オトナの読書感想文 根本敬「真理先生」

戸城 樹

文字の大きさ
1 / 1

オトナの読書感想文 根本敬「真理先生」

しおりを挟む
 はじめましての方ははじめまして。ご常連の方々は、今後ともよしなに。
 OZZY-ZOWプロジェクトの中の人、OZZYです。
 今回は根本敬、「真理先生」について、読書感想文以上、書評未満の文章を綴っていきます。1000文字もない文章なので、よろしければ。

 1章は、一つのテーマを「ぽん」と上空に放り投げ、風まかせにふらふらと、あちらこちらの界隈の話や自身に起きた出来事と、頭の中を巡ったよしなしごとに言及しつつ、最後にはきっちり着地するような、そんなイメージ。穂村弘のエッセイにも同じ感覚を覚えたけれど、「書く側の人」がうっかり真似をすると、すべりまくって、とっても恥ずかしい思いをしそうなリスキーみを感じる。

 2章の小説が、また面白い。内容も当然ながら、構成も含め。
 物語で語られる人物の半生について、本人からそれを聞いたという人物が語り部となり、読者の耳に徹する主人公に語ってきかせる形式が、現在絶賛格闘中の、プラトンの「饗宴」を彷彿とさせる。そして、物語冒頭でざっくりと全体の骨子を見せた上で本編に導入する手法は、昨今の「読まれやすい」とされるブログの書き方を彷彿とさせ、最後は落語のようなオチで締めるという、様々な時代の文章の手法がミックスされた書かれ方なのだ。これは、「書く人」には是非一読をおすすめしたい。

 3章は、氏が見聞きし思った事象に対し、彼なりの見解を述べるようなものとなっている。これがまた軽妙な言葉を使いながら、濃厚な味わいが出されていて、書き手の端くれとしては、若干の嫉妬を覚えた。

 濃い。とにかく濃い。193P程度、物の数ではないとタカをくくって読み始めたが、背脂のギッシリ浮いたラーメンを、替え玉2玉計3玉食べたような充実感だ。しかもこのラーメン、導入の一口目があっさりしているのがまた曲者だ。
 世に書籍は数多あれど、再読に耐え得るものはとても少ない。この本は、数少ない再読可能な一冊だ。こういう本に、中学生時代に出会いたかった。
 まぁ、14歳なんですけどね。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

婚約者の番

ありがとうございました。さようなら
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

処理中です...