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第二章 ハウエバー系 第901辺境惑星 編
37. カレンVSカイ
しおりを挟む「フンッ! カイとの試合? 少しは、私を楽しめさせてよね!」
カレンは、いつものように上から目線で、カイを睨みつけている。
「兄貴に鍛えられた実力を、今日こそ見せてやる!」
なんか知らんが、カイは俺に鍛えられてる設定のようだ。
まあ、いつも一緒に修行はしてたけど、それはカレンも一緒だから、カレンにも鍛えて貰ってると思うんだけど、カイ的には、どうやら、カレンとの修行の日々の記憶は無かった事になってるようである。
まあ、基本カイは、カレンとの修行中、速攻で気を失って、朦朧としたまま剣を打ち合ってるからね……
気を失いながら打ち合ってるって、相当な根性だけど、記憶自体は全く無かったようであった。
「アンタ、何言ってんの? アホなの?アンタをギタンギタンに鍛えてるのは、どう考えても私でしょ!」
そう、実際、カイを鍛えてるのは、殆どカレン。
俺は、カレンとの修行で傷ついたカイに、ポーション掛けて癒してやってるだけ。
だけれども、最後に目覚めた時に、いつも目の前に居るのは俺だから、俺がカイを鍛えて、尚且つ、癒してくれる聖人か何かと勘違いしてるようである。
何故なら、カイの俺に対する尊敬は、最早、天まで達してるからね……
何をするにも、兄貴! 兄貴! って、付き纏って来るし……
ある意味、勘違いでここまで、俺の事を尊敬できるって、凄い才能だと思う。
基本、イーグル辺境伯の血筋の人って、女も男も強い奴に、スグ惚れちゃうんだよね。それがどうやら男同士でも良かったみたい。
俺って、結構強いから、カイも俺に惚れちゃたんだと思う。しかも、いつも修行の後、ポーション癒してくれる凄く優しい人にもなってるので、カイの俺に対する評価は爆上がりして、多分、天にも登る勢いなのだろう。
「ご主人様。多分、カイ君が女の子だったら、直ぐにお股開いて、ご主人様に迫ってくると思いますよ。
ご主人様の強い遺伝子が欲しい!てっ言って! イーグル辺境伯家の血筋は、そういう血筋ですからね!」
サヤが、嬉しそうに話し掛けてくる。
「お前、言い方悪いぞ! というか、確かにカイが女なら、俺は多分、逃れられんな……アイツ、トイレの時まで俺に付いてくるし……」
「ですね。前も、ご主人様と一緒に寝ようと、宿屋のご主人様のベッドの中に潜り込んで来てましたもんね!」
「お前、嬉しそうだな……」
「ただ、BL展開も、面白そうだな!と、思ってるだけですよ」
「俺に、そんな趣味はねーよ!」
そんな、いつものしょうもない話をしていたら、カレンとカイの準決勝が始まった。
だけど、解ってたんだけど、いつもの展開。
数秒間だけカイも善戦したんだけど、カレンがスピードを上げると、直ぐに手も足も出なくなって、防戦一方となり、ボコボコにされて、気を失って、それでもカレンは手を緩めず、
「アンタ、ちょっと最近、生意気なのよ!」
とか、言って、いつもの数倍ボコボコにしてるし。
多分だが、カイが、自分ではなく俺に鍛えられていると言った事が、相当、悔しかったようである。
基本、カレンはプライドの塊だから、褒めて貰いたのだ。
試合最初の場面で、カイが、『カレンさん! 今日は、カレンさんに鍛えられた力を、存分に発揮します!』とか、なんとか言っていれば、今日のこの惨状は起きなかっただろう。
「ああーームカつく!! カイも、ヨツバも!」
て、俺も?!
「ハハハハハ。ご主人様、カレンさんに焼き餅焼かれてますね!」
「焼き餅って、カイが、ただ、俺を慕ってるだけだろ!」
「まあ、それだけでは無いと思いますけど……」
俺的には、男に好かれても全く嬉しくない。それで、何故に俺が、カレンに焼き餅焼かれるのだ?カレンは、実は、カイの事好きだったとか?
