろす。
「でも、ほら、逆にご家族がいないってことは、実はグッドヘン家の落とし胤だったとか、意外な真相があるかもしれないじゃないですか」
「あそこは女系だ。撒き散らす種はねぇ。ありえないな」
グリアの姉は再婚する様子はないし、今の代でグッドヘンの子を成せるのはグリアだけだ。
「たしかに。そりゃ先輩が狙われるわけですね」
「なに? グッドヘン部長も狙われているのか? まだその話は聞いていないな」
気だるげに雑談に応じていたロイが驚いたように椅子に預けていた背を起こした。
「いえ、違うんです。命を狙われてる話ではなくて、グッドヘン家の子種を狙う女の子にモテモテって話ですよ」
「なんだ、紛らわしいな。いずれにしてもあんな高貴なお方が、場末のギルド職員と関係あるはずがねぇ」
「あはは、ですかね? すみませんでした」
リリアムは、悲鳴が止まらない訓練所を背にして、少し腹ごしらえをした。
いつもはどうせ吐くことになるので食べないが、今日は早めに無事を諦めたので短時間で訓練を終えることが出来た。
次の訓練を待っている間に、少しでも体力を回復しておきたい。
「ガーウィン騎士の習った体術、おおかた、ギルドの誰かが教えたんだろうな。技術振興部はうちとも協力関係にあるから、そういうことがあってもおかしくない」
「ギルドの協力者って……ああ、首から生える寄生植物をギルドから探しにきていた人がいたって聞いたけど、あれがそうなんですね。変質的だなぁ」
おかしなものを求めに来る人がいたものだと思ったが、様々な案件を取り扱うギルドのことだ、何か使い道があったのだろう。
ロイはその話を聞いて口の端をゆがめた。
「あいつらには関わらない方がいい。次に来たら追い返せ」
子どもの人形に刺さる矢は失敗の回数だけ増えていく。悲鳴の種類も豊富で、参加者は心を折られ、泣いて詫びながら訓練を繰り返す。解除するまで何度でも矢は飛んでくる。
この間に、リリアムはロイに体術の相手をしてもらうことにした。
何度か手合わせしてみたが、ロイ相手でも倒されるまでに少しは時間が稼げるようになってきている。
ボコボコにされたが、不思議と充足感のある手合わせだった。
まだ実力に差はあるが、ロイになかなか良いと言われる動きが出来た。
本当に実力がついてきていることがわかって、リリアムは満面の笑みだ。
「無駄な動きを教えていない、良い師だな」
「そうなんです。そりゃもう、うちの上司、なんでもできて、サイコーで大好きで……いや、いや、ちょっと待ってください。そんなんじゃないはずなんですけど――」
グリアを誉められて、嬉しくて自慢を始めようとして、ふと思いとどまった。グリアのことを考えないようにしても、どうしてもグリアのことがついてまわる。これはあまり良い傾向ではない。
「は?」
「こんなに先輩のことばっかり考えちゃうのって、そりゃ先輩のことは好きなんですけど。これってやっぱり、そういう好きなのかな?」
リリアムは砂地の格闘場に仁王立ちして、腕を組んで首を傾げた。
「なんの話だ?」
「私、恋とかわからなくって……」
リリアムがそう言った瞬間、ロイは強烈な当て身をリリアムに喰らわせて、吹っ飛ばした。
不意打ちだったこともあり、顔面から端に積んであった枯れ葉の山に飛び込んだ。
「つっ……てて……教官、いきなりなにするんですか」
「油断した方が悪い! いいか、そういうのは、もう恋に決まってる! 恋かなって疑ったら恋だということにしろ。恋がわからないってなんなんだ? 不足してるんだったら屋台で売ってるから買ってこい。串は危ないから捨てろ」
ただならぬ気迫で恋だと断定するロイに、気味の悪さを感じる。
どう聞いても何か自分の中で解決できていない物事について、持論を展開しているようにしか聞こえない。
「ええと……恋が屋台で買えるわけないじゃないですか? あの、アデルア教官はやっぱり騎士団に縁者の方がいるんじゃないですか? 一度、ご自分のルーツを探してみるのもいいかもしれませんよ」
「勝手にあの変態の縁者にするな!」
どの変態のことを話題にしたのか言及していないのに、リリアムにはなんとなくギルドと騎士団との繋がりを感じた。こういう勘は鋭い方だ。
「あはは、ですよね。どうにも似た感じの気持ち悪い上司がいまして。あまり思い詰めない方がいいですよ。そのひと、恋人に自白剤飲ませちゃうような変態なんで。縁者のわけないですよね! ははは」
ロイが頭を抱えて天を仰ぐ。
「リリアム・ガーウィン騎士、休憩は終わりだ。走ってこい。吐くまで帰ってこなくていい」
「はーい」
リリアムは、極限まで走って結局吐いた。
そして、これはもう、どうしたって恋に違いないと自覚した。
グリアと顔を合わせるのは気まずい。それでも気になって部室に顔を出して、そっと昼食を置く。グリアの好みを把握した今では、食べ残されることは少ない。
