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062話
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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
『Harem』って素敵な響きだよね。男なら誰だって一度は想像した事あると思うんだ。絶対に。
性格も見た目もスタイルも全然違う女性達の輪の中に男1人。そして、その女性達は全員男に好意を持ってる。それに、見た目は違えど共通しているのが、全員顔のレベルが高い。こんな展開はもはや男の浪漫だと思うんだ。
超巨大企業の1人娘、世界を股にかけるスーパーカリスマモデル姉妹。超名家の由緒正しきお嬢様に、交換留学で来た某国のお姫様。そして、譲れないのが幼馴染と何故か後半に出てくる許嫁。………そんな世界に転生してみてぇーなぁ。
最初は男が誰を選ぶか揉めに揉めるんだけど、最終的に重婚になるという王道ストーリー。その重婚もお姫様とお嬢様の力で法改正してしまうという安定の流れ!!
そのストーリーで必要な存在、腐れ縁でずーっと一緒の男友達。自分を犠牲にしてまでも主人公の事を心配してくれる名脇役!!
……ああ、浪漫だ。そんな世界に転生してぇ…。
「--いっ!おい!アルス!!聞いてるのか!?」
「アルス様??アルス様ぁー??」
「マスター?」
「ねぇねぇ、ご主人様ぁー?」
「…ソニア、ちょっとアルス様を叩いてよ」
「ビンタでいいかな?」
「ちょ、アルスさん!--アルスさんってば!!」
「……え?呼ん---ブヘッ!!」
衝撃を受けに現実に戻される。地面とキスをすると口一杯に砂の味が広がる。
「--何すんだっ!!」
「いや…お姉ちゃんが叩けって言ったから…」
「私が?……ニリキナが言ったんじゃないかしら?」
「俺言ってないですよ…」
「大丈夫ー?ご主人様ー?」
ローリィに手を引っ張られ立ち上がる。ジャリっとした食感が気持ち悪くそこら辺に唾を吐きちらす。
「--っぶぇっ!!べっべっ!!」
「うわっ!こっちに飛ばすな!!」
「はい、マスター。水」
ナナから水を受け取り方をすすぐ。お陰で口の中はさっぱりした。
「アルスさん、なんでボーッとしてたんすか?」
布切れを渡しながらニリキナが尋ねてくる。
「ん?…ああ、ちょっと理想と違ったっていうか…現実は残酷だなって…」
「? 何の話ですか?」
「何でもない、忘れてくれ」
俺達は今、オアシスに向かう途中休息を取っていた。俺が何でハーレムの事を考えていたのかと言うと、メンバーがまさにギャルゲーなメンバーだったからだ。
俺、チカ、ナナ、ローリィ、ミレーユ、ソニア、ニリキナだけでオアシスに向かう事になった。本来ならミレーユ達には近衛が付くはずなのだが、オアシスまでは脅威となる魔物も出てこないし、俺達が護衛するならと渋々だが承諾していた。
……それでいいのか?と思ったのだが、どうやらミレーユ達は『転移結晶』というアイテムを持っているらしく、危険と判断するとすぐさま王都へ戻れる手段を持っていた。その2人が持っているアイテムに興味が湧き色々質問をすると、この『転移結晶』はどうやらダンジョン深層部で見つかった貴重なアイテムらしい。ただ、使い捨てでは無く魔力を一晩貯めるだけで何度も使用出来るという素晴らしいアイテムとの事。
その話を聞き、ダンジョンというものに凄く興味を持った。ただ、一度攻略されると消えるとの事らしく何処に出現するかは謎との事だった。
あ、そうそう。ちなみにミレーユ達は馬を持って来ていない。なので、俺達と一緒に馬に乗っている。ゼロは俺が乗っておかないと拗ねるので、俺の後ろにニリキナ、チカとミレーユ、ローリィとソニアとなっている。
ナナには索敵や警戒をしてもらっているので、邪魔になるかも知れないと思ったからだ。……まぁ、一緒に乗っても会話が成立するかなぁ?と思ったのは内緒だ。
そして、休憩中にふと思ったのだ。男2人に対して女5人、これはまさにギャルゲーに近いシーンではないかと!
