夜食、精液。

砂山一座

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夜食、精液。

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いつかどえらいことをやらかすんじゃないかと思っていた。
 比喩的表現で、食いついて離れないこいつを、俺は蹴り出すことも出来ずに見下ろしている。下手したら比喩的表現ではなくなる。

「みすず、なんかあったのか?」
 何か常識的な話をしよう。変態を変に刺激しては駄目だ。
「ゆうちゃん、私もうダメ。私ってダメな奴なのよ。仕事でもやらかして、彼氏にも振られて。メンタルずたずたなの。もう、死んだ方がましなくらい。」

 とりあえず手を離せ、と言うべきかどうか。
「それが、どうして今の状態に繋がるのか説明を要する。」
「酷い気分だからです。」
「いや、説明になってねェ。」
「最近、不眠気味で。」
「それもなんの説明にもなってない。」
「あと、酔っているからです。」
 それは理由としてはかなり良い線いっているかもしれないが、
「酔っていたで済むんなら警察いらんな。」
 と返さざるを得ない。

 とにかく手を離せ。
「なんかね、女子会でさ、洋子ちゃんがさ、精液飲むと鬱予防になるし、よく眠れるし、ハッピーでいい事だらけなんだっていうからさ。」
 恐ろしいことだ。
 誰が得するのかわからないような噂を一般論みたいに話すのが女子会という社交場らしい。
「女子会ってとんでもない話をするんだな。」
「ちゃんと論文が出てるって言ってたんだよ、洋子ちゃんが!」
 洋子ちゃん、クレイジー。
「それでね、私の最近、めちゃめちゃなんですよー!」
 とにかく、その手を離せ!
「帰れ酔っ払い。」
「ちがう、違うから!ちゃんとするから。」
「何が違うんだ、馬鹿。」

「精液、飲ませてもらっていいですかね?!」

 みすずは俺の陰茎を両手でつかみながら懇願した。



 俺とみすずは、幼なじみだ。
 家族ぐるみの付き合いで、醤油が切れれば借りに行くような仲だ。
 異性の幼なじみ。響きはいいが、いいことなんて何もない。
 くだらない内容の親子喧嘩が聞こえてきたり、窓の閉め忘れによる、よく知る熟年夫婦の夜の営みの音漏れが・・・なんてこと以外に特筆するような事は起きない。

 小学校の時に隣に引っ越してきたが、その時には既にみすずには遊ぶ友達がいたから、たいして遊んだ記憶がない。
 母親同士が仲が良くなり、夕飯をご馳走になったり、招いたりで仲良くなったが、学校ではお互い知らん振りだった。
 俺は中学を受験してエスカレーター式の中高に入り、みすずは地元の公立に通った。
 その頃も母親達のお喋りがてら互いの家で一緒に食事をする事はあったが、常識的な距離の隣人でしかなかった。

 みすずに何か違和感を感じはじめたのは大学に通うようになってからだ。
 夏の間、実家に帰ってきた俺は、帰省土産を持ってみすずの家を訪れた。電球が切れたから取り替えて欲しいと頼まれて入ったみすずの部屋ではカブトムシが大量に飼育されていた。

「これからはタンパク質供給量が減るんだって、だから昆虫食が人類を救うんだよ!」
 理屈はいいかもしれないが⋯⋯。
「カブトムシは不味いって動画でみたけどな。」
「え?食べられないの?」
「食べられるけど不味いんだろ。」
「⋯⋯そ、そんな。」
 結局、次々と成虫になるカブトムシを近くに住む小学生に配るのを手伝った。ゴキブリの方が味が良いらしいと言ったら、昆虫の話はしなくなった。

 冬に帰ってきた時は、スピリチュアルにハマっていた。上位の人格と交流して前世と行進するとかなんとか?あ、交信か?
「で、前世はなんだったの?」
「エジプト人だった。」
「へぇ。」
「私、自分のルーツを探しにエジプトに行ってみようと思ってるんだ。」
「ふーん、パスポート持ってるの?」
 そういえば、もう直ぐ更新しないとだな。パスポートセンターってどこだっただろうか。
「⋯⋯持ってない。」
「行く時は教えて、お土産頼むから。」

