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92. くノ一
しおりを挟む「ワッハッハ!
この『犬の尻尾秘密基地』は最高ですな!
風呂に入るだけなのに、1人づつメイドがついて、体を洗ってくれたり、体を拭いてくれたり、服まで着せてもらえるなんて、いたせりつくせりですな!
ここを経験したら、モフウフの牛魔王様の城では暮らせませぬな!
ワッハッハッハッハッ!」
牛田さんが大食堂に向かう傍ら、上機嫌に俺に話しかけてくる。
何故、大食堂に向かっているかというと、既に俺達の為の料理の準備が整えられていて、皆が待っているとロリメイド長のメリルから伝えられたからだ。
「この扉の奥が大食堂です。
1度に300人が食事を摂る事ができます」
ロリメイド長のメリルが、チョットしたウンチクを教えてくれながら、扉を開けてくれる。
扉を開けると、まるでハリーポッ〇ーに出てくるような荘厳な造りの大食堂が、ドン! と、目の前に広がった。
1番奥には長机が置かれていて、数々の煌びやかな料理が所狭しと並んでいる。
鉄板なども置かれていて、その場で肉を焼いたりもしている。
「ビッフェ形式なのか?」
「そうです。この『犬の尻尾秘密基地』では現在500人程の人々が働いております。
ここで働いている者達は、誰でも好きな時に、好きなだけ、好きな分量、無料で食事を摂る事ができます。
サンアリ様が揃えて下さった一流シェフが、常時100種類以上の料理を準備しておりますので、決して飽きる事などはございません!」
「す……凄いな……
それに、いつのまに人が増えてる気がする……」
大食堂の広さ、煌びやかな料理に感動してると、1番奥の席に座っている一団の中の、一際大きな角が生えている大男が、牛田さんに向かってドスのきいた声で呼びかけてきた。
「オイ! 牛田!
全部聞こえていたぞ!
そんなに俺様の城が気に食わないか!
そんなに気に食わないのなら、俺様の城には、牛田は一生出入り禁止だ!
荷物は今日中に纏めておいてやるから、早急に出ていけ!」
牛田さんの額から、滝のような汗が溢れだす。
「牛魔王様、じょ……冗談ですよ!
牛魔王様の城が1番に決まってるじゃないですか!」
「牛田殿、それは聞き捨てなりやせんな。
私とドン様が設計した『犬の尻尾秘密基地』が、気に食わないという事ですかな?
ドン様は、この世界一の建築家であり、武器職人であり、芸術家でもあるのですよ。
世界に名高いフレシア王国の王宮も、ドン様の設計なのです!
そのドン様が設計した、まだ未完成ではありますが『犬の尻尾秘密基地』を、牛田殿は牛魔王様の城より下と言われるのですか?」
牛田さんの額からは、普通の滝を通り越して、ナイアガラの滝のような汗がボタボタと流れ落ちている。
「牛さん! ゴキ男爵!
牛田さんをいじめちゃ駄目なのです!
あまりいじめると、私が2人をキツいお仕置きをしますよ!」
牛魔王とゴキ男爵の顔が、みるみる青くなり、ガクガク震えだす。
余程のトラウマがあるのだろう。
「ガ…ガブリエル様! お許し下さい!」
「ひ……姫様! 申し訳ございません!」
牛魔王とゴキ男爵は、頭を地面に擦り付けて、必死に姫に命乞いするように、謝り続ける。
「解ればいいのです!」
姫が、土下座をしている牛魔王とゴキ男爵、牛田さんに近づいて行き、頭をナデナデする。
大の大人の男が、3歳の幼女に頭をナデナデされている様子は、傍から見るとシュールだ。
「オイ、ゴキ男爵!
俺達は、そこの席に座ればいいのか?」
その席には、牛魔王の他に、ドワーフの爺さん3人、サンアリも座っていた。
「ハッ!! そうです!
こちらの席でお願い致します!」
ゴキ男爵は我に返り、すぐさま上座の椅子を後ろに引いた。
俺はゴキ男爵が引いた椅子の前に立ち、座ると同時に、ゴキ男爵はなれた手つきで、椅子を俺のお尻の位置にピタリと合わせる。
俺以外の他のメンバーも、給仕のメイドが椅子を引き、皆を座らせていく。
「で、今日はいったい、どういった集まりなんだ?
