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第二章 ハウエバー系 第901辺境惑星 編
20. イベント
しおりを挟む次の日、早速、動きがあった。
エリスが、カレンに、帰らず森に狩りに行こうと誘ったのだ。
エリスが人を誘うというシュチュエーションは、本来、絶対に有り得ないのだが、エリスは生みの親であるサヤの命令には、何故か絶対に従う性質なのである。
まだ、サヤが生みの親だと知らない宇宙船からナノマシンを通して、直接頭に命令を下してる時でさえも、しっかり命令に従って、俺に会いに来たしね。
でもって、そんな有り得ない事態に、カレンは興奮気味。絶対に誘われる事のない憧れの人に誘われた訳だから無理もない。二つ返事で、帰らずの森への狩りをOKしたのである。
基本、カレンは強い者が大好きで、それも自分が一番尊敬する元S級冒険者パーティー『熊の鉄槌』の氷の微笑エリスを誘いを断る事など、到底できないのだ。
そして、エリスは、カレンだけを誘ったと思わせて、実は、俺やサヤを連れて来ちゃう流れ。
まあ、俺は一応、エリスの孫だから、付いて来る場合もあるよね。
カレンは、集合場所に俺が居る事を発見すると、まるで醜悪なゴブリンでも見るような残念そうな顔したが、俺の隣のエリスの顔見ると、すぐにニコニコ顔になりご機嫌になる。
多分だが、カレンにとって、強ければ男でも女でもどうでも良さそうだ。
強いエリスは大好きで、弱い俺はゴブリン以下という事なのだろう。ある意味分かり易い性格である。
カレンに認めてもらう為には、俺が強い男だと分からせれば良いだけだから。
そして、帰らずの森に、カレンの護衛が何人も付いて来ると、エリスが護衛まで護らないといけない羽目になり、カレンを守りきれなくるという理由で、カレンの護衛には作戦通り帰ってもらった。
そして、いつものように帰らずの森に入ったけど、解るよね。
「エリス様、もう、相当奥に来てますけど、大丈夫なんですか?」
流石の怖いもの無しの狂犬カレンでも、どうやら不安になって来たようだ。
だってもう、俺達が居る場所って、他の冒険者なんか1人も居ない奥地だからね。
「ん?帰らずの森は、私の実家で庭のようなもの。だから、何も問題ない!」
ビュン!
エリスは、いつものように弓矢を打って、走って狩った獲物を回収に行くのだ。
そのスピードが、とんでもなく速く、俺とカレンは必死に、置いていかれないように着いて行かないといけない。
エリスから少しでも離れちゃうと、危険な魔物が襲ってくるからね。
そこで、事件というか、イベントが起きたのである。
そう、どう考えても、人の手で作ったであろう落とし穴に、見事、カレンがハマったのである。
この落とし穴は、昨日、サヤとエリスがイベントの為にと、夜なべして作ったものらしい。
しかし、先を行くエリスは全く気付いていない。
というか、気付いてるのに、気付いてないフリをして、走り去って見えなくなってしまった。
そしてここで、わざとらしくサヤが台詞を言うのだ。
「ああ! なんて事でしょう! カレンさんが落とし穴に落ちたのを気付かずに、エリス様が先に行ってしまわれましたわ! ああ、ご主人様どうしましょう! こんな帰らずの森の奥地に、S級冒険者がおりませんと、私達など魔物の餌になってしまいますわ!」
何故に、演劇風……
どう考えても、下手くそ過ぎる三文芝居だが、俺も計画通りに乗っかる。
「兎に角、カレンさんを助けよう!」
落とし穴の中を見ると、カレンが唇を噛み締めて、泣きそうな顔をしてる。そして、落とし穴から助けようと手を差し出したら、
「足が折れてるみたい……」
カレンは、とても悔しそうな顔をして、俺に訴えてきた。
まあ、あれだけのスピードで走ってたのだ。その勢いで、落とし穴に落ちたら足も折れるというもの。
まあ、ポーション飲めば治るし、ここは恩を売る所である。
「そしたら、ゆっくり俺が抱き上げるから、足に力を入れないようにして」
「解った」
今日のカレンは、とても従順。
まあ、生まれて初めて、危険と言われる帰らずの森の深層に来て、そして頼みの綱のエリスも、先に行ってどこにも居なくなってるし、それから足まで骨折してしまっているのだ。
そして、一緒に居るのが、自分より弱いと思ってる俺とじゃ、そりゃあ不安になるよね。
「ちょっと待ってて!」
俺は、落ちてた枝を拾い、カレンの足を無理矢理伸ばして真っ直ぐにして、添え木をする。
カレンの足を無理矢理ひっぱった時、顔を引き攣らせていたが、カレンは我慢して、叫び声の1つも出さなかった。
「私が、アンタを必ず守るから」
