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105. 疾風のイナズマ種田
しおりを挟む「あの~、ガリクソンさん。
多分、あなた達の実力では、僕達には勝てないと思いますので、降参して欲しいのですが」
アンちゃんが、『シルバーウルフ』の攻撃魔法を受けきり、モフウフの街中の歓声が収まりかけたのを見計らって、ガリクソンに提案した。
「笑わすな! 我らは『シルバーウルフ』ギルドランキング2位の大手ギルドだぞ!
それが、地方の田舎魔王などに負ける訳ないだろ!」
『シルバーウルフ』副団長、剣帝ガリクソンは鼻で笑う。
「仕方がないです。
それでは『シルバーウルフ』の皆さんを皆殺しにしないといけなくなるので、できれば代表者を出し合って、1体1の勝負で、5回勝負で戦いませんか?」
「ふん! 悪くないな!
こちらとしても、大手ギルドの関係上、強さにバラツキがある。
これ以上、無駄な血を流すのは得策ではないからな、よって、その勝負、受けてやる!」
以外にも、ガリクソンが乗ってきた。
「オイ! アン嬢ちゃん、何勝手な事やってるんだ!
アイツら全員皆殺しにすればいいだけだろ!」
牛魔王が、納得いかないとアンちゃんに食ってかかる。
「余り、鬼畜なイメージを『犬の尻尾』に付けるのは、得策ではありません。
姫ちゃんの漆黒の森奪回の為には、漆黒の森の民衆に良いイメージを持って貰わないとなりませんから!」
「クッ! ガブリエル様の為か……
それを言われたら、俺様としては引くしかない。
大ボスとガブリエル様に忠誠を誓った身だ。
そしたら その代表戦、俺を大将にしてくれ!」
牛魔王は、姫の名前を出されて、仕方がなく引いたが、5回勝負の大将に名乗りでた。
「それは問題ないですよ!
元々、牛魔王さんに大将をやってもらおうと思ってましたから!」
「小姉御! 俺達も代表戦に出さして下さい! まだ何もしてなくて、体がうずうずしてるんです!」
ヤナトとスイセイが、ここぞとばかり立候補する。
「私も出たいです! ヤナトとスイセイにだけいい格好させません!」
クリスティーヌも立候補した。
「待て待て、ここはワシの出番だろ!
この牛魔王軍、騎士団長の牛田様を差し置いて誰が『シルバーウルフ』と戦うというのだ!」
「待って下さい! 牛田さん!
私も勿論出ますよ!」
牛神さんまでも立候補した。
「お前は僧侶だろ?
回復魔法でどうやって敵を倒すんだ?」
牛田さんが、最もな事を言う。
「大丈夫です! ケルベロス教の僧侶は格闘術も嗜《たしな》みます!
牛魔王様の元では、攻撃担当の者がたくさんおりましたので、格闘術を誰にも見せた事はありませんが、そこそこ自信がありますので!」
何故か、牛神さんまで参加したいと名乗り出た。
「牛神さんまで出たら、私が出れなくなるじゃない!
5人しか出れないんだから、ヤナトかスイセイのどちらか一人辞退してもらって、アンさんと牛魔王様と牛田さんと私で決定でいいんじゃない?」
クリスティーヌが、自分の都合の良いように仕切り出す。
「あの……僕は出ませんので……」
アンちゃんは申し訳なさそうに辞退する。
「小姉御! 出場しないんですか?
小姉御が出れば、1勝は確実だったのに!」
ヤナトが残念そうに、肩を落とす。
「そしたら後1人抜ければ、代表決定だな。
お前ら、俺が大将なのは決まっているのだから、後はとっとと決めろ!」
牛魔王は、アンちゃんに大将を指名されているので、他のメンバーを決める事には興味が無いようだ。
「私は絶対にイヤよ!」
クリスティーヌが牽制する。
「『シルバーウルフ』は、牛魔王様の城に攻めて来ておるのだ!