 その後、海外旅行に行ったという話は聞いていない。
 春休みは俺がエジプト旅行に行っていたので、会っていない。エジプトいい所だった。

 夏に帰ったら、みすずはゴスロリを着ていた。そういう友達ができたらしい。
 しかし、ここは関東屈指の高温記録保持市。ゴスロリ暑いだろ。
「でも、聖香ちゃんはゴスロリは露出NGなんだよって!」
「今、外36度だよ。」
「でも、聖香ちゃん、キャミソールなんかはしたないもの着れないって。」
「ふーん、今日の最高気温は38度だってな。体温軽く超えてくるなー。」
「聖香ちゃんが、夏のゴスロリ は暑いけど我慢だって⋯⋯。」
 聖香ちゃん、根性あるな。
「アイス買ってきたけど食べるか?」
「⋯⋯食べます。」
 ソーダとコーラ味が鉄板だけど、俺は和梨が隠れた逸品だと思っている。せっかく美味い味を多めに買ってきたのに、みすずはコーンスープ味を選んだ。

「美味いか?」
「⋯⋯。」
「暑いか?」
「⋯⋯うん。」

 と、まぁ、つまりみすずはそんなヤツだ。

 奇行は相変わらずだったものの、みすずは無事大学を卒業し、就職した。どんな仕事に就くのかと期待していたのだが、中堅のアパレルだと聞いて、微妙にがっかりした俺にがっかりした。葬式で嘆き泣く仕事とか、人間案山子とか、ゴルフボールダイバーとか、そんな仕事だったらと期待していた。

 俺もそこそこの会社に入り、そこそこ仕事をしていて、実家から会社に通っている。
 そこそこの彼女と、そこそこの同僚にかこまれ、福利厚生でジムに通ったり、有機野菜が届いたりと、穏やかに生活している。時々聞こえるみすずの号泣がアクセントになっているが、いつもの事なので特に問題ない。

 数年続いた平和は、今夜破られた。
 タイミング悪く、親たちは連れ立って温泉ツアーに行っている。

 Thank God, it’s Friday!と流暢に話す同僚を若干うざく感じながらも、金曜日の夜に酒を嗜むくらい、良いではないか。Why not?だ!
 ⋯⋯英語は短文しか出てこないので海外勤務は避けられている。そこそこの彼女はそこそこじゃなく向上心が高かったので海外協力隊として今は違う空の下だ。
 爽やかに見送ったら、爽やかにさようならされた。

 このエールは、とか、芋より黒糖が、とか別に詳しくもない酒の話を上機嫌でして、そこそこに酔っ払って、ラーメンで〆て、ふわふわしながらシャワーを浴びて、あー、こりゃもうだめだ、ってベッドに倒れ込んだ、そこまでで視界はブラックアウトした。


 すごく喉が渇いて目が覚めると、何やら股間が温かい⋯⋯いや、暗闇で蠢く何かが俺を弄っている!
 一瞬で覚醒したが、全く状況が分からない。恐怖で身が固まる。何かがうちの中に侵入してきた!
 ヤバい、酔って鍵をかけ忘れたのか?
 は、鍵!鍵どこだ?
 鍵に付いている十徳ナイフの存在を思い出し、手を伸ばす。いつもの通りベッド横のサイドテーブルの上にあった。亡き彼女の忘形見、十徳ナイフLEDライト付き!
 宇宙人だった場合の対応を考えながら、震える手で、割と広範囲をちゃんと照らすライトを点灯させた。

 ぼうっと浮かび上がってきたのは、 俺の下半身を今、まさに口に含もうとしている、かの幼なじみ、みすずの泣き顔であった。こえーよ。

 みすずは、例の如く、なんだかよく分からない事を閃いて実行しようとしていたらしい。女子会怖い。


「精液飲ませてください!ゆうちゃん以外に頼れる人がいないの。」

 本気で手を離せ。完全に萎えてるだろうが。

「そもそも、勝手に家に入ってくるな。」
「ピンポン押したもん!」
「押して反応が無かったら入るのは空き巣の手口だ。」
「鍵開いてたもん。」
「警察に突き出したら、色々な罪状で捕まるな。」
「⋯⋯。」
 よーし、少し冷静になったな。
「でも、精液はだめですか?」
「他をあたってくれませんかねぇ。」

 少し大人しくなったみすずはようやく俺の急所を解放した。
「わたし、今、ベジタリアンで、動物のお肉とかたべられないの。」
 今度はそんなことを始めていたらしい。
「なかなか高尚なことだな。でも、お前唐揚げとか好きだったんじゃねぇの?」
「お麩とか、大豆ミートとかを唐揚げ粉をつけて揚げるとね、それっぽくなるってマリコちゃんが言ってた。」
 マリコちゃん。今度はマリコちゃんか。
「それで?」
「流石にベジタリアンが精液飲んだらいけないかと思ったけど、でも人を殺して飲むわけじゃないし、牛乳とかと一緒かなって。」
 ベジタリアンに対する冒涜だ。全ベジタリアンにあやまれ。

