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第一章 ヨナン・グラスホッパー編
142. 稲荷神社
しおりを挟む『結局、ご主人様は、女神ナルナー様の為に、神社を建てちゃうんですね!』
鑑定スキルが、からかうように言ってくる。
「ちげーよ! ついでだよ。ついで!
エリザベスが、東ナルナー街道以外にも、ナルナー神宮に通じる街道作ってとリクエストしてただろ?
だから、街道を整備するついでに、ナルナー神社も建ててやってるだけだよ!」
そう、俺は、現在、街道を整備しつつカナワン城塞都市の近くに、ナルナー神社を建てているのだ。まあ、ナルナー神社建てるのに15分間も掛からないので、片手間なんだけど。
今日までには、イーグル辺境伯領まで行く予定になっている。
最近気付いた事なのだが、普通に荷馬車で進むより、大工道具を持ち、作業しながら進む方が5倍速で進む事に気付いてしまったのだ。
しかも、全く疲れないし……まるで、ヤバい薬でもやってるかと、勘違いしてしまう程だし。
兎にも角にも、大工スキルはヤバすぎるのである。
ーーー
ところ変わって、カララム王都のヨナンの御屋敷。
エリザベスが、ココノエを訪ねてヨナンの屋敷にやって来ていた。
「ココノエ様、実は御相談がありまして」
エリザベスは、早速、問題を切り出す。
「妾は、カララム王国の人質の身。そしてそなたは、妾の大恩人、神ヨナン様の母上様と聞く。妾が出来る範囲の事なら、なんでもやる所存である」
「ココノエ様なら、そう仰ってくれると思ってました!
それで、御相談なのですが、是非、ココノエ様には、稲荷神社の神様になって貰いたいのです!」
「はて?神?妾は、一応、人間なのじゃが?」
「ハイ!存じておりますが、今日を限りに現人神となって貰います!」
「流石に、妾とて、分をわきまえておる。勝手に神を名乗るような傲慢な性格はしておらぬ。しかも、妾はアンガス教の教皇で、巫女でもあるのじゃ。神ヨナン様の母上様の願いとて、聞き入れられぬ事もある。許してくれ」
ココノエは、エリザベスに向かって深く頭を下げる。
まあ、今日から神になれと言われても、普通の人間には、理解の範疇を越え過ぎてる為、断るのは当然の事だ。
だが、しかし、エリザベスは決して諦めない。
「仰る事はよく分かります。だけれども、アンガス教の教えにも有るじゃないですか?
世界から差別を無くすという教えが、なので、獣人であるココノエ様が現人神になり、人々を導けば、人々は獣人を差別しなくなると思うんです!」
「狐の獣人如きが、神などになれよう筈がないじゃろうて」
「大丈夫です! 異世界には、狐の神様を祀る宗教も有るのです!そして、その世界では狐を擬人化した、この世界でいう獣人を、モフモフで可愛いと愛でる風習があるのです!
とても愛くるしい姿をしたココノエ様が、現人神になり、稲荷神社を盛り上げてくれれば、きっと獣人が人気者になり、カララム王国も差別が無くなる国となると思うのです!」
エリザベスは、熱く語る。
まあ、完全に商売の為だけど。
だけど、エリザベスはヤル気だ。
鑑定スキルに、ナルナー神宮をどのようにプロジュースしていくか、勉強の為にと、たまたま日本の稲荷神社の映像を見せてもらって、これだと思ってしまったのだ。
だって、お稲荷さんって、商売の神様だから。
そして、お稲荷さんの参道は、大体、どこもお店やお土産屋が繁盛し、儲かってるのだ。
商売人が、お参りに来るから、お金を物凄く落として行くし。
そして、いなり寿司の発祥の地である豊川稲荷の門前町とかも、いなり寿司屋がたくさん並び、どこの店も儲かってそうだし、岐阜県にある千代保稲荷などは、毎日お祭り騒ぎで、参拝客が何十本も串カツを爆買いして食べてるし。
エリザベスは、そんな門前町を作って、一儲けしたいのである。
「しかしの~」
ココノエは渋っている。いくら差別の無くなる世界になるからと言われても、イザ、現人神になれと言われても、二の足を踏んでしまうのは当然の事。
しかも、差別されてる獣人を愛でる風習と言われでも、ピンと来ないのだ。
「もし、ヨナン君が、頼んだらやってくれますか?」
ここで、エリザベスは伝家の宝刀を躊躇なく出す。
押してダメなら引いてみろ精神で、とっとと問題を終わせちゃうのだ。
実を言うと、今日の予定は、これで終わりではないし、既に、時間が押してたりしてるのである。
