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始まり
はじまりのお話
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数年前から、この王国は魔物の襲来、近隣国との政治的問題等に揺れていた。王国の人間が対応に疲れ切っていた時、異世界からとある少年が召喚された。彼はレオと名乗り、この世界のどんな人間も持ち得ない強大な力を幾つも持っていた。レオは仲間達と共に忽ち問題を解決して、国民から多くの支持を得た。彼を英雄だと呼ぶ声も多かった。
そこまでは良かったのだ。
いかんせん、強大な力を持っていた故に彼の解決手段は時に苛烈な物になっていた。そのやり方に疑問を持つ声もあったが、その声はレオや仲間達によって消されていた。大多数は英雄様にケチを付けるなんて、という考えを持っていたので、次第にそのような意見を持つのは禁忌となっていた。
しかし、如何してもレオのやり方が気に入らない、彼に不利益を被られた者と言うのは密かに居たようでその者達から彼は「侵略者」、「厄災」と呼ばれるようになっていた。彼らはレオ一行をどうにかしないとこの国は終わってしまうと危惧していた。実際に今日は何処そこの村が被害にあった話や、討伐後の後片付けに苦労している話はそこかしこから聞こえてくる。然し、自分達ではどうする事も出来ずに嘆いていたある日、天から1つのお告げが下されたのだった。
「けやきの村のクララという娘が厄災を討つ唯一の光になるだろう」と。
この村は王都から遠く離れた田舎の村だった。そんな所に救世主がいるのか、という意見も出た。しかし、藁にもすがる思いでお告げを聞いた人々はクララを探しはじめた。
お告げに出た例の村であるけやきの村。そこは決して発展しているとは言えないが、穏やかな気風ののんびりした田舎の村であった。ここの住人は大体知り合いである程の身内で出来た村だった。
「クララお姉ちゃん~やっぱり大丈夫だよ~」
5、6歳あたりの女の子に服を引っ張られ窘められている少女がいた。彼女こそが今騒動の中心にいるクララであった。
「でも、大事な物だったんでしょ?その髪飾り」
そう言って、彼女は女の子ににっこりと微笑みかけた。そして背をかがめてゴソゴソ草むらへと入っていった。
「ここら辺にある筈だと思うんだけどな……」
草だらけで視界には頼れない為、ほぼ手探りで髪飾りを探す。服や顔が汚れてもお構い無しに探し続けていた。
しばらく手を地面に叩きつけていると、手に硬い感触があった。
「……あったぁ!!!!良かったぁ~。」
とりあえず土汚れを手で払い、気になる所は服のなるべく綺麗な所で拭き取る。いくらか汚れを拭き取ると髪飾りは輝きを取り戻した。それを両手で抱え、来た道を戻って女の子に髪飾りを返した。やはり、諦めきれなかったのだろう。髪飾りを見るなり嬉しそうに破顔した。
「ありがとうクララお姉ちゃん!」
「見つかって何よりだよ~」
別に当たり前の事しただけだし、とクララは女の子ににこにこと答えた。
髪飾りを頭に当てて見て見て~とする女の子に可愛いじゃん、似合ってるよ~と賞賛を送る。
「クララ~、何か呼ばれてるよ~」
遠くから紺蒼の三つ編みを揺らした少女がクララを呼びに来た。いつになく焦っていて、火急の用事である事がわかる。
「アリアじゃん!どうしたの?そんな慌てて」
ゼェゼェと息を切らしているアリアと呼ばれる少女に声をかける。
「なんかね、王都の兵隊さんがやって来て、クララはいないかって聞いてきて……」
「今、広場の方はそれで大騒ぎなの。理由聞いてもその人達、なんにも答えてくれないのよ!」
アリアが事情を話してくれる。ある程度の状況は掴めたが、どうしてこうなったのかの理由が分からない。
「なんで、私を……????」
そこまでは良かったのだ。
いかんせん、強大な力を持っていた故に彼の解決手段は時に苛烈な物になっていた。そのやり方に疑問を持つ声もあったが、その声はレオや仲間達によって消されていた。大多数は英雄様にケチを付けるなんて、という考えを持っていたので、次第にそのような意見を持つのは禁忌となっていた。
しかし、如何してもレオのやり方が気に入らない、彼に不利益を被られた者と言うのは密かに居たようでその者達から彼は「侵略者」、「厄災」と呼ばれるようになっていた。彼らはレオ一行をどうにかしないとこの国は終わってしまうと危惧していた。実際に今日は何処そこの村が被害にあった話や、討伐後の後片付けに苦労している話はそこかしこから聞こえてくる。然し、自分達ではどうする事も出来ずに嘆いていたある日、天から1つのお告げが下されたのだった。
「けやきの村のクララという娘が厄災を討つ唯一の光になるだろう」と。
この村は王都から遠く離れた田舎の村だった。そんな所に救世主がいるのか、という意見も出た。しかし、藁にもすがる思いでお告げを聞いた人々はクララを探しはじめた。
お告げに出た例の村であるけやきの村。そこは決して発展しているとは言えないが、穏やかな気風ののんびりした田舎の村であった。ここの住人は大体知り合いである程の身内で出来た村だった。
「クララお姉ちゃん~やっぱり大丈夫だよ~」
5、6歳あたりの女の子に服を引っ張られ窘められている少女がいた。彼女こそが今騒動の中心にいるクララであった。
「でも、大事な物だったんでしょ?その髪飾り」
そう言って、彼女は女の子ににっこりと微笑みかけた。そして背をかがめてゴソゴソ草むらへと入っていった。
「ここら辺にある筈だと思うんだけどな……」
草だらけで視界には頼れない為、ほぼ手探りで髪飾りを探す。服や顔が汚れてもお構い無しに探し続けていた。
しばらく手を地面に叩きつけていると、手に硬い感触があった。
「……あったぁ!!!!良かったぁ~。」
とりあえず土汚れを手で払い、気になる所は服のなるべく綺麗な所で拭き取る。いくらか汚れを拭き取ると髪飾りは輝きを取り戻した。それを両手で抱え、来た道を戻って女の子に髪飾りを返した。やはり、諦めきれなかったのだろう。髪飾りを見るなり嬉しそうに破顔した。
「ありがとうクララお姉ちゃん!」
「見つかって何よりだよ~」
別に当たり前の事しただけだし、とクララは女の子ににこにこと答えた。
髪飾りを頭に当てて見て見て~とする女の子に可愛いじゃん、似合ってるよ~と賞賛を送る。
「クララ~、何か呼ばれてるよ~」
遠くから紺蒼の三つ編みを揺らした少女がクララを呼びに来た。いつになく焦っていて、火急の用事である事がわかる。
「アリアじゃん!どうしたの?そんな慌てて」
ゼェゼェと息を切らしているアリアと呼ばれる少女に声をかける。
「なんかね、王都の兵隊さんがやって来て、クララはいないかって聞いてきて……」
「今、広場の方はそれで大騒ぎなの。理由聞いてもその人達、なんにも答えてくれないのよ!」
アリアが事情を話してくれる。ある程度の状況は掴めたが、どうしてこうなったのかの理由が分からない。
「なんで、私を……????」
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