カレンは、俺の事を、自分より弱いと思ってるからか、剣を杖代わりにして、迷わずエリスを追わずに、帰らずの森から出る選択をする。
カレンは、以外と冷静だ。
というか、野性的で勘が鋭い女なので、出来るだけ生存できる方法を、直感的に導き出したのかもしれない。
そうこうしてると、俺達を囲うように帰らずの森の凶悪な魔物が群がってくる。
カレンは、足を引きずりながらも、剣を握る。
「ウラァァァーー! コッチに来い! 私が相手になってやる!」
カレンは、躊躇なく大声を出して、魔物の意識を自分に向けるようにする。
どうやら、カレンは俺が思ってたような嫌な女では無かったようである。
ただ、弱い男が嫌いなだけで、弱いものを躊躇なく助けようとする、正義感に溢れた強い女の子なのだ。
そして、足が折れてるというのに、必死に俺を守ろうと、自分にヘイトが向くように、大声を発しながら無我夢中で戦い続けている。
だけれども、足が自由に動かないのは相当辛い。
カレンは、同年代の者相手なら、多分、最強だろう。下手するとまだ11歳なのに、A級冒険者ぐらいの実力を持ってるかもしれない。
それほど強いのだが、如何せん、足が自由に動かないとカレンの強さは半減してしまうのだ。
カレンの剣は、天性の才能もあるのだが、それと同時にスピードとパワーで成り立ってる。
そのスピードが、足が折れてる事にによって、全く使えていないのだ。
そして、とうとう、カレンは足の痛みに耐えかねて、動きが乱れてしまう。
「クッ!」
帰らずの森の深層の魔物は、カレンが体制を崩したのを見逃さない。
「マスター!」
サヤが、ここぞとばかり合図する。
「ああ。解ってる!」
俺は、サヤに返事を返す前に、既に弓矢を放っている。
ヒュン! ヒュン! ヒュン!ヒュン!
俺は、その場にいた魔物大群を全て、一瞬に瞬殺してやったのだ。
そう、俺は、この辺りの魔物など、もう1年ぐらい前から余裕で倒せる実力を持っていたのである。
まあ、カレンを見てたら、想像以上に強く、きっと足が折れてなかったら、俺と同様、この程度の魔物など余裕で倒してたと思うけど。
本当に、カレンの足がたまたま折れたのは、俺にとって不幸中の幸いだったのだ。
「アンタ……強かったんなら、早く助けなさいよ……」
カレンが、俺の事を、キッと!と、睨みつけながら文句を言ってくる。
やはり、狂犬カレン……弱ってても怖い。というか、イベントこなしても、何も変わってないし……
「ですが、カレンさんが私に任せろ!と、言ってたもんで……」
俺は、作戦失敗してしまったんだと思い、取り敢えず、言い訳する。
というか、今迄、サヤが考えたイベント、ことごとく失敗してるような……
「バカ!私より強かったんなら、遠慮なんて要らなわよ!
強いのは正義なんだから、アンタは私より正義なの!」
「ご主人様、ツンデレですよ」
すかさず、サヤが指摘する。というか、サヤの作戦、実は効果があったようだ。
「ああ。本物、初めてみた」
「何よ!ツンデレって、早く私をお姫様抱っこしなさい!
私は、足が痛いのよ!」
「いや……お姫様抱っこしたら、両腕が塞がって、戦闘できなくなるんですけど?」
「敵が出て来たら、そん時は、下ろせば良いだけでしょ!
だから、すぐに私をお姫様抱っこして、帰らずの森から脱出するのよ!」
「そんな無茶な……」
「ご主人様! これがツンデレなんですよ!強がってるけど、強いご主人様に甘えたいんですよ!」
もう、サヤは鼻高々。自分が考えたイベントが上手くいったと、クルクル飛び回って有頂天。
「護衛騎士、魔物が来たわよ!」
「承知!!」
どうやら、俺は、カレンに護衛騎士と認められたようであった。
そして、俺はカレンをお姫様抱っこして、帰らずの森を脱出する羽目になったのである。
まあ、俺はカレンの騎士様だから、姫を抱っこするのは、役得だよね。
カレンは、凶暴じゃなければ、普通に可愛いし。
だけれども、サヤがGPSで、敵の位置を把握してるから、敵に突然襲われる心配は無いのだけど、敵が出て来る度に、カレンを優しく降ろし、敵と戦うのは本当骨が折れた。カレンの足の骨が、折れてるだけにね。
もう、本当に、宇宙船ジョークを、思わず口走ってしまいそうになるほど大変だったのである。
その代わり、次の日から、カレンに認められたのか、毎日に話し掛けられるようになって、ちょっと嬉しい。
とは言っても、修行に付き合わされてるだけなのだけど。
「ヨツバ! どこに居るの! 今日も私の修行に付き合いなさい!そして、私の方が強いという事を、ボコボコにして分からせてあげるんだから!」
まあ、こんな風にね。
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