放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

文字の大きさ
12 / 135

011話

しおりを挟む
「うぇぇぁ……気持ち悪りぃ………」

オアシスから転移ワープした俺達はサガンの裏門前にいる。魔法とか使っても何にも感じなかったから普通に使ったけど、乗り物酔いをした気分になった。内臓が上下左右に動いてる様な感覚を受け、吐きそうだ。

「--『気分爽快リフレッシュ』。…アルス様、大丈夫ですか?」

チカが回復魔法をかけてくれると、瞬時に吐き気は治まった。どうやら、気持ち悪く感じたのは俺だけであり、チカ達はケロッとしている。

「…あ、ありがとう。助かったよ」

チカにお礼を言いながら水を取り出し一口飲む。もちろん、頭を撫でるのは忘れない。

「むーっ。あたしもジョブ変えとこうかな」
「チカばかりズルい」

後ろの方でローリィ達がヒソヒソと話していたが、俺には全く聞こえなかった。体調も良くなったし、さっさとサガンに入ろう。

門番にギルド証をドヤ顔で見せつけながら俺達は街に入り、ギルドへ直行する。なぜかやけに街の住民から視線を浴びるが、なんでだろう?

少し不快感を感じながら、ギルドへ入り受付へと進む。

「こんにちは!依頼終了したので、確認をお願いします」

「はい。…アルス様ですね。依頼は薬草採取との事でしたが品物はどこに?」

「あ、この中にあります」

収納袋を逆さまにし受付の机に出す。部屋の匂いが、一気に草の匂いへと変わる。

「こ、こんなにですか?…申し訳ありませんが、もう一度袋に入れ直して貰って、袋ごと預かってもいいでしょうか?」

「ああ、別にいいですよ?終わったら返してくださいね」

机の上に広がった薬草を収納袋に入れ、受付に渡す。

「検品後に依頼完了の登録をしますね。それまでお待ちください」

おねーさんが一礼をし、裏へと消えていく。俺達は酒場の机に座り、飲み物を頼む。お酒を飲みたいけど、とりあえずジュースにしとくか。

頼んだ飲み物が空になる頃、受付から呼び出される。

「アルス様ー!検品終わりましたのでこちらまでお願いします!」

「はーい!じゃ、行くか」

トコトコと受付に進み、無事に依頼が完了した事を告げられる。

「……では皆様方、ギルド証をお渡しください」

指輪を渡すと、何やら魔法陣が描かれた紙の上に置く。すると、魔法陣が淡く光り、すぐ消える。

「はい、これで皆様方のギルド証に『功績ポイント』が付与されました。次のランクアップまで残り480となっております。それと、こちらが今回の報酬になります」

おねーさんにギルド証と皮袋を貰う。少し重く感じるので、もしかしたら多いのかも!

「今回、稀少な薬草が非常に多く有りましたので、金額は1500Gとなっております」

……すげー。依頼の報酬自体が200Gだったから大量に採取したんだな。いやぁ、得したなぁ!

「ありがとうございます!それじゃ!」

「あ、お待ち下さい。ギルドマスターがお呼びです。執務室まで来るようにと」

「あ、はい。わかりました」

何故呼ばれたのかと疑問を持ちながら、俺達は執務室へと向かうのであった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「コンラッドさん、依頼を受けてくれる冒険者はいないのですか?」