それなのに、牛魔王軍、騎士団長の俺が出ないのは、体裁が悪いだろう!」
牛田さんも、額に汗をかきながら必死でアピールする。
「やはり、イケメンの僕が出ないと、数字が稼げないだろ!」
イケメン剣士スイセイが、歯をキラリと輝かせながら訳の分からない事を言い出した。
「分かりました! 1チームだけ、2人1組でいいか、『シルバーウルフ』さんに交渉して見ましょう!」
アンちゃんが、日和見主義の適当な打開策を出した。
「そんな都合の良い事、認めてくれるのでしょうか?」
牛神さんが心配そうに、ぼそりと独り言を言ったが、以外にも、あっさりと『シルバーウルフ』からOKを貰えた。
『シルバーウルフ』も、出場メンバーを誰にするかで、揉めてたのかもしれない。
結局、協議の結果、クリスティーヌと牛神さんがパーティーを組む事になって丸く収まった。
『犬の尻尾』の先鋒は、ヤナト、次鋒は、クリスティーヌと牛神さん、中堅スイセイ、副将 牛田さん、大将 牛魔王に決まった。
『シルバーウルフ』の先鋒は旋風のイナズマ 種田、次峰 大賢者サナル、大剣豪ナナイ、中堅 魔剣士アマゼウス、副将 獣王クマオ、大将 剣帝ガリクソン。
「選手が両チームとも決まったようですので、第1回戦を始めたいと思います!
戦闘場所は、モフウフの街の王城がある4分の1の区画で行ってもらいます!
メリルさんに【上級結界】を張ってもらいますので、思う存分に戦って下さい!
勝敗は、相手を殺すか、参ったするかです。
再起不能で参った言えない場合は、味方が白旗をあげれば、そこで負けを認めます。
審判は、僭越ながらアン·ゴトウ·ドラクエルが、厳正に、父の名に誓って行います!
何か質問は御座いますか?」
「何もない! 勇者パーティー副団長ドラクエル殿の娘が、父の名に誓うと言っているのだ!
それに、意義を唱える事など騎士として出来ようか!」
剣帝、黒騎士ガリクソンが、異議無しと返答した。
「それでは、先鋒『カワウソの牙』団長獣戦士ヤナトさん、『シルバーウルフ』旋風のイナズマ種田さん前に出てきて下さい!」
「小姉御! 見ていて下さいね!
ブリトニー姉御に修行をつけてもらった成果を見せてやりますぜ!」
ヤナトは、拳と拳をぶつけて気合いを入れる。
「ヤナト?聞いた事もないな……
フッフッフッフッフ、二つ名持ちの俺にかなうと思っているのか?」
旋風のイナズマ種田さんが鼻で笑いながら、何か言っている。
「フンッ! そんなのやって見ないと分からないだろ!
俺達は、毎日、お前らの常識では考えられないような恐ろしい、恐ろしい、恐ろ……恐……恐………カチカチ……カチカチ……」
ヤナトは突然、ガクガク震えだし、オシッコを漏らしてしまった。
「ちょっと! ヤナト君、どうしちゃったの!」
アンちゃんが慌ててヤナトに往復ビンタする。
「ハッ! 余りに恐ろしい、ブリトニーの姉御の修行を思い出し、我を忘れチビってしまいました」
旋風イナズマ種田さんは、いきなり震え出し、オシッコを突然漏らしたヤナトに、思いっきりドン引きしている。
「ヤナト君、落ち着いた?」
「ハイ! もう大丈夫です!
いつでも、試合を始めてもらってOKですぜ!」
「そう……それでは第1回戦を始めたいと思います。 5回勝負、第1回戦、始め!!」
始めがかかった瞬間、疾風のイナズマ種田さんが、先手をかける。
目にも留まらない速さで、ヤナトの間合いに入り、逆手に持った短刀をヤナトの首筋を狙って斬りつける。
「もらった!」
種田さんは、ヤナトの首筋を切り裂いた……
筈だが、手応えがまるで無い。
ヤナトは1歩だけ下がって、薄皮一枚触るか触らないかのギリギリの所で避けた。
「クッ! 避けられたか!」
疾風のイナズマ種田さんは、続けざまに攻撃を連続で続ける。
スッ! スッ! スッ!
全ての攻撃を薄皮一枚、ギリギリ触るか触らない所でヤナトは避けきる。
「あのぉ……『疾風のイナズマ』の二つ名を お持ちの種田さん。
このスピードが、もしかして限界のスピードなのか?」
ヤナトは、不思議な顔をして種田さんに質問した。
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