俺は、全く聞いていなかったのだが?」
「ハッ! ギルドランキング3位の『シルバーウルフ』と事を構える事になりそうと思いましたので、急遽、ゴトウ族主要メンバーを集めた次第でございます」
ゴキ男爵が直立不動で返答する。
「まあ……確かにこのままでは終わりそうにないな……」
「ゴトウ様、その女性が新しく配下にしたという『シルバーウルフ』の剣王バハオウですか?
女性の剣王はブリトニーさん以外はいない筈ですが?」
サンアリが怪訝な顔をしながら、バハオウを観察し続けている。
「彼女が剣王バハオウで間違いない!
数時間前まで確かに男だった。
ブリトニーが編み出した必殺技『チンコスライス』によって、チンコを100枚にスライスされて女になってしまったのだ」
ブリトニーの所業を聞いた、サンアリや牛魔王、ドワーフ爺さん達は、顔を引き攣らせながら息子を押さえ、ブルルッ! ど身震いしている。
「ゴトウ様、『シルバーウルフ』と事を構えるのは必須と考えて間違いないですな。
忽然と『ホワイトウルフ』のメンバーが消えたのです。
S級ダンジョンで、剣王バハオウが助っ人に入っていたのに、魔物に殺られるとは考えられません。
当然、『ホワイトウルフ』と同じダンジョンを攻略し続けている『犬の尻尾』が怪しまれる事になります。
どうせ疑われるのなら、バハオウを『シルバーウルフ』に帰して、『ホワイトウルフ』から、ちょっかいを出して返り討ちにあったという証人がいた方が良いのではと思われます」
「サンアリ、何故、証人がいた方がいいんだ?」
「『シルバーウルフ』は腐ってもギルドランキング3位の大手ギルドです。
冒険者ギルドの緊急会議を開く権限を持っています。
『犬の尻尾』が『ホワイトウルフ』の冒険者を皆殺しにしたので、『犬の尻尾』を潰すクエストをかけると『シルバーウルフ』が主張した場合、緊急会議に参加した3分の1のギルドが賛成すれば、そのクエストは遂行されます。
しかし、『ホワイトウルフ』が先にちょっかい出して返り討ちにあったというなら話は別です。
どこのギルドも相手にしないでしょう。
『シルバーウルフ』は甘い言葉で新米冒険者を勧誘しては、新米冒険者にギルドポイントの無理なノルマを課して、ギルドポイントを荒稼ぎする行為をひたすら繰り返しています。
それにより、たくさんの新米冒険者が、志半ばでダンジョンの藻屑となっていきます。
なので、他の主要ギルドは『シルバーウルフ』を良く思ってはいません。
バハオウを『シルバーウルフ』に返して、事の次第を説明させれば、『シルバーウルフ』もおいそれとは大義名分がないので『犬の尻尾』に報復はできないでしょう。
それでも、もし、『シルバーウルフ』が『犬の尻尾』に報復を仕掛けるというなら、『シルバーウルフ』の中にスパイがいた方が『犬の尻尾』にとって有利です。
相手の先手がとれますからね!」
「そうか……
大変な事になりそうだな……
しかし、バハオウをスパイとして、『シルバーウルフ』に帰す事には賛成できない。
バハオウが、もし『シルバーウルフ』を裏切っているとバレたらバハオウが殺されてしまう。
俺は仲間を死地に送り込む事などできない」
「あの……私、『シルバーウルフ』に戻ります。
そして、『ホワイトウルフ』が先に『犬の尻尾』に手を出して、返り討ちにあったと説明します。
それでも、『シルバーウルフ』が『犬の尻尾』に報復するというなら『犬の尻尾』の為にスパイをします」
「バハオウ、本当にいいのか?」
「ハイ。その代わり、事の顛末が決定し、全ての決着がついたら、私を貴方の性奴隷にしてくれますか?」
「せ……性奴隷……
も……勿論だ! お前を俺の性奴隷にしてやる」
今この瞬間。くの一、バハオウが誕生した。
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