「すごいな、みすず、ロジカルに考えられるようになったんだな。」
 なんか根本的に間違ってるけど。
「乳製品は摂るベジタリアンもいるでしょ?私それになろうと思う!」
「ちなみに、ベジタリアン始めて何日だ?」
「三日!」
 それは最早ただの偏食だ。
「帰れ。そして誰か他を当たれ。」
 しかし今回は中々折れない。
 へし折れろ。
「まって!ゆうちゃんじゃなきゃだめなの!あのね、グラスフェッドバターって知ってる?良い草を食べた牛のミルクで作るバターだよ。変なもの食べてない牛のだから体にいいんだって。」
「俺になんの関係があるんだ?」
「ゆうちゃん、毎週、有機野菜が届いているでしょ?!」
「ああ、会社の福利厚生でな。」
「だからね、だからね!いい野菜食べてるゆうちゃんの精液なら、きっと体にもいいはずだと思ったのね!」
 世の中の意識高い人々とグラスフェッドバター農家と牛たちに謝れ。
 何より有機野菜もりもり食べてる俺に謝れ。


「とりあえず、喉渇いたから水飲んでくるわ。みすず、お前すげぇタバコ臭い。一回帰って風呂でも入って頭冷やせ。」

 しかしながら、みすずは頭を冷やしても、ダメだった。冷やすべきは頭ではなく俺との親交だ。冷やそう。凍結しよう。
 やっと落ち着いて寝られそうになってきた頃に玄関のチャイムが鳴る。
 ホラーだぞ、これ。
 もちろん鍵はかけた。

 ピンポーン
 ピンポーン

 ピンポーン   ピンポーン

 ピンポンピンポンピンポン!

「うるせぇ!!」
「鍵かかってたから。」
「かけたんだよ!」
 本気で通報するぞ。
「とにかく、近所迷惑だ。入れ。」
 みすずは驚くほどのナチュラルさでうちに上がり込む。
「俺がいないうちに、どれだけうちに来た?!」
「おじさんの大正琴借りてたことがあるんだー。本当は合鍵もあるよ。旅行で居ないからゆうちゃんをよろしくって。」
 親は味方ではなかったようだ。

 完全に目が覚めた。
「はぁ。なんか小腹が空いてきた。なんかあったかな⋯⋯。」
 冷蔵庫を開けると、作り置きの惣菜が入っていた。筑前煮、ゴボウの浅漬け、ポテトサラダ、南蛮漬け、焼豚、浸し豆、品数豊富だな。息子を残して出かけるオカンは作り置きの正しい量が分からないらしい。

「みすずも食べる?」
「わたしは、ゆうちゃんの精液を夜食に頂きますから。」
 さらりと言い切るのが怖い。
「⋯⋯あ、そう。」
 無視してポテトサラダを食べる。
 さて、どうしたものだろう。

「じゃあさ、仮に俺がみすずに精液を提供するとして、みすずは俺に何してくれるつもり?」
 少し落ち着き、エロい好奇心が湧いてくる。なんか俺に都合の良いエロい対応があれば考えなくもないような⋯⋯。
「え?わたし瀉血とかはちょっと。器具もないし。」
「なんだ?しゃけつって?」
「瀉血だよ、瀉血。血を抜くんだって。」
 エロは吹き飛んだ。げんなりだよ。
「お前にロクでもない知識ばっかり吹き込んでるのは誰だよ?聖香ちゃんか?マリコちゃんか?洋子ちゃんか?」
「聖香ちゃん。」
「あンのゴスロリめ!」
 無駄に根性据わってると思っていたがメンヘラだったか。

「わかった。もうわかったから、歯を磨いてくるから、俺の部屋でちょっと待ってろ。」

 みすずは少し頭が緩い。頭が悪いのでは無いのが惜しい。勉強はちゃん出来るし身の回りの細かいことも問題ないのに、やらかす事が想定外なのだ。
 悪いことに、頭は緩いが、見た目は完璧だ。色素の薄い柔らかい髪、細い手足、頭の栄養を持っていかれた証拠のような豊かな胸。普通なら天然系女の敵として君臨するはずだが、何故かみすずには頭の緩さを心配してくれる庇護者がついていた。それがみすずのブレインの女たちだ。俺は心の中で魔女と呼んでいる。賭けてもいい、全員処女だ。しかし、みすずの女友達がしっかりしていたが故に、みすずは性的に搾取されたり、別の女子から苛めに遭うことなく暮らしてこられた。


