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第一章 ヨナン・グラスホッパー編
136. ハツカの回想
しおりを挟む私は今、何故か懐かしい匂いがする同じ歳ぐらいの少年の肩に、ココノエ様と一緒に乗せられて、空を飛んでいる。
本当に、何が起こってるのだろう。
たまに、大きな声で独り言をいう少年。
多分、神と交信してるのかもしれない。
ココノエ様に至っては、完全に、この少年のことを神と疑っていないようだし。
だけれども、ハツカには、どうしてもこの黒髪の少年の事を神だとは思えないのである。
懐かしく優しい、何か。
記憶を無くす前に感じた事のある、温かくて、心が休まる何かなのである。
まあ、それが何なのか、どうしても思い出せないのだけど。
ーーー
そして、そのまま少年にカララム王都まで連れて来られると、話がポンポン進む。
いつの間にか、話が全て纏まってたように。
全てが、少年の思い通りに進んでるみたいに。
少年は、カララム王と対等に話し、次々に話を纏めていく。
そして、少年を助けるように、綺麗な金髪碧眼の女の人が、アシストしていくのだ。
その金髪碧眼の女の人は、少年のお母さんらしいが、全くもって似てなかったりする。だって、お母さん似だったら、もっと格好良い筈だから。
だけれども、ハツカは、今のそれほど格好良くなく、ほどほどの顔の少年の方が好きだったりするのは内緒の話である。
そしてどうやら、ココノエ様は、カララム王国の人質になってしまうらしい。
普通は、王子や王女とかが、戦争責任として人質に取られる事が多いという話なのだが、ココノエ様は、そもそもアンガス教の巫女姫で、結婚もしてないし、子供が1人も居ないのだ。
だから、自分が奴隷商人から救って来た子供達を、まるで自分の子供のように育ててたのである。
そんな経緯もあり、ココノエ様が、カララム王国の人質になる事が決定して、アンガス神聖国が、ココノエ様を取り戻そうと、またまた戦争が起きるかもと思ったが、そうはならないようであった。
そう。黒髪の少年のアンガス山脈を割るという奇跡を、その目で見た10万の兵士が、そもそも戦意喪失してしまっているのだ。
それに、アンガス神聖国からも、目に見えて、アンガス山脈が半分の高さになってしまってるのが見えているし。
そんな事を、簡単にしてしまえる化物?神?が居るカララム王国に、誰が逆らおうというのか?
そもそもが、信心深い宗教国家なので、黒髪の少年を神と崇める新宗教まで起こってるとか。
まあ、自由平等を謳うだけで何もしてくれない神より、力があって、慈悲深い、身近な神を求めてしまうのが人間というものかもしれない。
だって、結局、アンガス神聖国は戦争を起こしたというのに、神(ヨナン)の一言で、ココノエ様を人質に取っただけで、実質、賠償も何もないのだから。
しかも、戦場での、ココノエ様と私の心温まるやり取りを見て、感動し、全てを許してしまう優しい神様だと、アンガス神聖国の兵士達は目撃し、その事を、国に戻ってから人々に伝えたりしてるので、ますます、新宗教の信者が増えてたりしてるそうだ。
そして、私事なのだが、どうやらココノエ様と一緒に、ココノエ様のお付きの者として、カララム王国学園に入学しないといけなくなるらしい。
神に屈服したココノエ様なのだが、それでもその力は巨大なのだ。
その力を抑えつけていられるのは、神であるヨナン・グラスホッパー伯爵しか居ないという事で、ココノエ様は60歳だというのに、この春、カララム王国学園のコナン・グラスホッパー様が居る2年生のクラスに編入する事となったのだ。
そして私は、何故か1年生に編入する事になっている。
普通、ココノエ様のお付なので、2年生に編入しなければならないと思うのだが、私の年齢的に、絶対に1年生だからと押し切られてしまった。
何で、私の年齢が分かるのだろう。自分の年齢も名前も覚えてないというのに。不思議だ。
だって、昔、鑑定スキル持ちに調べてもらった時も、名前も年齢も結局、分からなかったのに。
多分、神であるヨナン・グラスホッパー様には、分かるのだろう。神の力は人智を越えるというし。実際、人智を越える力を持ってるし。
そして、春になるまでは、神であるヨナン・グラスホッパー伯爵様のカララム王都の御屋敷に、ココノエ様と、私は住まわせて貰える事となったのだ。
「ココノエ様。本当に、私はこの家に住んでいいのでしょうか!」
私は、物凄い御屋敷に恐縮しまくる。
だって、御屋敷自体が、何故か観光地になってるみたいで、ひっきりなしに見に来てる人が居るし……
そして、豪華な殿様バッタの模様が彫り込まれたアイアンの門が開くと、
「「お帰りなさいませ! お嬢様方!」」
と、何故か、ココノエ様と私は歓迎されてしまったのだ。
お嬢様?私が?本物のお姫様であるココノエ様なら分かるが、私は、元奴隷だというのに、背中がむず痒過ぎる。
でもって、御屋敷に入れば、まさに居たせり尽くせり。どう考えても他国の人質への対応ではない。
案内された私の部屋だという部屋も、豪華過ぎるし、何故か、私の体型にあったオシャレな洋服が、ずらっと、クローゼットに最初から用意されてるし。
一体、何千の洋服があるのだろう……1年365日なので、普通に計算しても、全ての洋服が着れない計算になるのは、気のせいだろうか?
それに、何故か、執事やメイドの対応も、ココノエ様より、私への対応の方が良いように思えるし。
それが、本当に気になって、執事長のセバスチャンさんに聞いてみたら、いつの間にか私は、この御屋敷の主人である、ヨナン・グラスホッパー様の養子になってたようで、名前も、苗字持ちのハツカ・ナナ・グラスホッパーになったとか。
本当に、何が何だか分からない。普通、私の了承も取らずに、養子にするものなのか?
ココノエ様に文句を言ってみたら、元敵国の人間である私が、学園に入って虐められないようにする為の、ヨナン・グラスホッパー様の気遣いだと聞いて、少し怒ってしまっていた自分を、恥じてしまった。
本当に、なんと気遣いできる人なのだろう。
人としても尊敬出来る人なのだが、何故か、懐かしい気持ちがする、優しい人。
ヨナン・グラスホッパー様は、カララム王国学園の寮ぐらしという事で、カララム王都に来てから一度も会えて居ないのだが、もし、もう一度会えたら、必ず御礼を言おう。
「こんな、元奴隷である私を、気遣ってくれてありがとうございます!」と、
そして、ヨナン様に対して、何故か懐かしい気持ちがするので、「もしかしたら、私が記憶が無くなる前に、どこかで会った事がありますか?」とも、聞いてみるのだ。
それを、ハツカ・ナナ・グラスホッパーと生まれ変わった、最初のミッションとするのだ。
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