ミレーユとソニアは王女様だし、チカはエルフで性格も器量も良し。ナナは端的に話すが、実は甘えん坊だし。ローリィは人懐っこい性格で何と言っても爆乳。…ニリキナは……うん、良い子だ。
何と言っても全員顔が良い。前世だったら高嶺の花ってレベルでは無いくらいに。見る事すら畏れ多い存在だったであろう。
設定好きの俺としては申し分の無いシチュエーションなのだが、残念ながら現実はゲームでは無い。
チカ達は『忠誠心』を持ってるし、ミレーユ達に至ってはまだ会ってから日が浅い。……ニリキナは訓練とかでよく会ってたから親しい。ハーレムとは程遠い現実に、少し逃避をしていたのであった。
「ミレーユ様、お茶のお代わりはいかがですか?」
「もう、チカ!堅苦しい口調は辞めてってば!!私は皆と仲良くなりたいの!」
「しかし、ミレーユ様達は王族。立場が違い過ぎる」
「ナナ、今は誰もいない。気軽に話そうじゃないか」
フランクに話そうと努力しているミレーユ達を見ながら、ニリキナに尋ねる。
「…いいのか?ニリキナ」
「ミレーユ様達が良いって言うなら、良いんじゃないですかね?…まぁ、ダメと言いたいんですけど逆らえませんし」
「……しかし、何でまたこうなったんだろうな…」
「気に入ったからだと思いますよ?それに、女性と関わるのは滅多にない事ですし」
「王女だったらパーティーとかで交流あるだろ?」
「いや、『友達』って意味でです。ほら、立場的に同性の友達って中々出来ないんですよ。ミレーユ様達と話す方々は、殆どが貴族ですし…」
「……あー、本心から友達だと思える奴がいないって事?」
「まぁ概ねそうですね。『仲良くしていれば、こちら側に利益が出る』みたいな感じですね」
「うわー……王女ってのも大変なんだなぁ」
「ジパングの皇女様とは仲が良いですけど、遠すぎて頻繁に会えませんし」
「…だから仲良くなりたいのか…」
「チカさん達は、そんな思惑無さそうですしね」
ふと、チカ達に目を向けると仲良さそうに話している姿が映った。王女と知らなければ、美女達の女子会だと思うくらい、楽しそうに喋っていた。
「…しかし凄えなあ。こんな砂しかない場所でもあそこだけ喫茶店みたいな印象を受けるよ」
「喫茶店…ですか?何ですかそれ?」
「あー……お茶する店の事だ」
「へぇー。その喫茶店とやらはアルスさんの故郷にあったんですか?」
「ああ、沢山あったよ。……まぁ、あんまり行かなかったけど」
昔の記憶を思い出していると、声がかかる。
「おい!アルス達もこっちに来い!喋ろうではないか!」
「へーーい。ってか、そろそろ出発しねーと昼過ぎには着かねーぞ?」
「良いじゃないですか。私達にとってはアルス様方と仲良くなるのが最優先なのですから!」
「…それだとオアシスがおまけみたいな扱いじゃないか…」
「? ほら、早くこっちに来い!お前の話を色々と聞きたいんだ!」
結局、ソニアに強引に引っ張られ30分程度の休憩が、2時間弱に延長となったのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「………やっと着いた」
時刻は夕方、俺達は無事にオアシスへと辿り着いた。
「…ふむ、ラティの言っていた通りだな」
俺の後ろからソニアの声が聞こえる。
「言ってた通りって?」
ゼロから降りながらソニアに尋ねる。
「中継地点として重要な場所であると聞いていた。しかも、サガンはここから水を調達しているのだろう?ならば、街道を作った方が良いと思ってな」
ソニアもゼロから降りると、オアシス全体を見渡していた。
「アルスさん、ちょっとお話が…」
後ろからニリキナが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「ん?どうしたの?」