「お前、彼氏は?」
「ふられた。やらせてくれないなら別れるって。」
「付き合ってどのくらいで?」
「ん⋯⋯九ヶ月?」
「九⋯⋯?」
 最初の月に妊娠したらもう直ぐ出産するくらいの長さだぞ。
「誰の指示だ?彼氏に禁欲を強いたのはどいつだ?!」
「みんな、すぐにやりたがる男はダメだって。本当だった。司くん、もうわたしの事好きじゃないって。もう新しい彼女がいるなんて⋯⋯。」
「ああ、ハイ。お気の毒です。」
 司くんはよく頑張った。魔女達相手に九ヶ月もよく戦ったさ。俺は責めない。そりゃ絵に描いた餅より、毎日の白飯が有難いに決まってる。

「それに、司くんはお仕事も出来ないから、あんまり栄養のあるもの食べてなかったし。」
「司くんて、学生?」
「ううん。なんか、活動家?仕事をしたら負けなんだって。」
 おおう。
 よく魔女達が許したな。
「まあ、次に彼女が出来て良かったな、司くん。」
「なんでよ!ふられた身にもなってよ!」
 だいたい、何がきっかけで付き合う事になったんだよ、活動家と?!

「それで、仕事もはちゃめちゃなんだな。」
「そう。」
「あー、もう、内容はいい。大体想像つく。」
 わちゃわちゃと店内を駆け回り、色んな人に迷惑をかける様子が簡単に思い浮かぶ。
「ええ?!お店の中が鳩の糞だらけになったって、どうしてわかったの?!ゆうちゃん、エスパー?」
「⋯⋯いや、それは思い付かなかった。」
 それで幼馴染の精液をせびりにくるなんて、メンタルむしろ強いよな。

 なんかもういいかな。

 世の中には危険な仕事もたくさんあるんだ。
 地雷を撤去する仕事がある。
 最前線で平和のために戦う兵士もいる。
 元カノだって、遠くで頑張っている。
 皆の命を守るために今この時だって体を張ってくれる人達がいる。日本にだって警察官とか、医者とか、看護師とか自衛官とか、他にもいっぱい。
 自分の危険も顧みずにそれが天命だと頑張っている人たちがいる。

 俺に出来る世の中に役立つ小さな事って、みすずを野放しにしない事なんじゃ無いだろうか。
 みすずが夜な夜な有機野菜を食べるベジタリアン男を漁りに夜の街を彷徨ってみろ、大層迷惑な事になる。
 根性の足りないゴスロリ姿で熱中症で運ばれてるのも迷惑だ。医療資源は有限だ。俺の使命はみすずをこのまま世に放たない事だ。
 俺は志願してみすず担当の爆弾処理になる事を宣言する。

 俺はみすずをベッドに押し倒した。
 あー、元カノを実家に連れて来たこと無かったなーなんて事がよぎったが、そのくらい許してくれ。

「というわけで、みすず、結婚しよう。」

「え?なになに?」
 とりあえず、唇に触れてみる。
 特に反抗されなかったので、身を近づけて口付けを落とす。
 柔らかな感触に血が勢いよく巡りはじめる。主に下半身に。
「ゆっ⋯⋯え?え?え?」
 まだ頭が回らないようで、口をぱくぱくさせているのを良いことに、薄い半透明の耳を舐め上げながら息を吹き込むようにみすずに言い聞かせる。
「俺、ちゃんと仕事してるし。みすずを養うくらいなら余裕だから。」
 フェミニストに撲殺されそうなセリフを吐く。フェミニストの皆さん、女性の尊厳を傷つける意図はありませんよ。あくまで、みすず個人についての話ですからね。
「あぅ⋯⋯やっ、耳、ダメ⋯⋯。」
 ダメなようなので、それはそれは丁寧に舐めしゃぶる。
「結婚とか⋯⋯ど、独立した女性でありたいので⋯⋯ゃっ、あっ。」
 軽く噛むと高い声が上がる。
「誰が言ってた話だよ?」
「洋子ちゃん?男性に頼って生きちゃダメだって⋯⋯。」
 洋子ちゃん、悪いがみすずは洋子ちゃんの思い描く独立した女性コースからはドロップアウトします。
「そうだなぁ⋯⋯。」
 みすずの髪に指を通し頭皮を撫でながら、どう口説き落としたものかと思案する。
「洋子ちゃんが言ってた精液の話だけどな。」
 寝削がれた俺がついさっき検索をかけただけの内容で煙に巻く。

