放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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087話 -六道ダンジョン 9-

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真っ白な閃光が消えると、目の前には瀕死の状態のアスラが居た。6本あった手は2本となり、身体中から大量の血を流していた。道化師ピエロの姿は無く、アスラの手の残骸近くに道化師ピエロが着ていた衣服が落ちていた。

「グウゥゥゥ……」

息絶え絶えになりながらもアスラは何やら手を動かす。チカ達がそれにいち早く気付き、追撃を喰らわせようとするがアスラの行動の方が少し早かった。

「『六道・天界』」

チカ達の攻撃は見えない壁に弾かれ、その隙にアスラは自身にをする。

「『インドラの涙』」

「やべっ!!!!」

アスラの回復呪文を阻止すべく行動を取ろうと思ったが、チカ達の呟きで動きが止まる。

「……バカだねー」
「ステータス確認を怠るのが悪い」
「…呆気ないわね」

「…へ?」

チカ達はそれぞれ武器をしまう。『え?なんで?』と聞こうとした時、アスラの苦痛な声がフロアに響き渡る。

「グアアアアアアアアアアアアアッ!!」

何事かと思い再度アスラへと視線を向けると、ジタバタと苦しみながら暴れ回るアスラの姿があった。

「な、何故だ!!何故回復できな---

アスラの声は途中で切れ、光の粒となって徐々に消えていく。『何が起きてるの?』と疑問を抱くと、チカ達の言葉で理解することができた。

「アルス様の戦略が綺麗に嵌まりましたね」

「さすがマスターだ。この局面を考えて居たとは…」

(な、なんのこと???)

「それにしてもボスの風上にも置けない奴だったねー!ご主人様のスキルで回復系はダメージ入るって学んでないのかなぁ?」

「あー…………なるほど……」

「? 何か仰いましたか?」

「い、いや?何も言ってないよ?」

どうやら召喚したザグレウスの効果を忘れていたようだ。しかし、ここで1つの疑問が湧く。

(………自分で発動する魔法には効果が無かったはずなのに…)

『Destiny』の時の戦闘では、例え属性変換させたとしても自発的なモノには効果が無かった。しかし、今回の場合はそれが通用した。アレはゲームの世界だったからなのかは分からないが、こちらは現実だからなのかも知れない。………もしかしたら『Destiny』の時の常識は通用しないのでは無いか、と俺は考える。より現実的に考えれば今回の事は理解しやすい。

「アルス様が『召喚士』の職業ジョブに変えた意味が分かりましたわ」

「…チカはまだまだ。ボクはマスターの意図をちゃんと理解していた」

「ナナちゃんもさっき感心してたじゃんかぁ……」

チカ達がそれぞれ俺を褒めてくるが、このような事に繋がると思っていなかった俺は少しこそばゆかった。

「ま、まぁ…成功するかどうかは怪しかったけどね…」

言葉を濁しながらこの話を打ち切り、明るくなった部屋を散策する。

「…………マスター。アスラから5つの宝箱がドロップしている」

「開けてみるか。…えーと、罠が無いかを調べて………っと」

『Destiny』では極稀にボスドロップの宝箱に罠が仕掛けられている事があった。流石にこれに関してはクレームが多く運営に届いたようだが、運営からの返答は『そういう仕様なので』という火に油を注ぐものだった。まぁ確率的にも本当に稀---ガチャの最高レア確率よりも更に低い---だったし、罠付きの場合はかなり旨味の報酬が手に入るよう変更されていたのでそこまでは炎上しなくなった。

とは言え、その仕様になった事を知らなかった俺は何度か即死していた。耐性を積んでいたとしても即死の魔法は貫通してくるので、最初はバグか何かかな?と思っていた。だが、『運営からのお知らせ』メールを読んで理解した。その時は『ええええ?!じゃあ、アレはレアだったって事かよおおおお!???』と、ちゃんとメールを読まなかった自身に怒りを抱いた。………まぁそれからは出会う事無かったし、思い出しただけなんだけどね。

「……それじゃ開けるぞ」

1つ目の宝箱を開けるとそこには前回俺が習得した『修羅』のジョブがリストに出た。

「あー……ジョブだったな」

適当にあと2つ開けると、その中にも『修羅』が入っていた。

「チカ達はまだジョブリストに空きあったっけ?」

「……無いですね」
「ボクも」
「あたしもー!」

「なら拡張するか………。えーっとちょっと待ってろよ?」

リストから課金アイテムを取り出しチカ達へと与える。

「空き出来た?」

「はい。……結構出来てますけど、良いんですか?」

「あぁ。もしかしたら派生も生まれるかも知れないからね。多めにしといた」

チカ達へとジョブを手渡し、暇があれば試すよう指示する。字体から想像するに戦闘職だとは思うが、暴れ狂いそうなイメージがあるからなぁ……。ローリィが合いそうな気がする。

「……ん?残りの2つは罠付きだな」

ジョブにより残った2つには罠が仕掛けられていた。1つの宝箱には即死の罠が掛かっており、罠の種類は魔法という事がわかったので『大僧正』に変更し、即死魔法を解除する。

「開けるぞ……」

「何が入ってるのかなー??」

ゆっくりと宝箱を開けるとそこには防具が入っていた。見た感じアスラが持っていた武器に近いが、とりあえずボックスに入れ調べてみる。

「………『アマノムラクモノツルギ』…………へっ?!」

アマノムラクモノツルギってあの『天叢雲剣』だよね??めっちゃ有名なやつ!!

「ご主人様ぁー、それってレアなのー??」

「レ、レレレレアどころじゃねぇよ…」

『Destiny』脳で話をするならば、この天叢雲剣はドロップ品の中でも最高位に当たる武器だ。確率は小数点第6ぐらいで持っているプレイヤーは誰一人居なかった。……一応公式では図鑑に載っていたけど、眉唾物だと思っていた。

「えぇ……?ドロップするなら現役の時にドロップしてくれよ…」

転生した時に当たってもそこまで嬉しくは無い。…いや、嬉しいっちゃ嬉しいけど、スクショとか上げれないし、自慢出来ねぇもん…。

「アルス様、最後の1つを開けても?」

「あ、あぁ……ちゃんと罠解除してからね?」

嬉しく無いと言いつつも、最高位レアの武器を現実に見ると惚れ惚れする。華美な装飾は一切無く、持ち手と刀身だけのシンプルな剣であるが、とても格好良い。

「むむむ………これは複数の罠が掛かってますね…」

「チカ。ボクも手伝う」

「あたしもー!」

「ローリィは開けるだけ。ローリィの魔法は不安」

「……なんでぇ?!」

「………え?罠があるの?」

チカ達の会話が耳に入り、信じられない気持ちでチカへと問う。

「はい。…即死魔法が2種。それと状態永続異常が1種掛けられてます」

「俺も手伝うよ」

ローリィを除く3人で宝箱の解除を行う。ただ、少しだけ厄介な罠で3つ同時に解除しなければならなかった。それに気付くまで少し時間が掛かったが、手持ち無沙汰のローリィが開けるという都合の良い展開で、宝箱を開ける事ができた。

「………何コレ?宝石??」

ローリィが宝箱から円錐型のモノを取り出す。それは紅く煌めいており、宝石の様な印象を受けた。

「ご主人様ぁー!これ何か教えてぇー?」

ローリィからモノを預かりボックスへと入れる。

「………何々?『アスラの』?……『召喚士専用』…………ん???」

ドロップ品の文を4回ほど見直す。そしてすぐに意味を理解した俺は、わちゃわちゃとジョブを変更し、ステータス画面を開き、課金アイテムを使用して空きを作るのであった。
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