「それがですね…ちょっとこっちに来てください…」
ニリキナに連れられ、皆と少し離れた所に行く。
「…ミレーユ様がですね、今日は疲れたから此処で野営したいって言ってるんですよ…」
「…は?いやいやいや、それ無理だろ?」
「俺も駄目と言ったんですけど、聞いてくれないんですよ…。アルスさんからも言ってくれませんかね?」
「…まぁ、別に良いけど」
ニリキナと一緒にミレーユの元へ向かう。ちょっとだけご立腹なミレーユがそこに居た。
「あー…ミレーユ様?ニリキナから話聞いたんだけどさ…」
「……………」
話しかけるとミレーユは冷たい目で俺を睨む。
「野営したいって聞いたけど、流石に王女様方を危険な目に合わせられないからさ。俺が転移でサガンまで連れて帰るから、野営はやめにしないか?」
「………ま」
「へ?」
「…アルス様、私の事は何故呼び捨てで呼んで下さいませんの?」
「………は?」
「ソニアの事は呼び捨てにするのに、何故私の事は様付けなんでしょうか?」
「……いや、それは第1王女ですし…ソニアにはそう呼べって言われましたし…」
「なら、私の事も呼び捨てにして下さい!!」
「へ???……よく分かんないですけど、それでいいなら………」
俺が返事をすると、ミレーユは笑顔を浮かべた。
「では、アルス様。野営の事なんですけれども…」
「あ、様付けしないで良いよ。俺の事も呼び捨てで」
「で、では……ア、アルス。私、是非とも野営をしたいと思っているんです!」
「いや、さっきも言ったけど危険だからダメだって」
「ア、アルス達が護ってくれるでしょ?…お願いっ!!こんなチャンスは2度とないと思うの!!」
うるうると涙を浮かべながらミレーユは懇願する。美人に泣きつかれるとなると、正直揺らぐ。
「……ニリキナ、ちょっと俺には止められねーわ…」
「諦めるの早すぎますって……。頼みますから説得してくださいよ…」
「えぇ……。なんで俺なんだよ…。ミレーユ、何で野営したいの?」
「…そのぉ…本では読んだ事あるのですが、実際には体験した事なくて…」
「あー…興味があるってこと?」
「はい!!こんなチャンス2度とないと思うんです!!!!……近衛には帰ってから直接私から言いますから、お願いします!!」
「……ニリキナ、どーする??」
「…………はぁ、絶対に怒られる…。嫌だなぁ……」
ミレーユの顔を見てニリキナは悟ったようだ。そういや、ミレーユ達には逆らえないって言ってたな。
「…じゃあ、ラティには連絡入れておく。それと、野営するに当たっては俺の言う事を絶対に守る事。約束できるか?」
「---っはい!!出来ます!!」
「…はぁ、俺もコンラッドに怒られそうな気がするなぁ…」
それから、チカ達にここで一夜を過ごすという事を伝え、厳重な警戒をするよう命令する。ソニアは野営出来ると聞いて、ミレーユ同様喜んでいた。
「寝泊まりのテントはどーする?俺とニリキナ、チカ達、ミレーユ達の3つ分でいいか?」
「チッチッチ。アルス、野営をすると言う事は仲を深めるという意味があるのだぞ?全員同じテントに決まっているだろう?」
「いや、それは絶対無理。俺の持っているテントそんなに広くない」
「いや、アルスさん…その前に一緒に寝ちゃダメですよ…」
「良いではないか!別にお前らにそんな度胸は無いだろうし!」
「そういう問題じゃないんですって!!」
その時脳裏に走るものがあった。
「………あ!」
「? どうしたんですかアルスさん?」
「守りも強固に出来るアイテムを持っていたわ」
「??? 話がよく分からないんですけど…」
「まぁまぁ、ちょっと待っとけ」
リストから目的の物を探しながら、オアシスから少し離れる。途中、ナナとチカに声をかけ連れて行く。
「あったあった」
リストから目的の物を取り出す。すると、目の前に違和感バリバリの建物が出現した。