「どうやらあながち嘘でもないらしい。だがな、精液はぶっちゃけクソ不味い。
 好奇心とは恐ろしいものだよな・・・苦いし、しょっぱいし、喉にひっかかるし。今日〆でラーメン食ったから豚臭い可能性もある。」
 まあ、そんなにすぐ影響でないだろうけどな。
「ええー、そんなぁ⋯⋯」
 みすずは泣きだした。なんか泣くタイミング違くね?
「だが安心しろ、精液のハッピーになる成分は別の方法でも摂取可能だ。」
「え、そうなの?」
 涙が引っ込んだようで、みすずの目に光が戻る。
「粘膜からだったらどこからでもいいんだってさ。」
 指先で唇を割って歯列をなぞり、桃色の舌を弄る。みすずの体温に染まった濡れた指で、そのまま頬の裏側を撫で回す。
「えんまふ?」
 粘膜な。えんまふってなんだよ。吹き出しそうになったので、指を抜いてやる。
「そうだなぁ、例えば腸壁からとか?」
「ちょうへき?」
 訝しげに眉をよせるから、首の血管に鼻を押し当ててぴったりと身を寄せ、尻と布団の間に手を滑り込ませて臀部を揉んで教えてやる。
 ふわふわだ。なんだこれ、指が吸い込まれる。お前運動してないな。
「そうだなー、アナルセックスとかで直に、という手があるな。」
「えー、ムリムリムリムリ!」
 甘い匂いの首筋をベロベロと舐めながら、尻を揉みしだき硬くなった陰部を服越しにゴリゴリとみすずの柔らかな腹に押し付ける。
「そうだよな、みすずには無理だよな。」
 もう少しと、尻を揉みしだきながら続ける。なんだこれ、柔らかさが半端ねぇ!最高かよ?!
「もう一つ方法がないわけじゃないんだけど。」
 他に思い当たる粘膜があったのか、ゴクリと喉を鳴らす。
「うっかりすると妊娠しちゃうしなぁ。」
 みすずに跨ったまま、少し体を起こし体と体の間に隙間を作ると、みすずの薄い腹を撫でる。
 ペラペラのパジャマなんぞを着て来るとは、嘆かわしい。あっというまに隙間から手を突っ込まれて鼻にかかった悲鳴を上げているじゃないか。
 さて、さて、子宮の位置はどこだろう。
 直に少し腹を圧迫して内臓を探る。
「ゆうちゃん、それ、触り方が、えっちぃ⋯⋯。」
 そうだろう、そうだろう、俺は今日お前の胎に中出し決める覚悟だからな。

「なぁ、できちゃった結婚って、お前の友達はアリだって言うとおもうか?」
 腹を撫でていた手はどんどん上を目指す。山の麓まで来てフニフニと肉を掴む。さて、どこからが胸だ?
「ダメ、ダメだって!絶対ダメってみんな言う!」
「そうだろうな。聖香もマリコも洋子もそういうのは良くないっていうだろうよ。」
「じゃぁ、俺たちが結婚してたら?」
 膨らみまで到達した手は⋯⋯なんじゃコレは、スポーツブラかよ⋯⋯特筆するべき障害物もなく、頂を目指す。
「け、けっこんしてたら⋯⋯?」
「な?何にも問題がない、だろ?」
「そ、そうかなぁ⋯⋯?」
「今日これからここにお前が欲しがっていた精液を出したとして、まぁ、直ぐには妊娠しないだろうけど。明日にでも書類を出したら、ほら、どうだ?聖香もマリコも洋子もそんなのダメだとは言わないだろうなぁ。」
 両手の侵入を許したスポーツブラは、パジャマの中で胸の上まで押しのけられて、役目を果たしていない。

 とりあえず、胸をめちゃくちゃ揉む。
 捏ねても捏ねても手を離したくならない魔性の手触り。おっぱい尊い。
 同意は無いが、もうひん剥いても許されるだろうか。

 なけなしの理性と戦いながら、手探りで乳首を探る。小ぶりなしこりをみすずの様子を見ながら慎重に押しつぶす。

「やぁ、ゆうちゃん、やめてぇ⋯あっ、あっ⋯あーっ、やっ、」
 顔を真っ赤にして快感を拾うみすずに見惚れながら苛め続ける。
 フルフルと頭を振り、涙を溜めて快感を逃がす。
「みすず、俺と結婚すれば、不味い精液を飲まないですむし、お尻開発もされないんだぞ。」
 論理が滅茶苦茶で酷い。これで落ちるとか嘘だろ。
 あー、離したくない。離したくないが、泣く泣く胸を解放してやる。
 尖りきった乳首がパジャマ越しにツンと主張している。
「そしたら、ここから有機野菜で健康な俺の精液吸収し放題だ。」
 パジャマ越しにやや乱暴にムニっと掴んだ恥丘の肉も柔らかい。