部室でグリアが忙しくしている横で、メモ書きを見ながらリリアム宛の仕事を素早く済ませる。
別の部員の用意した黒魔術隊らしい仕事もする。新しい保存食の試食をしながらメモを書き、新しい武器を持つ。警邏隊に加わった時に、武器を試す機会を待つのだ。
武器を試したくて率先して捕り物に参加するので、自然とリリアムの活躍は増えた。よく働くと評判になれば、常には呼ばれない部署からも声がかかる。今のリリアムにとっては、仕事が忙しいのは良いことだった。
鬼薔薇で失敗してから、娼館には一度も行っていない。代わりに暇があればギルドの訓練に参加して、極限まで体を酷使して気を紛らわせている。
午後に、警護に加わる予定があったが、夫人の体調不良のせいで取りやめになった。
部に帰ることも出来たが、リリアムは外部で訓練を受ける届けを出して、ギルドに向かう。
ギルドの訓練所では、屈強な組合員たちが怯えた顔をしながら訓練が始まるのを待っていた。
ギルドの職員、ロイ・アデルアの訓練は悪名高い。
どんなに腕に自信がある者が参加しても、訓練がきつすぎて吐くと評判だ。
体力的にキツいが、精神的にもっとキツい。
ニコラに罰として強制的に参加させられてから、リリアムは外部参加者では常連だ。
今回は、脱出訓練をさせられた。
縄で縛り上げられて、脱出すると次は床にトラップが仕掛けられている。
縄抜けを力でどうにかできる者は稀にいるが、訓練で使われている縄は太い。しかもどう縛ったのかロイの縛った縄は外れない。
参加者は、強制的に肩をはずすことを選ばされる。それ以外の解決法がないのだ。
肩が外れて罠の解除をするのは困難を極めるが、間に合わなければ子どもの人形に矢が刺さる。
人質の人形には幼子の姿絵が貼ってある。かなり表情が描きこまれていて、矢が当たると悲鳴が聞こえるようにできている。事前に家族構成や将来の夢、明日楽しみにしていることなどが説明され、感情移入した時点で訓練が始まる。射られるのを見るのはとても辛い。
外れた肩をぶら下げて、何度も何度も罠の解除に向かわされ、大の男が何人も泣いている。
やっと訓練をクリアできたとしても、心理的な圧迫は終わらない。
一度外した関節は自分では処置できないから、ペアになった相手に嵌めてもらわなければならない。うまく嵌めてやらないと相手は激痛で泣くし、以後脱臼を繰り返すことになるので責任が重い。
皆、精神的にきつくて青い顔をしている。リリアムのペアだった男は脱臼が怖くて途中で脱落したので、肩はロイに嵌めてもらった。
リリアムは一番に薬を飲むところまでたどりついて、休憩時間に無駄話をするくらいの余裕がある。参加し始めた頃は情緒がおかしくなって、ミアに泣きついてばかりいた。
「ガーウィン騎士、動きが良くなったな」
「はい、体術を習いまして」
「珍しい体術だ。ギルドの誰かから教わったのか?」
「いえ、騎士団の上司に習いました」
「たしか、警邏隊の所属だったか?」
「今は技術振興部にいます」
「ああ、グッドヘン部長か……」
ロイは時間を確認しながら次々に脱落していく参加者を見守っている。
リリアムは最近になってやっとロイ・アデルアがどんな顔をしているのか認識した。訓練の過酷さで、あまり見た目の良し悪しまで考えが至らなかったのだ。
よく見るとロイの配色とグリアの配色は少し似ている。
この間まで、おかしな髪色に染めていたが、ようやく色が落ちて類似点が観察できるようになった。ロイは酒場や花街で持てはやされそうな美しい顔をしている。夜の雰囲気が強すぎて、街の娘たちからは遠巻きにされるかもしれない。
グリアが白い熊なら、ロイは銀狐のようだなと、リリアムは拾った矢で地面に狐とクマを描いた。
訓練所からは他の参加者の悲鳴がやまない。弓が刺さって悲鳴を上げる人形の声と重なって阿鼻叫喚だ。皆、垂れ下がった腕で泣く泣く罠の解除をしているのが痛ましい。
(アデルア教官のヤバさはうちの糞爺とは方向性が違うな。こんな実践的な訓練ばかりさせられてるからギルド組合員の質が上がるのか。騎士団じゃ肩はずしてまで任務遂行できる騎士は一握り……先輩やニコラ隊長は場面が来たらやるだろうけど、他は判断が遅いだろうな)
騎士団の訓練との比較をしながらロイを眺めていると、グリアを思い出す。
短く刈り上げられた髪や、フードつきの技術振興部の騎士服の印象が強くてわかりづらいが、その実グリアも繊細な目鼻立ちをしている。
ロイのように前髪を垂らしてみれば似ているのかもしれないなと、想像の中で毛を足してみたりする。
「もしかしてアデルア教官はグッドヘン家の血縁者か何かですか?」
暇を持て余してロイに尋ねてみると、ため息をつかれる。
「そんなわけねぇだろ。色合いは似ているかもしれないが、グッドヘン家はお貴族だ。俺は父も母もいない根無草だ」