「これ中心に魔法かけといて」
「わかりました。…いつものやつで良いですか?」
「…あー、いつものじゃなくてもっと上のやつ。ついでに雑魚よけもかけといて」
「わかりました」
チカ達がサクッと魔法をかける。今回の野営は完璧に安全にしておかないといけないので、課金アイテムも惜しみなく使う。
「……アルスさん、コレ…一体何ですか?」
口をポカンと開けた王女達を連れてニリキナがこちらへやって来た。
「これはな、『コテージ』ってヤツだ。テントは体力だけしか回復しないんだけど、コテージならMPまで回復することが出来るんだ」
「…いやいやいや、そうじゃなくて……。てか、MPって何です?…じゃなくて、何で建物が出てきたんですか?」
「ああ、そういう事。これ、アイテムなんだよ。…テントと違って消耗品なんだけどね」
そう、俺がリストから取り出したのはコテージだ。二階建てとなっており、中もテントと比べかなり広い。『Destiny』では店でしか購入出来ないアイテムであった。それに、消耗品でありダンジョンなど狭い場所では使えない物で、ダンジョンに潜る前に使っていた品物だ。
『Destiny』は放置ゲーだったのだが、普通の放置ゲーでは無かった。ダンジョン設定、フィールド設定、レベリング設定と他にも無駄に細かい設定があった。
ログイン時には手動になるが、それ以外は自動で動く。その際、全滅してしまうという割りかし放置ゲーならぬ要素が含まれていたのだ。…その時はかなりネットでも叩かれていたなぁ…。
その苦情を真摯に受け止めた運営は、詳細設定という名のクソめんどくせぇ仕様にしたのであった。まぁ、結果的にやり込み具合は上がったのだが。
「…消耗品…?いやいや、これ普通に建物じゃないですか…」
「まぁ、アイテムなのは変わりないし今日の寝泊まりはここでってことで」
ちなみに、ゼロ達は湖周辺で休んでいる。基本的に自由にしているのだが、ここを気に入ったみたいだ。
ニリキナ達と共に中へ入ると、布団と毛布があるだけの部屋が広がる。TVなどの電化製品はやはり無かった。
「--凄い!!アルス、このようなテントは見たことが無い!!」
開口一番、ソニアが衝撃を口にする。
「ねぇ、チカ。これどうやって寝るのかしら?」
「これを引いてから寝るんですよ?」
「じ、地面に寝るの!?ベッドとかは!?」
「ミレーユ落ち着いて。ベッドも良いけど、布団も良い」
「……よく分からないわ…」
ミレーユ以外には好評のようだ。やっぱ王女的には地面に寝そべるのは抵抗があるんだろうなぁ。
「女性陣は二階で寝てくれ。俺達はここで寝る」
「ご主人様も一緒に寝ようよー?」
「流石に王女様とは寝れないって」
「え?アルスさん、チカさん達といつも寝てるんですか?」
「ウチさ、ベットが1つしかないんだよ…。しかも5人が横に寝れる特注のやつ」
「……ハーレムじゃないですか」
『Harem』って素敵な響きだよね。男なら誰だって一度は想像した事あると思うんだ。絶対に。
性格も見た目もスタイルも全然違う女性達の輪の中に男1人。そして、その女性達は全員男に好意を持ってる。それに、見た目は違えど共通しているのが、全員顔のレベルが高い。こんな展開はもはや男の浪漫だと思うんだ。
超巨大企業の1人娘、世界を股にかけるスーパーカリスマモデル姉妹。超名家の由緒正しきお嬢様に、交換留学で来た某国のお姫様。そして、譲れないのが幼馴染と何故か後半に出てくる許嫁。………そんな世界に転生してみてぇーなぁ。
最初は男が誰を選ぶか揉めに揉めるんだけど、最終的に重婚になるという王道ストーリー。その重婚もお姫様とお嬢様の力で法改正してしまうという安定の流れ!!
そのストーリーで必要な存在、腐れ縁でずーっと一緒の男友達。自分を犠牲にしてまでも主人公の事を心配してくれる名脇役!!