 しかし、こいつ、ちっとも拒まないな。

「どうする?」
 ベッドに両手をつき、腕の中に閉じ込めてチロチロと唇を舐めて返事を乞う。浮かんだ涙も舐めとる。落ちろ、落ちろ、俺に落ちてこい。

「んあっ⋯あっ、ゆうちゃん、私⋯⋯ゆうちゃんと、結婚する。」
「言質はとったぞ。」
 みすずの唇に噛み付くようなキスをして、思い切り淫らに舌を犯す。舌を入れるキスなんて久しぶりだ。粘膜同士の接触が快感を生む。

 晴れて裸体解禁だ。
 せっせとボタンを外し、そうっと襟元を開くと、ふわっとした膨らみが顔を出す。薄い小さな乳輪とさっき散々弄んで膨らんだ乳首が現れた。
 白いなかに淡く色付く乳首のエロさといったら⋯⋯。
「破壊力あるな、コレ。」
 口に含むしかない形状だ。
 乳頭を丹念に舐めて口内にすすり入れ、唇を使って扱き上げ、軽く噛む。
「あっ⋯あっ、なんか⋯これ、お腹?ここ、お腹きゅってなる。」
 下腹部に手を這わせて、快感を訴えてくる。
 えっろっ。
 みすずの実況がモロに下半身を重くする。
「ここか?いま、どこなのか見てやるからな⋯⋯。」
 エロ親父のようなことを言いながら一気に下着も抜き去ってしまう。
「みすず、見せてみろよ。」
 足を掴んで割開くと綺麗な女性器が蜜に濡れている。
「いい子だな、みすず、こんなに濡らして、偉い偉い。」
 優しく、優ーしく蜜を指に纏わせる。

「偉いから撫でてやるから、力を抜いておけよ。」
 じっくり観察しながら花弁を引っ張ったり、恥丘を寄せてみたり堪能する。
 クリトリスを根本から摘もうとするが小さくて摘めない。仕方なくコリコリとしこりを転がすようにいたぶり始める。

「ヤダ⋯それ、おなかぎゅってなる、やぁっ、あっ、あっ⋯ゆうちゃん、やめてっ、なんか、ダメ。」
「洋子ちゃんにここの触り方教えてもらわなかったのか?」
 少し顔を出したクリトリスを摘んで揺らす。
 後ろから抱き込んで、両足でみすずの脚を手繰り秘部を広く開かせる。
 秘肉を左右に引っ張り、お待ちかねの、くぱぁ⋯⋯だ!

「クリトリスでイけたことある?」
 舐めやすくなった耳を舐めながら訊くと、イヤイヤと首をふる。
「洋子ちゃんは中を触るって言ってたけど、私、中触ったら血が出ちゃって、怖くてやめたの⋯⋯。」
 自慰の告白とかなにが楽しいんだ?と思ったが、考えを改めなくてはならないようだ。
「ここに、指を入れたのか?」
 左手はちょこんと飛び出た花芽を捏ねながら、右手の中指を慎重に膣口に沈めて行くことにする。
 浅いところは泥濘んでピチャピチャと水音を立てている。ぬちゃぬちゃと音を立てて進むと、急に指を締め付けられる。
「みすず、上手に締め付けてるじゃん。その調子、その調子。」
「あっ、指、あはっ、お腹の中までいれちゃうの?」
 不安そうに聞く。
「そう。今よりもっと奥まで入れちゃう。入れて子宮口撫でて、みすずの中全部触る。」
 いかん、自分で言っていて、キュンと指を食まれてかなりキた。俺の方が暴発しかねん。
 ちょっとずつ指に圧をかけて、締め付けをかい潜る。
「怖いよぅ⋯⋯ゆうちゃん。」
 と言う割に俺の指をきゅっきゅっと締め付けて、奥へと誘う。小刻みに内壁を引っ掻くと締め付けが強くなる。

