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178. 魔王の回想(2)
しおりを挟むそして、魔王はミカーワの街に着くと、最初に、リーナ・カスタネットとトト・カスタネットの評判を街の人々に聞き回ったのだが、2人の評判は、ミカーワの街ですこぶる良い。
リーナは可愛いし、愛想も良く、ミカーワの街の色々な問題を解決して、今や大人気であるようなのだ。
可愛いと枕言葉が付くのは疑問だが、それはいつも兄のトト・カスタネットが、『うちの可愛いリーナをお願いします』と、ミカーワの街の人達に、頭を下げまくってるのが原因らしい。
どんだけ妹バカ……
そして、リーナカスタネットは、冒険者としての腕も確かのようで、ミカーワに溜まってたプラチナクエストも、次々にこなしていってるとか。
そして、問題の『銀のカスタネット』団長のトト・カスタネットなのだが、どうやらこの街では、腕相撲がとんでもなく弱い兄ちゃんで、通ってるようであった。
まあ、魔王軍の諜報部の話でも、トト・カスタネットは腕相撲好きと情報が入ってきていたのだが、その情報の資料よりも、トト・カスタネットは、ミカーワの街で腕相撲を負けまくってるとか。
考えてみれば、魔族は人族より、腕力も魔力も相当高い種族なのだが、それにしても負けっぷりが異常なのである。
特に、貧しい子供の孤児の子供にばかり負け続け、お金を巻き上げられているとか。
なので、トト・カスタネットは、いつでもミカーワの孤児達に追い掛けられ、違う意味で大人気になってるらしい。
これは間違いなく、トト・カスタネットは、人道的観念(魔王領では魔道的観念)で、孤児達に腕相撲を負けてやって、お金を恵んでやってると思われる。
そんな事もあり、ミカーワの街でカスタネット兄妹の話をどれだけ聞いても、2人の事を悪く言う者は1人も居ない。
1人ぐらい、悪口を言う者が居ても良いと思うのだが、本当に1人も居ないのは不思議な所。
(トト・カスタネットは、リーナが気持ち良くミカーワの街で冒険者稼業が出来るようにと、リーナを嫌いそうな不穏分子に関しては、重点的に腕相撲をして金をばら蒔いている)
そして、実際に、リーナ・カスタネットとトト・カスタネットを、その目で見ようと、2人が居ると思われる冒険者ギルドに行ったのだが、その2人は諜報部の報告通り、人族の筈なのに、本当に魔族になっていたのであった。
魔王が持っている異世界召喚特典である鑑定スキルで見ても、リーナ・カスタネットと、トト・カスタネットは、正真正銘の魔族と表示されているのだ。
こんな事など、有る事なのか?
2人は、人族と思われていたが、本当は魔族だったのか?
確かに、トト・カスタネットの母親である常闇の魔女は、昔、魔族領に住んでた事があったと聞いた事があるが……謎のベールに包まれてた常闇の魔女は、実は魔族だったという事なのか?
しかし、トト・カスタネットとリーナ・カスタネットは、母親が違う筈?
謎だけが膨らむ……
そんな訳で、魔族領で何をしたいのか2人の魂胆が解らない魔王は、暫く、2人の事を監視する事にしたのである。
そして、暫く2人に付き纏って監視した結論。
トト・カスタネットが、重度のシスコンという事が解ったのである。
魔族に化けてる意味は全く解らないが、たまたまミカーワ冒険者ギルドで、リーナ・カスタネットが、ミカーワ冒険者所属のプラチナ冒険者になってしまった事が、そもそもの原因らしい。
そして、リーナ・カスタネットが冒険者稼業にのめり込んでしまった為、トト・カスタネットは、妹リーナ・カスタネットの為に、ミカーワの街に居着いてしまったというのが事の真相だ。
暫く、リーナ・カスタネットと、トト・カスタネットと一緒に行動して解った事は、この2人は、良く言うと真面目。
のめり込むと、一生懸命、どこまでも頑張ってしまう性格であるようなのだ。
なので、皆が嫌がるドブさらいのようなキツく臭いクエストでも、全く手を抜かないのである。ミカーワの街の隅から隅までのドブを清掃して行き、その仕事に一切の妥協が無い。
しかも、2人はドブさらい素人である筈なのに、プロ級の腕前でしかも早くて仕事も丁寧。
ヘドロだらけのドブ川が、トト・カスタネットとリーナ・カスタネットが過ぎ去った後は、あら不思議、水面輝く、小鳥が舞い降りる小川になってしまうのだ。
しかも、綺麗な清流にしか居ない種類の魚が泳いでるし……
そんな事を繰り返してたら、そりゃあ、ミカーワの街で人気爆発してしまうのも頷ける。
どんなキツイクエストでも、一生懸命こなしていくのだから、2人を見ていると、魔族領で何か企んでいとは、到底思えない。
ただ単に、ミカーワ冒険者ギルド所属の唯一のプラチナ冒険者としての職務を、一生懸命こなす妹と、それを陰ながら応援じゃなくて、なりふり構わず、全力で手伝う兄の絵にしか見えないのだから。
それにしても、何でまた魔族領の、これまた辺境の街のミカーワの街で、リーナ・カスタネットは冒険者になったのだろう?
魔王は、ただただ首を傾げるのだった。
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