……ああ、浪漫だ。そんな世界に転生してぇ…。
「--いっ!おい!アルス!!聞いてるのか!?」
「アルス様??アルス様ぁー??」
「マスター?」
「ねぇねぇ、ご主人様ぁー?」
「…ソニア、ちょっとアルス様を叩いてよ」
「ビンタでいいかな?」
「ちょ、アルスさん!--アルスさんってば!!」
「……え?呼ん---ブヘッ!!」
衝撃を受けに現実に戻される。地面とキスをすると口一杯に砂の味が広がる。
「--何すんだっ!!」
「いや…お姉ちゃんが叩けって言ったから…」
「私が?……ニリキナが言ったんじゃないかしら?」
「俺言ってないですよ…」
「大丈夫ー?ご主人様ー?」
ローリィに手を引っ張られ立ち上がる。ジャリっとした食感が気持ち悪くそこら辺に唾を吐きちらす。
「--っぶぇっ!!べっべっ!!」
「うわっ!こっちに飛ばすな!!」
「はい、マスター。水」
ナナから水を受け取り方をすすぐ。お陰で口の中はさっぱりした。
「アルスさん、なんでボーッとしてたんすか?」
布切れを渡しながらニリキナが尋ねてくる。
「ん?…ああ、ちょっと理想と違ったっていうか…現実は残酷だなって…」
「? 何の話ですか?」
「何でもない、忘れてくれ」
俺達は今、オアシスに向かう途中休息を取っていた。俺が何でハーレムの事を考えていたのかと言うと、メンバーがまさにギャルゲーなメンバーだったからだ。
俺、チカ、ナナ、ローリィ、ミレーユ、ソニア、ニリキナだけでオアシスに向かう事になった。本来ならミレーユ達には近衛が付くはずなのだが、オアシスまでは脅威となる魔物も出てこないし、俺達が護衛するならと渋々だが承諾していた。
……それでいいのか?と思ったのだが、どうやらミレーユ達は『転移結晶』というアイテムを持っているらしく、危険と判断するとすぐさま王都へ戻れる手段を持っていた。その2人が持っているアイテムに興味が湧き色々質問をすると、この『転移結晶』はどうやらダンジョン深層部で見つかった貴重なアイテムらしい。ただ、使い捨てでは無く魔力を一晩貯めるだけで何度も使用出来るという素晴らしいアイテムとの事。
その話を聞き、ダンジョンというものに凄く興味を持った。ただ、一度攻略されると消えるとの事らしく何処に出現するかは謎との事だった。
あ、そうそう。ちなみにミレーユ達は馬を持って来ていない。なので、俺達と一緒に馬に乗っている。ゼロは俺が乗っておかないと拗ねるので、俺の後ろにニリキナ、チカとミレーユ、ローリィとソニアとなっている。
ナナには索敵や警戒をしてもらっているので、邪魔になるかも知れないと思ったからだ。……まぁ、一緒に乗っても会話が成立するかなぁ?と思ったのは内緒だ。
そして、休憩中にふと思ったのだ。男2人に対して女5人、これはまさにギャルゲーに近いシーンではないかと!
ミレーユとソニアは王女様だし、チカはエルフで性格も器量も良し。ナナは端的に話すが、実は甘えん坊だし。ローリィは人懐っこい性格で何と言っても爆乳。…ニリキナは……うん、良い子だ。
何と言っても全員顔が良い。前世だったら高嶺の花ってレベルでは無いくらいに。見る事すら畏れ多い存在だったであろう。
設定好きの俺としては申し分の無いシチュエーションなのだが、残念ながら現実はゲームでは無い。
チカ達は『忠誠心』を持ってるし、ミレーユ達に至ってはまだ会ってから日が浅い。……ニリキナは訓練とかでよく会ってたから親しい。ハーレムとは程遠い現実に、少し逃避をしていたのであった。
「ミレーユ様、お茶のお代わりはいかがですか?」
「もう、チカ!堅苦しい口調は辞めてってば!!私は皆と仲良くなりたいの!」
「しかし、ミレーユ様達は王族。立場が違い過ぎる」
「ナナ、今は誰もいない。気軽に話そうじゃないか」
フランクに話そうと努力しているミレーユ達を見ながら、ニリキナに尋ねる。
「…いいのか?ニリキナ」
「ミレーユ様達が良いって言うなら、良いんじゃないですかね?…まぁ、ダメと言いたいんですけど逆らえませんし」
「……しかし、何でまたこうなったんだろうな…」
「気に入ったからだと思いますよ?それに、女性と関わるのは滅多にない事ですし」
「王女だったらパーティーとかで交流あるだろ?」
「いや、『友達』って意味でです。ほら、立場的に同性の友達って中々出来ないんですよ。ミレーユ様達と話す方々は、殆どが貴族ですし…」
「……あー、本心から友達だと思える奴がいないって事?」
「まぁ概ねそうですね。『仲良くしていれば、こちら側に利益が出る』みたいな感じですね」