執務室にコンラッドと小太りの男性が向かい合って話をしている。

「ポーロさん、まだ掲示してから1ヶ月しか経ってませんよ?それに、あの依頼は下手をすればCランクになるかもしれないから、時間がかかると言ったじゃないですか」

「それは十二分に承知しております。しかし、商人組合も、あのオアシスで野営出来ないとなると大変なのですよ」

「…せめてあと2ヶ月お待ちください。そうすれば…」

「2ヶ月ですって!?それは遅過ぎます!ただでさえ、サガンに来る商人の数も減ってきているのに…。……これ以上放置されるなら、サガンから撤退するしかありません!」

「それは困る!ここはポーロさん達、商人組合が来なければ物流が止まってしまう!」

「ですから、早急にとお願いしておるのです!…せめて、あと10日!それまでに依頼を受ける方が居なければ私達は撤退します!」

「……わかりました。最悪の場合、兵士団に依頼をしましょう。諸経費はこちらで持たせて頂きます」

「お願いしますね、コンラッドさん。こちらも足りない分は出させていただきますので…」

コンラッドは顔を手で覆う。高ランクの冒険者不足が完全に浮き彫りになったからだ。サガンにいる高ランク冒険者の数は3人。上からB+、B、Cの順だ。

しかし、運悪く高ランクの冒険者達は王都からの依頼で今はサガンに居ない。低ランク冒険者の育成が追いついてない状況が、更にコンラッドを悩ます。

その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。入るように声をかけると、見知った顔が覗かせる。

--そうだ、コイツらがいた。

コンラッドの悩みを解消出来るかもしれない人物の登場に、大喜びで声をかけるのであった。



♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

執務室の前に来ると、何やら話し声が聞こえる。内容は聞こえないが、争ってるような声だな。

入るかを迷っていたが、覚悟を決めドアをノックする。中からコンラッドの声が聞こえ、部屋へと入る。

「失礼します。コンラッドさん、何か用ですか?」

「おお!アルス殿!ちょうど良い時に来た!…ささ、とりあえず中へ入って腰掛けてくれ」

…殿?そんな呼び方してねーだろ。

とりあえず中へ入ると、ソファーに座っている人に目がいく。……あれ?どこかで見たような気がするな。

「おや?キミ達はオアシスであった子達じゃないかい?」

そうだ!オアシスで会ったおっちゃんじゃん!

「あ、こんにちは。昨日ぶりですね」

挨拶を交わしつつ、おっちゃんの横に座る。チカ達はソファーの後ろにある椅子に座っている。

すると、紅茶を入れながら、コンラッドが質問してくる。

「おや?アルス殿はポーロさんと知り合いなのかい?」

「知り合いっていうか…。オアシスに行った時に少し話しただけですね」

コンラッドが俺達に紅茶を渡すと、対面に座る。

「そうか、なら紹介しておこう。こちらの方はサガンの商人組合長、ポーロ殿だ。サガンの商品は殆どこの方が管理しているんだよ」

「え…、めちゃくちゃお偉いさんじゃないですか…。改めまして、アルスと言います。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いしますね、アルス殿。……話は変わるのですが、アルス殿達は昨日、オアシスに泊まったのですか?」

「ええ、依頼の薬草が朝方にしか生えないらしく、野営しましたよ」

「そうですか…。それならば、魔物は出て来ませんでしたか?」

「あー………砂漠の大蠍サンド スコーピオンでしたっけ?うじゃうじゃ居まし
「ほら!!コンラッドさん!もう住処になっているではないですか!!……やはり、今すぐにでも兵士団へ頼むべきです!」

「……そうか。もうそこまでなっているのか…」

なんだなんだ?2人して深刻な顔して。全然話についていけないんだけど…。

「……あのー、そいつらがどうしたんですか?」

「ああ、ポーロ殿は魔物の討伐依頼を出していてね。商人の休憩所でもあるオアシスが魔物の住処になってしまったらこのサガンから撤退すると仰るんだ」

「え?そうなんですか?」

「はい…。あそこは私達商人にとっての大事な休憩所なのです。魔物が占拠するとなると、移動が困難になりサガンに来れなくなってしまうのです」

ははーん…、なるほどなぁ。ポーロさんは中継地としてオアシスを利用してるのか。それで、魔物が出てしまって討伐依頼を出した。でも、それを受けてくれる冒険者が居ないからこの街から撤退するって事か。

「…なるほど。そういう事だったんですね」

重苦しい静寂が部屋を包み込む。……別に俺は日が浅いからこの街に愛着は無いし、他人事の様に感じるなー。

俺とチカ達が紅茶をすする音が響く中、コンラッドが俺を熱く見つめていることに気付いた。……何だよ、男はお断りだよ!