「イってみようか?」
 左手は上を向く乳首に、右手の親指でクリトリスを押しつぶし、中指で中を突き進む。
「うそっ、ヤダ。全部は無理。きゃっ、あっ、あっ、ああンっ!」
 喘ぎ声は可愛いものから、余裕の無い声に変わる。
「だいぶ深くまで入ったな。ほら、みすず、どこまできてる?」
 グチュグチュ聞こえる水音と、余裕の無さそうなみすずの嬌声に気を良くした俺は、みすずの絶頂を欲した。
「脚閉じないでイけると俺のでもイけるようになるから頑張れよ。俺の指をその調子でギュッと噛み締めて。あー、そうだよ、そう、動かすから続けて。上手にイけたら俺の入れてやるから。」
 膣圧が上がり指をしゃぶられる。
「あぁーっ、あっ、あっ、あーっ、やぁっ、ダメっ⋯ゆうちゃん⋯おなかきゅうきゅうって⋯⋯。」
「一本じゃ足りなくなったな、もう一本な。」
 嘘だ、あと二本捻じ込む。全然待てるきがしない。

「ひゃっ⋯あっ、あっ、いっぱいすぎるから⋯⋯」
「すげえ⋯⋯拡がってきたよ、みすず。子宮口触れるかな⋯⋯?」
 ぐっと全部押し込むと、奥のコリっとした所に届く。
「あっ、んーっ、なに?」
 激しく身をよじったところで、動かさないようにしてみすずの様子を見る。
「痛い?」
「ううん⋯痛くない。そこ、なに?ゴリってする。」
「子宮の入り口。」
 圧迫する様に撫でると腰が揺れる。
「みすずはこれからココで精液飲むんだぞ。」
 意地悪く変態発言をしてみると、もうびちょびちょの媚肉がまた震える。

 処女膜貫通は男の夢ではあるが、なんだかんだで、洋子ちゃんのエロ指導のおかげでみすずを泣かさないですみそうだ。

「よーし、いつイってもいいぞー。どこが善い?」
 親指に人差し指も添えて捏ねてばかりだったクリトリスを抓ってやる。
 実はドロワーズに立てかけてある鏡で、チラチラと映る姿を見てるのは内緒だ。
 小さな膣口に無理やり三本も指が捻じ込まれたシーンは、しばらくオナニーのオカズになりそうだ。

 膣内を満遍なく探り、さらに子宮口の出っ張りを撫でられて、キツめに乳首とクリトリスを潰されて、みすずは決壊した。
「やっ、あっあっあっあっ⋯あーーっ!ダメっ、そこ、全部、きちゃうよぉ⋯⋯」
 中が今にもイきそうだと、ヒクヒクと訴える。
「ね⋯ゆうちゃん⋯⋯イったら、入れてくれるの?」
 このタイミングで、上目遣いでそんな事われたらどうなると思う?
「みすず、やっぱ、いま入れるわ。」
「え?え?」
 ひっくり返して素早く全裸になると、もうよだれを垂らして飢え散らかした猛りを指の代わりに、埋め込む。
「んあっ、んっっ、んっあっ⋯⋯!」
「うっ⋯⋯中、ヤバい、きっつ。みすず、息を吸え、大丈夫だから。」
 今まで絶頂に向かっていたみすずの身体にもう一度火をつける様に胸に吸い付き、空いた手でもう片方の胸を苛め、さっき泣き叫んだ強さで淫芽をきゅっきゅっと摘む。
 俺のおねだりを聞いてくれとばかりに、耳に欲望を垂れ流す。
「俺のこれ、締め付けてイくとこ見せて。」
 クリトリスが反応が良さそうだ、口付けて舌を入れると、体が硬直してギュッと力が入る。
「イって、みすず。イったらこの中にみすずが欲しいヤツご馳走するよ。」
 優しく髪を撫でる。ぐっと陰茎を押し入れて、トドメにクリトリスのしこりを強めにグチュグチュと高速で擦ってやる。
 膣壁がわななき、ぎゅっぎゅっと何度も俺の昂りを締め付ける。
 みすずは俺に腕を回して抱きつき、凄く静かに絶頂した。

 た、たまらん。
 ぎゅっと抱きしめられて、抱き締め返すと、愛しさが込み上げる。
「⋯⋯可愛いな、みすず。」
 さっきは爆弾処理なんて思っていたが、これはもっとずっと良いものだった。

 俺はもっと早く思い立つべきだった。
 みすずは放置しておけば勝手に事故を起こす生き物だ。紐をつけても関係ない、教育も意味をなさない、まあ、地雷女と言って過言ではない。しかし、こいつにはもっと出来ることがあるのに、誰もこいつの特性を活かそうとしない。ただ少しだけ、こいつがなにに向いているか見つめてやるだけでよかったはずなのに。