「うわー……王女ってのも大変なんだなぁ」
「ジパングの皇女様とは仲が良いですけど、遠すぎて頻繁に会えませんし」
「…だから仲良くなりたいのか…」
「チカさん達は、そんな思惑無さそうですしね」
ふと、チカ達に目を向けると仲良さそうに話している姿が映った。王女と知らなければ、美女達の女子会だと思うくらい、楽しそうに喋っていた。
「…しかし凄えなあ。こんな砂しかない場所でもあそこだけ喫茶店みたいな印象を受けるよ」
「喫茶店…ですか?何ですかそれ?」
「あー……お茶する店の事だ」
「へぇー。その喫茶店とやらはアルスさんの故郷にあったんですか?」
「ああ、沢山あったよ。……まぁ、あんまり行かなかったけど」
昔の記憶を思い出していると、声がかかる。
「おい!アルス達もこっちに来い!喋ろうではないか!」
「へーーい。ってか、そろそろ出発しねーと昼過ぎには着かねーぞ?」
「良いじゃないですか。私達にとってはアルス様方と仲良くなるのが最優先なのですから!」
「…それだとオアシスがおまけみたいな扱いじゃないか…」
「? ほら、早くこっちに来い!お前の話を色々と聞きたいんだ!」
結局、ソニアに強引に引っ張られ30分程度の休憩が、2時間弱に延長となったのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「………やっと着いた」
時刻は夕方、俺達は無事にオアシスへと辿り着いた。
「…ふむ、ラティの言っていた通りだな」
俺の後ろからソニアの声が聞こえる。
「言ってた通りって?」
ゼロから降りながらソニアに尋ねる。
「中継地点として重要な場所であると聞いていた。しかも、サガンはここから水を調達しているのだろう?ならば、街道を作った方が良いと思ってな」
ソニアもゼロから降りると、オアシス全体を見渡していた。
「アルスさん、ちょっとお話が…」
後ろからニリキナが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「ん?どうしたの?」
「それがですね…ちょっとこっちに来てください…」
ニリキナに連れられ、皆と少し離れた所に行く。
「…ミレーユ様がですね、今日は疲れたから此処で野営したいって言ってるんですよ…」
「…は?いやいやいや、それ無理だろ?」
「俺も駄目と言ったんですけど、聞いてくれないんですよ…。アルスさんからも言ってくれませんかね?」
「…まぁ、別に良いけど」
ニリキナと一緒にミレーユの元へ向かう。ちょっとだけご立腹なミレーユがそこに居た。
「あー…ミレーユ様?ニリキナから話聞いたんだけどさ…」
「……………」
話しかけるとミレーユは冷たい目で俺を睨む。
「野営したいって聞いたけど、流石に王女様方を危険な目に合わせられないからさ。俺が転移でサガンまで連れて帰るから、野営はやめにしないか?」
「………ま」
「へ?」
「…アルス様、私の事は何故呼び捨てで呼んで下さいませんの?」
「………は?」
「ソニアの事は呼び捨てにするのに、何故私の事は様付けなんでしょうか?」
「……いや、それは第1王女ですし…ソニアにはそう呼べって言われましたし…」
「なら、私の事も呼び捨てにして下さい!!」
「へ???……よく分かんないですけど、それでいいなら………」
俺が返事をすると、ミレーユは笑顔を浮かべた。
「では、アルス様。野営の事なんですけれども…」
「あ、様付けしないで良いよ。俺の事も呼び捨てで」
「で、では……ア、アルス。私、是非とも野営をしたいと思っているんです!」
「いや、さっきも言ったけど危険だからダメだって」
「ア、アルス達が護ってくれるでしょ?…お願いっ!!こんなチャンスは2度とないと思うの!!」
うるうると涙を浮かべながらミレーユは懇願する。美人に泣きつかれるとなると、正直揺らぐ。
「……ニリキナ、ちょっと俺には止められねーわ…」
「諦めるの早すぎますって……。頼みますから説得してくださいよ…」
「えぇ……。なんで俺なんだよ…。ミレーユ、何で野営したいの?」
「…そのぉ…本では読んだ事あるのですが、実際には体験した事なくて…」
「あー…興味があるってこと?」
「はい!!こんなチャンス2度とないと思うんです!!!!……近衛には帰ってから直接私から言いますから、お願いします!!」
「……ニリキナ、どーする??」
「…………はぁ、絶対に怒られる…。嫌だなぁ……」
