無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ

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119. 深き緑の森

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 今日は、エルフが住まうという深き緑の森を横断する事を決断した。

 ただ、横断するだけなのに、決断する必要があるの?って、話だけど、その深き緑の森は、別名帰らずの森とも呼ばれていて、一度足を踏み入れたら決して戻れないと言われている危険な森なのである。

 では何故、そんな危険な深き緑の森を横断するのを決断したかというと、それはアニエス神聖国への最短距離だったから。
 深き緑の森を迂回すると、それだけで1週間も掛かってしまうのである。
 しかし、横断できれば、多分、3日で横断出来る筈なのだ。

 多分というのは、今迄、誰も横断した者が居ないから。
 エルフだったら、通れるんじゃないかと思うけど、深き緑の森を一度出たエルフは、二度と深き緑の森へは戻れないという掟があるらしく、実際、深き緑の森を横断した事がある者は居ないのである。

 そんでもって、その事を聞いてしまったサクラ姫に火が付いてしまったのだ。

「私達『銀のカスタネット』が、初めて深き緑の森を横断した冒険者パーティーになる!」と、

 目を輝かして宣言したのである。

 サクラ姫の性質って、そもそもがお転婆姫なんだよね。
 子供の頃、人を駄目にする枕が欲しいが為に、スライムを殺しまくって、スライムの生き〆殺しをマスターしちゃうくらいのお転婆姫。

 興味を持っちゃうと、イノシシのように猪突猛進してしまう性質なのである。

 まあ、サクラ姫って、なんやかんや俺達『銀のカスタネット』のメンバーの中で一番地位が高いのだ。
 だって、マール王国のお姫様なんだから。
 姫が行きたいと言えば、俺達はお供しない訳にはいかないんだよね。

 てな訳で、俺達『銀のカスタネット』の馬車は、深き緑の森の前に来ている。

「本当に行くのか?」

 馬の手網を持つ俺が、隣に座ってるサクラ姫に念押しする?

「絶対に行きますわ! そして、私達『銀のカスタネット』が、初めて深き緑の森を横断した冒険者パーティーになりますの!」

 サクラ姫は、凛とした態度で答える。
 もう、完全にヤリ手お姫様モードだ。
 このモードのサクラ姫は、もう目の前に立ち塞がる高き山の山頂に立つ自分の姿しか想像してないのである。

 こんなサクラ姫に、何を言っても、今更何も耳に入らない。
 子供時代に、スライムを殺しまくり、スライムの生き〆殺しをマスターしてしまったサクラ姫を止める事など、誰にもできないのである。
 子供時代と言っても、まだまだ子供なのだけど。

「まあ、言ってもいいんじゃないかな?別に死ぬ訳じゃないし」

 何故か馬車の上に座ってるアマンダさんも、話に入ってくる。

 深き緑の森に入って戻って来ない人達って、死んでるんじゃないかと思うのだけど……
 まあ、俺達って、ナナミさんが作ったどこでも扉を持ってるから最悪、どこでも扉で帰ってこれちゃうのだけどね。

 そう思うと、少しは気が楽になってきた。危なくなったら、扉を開けて帰ればいいだけだしね。

「じゃあ、行くか!」

「『銀のカスタネット』の新たな伝説の始まりですわ!」

「だね!」

 やはりサクラ姫は、深き緑の森の横断を成し遂げた未来の自分しか見てなかった。
 何故解るかというと、どこか遠くを見つめて感動してたから。
 どう考えても、未来の自分を想像してるでしょ。

 深き緑の森は、高い木が空を覆い、昼だというのに薄暗く霧が立ち込めている。空が見えないので、太陽の位置が確認出来なく、自分達がどの方角を向かっているのか分からない。
 しかし、馬車が通る道があるので、その道を順調に進んでたのだが、暫く進んでいると、察知能力が異常に高いアマンダさんとサクラ姫が反応する。

