騎士団長の望んだ褒美は異世界転生した俺でした

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 いや、言ったよ?
 でもそれはロイ様が例え話みたいな軽い感じで「どうしても、って望む人が居たら、トールはどうしたらいいと思う?」って聞いてきたから、俺なんかに恋愛相談!?って嬉しくなっちゃって。
「それならば、外堀から埋めるんですよ。簡単に逃げられないようにするのが先決です。その相手が優しい人であればかなり有効ですっ!その後に、誠心誠意想いを伝えれば、ロイ様なら間違いないですねっ」
 ……なんて、恋愛上級者みたいなアドバイスをしたが、実は前世で読んだ恋愛漫画の受け売りだった。
 特に少女漫画。
 恋愛童貞だった俺は、やっぱり恋愛したくて、勉強目的で少女漫画を読んだ。本屋でレジに並ぶ勇気はなかったから、電子書籍でひっそりと読んでた。
 女の子の憧れる恋愛を学ぼうと読み始めた少女漫画だったが、中には泣ける話も笑える話もあり、段々勉強とか関係なく読むようになっていた。
 でも、男の俺からすると、恋愛漫画に出てくる主人公の好きな男って、めちゃめちゃ強引だったり、犯罪スレスレだったりしないか!?何度も、コレされて好きになる奴いる?って疑問に思ってた。
 で、俺は気づいたんだよ。

 イケメンなら許されるってことに!

 もし、俺みたいな奴がやったらホラー漫画になるような言葉や行動も、キラキラなイケメンがやるときゅんとするんだよ。
 女の子って、ゲンキンだよな……。もう、イケメンじゃない俺には恋愛漫画を教科書に女の子の憧れを学んでも仕方ないことに気づいたが、その経験がロイ様には活かせる。
 ロイ様はイケメンの中のイケメン。全女の子が憧れる存在である、王子様ってやつだからな。
 そんなロイ様なら、外堀を埋めて逃げられなくしてから口説くのが一番!……って、本気で思ってアドバイスした。
 だって、万が一ロイ様の外見が好みではない相手だったとして、外堀を埋められて不快だとしても、ロイ様は性格も王子様なんだ。
 優しく紳士的で、いつも国民のことを考えその声に耳を傾け、同時に自らの鍛練も怠らず、努力し続けている姿を俺は見てきた。そのストイックさに男も惚れる男ってやつだ。
 そんなロイ様が誠心誠意想いを伝えて好きにならない訳なんかない!

 ……全部、自分にブーメランとして返ってくるなんて、考えてなかったな。
 乾いた笑いしか出ない。
 あくまでロイ様のお相手は恋に臆病な可憐な令嬢の設定だった。決してこんな紙の上でしか恋愛を知らないモブの俺じゃないっ。

 このロイ様の一連の行動のアドバイザーが俺だと知り、思案顔のミハエル様の視線に俺の顔面は真っ青だった。
 ミハエル様どころか、この部屋の視線を一手に集めているが、どう言い訳しようもない。間違いなく言ったし。

「なるほどね……主犯はトール。反論はなしで確定ですね」
 主犯!?
 ミハエル様の言葉にますます青ざめる。
「あぁ、大丈夫ですよ。ロイ様の気持ちは分かっていたし、行動に出るだろうなとは思っていました。まぁ……正直こんなに早くだとは思っていなかった。剣術大会で結果を残し、騎士団長として磐石の地位を築いた後に、だろうと思っていた。私としては、各国の適齢期の王族子息、有力貴族たちにどう間違いを起こさせるか熟考していたのに……まんまとしてやられた、と言った所です」
 ミハエル様が優雅に微笑まれているが、内容が物騒すぎて顔が青から白くなった。
 間違いを起こさせるって……いやいや、間違いを起こさせないために宰相っているんじゃないんですか!?
 こ、こえー。
 手段を選ばないって正々堂々と言われると、もう何も言えない。
 ……ん?
「ミハエル様……さっき、ロイ様の気持ちは分かってたって……」
 もしかして、それって……。
「あれだけトールのことが好きだって全面に出されてたら分からない訳ないでしょう?騎士団を始め、一番身近な厨房の者や側仕えまで、トールと関わる者たちはロイ様に牽制されてますから、城中皆知ってます。気づいてないのはトールとそこの使えない国王陛下だけです」
 国王陛下の前に「使えない」って形容詞必要でした?
 ミハエル様は舌打ちでもせんばかりに苦々しい顔をしながら国王陛下を睨め付ける。さっと下を向いた国王陛下は、もうすでに散々ミハエル様に絞られた後なんだろう。
「あの時も、ロイ様が婚姻の承諾、と口にした時に皆トールだと思った。それを気づかない陛下が私の制止の視線にも気づかずどんどん詰めるから、結局トールの名前まで出て引けなくなったんですよ。今回の失態は陛下のせいでもあります。……まぁ、これも計算の上でしょうから、すべてロイ様の作戦勝ちです」
 さすが、ロイ様!ミハエル様が人を褒める言葉を口にしたのを初めて聞いた……って、皆知ってたの!?
 教えてくれよ!

「ミハエル、兄上はともかく、トールには気づかれないようにしていたから当然だ。トールに外堀を埋めるまでは相手に気持ちを知られない方が良いと言われていたからな。これから、伝える。トールに私のことを好きになってもらうために」
 国王陛下をともかく、であっさり切り捨てないで欲しい。この国のトップなのに。ひどいなー。……なんて、別のどうでもいいことを考えでもしないと、ロイ様の俺に向けられる視線と言葉が甘すぎて、俺の中で消化しきれなくなりそうだった。
 今までとは違う想いが芽生えそうで、怖かったんだ。
 俺、チョロすぎないか!?
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