ミレーユの顔を見てニリキナは悟ったようだ。そういや、ミレーユ達には逆らえないって言ってたな。
「…じゃあ、ラティには連絡入れておく。それと、野営するに当たっては俺の言う事を絶対に守る事。約束できるか?」
「---っはい!!出来ます!!」
「…はぁ、俺もコンラッドに怒られそうな気がするなぁ…」
それから、チカ達にここで一夜を過ごすという事を伝え、厳重な警戒をするよう命令する。ソニアは野営出来ると聞いて、ミレーユ同様喜んでいた。
「寝泊まりのテントはどーする?俺とニリキナ、チカ達、ミレーユ達の3つ分でいいか?」
「チッチッチ。アルス、野営をすると言う事は仲を深めるという意味があるのだぞ?全員同じテントに決まっているだろう?」
「いや、それは絶対無理。俺の持っているテントそんなに広くない」
「いや、アルスさん…その前に一緒に寝ちゃダメですよ…」
「良いではないか!別にお前らにそんな度胸は無いだろうし!」
「そういう問題じゃないんですって!!」
その時脳裏に走るものがあった。
「………あ!」
「? どうしたんですかアルスさん?」
「守りも強固に出来るアイテムを持っていたわ」
「??? 話がよく分からないんですけど…」
「まぁまぁ、ちょっと待っとけ」
リストから目的の物を探しながら、オアシスから少し離れる。途中、ナナとチカに声をかけ連れて行く。
「あったあった」
リストから目的の物を取り出す。すると、目の前に違和感バリバリの建物が出現した。
「これ中心に魔法かけといて」
「わかりました。…いつものやつで良いですか?」
「…あー、いつものじゃなくてもっと上のやつ。ついでに雑魚よけもかけといて」
「わかりました」
チカ達がサクッと魔法をかける。今回の野営は完璧に安全にしておかないといけないので、課金アイテムも惜しみなく使う。
「……アルスさん、コレ…一体何ですか?」
口をポカンと開けた王女達を連れてニリキナがこちらへやって来た。
「これはな、『コテージ』ってヤツだ。テントは体力だけしか回復しないんだけど、コテージならMPまで回復することが出来るんだ」
「…いやいやいや、そうじゃなくて……。てか、MPって何です?…じゃなくて、何で建物が出てきたんですか?」
「ああ、そういう事。これ、アイテムなんだよ。…テントと違って消耗品なんだけどね」
そう、俺がリストから取り出したのはコテージだ。二階建てとなっており、中もテントと比べかなり広い。『Destiny』では店でしか購入出来ないアイテムであった。それに、消耗品でありダンジョンなど狭い場所では使えない物で、ダンジョンに潜る前に使っていた品物だ。
『Destiny』は放置ゲーだったのだが、普通の放置ゲーでは無かった。ダンジョン設定、フィールド設定、レベリング設定と他にも無駄に細かい設定があった。
ログイン時には手動になるが、それ以外は自動で動く。その際、全滅してしまうという割りかし放置ゲーならぬ要素が含まれていたのだ。…その時はかなりネットでも叩かれていたなぁ…。
その苦情を真摯に受け止めた運営は、詳細設定という名のクソめんどくせぇ仕様にしたのであった。まぁ、結果的にやり込み具合は上がったのだが。
「…消耗品…?いやいや、これ普通に建物じゃないですか…」
「まぁ、アイテムなのは変わりないし今日の寝泊まりはここでってことで」
ちなみに、ゼロ達は湖周辺で休んでいる。基本的に自由にしているのだが、ここを気に入ったみたいだ。
ニリキナ達と共に中へ入ると、布団と毛布があるだけの部屋が広がる。TVなどの電化製品はやはり無かった。
「--凄い!!アルス、このようなテントは見たことが無い!!」
開口一番、ソニアが衝撃を口にする。
「ねぇ、チカ。これどうやって寝るのかしら?」
「これを引いてから寝るんですよ?」
「じ、地面に寝るの!?ベッドとかは!?」
「ミレーユ落ち着いて。ベッドも良いけど、布団も良い」
「……よく分からないわ…」
ミレーユ以外には好評のようだ。やっぱ王女的には地面に寝そべるのは抵抗があるんだろうなぁ。
「女性陣は二階で寝てくれ。俺達はここで寝る」
「ご主人様も一緒に寝ようよー?」
「流石に王女様とは寝れないって」
「え?アルスさん、チカさん達といつも寝てるんですか?」
「ウチさ、ベットが1つしかないんだよ…。しかも5人が横に寝れる特注のやつ」
「……ハーレムじゃないですか」
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