「敵が居る!」

「ですね! 木の上に弓矢を持ったエルフがいます!」

 俺には全く見えないのだが、アマンダさんとサクラ姫には見えてるようである。

「どうする?」

「ここは、私に任せて下さい!」

 サクラ姫は、そう言うと馬車を止めさせ、大声で話し出す。

「私は、マール王国第2王女サクラ・フォン・マール!申し訳ないとは思いましたけど、深き緑の森を横断させて頂きますわ!」

 サクラ姫は、木の上で弓矢を向けているエルフ達に向けて宣言する。
 確かに、これは効果があるかもしれない。
 ただの冒険者とかだったら、エルフに捕えられて終わりと思うけど、サクラ姫は、一応、ある程度の大国のお姫様なのだ。
 下手に手を出したら、国際問題に発展する可能性もあるのである。

「人族の姫が、何故、深き緑の森を横断する!
 森を迂回すれば、良いだけだろうが!」

 エルフが、律儀に返事を返してきた。
 確かにその通り。俺達が迂回してれば良いだけだよね。

「私達は、地上に降り立った女神様に一刻も速く、お目通りしなくてはならないのです!」

 一刻も速くって、俺達、そもそも急いでないし。
 しかも、女神様が、堕女神してしまったのも、昨日も夜遅くまで何か作っていて、今も馬車の中で寝てるナナミさんのせいなのだけど。

「そのような理由か……」

 エルフ達は、女神の名を出されて少し困ってるようだ。
 だって、この世界で一番信じられてるアニエス教の女神様だもんね。
 しかも、本当に居るか解らなかった女神様なのに、堕女神してしまって、存在が確認されちゃったから。
 流石のエルフ族も、本物の女神様の名前を出されたら、どうして良いのが分からなくなってしまったのだろう。

 流石は、策士サクラ姫。
 こういう細かい悪知恵を働かせるのは、本当に得意である。

 まあ、王の仕事って、もっともな事を言って人々を扇動して惹き付ける事だから、王としての資質を物凄く持ってるとも言えるけど。

「悪いですけど、押し通ります!私達は、一刻も速く、女神様の元に行かなくてはならないので!」

 サクラ姫が合図したので、俺は馬車を進めてしまう。

「ちよっと、待って下さいませ!」

 こうなると、立場が逆転してしまって、エルフ達が慌てて、木の上から降りて来て、俺達の馬車を止める。

「私達は、女神様をお待ちさせる訳には行かないのです!」

 もう、サクラ姫は、女神様の名前を使ってゴリ押し。
 まだ、地上に顕現されたばかりで、エルフ族も女神に対する対応の仕方が全く決まってない所を突いたサクラ姫のファインプレイ。

 勿論、エルフ族が信じる神は女神様ではないのだけど、実在する神を蔑ろにする訳にはいかないもんね。
 一応、女神様は、この世界の最高神とされてる訳で、流石に、偏屈で排他的なエルフ族でも、最高神を無視する訳には行かないのである。

「本当に待って下さいませ! 直ちに、王にどうすれば良いのか確認を取りますので!」

「ならば、直ぐに私達をエルフ王の元に案内なさい!」

「そ……それは……」

「女神様は、この世界の最高神であらせられるのですよ!
 少し考えれば解る筈です! 誰がこの世界で、一番尊いお方なのか!」

 やはり、サクラ姫に口喧嘩をやらせたら強い。
 だけれども、その尊いお方を、堕女神させた張本人は、馬車でグースカ寝てるのだけどね……

 まあ、ナナミさんが起きてたら、また違う感じで深き緑の森も破壊されてしまった可能性があるから、ここはサクラ姫に任せておくのが正解なのだろう。

 サクラ姫が深き緑の森を回避してれば、こんな問題が起きなかったのも確かなのだけど。

 兎に角、ここはサクラ姫に任せる事にしたのだ。
 俺は、サクラ姫の護衛騎士として、自分のやるべき事をするだけ。
 だって、こんな状況では、サクラ姫を護衛する事ぐらいしか出来ないもんね。

 ーーー

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