「それだけではないって、一体、他に何があるんだよ?」
「まあ、気付いてないならいいですよ。ご主人様は、どうやら勘違い系のフラグもゲットしちゃったみたいですね!」
「勘違いって、カイとカレンが、俺の事を勘違いしてるだけだろ!」
「ですね~」
なんか、サヤは含みを持たせる言い方をして、嬉しそうだ。
ていうか、サヤは、この世界で、俺に何をさせたいんだよ……
多分、辺境惑星観察宇宙船のサヤは、マスターである俺に寄り添うように作られてるから、俺の悪いようにはしないと思うけど……
だけど、サヤは、最新鋭自立AIって言っても、暴走気味なんだよね。
俺の為なら、グレイ帝国法を、余裕で破っちゃうような奴だし……
まあ、そんなこと気にしててもしょうがないか。
俺は、この世界を楽しもうと決めてるのである。
グレイ帝国に捕まったら、真っ白な独房で、終身刑が決定してるしね……
とか、妄想に浸ってると、
「キャァーー! もう、止めてあげて!!」
「これ、ちょっと、不味いんだろ!?」
俺は、会場中に響く悲鳴声で我に返る。
「ああ。カレンの奴、やっちまってるよ……」
「今日は、ちょっと機嫌が悪いですね」
サヤも、いつもの事ながら呆れてる。
「審判の人が止めに入ってるけど、あの人じゃ、カレンを止めるの無理だろ……」
「ご主人様、止めなくていいんですか?」
「いつもの事だろ? 機嫌の悪いカレンを止めるの大変なんだぞ!
それに、カイなら大丈夫だろ? 打たれ強さだけなら、俺やカレンより、相当上だからな!」
「まあ、それもそうですね。いつもの事でした。イーグル辺境伯も、なんか嬉しそうにカレンさんの応援してますし……」
「本当にやべーよな……イーグル辺境伯の血筋の人達って……
多分、この状況を止めれるのって、イーグル辺境伯か、妹のビクトリアさんか、グリズリー公爵ぐらいだろ?
それなのに、イーグル辺境伯は、カレンの応援。グリズリー公爵とビクトリアさんは、家族会議で我関せず。なんで、こんなヤバい状況で、家族会議続けられるんだよ?」
「まあ、ビクトリアさんもイーグル辺境伯家の血筋ですからね。その子供も孫も、みんなイーグル辺境伯の血筋だから、このくらいの事は、日常茶飯事なんじゃないですか?」
「だとしてもだって。あの人達以外は、みんな引いてるんだから」
「ご主人様と、カトリーヌさんとの試合も、みんな引いてましたよ!」
サヤは、サラッと、俺も同類のような事を言う。
「だって、しょうがないだろ! 俺はイーグル辺境伯の血筋のカトリーヌと戦ってたんだぞ! 手を抜くなんて、そもそも無理だろ!」
「参ったって言っても、聞いてくれませんしね!」
「そもそも、カイの場合、既に気絶してるから参ったも言えないだろ?!」
「確かに」
「でも、この状況どうなるんだ? これ、終わんないだろ?」
俺も、なんかちょっとだけ不安になって来た。
「やっぱり、ご主人様が止めます?」
「いやいやいや、俺が試合止めたら、カレンにブチ切れられるし、そして、俺も大会失格になっちゃうんじゃないか?
俺、やっと『恋愛イチャイチャキングダム』の舞台である、カララム王国学園の入学権利を手に入れたんだぜ!」
「じゃあ、どうなるんでしょう?」
「さあ……」
そんな、俺とサヤの心配をよそに、自体は突然動く。
「やめいーー!!」
なんか、偉そうな王冠とマントを羽織ったオッサンが、カレンとカイの間に割って入ったのだ。
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