毒華王女伝

荒谷創

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毒華の自慢

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「うお!?なんだこりゃ」
「う、美味い……」
食べ飽きた蒸かし芋。シンプルな塩味だけのはずの芋なのに、ぼそぼそしておらず、むしろ蕩ける様な食感。
革命軍全員が、夢中になって平らげてしまう。
「それにしたって、こんな立派なカトル芋はなかなか見ないな……」
「これは王女宮の裏手で、王族が食べる為に育てているものですわ」
どことなく得意気な王女。
「……なんだよ、俺等下々しもじものもんと同じ食材は食えないってか!?」
「当たり前ですわよ」
「何だと!」
色めき立つ男達。だが王女は涼しい顔で続ける。
「あなた方は、誰かに毒殺される事なんか無いでしょう?」

王族というのは、敵が多い……敵だらけなのだと王女は説く。
「毒味役が居るって……」
「おりませんわよ?」
不思議そうに小首を傾げ、説明を続ける。
「下手をすれば食事毎に人が死ぬ様なシステムは、少なくとも我が国の王室にはありませんわ」
その代わりにあるのが王室用の畑であり、王室用の牧場であるのだという。
「徹底した品質管理、累代の使用人が収穫して、絶対に信用できる料理人が調理をする。だからこそ、わたくし達は安心して食事が出来ますのよ。勿論、たまには献上品なども口にしますけど、そういった物は動物を使って確認しますの。王族がペットを飼う理由の一つですわね」
毒華は豪勢な食事に明け暮れ、庶民では一生口に出来ないような料理をペットの犬に食わせてやっている。
巷で真しやかに流れている毒華の噂である。



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