ロイは死屍累々の訓練所を見渡して、時間がかかりそうだと思ったのか、だるそうに椅子に腰を下ろす。
「でも、ほら、逆にご家族がいないってことは、実はグッドヘン家の落とし胤だったとか、意外な真相があるかもしれないじゃないですか」
「あそこは女系だ。撒き散らす種はねぇ。ありえないな」
グリアの姉は再婚する様子はないし、今の代でグッドヘンの子を成せるのはグリアだけだ。
「たしかに。そりゃ先輩が狙われるわけですね」
「なに? グッドヘン部長も狙われているのか? まだその話は聞いていないな」
気だるげに雑談に応じていたロイが驚いたように椅子に預けていた背を起こした。
「いえ、違うんです。命を狙われてる話ではなくて、グッドヘン家の子種を狙う女の子にモテモテって話ですよ」
「なんだ、紛らわしいな。いずれにしてもあんな高貴なお方が、場末のギルド職員と関係あるはずがねぇ」
「あはは、ですかね? すみませんでした」
リリアムは、悲鳴が止まらない訓練所を背にして、少し腹ごしらえをした。
いつもはどうせ吐くことになるので食べないが、今日は早めに無事を諦めたので短時間で訓練を終えることが出来た。
次の訓練を待っている間に、少しでも体力を回復しておきたい。
「ガーウィン騎士の習った体術、おおかた、ギルドの誰かが教えたんだろうな。技術振興部はうちとも協力関係にあるから、そういうことがあってもおかしくない」
「ギルドの協力者って……ああ、首から生える寄生植物をギルドから探しにきていた人がいたって聞いたけど、あれがそうなんですね。変質的だなぁ」
おかしなものを求めに来る人がいたものだと思ったが、様々な案件を取り扱うギルドのことだ、何か使い道があったのだろう。
ロイはその話を聞いて口の端をゆがめた。
「あいつらには関わらない方がいい。次に来たら追い返せ」
子どもの人形に刺さる矢は失敗の回数だけ増えていく。悲鳴の種類も豊富で、参加者は心を折られ、泣いて詫びながら訓練を繰り返す。解除するまで何度でも矢は飛んでくる。
この間に、リリアムはロイに体術の相手をしてもらうことにした。
何度か手合わせしてみたが、ロイ相手でも倒されるまでに少しは時間が稼げるようになってきている。
ボコボコにされたが、不思議と充足感のある手合わせだった。
まだ実力に差はあるが、ロイになかなか良いと言われる動きが出来た。
本当に実力がついてきていることがわかって、リリアムは満面の笑みだ。
「無駄な動きを教えていない、良い師だな」
「そうなんです。そりゃもう、うちの上司、なんでもできて、サイコーで大好きで……いや、いや、ちょっと待ってください。そんなんじゃないはずなんですけど――」
グリアを誉められて、嬉しくて自慢を始めようとして、ふと思いとどまった。グリアのことを考えないようにしても、どうしてもグリアのことがついてまわる。これはあまり良い傾向ではない。
「は?」
「こんなに先輩のことばっかり考えちゃうのって、そりゃ先輩のことは好きなんですけど。これってやっぱり、そういう好きなのかな?」
リリアムは砂地の格闘場に仁王立ちして、腕を組んで首を傾げた。
「なんの話だ?」
「私、恋とかわからなくって……」
リリアムがそう言った瞬間、ロイは強烈な当て身をリリアムに喰らわせて、吹っ飛ばした。
不意打ちだったこともあり、顔面から端に積んであった枯れ葉の山に飛び込んだ。
「つっ……てて……教官、いきなりなにするんですか」
「油断した方が悪い! いいか、そういうのは、もう恋に決まってる! 恋かなって疑ったら恋だということにしろ。恋がわからないってなんなんだ? 不足してるんだったら屋台で売ってるから買ってこい。串は危ないから捨てろ」
ただならぬ気迫で恋だと断定するロイに、気味の悪さを感じる。
どう聞いても何か自分の中で解決できていない物事について、持論を展開しているようにしか聞こえない。
「ええと……恋が屋台で買えるわけないじゃないですか? あの、アデルア教官はやっぱり騎士団に縁者の方がいるんじゃないですか? 一度、ご自分のルーツを探してみるのもいいかもしれませんよ」
「勝手にあの変態の縁者にするな!」
どの変態のことを話題にしたのか言及していないのに、リリアムにはなんとなくギルドと騎士団との繋がりを感じた。こういう勘は鋭い方だ。
「あはは、ですよね。どうにも似た感じの気持ち悪い上司がいまして。あまり思い詰めない方がいいですよ。そのひと、恋人に自白剤飲ませちゃうような変態なんで。縁者のわけないですよね! ははは」
ロイが頭を抱えて天を仰ぐ。
「リリアム・ガーウィン騎士、休憩は終わりだ。走ってこい。吐くまで帰ってこなくていい」
「はーい」
リリアムは、極限まで走って結局吐いた。
そして、これはもう、どうしたって恋に違いないと自覚した。
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