「みすず、動くぞ。」
 まだ緩く蠕動を感じながら、待てずに動き出す。まずは奥まで行こう。
 少しずつ、みちみちと腰を進めて、恥骨同士がぶつかり奥の奥に入り込む。
「あっ⋯⋯まだ、まって⋯⋯んっ、んーっ⋯⋯!」
    待てない、待てない、もう無理。
 ゆるゆると奥を探って行き止まる。
「はぁー。」
 額の汗を拭うが、我慢しすぎて冷や汗に近い。もうめちゃくちゃに突き上げたい。
 待てをされている犬の気持ちで、みすずのいい所を探す。籠絡するつもりが、もはや主導権はみすずのものだ。
「指とどっちがいい?」
「⋯⋯こっち。」
「俺もこっち。」
 中を開発して、とか色々お楽しみはあるが、今はイきたい。
「⋯⋯中に、出すの?」
「出すよ。ハッピーになる成分を摂取するんだろ?」
「⋯⋯もう出ちゃったりした?」
「まだだけど?」
 一度浅いところまで抜いて、ぱつんぱつんなのを確認させて、また奥までズンと沈める。
「⋯ふああっ、あっ、あっ⋯そっかー⋯⋯あっ、なんかっ、凄く⋯気持ちいいし、幸せな気分になっちゃったから、もう出ちゃってたのかと思ってたよ⋯⋯。」
 俺の昂りをぎゅうぎゅうに締め付けて、へへへ、と笑う。
 いかん、こいつ俺を殺す気だ⋯⋯。

 俺はみすずの細いのに柔らかい腰を掴むと、欲望のままに腰を振った。
 カリが中のざらっとしたとこを擦り、甘い声が上がる。
 ガツガツとした突き上げを受け止めるようにだきつかれれて、多幸感が増す。
「ゆうちゃん⋯なかに、ちょうだい⋯⋯。」
 ナチュラルに足を絡めるな!
 ダメだろ、お前、本当にダメだ、ダメダメだ。


 惚れてまうやろーーー!!!


 俺は、信じられない量の精液をみすずの最奥に吐き出した。



 もう眠い。このままの、ぐちゃぐちゃのままで寝たい。
 裸で抱き合うのが気持ち良すぎて溶けそうだ。

「みすず、今の仕事好きなのか?」
 落ちそうな意識を手繰り寄せてみすずに訊く。
「⋯⋯あんまり。」
「なんであの会社はいったの?」
「友達が私に合いそうだからって⋯⋯。」
「ふーん。」
 ぜんぜん分かってねぇな。
「俺はわりと昔からみすずに合う仕事を考えるって遊びをしていたんだが、ランキング聞きたい?」
 色々候補はあったんだ、ひよこ鑑定士とか、ドッグフードの味見の仕事とか。
「聞きたい。」
「三位は、ペットショップ。お前、昔、カブトムシ大量に育てたことあっただろ?俺はアレにセンスを感じた。」
「カブトムシ、いっぱい配ったねー。」
 胸のところで笑われて、こそばゆい。
「二位は保育士。今更だけど、資格とるように言ってやればよかったなと思うよ。
 お前、単に子ども好きってだけじゃなくて、ぼーっとしてそうで、細かい所に目が向くだろ?」
「えへへ。」
 ぎゅっと抱きつく頭を撫でる。
「一位は?」
「冷蔵庫の作り置き、みすずだろ?」
「⋯⋯そうだけど。わかった?」
「美味かった。」
 俺の母はレシピ片手にファンシー料理を作るタイプだ。みすずの料理のチョイス、あんなの完全に男を落としに来る計算女しか選ばないだろ。それをナチュラルにやってのけるとは恐ろしい女だ。

「堂々の一位は、俺の奥さん兼、子どものお母さん。」
「えー!えー!!」
「足をバタバタさせるな、精液でその辺カピカピになるだろうが。」
 明日は洗濯だな。みすずの作り置きもあるし、うちでゴロゴロできそうだ。
 この続きをするのもいいし、楽しい休みになりそうだ。

「それでな、今の仕事やめても、再就職場所があるんだが。」
 ニヤつくのを噛み殺して、生真面目な顔で言うと、ピョコンと顔を上げて俺を見る。
「エントリーシートだします!」

 魔女達よ、みすずはこうやって動かすんだ。


 end
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みんなの感想(1件)

その
2021.12.24 その

かわいいかわいい(*≧з≦)
面白かったです(ノ≧▽≦)ノ

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