「時に相談なのだが…アルス殿。貴殿らにこの依頼を受理してもらいたいのだが?」

ぶっ!!いきなりだな、おいっ!!…別に構わないけど……って、アレ?

「アレっ?そう言えば俺達はその魔物-
「コンラッドさん!!アルス殿達はまだ駆け出しと聞きましたよ!?それなのに、あの依頼を受理させるというのですか!?……見損ないましたよ!!!」

…ちょいちょい俺の発言に被ってくるなぁ。ビックリするからやめて欲しいんだけど。

「あー…ポーロさん、実は-
「落ち着いてくださいポーロ殿!アルス達は普通の駆け出しとは違うのです!!」

お   前   も   か    。  俺に恨みでもあんのか?

「何が違うのと言うのですか!?私から見れば、オーラも感じられない、まだまだヒヨッコじゃないですか!!」

「確かに、ランクは駆け出しです!しかし、アルス達は砂漠大蜘蛛デザートスパイダーを5匹以上、討伐したのです!しかも一撃でですよ!?そんな強者に依頼をして何が悪いと言うのですか!?」

「はっ!笑わせてくれますね。駆け出しが砂漠大蜘蛛デザートスパイダーを討伐したですって!?そんなの信じられるわけないでしょう!?」

…はぁ、こりゃ長引きそうだな。いい加減、聞いとくの面倒になってきたし、そろそろ止めるか。

「俺はギルマスだぞ!?所属している全員の力ぐらい把握してるわ!!それで--
「はーい!!お二人共落ち着いてください!!!!」

机を強く叩き、大きな音を立て注目させる。鋭い目で睨んでくるが、とりあえず止める事は出来たな。

「えー……、まずですね、伝えないといけない事があります」

「……何でしょうか?」

おいおい、ポーロさん顔真っ赤っかだぞ?とりあえず、紅茶でも飲んで落ち着いて欲しいんだけど…。

「先ほど出た砂漠の大蠍サンド スコーピオンの件なんですが、多分もう大丈夫だと思います」

「「……………は???」」

だよねぇー。そういう反応になるよねー。

「昨日出た砂漠の大蠍サンド スコーピオンなら、全部討伐してます」

「…は?……え?なんて言いました?」

「ですから、昨日オアシスに出てきた魔物は俺達で討伐しました!」

「…し、証拠はあるのか?」

んもー!疑り深いなー。嘘言ってどーすんだよ!

「倒したヤツでいいならありますよ?見ます?」

2人が黙って頷くのを確認してから、リストから砂漠の大蠍サンド スコーピオンの尻尾を取り出す。流石に全部出すと、机に乗らないから5匹分くらいでいいかな。

「--はい。これが証拠になればいいですけど」

「「…………………………」」

呆然とした表情で2人とも尻尾を見つめている。…まぁ、今さっき切りました!って感じに生々しいから仕方ないよね。

「どうです?まだ必要なら、全部出しますけど?」

「い、いや、大丈夫。これだけで充分だ」

「ち、ちなみに…、何匹ぐらい倒したんですか?」

「んー……20匹ぐらいは倒したと思います」

俺の言葉にコンラッド達は顔を見合わせる。先ほどの表情とは違い、少し嬉しそうな表情をしている。

「んんっ!!……アルス、ちょっと席を外してくれないか?ポーロ殿と話があるのでな」

「えぇー?……わかりました。んじゃ、下にいるから呼んでくださいね」

「本当にすまん…」

「皆ー、下に降りるぞー!」

俺はチカ達を連れ、酒場へと降りていくのであった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...