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220. お食事券贈呈
しおりを挟む「確かに、シャンティーさんが言うように、誰もが無意識にやっている普通の事ですね。
うちの姫でさえ、いつも無意識にやってる事ですし……
と言うか、姫の方が、もっと残酷ですね。
何せ、押し潰して殺す。
生き返らす。
それを、ひたすら繰り返し繰り返し、忠誠を誓うまで永遠に続けますからね。
しかし、その人がゴトウ族になった瞬間、慈愛に満ちた天使の微笑みで、その人に手を差し伸べるのです。
誰もが、色んな液体を大量に流しながら、姫を崇拝するようになります」
「そうでしょ! そんなもんでしょ!
私は普通の事をしているだけだし、何も悪い事などしてないわ!」
シャンティーさんが、再び、俺の顔の前まで飛んで来て、ふんぞり返る。
「しかし、洗脳の件と、シャンティーさんが嘘をついてる事は全く別の話です!
嘘は、絶対にダメです!
アナタは、宝箱を開けるのに利用する為に、『三日月旅団』を仲間に引き入れたのです!
決して、『三日月旅団』が、レイドに参加できずに、可哀想だと思って手を差し伸ばした訳では有りません!!」
「ウッ……」
ドヤ顔で、俺の目の前をフワフワ浮いていたシャンティーさんが、少し仰け反った。
俺はこのまま、シャンティーさんを畳み掛ける。
「シャンティーさん、『犬の肉球』は、5S未攻略ダンジョンを攻略できるだけの実力を持っていながら、実際、単独では攻略した事が有りませんね。
確か、『鷹の爪』との共同で、一度だけ攻略していた筈です。
お宝大好き、お金大好きのシャンティーさんが、単独で攻略できる未攻略ダンジョンを、わざわざ分け前が減る、他のギルドと共同して攻略するなんて、そもそも有り得ない話なのです!」
「……」
シャンティーさんは押し黙っている。
「シャンティーさん達は、モフウフのゴキ男爵に管理された5Sダンジョンでも余裕そうだったのに、他の5S未攻略ダンジョンで、苦戦するなんて考えられません。
完全に、自分達だけでは5S未攻略ダンジョンを攻略できない理由があったのです!
それは間違いなく、死の魔法を使う宝箱で間違いありませんね!
『犬の肉球』が前回、5Sダンジョンを共同で攻略した時は、『鷹の爪』を利用して宝箱を開けさせ、今回は、より自分の言う事を聞くであろう、まだ5S未攻略ダンジョンの攻略には早そうだった『三日月旅団』に目をつけたのです。
その為には、5S未攻略ダンジョンを攻略できるだけの実力を身につける修行と、死ぬ事の練習をしておかなければなりません。
この世界の住民達は、死になれていません。
その為、修行と銘打って、より環境の整ったモフウフのダンジョンで、1度目は魔物の大軍に、2度目はブリトニーに殺される経験を『三日月旅団』にさせる事により、死ぬ事に耐性をつけさせたのです!」
「シャンティーの姉御は、そこ迄考えて行動してたのね!
流石は、『腹黒』の二つ名を持つだけの事はあるのニャ!
冒険者達に、決して敵に回してはいけない要注意人物、10年連続第1位は伊達ではないのニャ!」
ブリトニーは、何故だか、シャンティーさんにとても感心している。
「それがどうしたと言うの?
『三日月旅団』には、5S未攻略ダンジョンを、単独攻略できる程の実力まで引き上げてあげたし問題ないじゃない!
『三日月旅団』が、私の為に宝箱を開けるのは、私の弟子として当然の事よ!
そうでしょ! ミカサ! ララ! モモ! ザーマン! シルマン!」
「「「ハイ! 師匠!!」」」
『三日月旅団』のメンバー達は、直立不動で返事をした。
「そういう事だから! 今日は疲れたし、たくさん稼いだから、ムササビの超高級三つ星ホテルのスウィートルームに泊まろうかしらね!
行くわよ! エリス!
アッ! それから『三日月旅団』はここで解散ね!
シロー! 明日の集合時間は何時かしら?」
「AM8:00でございます」
「それじゃあ、『三日月旅団』は、明日のAM8:00、5分前にここに集合ね!」
「「「ハイ! 行ってらっしゃいませ!師匠!」」」
「みんなぁ! バイバイ!
『鷹の爪』のみんなは、明日は遅れたらダメだからねぇ!」
エリスさんとシャンティーさんは、まるで何事も無かったような感じで、『三日月旅団』を残して、移転装置に消えて行った。
「ミカサさん達は、これで良かったのか?」
「問題ないです! 私達に実力が無かった事は事実ですし、実際にシャンティーさんの修行のお陰で、今まで超えられなかった壁を乗り越える事にも成功し、かなり強くなる事ができましたから!
それに、シャンティーさんが、腹黒な事は、元々、冒険者の中では有名な話ですし、覚悟の上で弟子になったのです!
お金は殆ど踏んだくられますが、私達の目標は、超一流の有名な冒険者になる事ですので、その為の投資と思えば安い物です!」
「……」
本人達が良いと言ってるなら、それで良いのだろう。
いつも思うのだが、超一流で有名な冒険者になりたければ、指輪を外せば すぐにでもなれると思うのだが……
敢えて、縛りを設けているのかもしれないし、別に俺達には、そんなに関係ない事か……
シャンティーさんが『三日月旅団』に洗脳を仕掛けているのに気付いたのも、元々は、エリスさんに近づく為、邪魔くさかったシャンティーさんを観察してたら偶然気付いた事だし、今回、シャンティーさんを追求してみたのも、話の流れが謎解きっぽくなってきたので、思わずノリでやってみただけだ。
シンタローさんなどは最初から、シャンティーさんが『三日月旅団』をレイドに引き入れたのは、宝箱の為だと、最初から分かっていた節さえあるしな……
「それで『三日月旅団』は、今夜どうするんだ?」
俺は、シャンティーさんとエリスさんに置いていかれた『三日月旅団』に、何となく聞いてみた。
「私達は、今回のレイドの為に買った神級装備の借金、3億マーブルの今月分の支払い金額を貯めなくてならなく、お金に全く余裕がないので、今日はこのダンジョンで野宿しようかと思っています!」
ミカサは、まるで何事でもない普通な事かのように、元気に答えた。
「これ、良かったらあげるよ」
俺は思わず可哀想になり、新規オープン予定の『ミノ一番』ムササビ店の宣伝の為に配るようにと、サンアリから100枚程度渡されていた 1枚5000マーブル分のお食事券を、『三日月旅団』の人数分の5枚、ミカサに渡したのだった。
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