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150. 原田 大吉
しおりを挟むハラ·キリに案内してもらい、そのまま宿屋を出て、そのままハロハロの王城に到着した。
「ご食事の用意ができておりますので、そこで城主が、ゴトウ様とガブリエル様をお待ちしております」
ハラ·キリに城を案内されながら歩いていると、大きなテーブルがある部屋が見えてきた。
その部屋の前に身なりの良いお爺さんが、俺達を見つけて深々と頭を下げている。
「ダイキチ! 久しぶりじゃな!」
姫が頭を下げているお爺さんに、元漆黒の森の配下だった者にだけに使う喋り方で、話しかけた。
「姫様! お久しぶりでございまする!
ご無事で何よりでございまする!
爺は心配で心配で、眠れない日々が続きましたぞ!」
どうやら、姫と、このダイキチという日本人のような名前の爺さんは知り合いのようだ。
「ダイキチ! こちらにおられる方が、我が主ゴトウ·サイト様じゃ!」
姫が俺を紹介をすると、ダイキチ爺さんは、俺にも深々と頭を下げ、「私はハロハロの城主を努めさせてもらっております、ハラダ·ダイキチでございます。
ゴトウ殿、姫様をお助け下さり誠に有難うございます」
ハラダ·ダイキチ?
日本人の名前なのではないのか?
そういえば、ハラ·キリも爺さんも着物に似た服装を着ている気がする。
「もしかして原田大吉さんは日本人ではないのか?」
俺は疑問を直球で質問してみた。
「はて、日本人?何の事ですかな?」
爺さんは、日本人を本当に知らなそうな顔をしている
「日本人ではないのか?その原田という苗字は、日本の苗字だと思ったのだが?」
「確かに、祖先はこの世界の住人ではなかったとの言い伝えはありますが、もう何千年も前の話になります故、私には日本人と言われてもピンッと、きません。
確か、ハラダ家の始祖様由来の家宝がありますが、見てみますかな?」
大吉爺さんが、そう言うとハラ·キリがすぐに何かを持ってやってきた。
何かの布に巻かれた棒状の物を、ハラ·キリは大吉爺さんに渡す。
大吉爺さんは、丁寧に布から中の物体を取り出す。
「ん?! それは日本刀じゃないのか?
間違いないぞ!
それは日本刀だ!
大吉爺さんの祖先は、多分、俺と同じ場所の出身のようだぞ!」
「そうでございましたか。私の祖先とゴトウ殿が同じ出身でございましたか。
そしたら、このニホントウを手に取ってご覧になりますか?」
大吉爺さんに日本刀を渡され、鞘からスゥーと、剣を抜いてみる。
んっ! 銘が彫ってある。
『正宗』確か鎌倉時代の刀だった筈だ。
俺でも知っている有名な刀鍛冶だ。
何やら、刀身から魔法的な何かを感じる。
「これは『正宗』と彫ってありますね!
日本でもかなり有名な鍛冶師が打った刀ですよ。
それからこの刀には、何か魔法的な何かを感じますが、これは一体何ですか?」
「おぉー!! その字が読めるのですか!
そうです。
その刀は確かに『マサムネ』です!
元々は、ただ良く斬れるだけの刀だったらしいのですが、何千年も祖先達が代々使っていくうちに、魔法剣になったと言われています!」
「サイト君、その刀はとても有名な刀だよ!
刀としては、エクスカリバーの次くらいに有名な刀で、『マサムネに斬れぬ物無し』と言われる位、凄い神級アーキテクチャーなんだよ!
しかも、ダイキチさんは現在は現役を退いているけど、元『剣神』だよ!
30年前は、間違いなく最強の一角に入っていた人物だよ!」
この優しそうな爺さんが、そんなに大物だったの……
しかし、気になる事がある。
今の所、【聖級結界】を斬れるのはスキルスッポンソードとエクスカリバーだけと言われていたが、この『正宗』でも斬れるんじゃないのか?
なにせ『マサムネに斬れぬ物無し』と言われてたんだろ。
とても気になる……
「大吉さん、斬ってもらいたい物があるんだが、お願いできるか?」
俺はそう言うとと1メーター四方の【聖級結界】を張った。
「構いませんよ。この結界を斬れば宜しいですかな?」
大吉爺さんは、『正宗』を受け取り、上段に構えた。
大吉爺さんの身体から膨大な闘気が溢れ出す。
大吉爺さんの眼がピカッ!! と、光る。
「チェッスト!!」
スドドドドォォォォォォォォォン!!
部屋中に凄まじい轟音が響きわたる。
「一刀両断!! ジゲン流に斬れぬ物無し!!」
大吉爺さんの決めゼリフが決まる。
【聖級結界】を見ると、真っ2つに両断されていた。
まさかの示現流。
原田大吉の祖先は、薩摩藩士か。
示現流は一撃必殺の剣術。
正に、【聖級結界】を力業で破壊したという事か。
「痛たたたたた……!
久しぶりに、本気を出したら腰にきたようですじゃ!」
姫がすぐに、大吉爺さんに回復魔法をかける。
「おぉぉー! 姫様、魔法が使えるようになりましたか!
腰の痛みが、一瞬でどこかに行ってしまったようですじゃ!
腰以外の色んな所も、ついでに治ってしまったみたいですじゃ!
10歳以上、若返ったみたいに調子が良くなった気がしますじゃ!」
大吉爺さんが腕をグルグル回して、全開をアピールする。
「マスターに、魔法を使えるようにしてもらったのです!」
姫が嬉しそうに返答する。
「流石は、始まりの魔女様のお弟子様じゃ! ゴトウ殿、本当に姫様に魔法まで教えて頂き有難うございまする!」
大吉爺さんが、再び俺に対して深々と頭を下げる。
剣神にまでなった人物に、これ程深々と頭を下げられると、お尻がムズムズする。
しかし、悪い気はしない。
姫が珍しく懐いているのも分かる気がした。
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