「神ヨナン様の願いとあれば、妾には断る事は出来ぬな」
思った通り、ヨナンの名前を出したら、ココノエはあっさりとOKを出してくれた。
やはり、我が息子ながら、ヨナンのネームバリューは天をも登る勢いである。
「だったら、ヨナン君は、絶対にOKしてくれますので、今から、稲荷神社の総本山になる予定地を見に行きましょう!」
てな訳で、とっととエリザベスは話を進める。
母親でグラスホッパーグリズリー支店の店長であるビクトリアと、稲荷神宮の総本山建設予定地で待ち合わせしてるから。
でもって、エリザベスの母親のビクトリアまで話に加わると、そりゃあもう、物凄い。
イーグル辺境伯の血筋の女を2人も揃えたら、そりゃあとんでもない事となってしまうのだ。
あれよあれよと言う内に、計画はトントン拍子に進んで行き、神社の名前も、正式に九尾神宮と決まり、ヨナンがカララム王都に戻って来たら、すぐに工事が始まる事に決定した。
そして、そんな話を、ココノエの護衛として聞いてたハツカは、思わず、口に出してしまう。
「九尾神宮を建てるなら、私に手伝わして下さい!」と、
そう。ハツカは、どうしても自分に、何故か良くしてくれるヨナンに、恩返ししたかったのである。
だって、カララム王都のヨナンの御屋敷では、ハツカは、まるでどこかのお姫様のように扱われてるし、何故か、執事やメイド達も、元奴隷であった自分に、とても礼儀正しく、しかも心底心酔した様子で仕えてくれてるのである。
それも多分、ヨナンが、執事やメイドに命令した事だと思うが、それにしても凄過ぎる対応なのである。
朝起きると、勝手に着替えさせてくれるし、朝食も口まで食べ物を運んでくれるし、お風呂に入る時だって、メイドが5人掛りで自分を洗ってくれるのだ。
何故か、ココノエ様には、1人も付いてないのに……。
その理由を聞いても、ハツカ様は、ヨナン様の養子に入ってる子供であり、グラスホッパー伯爵家のお姫様であるので、当然の事と一点張り。
まあ、そんなに良くしてくれたヨナンに、何か御礼をしたいと思うようになるのは、自然の事。
そんな時に、ココノエ神宮建設の話を聞いたのだ。
土木スキルを持ってるハツカにとって、建築は、得意分野。しかも既に、アンガス城の立て替えとかも経験してるので、豪華で大きな建物の建築もお手のモノなのだ。
そして、そんな、ヨナンの替わりに九尾神宮の建設を手伝いたいというハツカの話を聞いて、エリザベスとビクトリアは、少しだけ相談する。
「お母さん?どうしよう?」
「ナナちゃんの土木スキルも、相当なものと聞くわよね。確か、アンガス山脈にトンネル開通させちゃったのよね?」
ビクトリアが、全ての事の成り行きを知るエリザベスに確認する。
「ナナちゃんの土木スキルの実力は、折り紙付きよ。
ヨナン君の大工スキルと比べちゃうと、どうしても劣っちゃうけど、もし、ヨナン君が居ないうちに、九尾神宮を建てていたら、ヨナン君、きっと、驚くんじゃない?
しかも、ナナちゃんが、ヨナン君に負担をかけさせない為に、自ら進んで建ててくれたと聞いたら、きっと号泣して喜んじゃうよね!」
エリザベスは、ヨナンが感動してる様子を想像して、ちょっとニヤケてしまう。
「エリザベス! この話に、絶対に乗るわよ!
ここは、ナナちゃんに、九尾神宮を建ててもらいましょ!
そして、ヨナン君を泣かせてしまいましょ!」
なんか、親子でピョンピョン跳ね、興奮してしまう。
まあ、現在、エリザベスもビクトリアも、レッドドラゴンの肉のお掛けで若返ってるので、若い女がキャッキャッしてるようにしか見えないけど。
因みに、ビクトリアはヨナンからレッドドラゴンの血まで貰って若返り、エリザベスと姉妹にしか見えなかったりする。
そして、ハツカ的には、何を、エリザベスとビクトリアがキャッキャッしながら話してるのか分からなかったが、2人が、九尾神宮をハツカに建てさせてくれるのをOKしてくれたのが、何よりも嬉しかったのである。
何故なら、これで大恩あるヨナン様の役立つ事が出来ると、
そして、もしかしたら、どこか懐かしい感じがするヨナン様に喜んで貰えるかもと、
ハツカは、ヨナンの事を考えるだけで、何故か幸せで、暖かい気持ちになるのは、誰にも内緒の話であった。
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