含羞 〜在りし日の戀〜

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燧石《ひうちいし》を打つて、星を作つた

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「そろそろお風呂にしようか。今、お湯を溜めているから」
 玲花がトイレから戻ってきました。ついでにお風呂の用意もしてきたようです。スマホの時刻を見ると、すでに十時を過ぎていました。
 ありきたりながら、玲花と過ごす時間は早く過ぎていく。改めて思います。
「日向から先に入って」
「うん、ありがとう。じゃあ、用意してくるね」
「シャンプーやリンスはあるからね。バスタオルも使っていいし」
 玲花は悪戯っぽく笑っています。わたしはどこへ何泊の旅行に出かけるのかと聞きたくなるほどの荷物を持ってきているのを思い出しました。玲花の家に泊まることになって、浮かれ過ぎた結果、なにを持ってくれば良いのかわからなくなったのです。そして、手当たり次第、思いつくままバッグに詰め込んできたのでした。シャンプーやリンスもそのひとつでした。
「じゃあ、借りちゃおうかな」
 わたしのやらかしをからかおうとする玲花を軽くスルーして、平静を装います。
 立ち上がって、リュックが置いてある玲花の部屋に向かいます。そのわたしの背中に、あっと玲花の声が届きました。
 振り返ると、何かを思いついた表情をしていました。
「どうしたの?」
「——いっしょに入ろうか?」
 いいよ、なんて条件反射的に答えそうになって、はたと思いとどまりました。
 いっしょに入るって——⁈ どこに? なにに?
 え、お風呂⁈
 玲花があまりにも当然のように、平然とした顔と声で言うものだから、わたしは釣られそうになったのでした。
「別に、イヤならいいけど——」
 頭が真っ白になって、なにも答えられないわたしに、玲花はぽつりと呟くように言いました。その言い方が、やけにそっけなく聞こえて、わたしは慌ててしまいました。
 いっしょにお風呂に入ると言っても、女同士です。なんの問題もありません。
 なんの問題もあるはずがないのですが、咄嗟に答えられないのです。
 いっしょに入るということは、玲花にわたしの裸が見られてしまうということです。それは、恥ずかしいということしか思い浮かびませんでした。
 明らかにモデル、もしくはグラビアでも飾れそうな人に、わたしの体を見せるなんて、なんとも罪深いというか。恐れ多いというか——。
 ともかく、恥ずかしいのです——!
 わたしはまだ答えられませんでした。すると、玲花は、顔をそらして、
「そうだよね。ひとりで入ったほうがのんびりできるもんね」
「——入る!」
 わたしは勢い込んで答えていました。玲花の声は平坦で、それがかえって断りにくい雰囲気を醸し出していたのです。
「うん、わたしも用意するね」
 玲花はにっこりと微笑みました。

 わたしは浅はかでした。
 脱衣場でつくづく思い知りました。
 わたしだけが玲花に見られるわけではないのです。わたしも玲花を見てしまうのです。
 女同士だからとはいえ、あまりにも大胆、あまりにも堂々として、次々とためらいもなく服を脱いでいきます。
 しかも脱衣場はわたしのうちよりは広いけれど、大人ふたりには微妙に狭いのです。玲花とわたしは、なぜか向かい合う形で脱ぐことになって、時折体が触れそうになります。
 潔い脱ぎっぷりにわたしは目が離せなくなりました。気持ち的には恥ずかしいし、じろじろ見るのも失礼だとはわかっていながら、目は釘付けになっていました。
 あっという間に下着姿になった玲花は、わたしの予想通りスタイルは抜群でした。出るところは出て、くびれるところはくびれて、余分な肉などないようでした。肌は真っ白で、触れてしまいたくなるほど滑らかでした。
 わたしはまさに見惚れて、ぼーっと突っ立っていました。
 玲花がブラジャーを外そうと、背中に両腕を回しました。そうすると、胸が突き出された姿勢になり、形の良い胸がぷるんと揺れました。
 心臓が跳ね上がります。
 触ってみたい——!
 柔らかそうで、わたしの手のひらに余るほどの大きさで、なんだか幸せがたくさん詰まっているような気がします。
 ごくりと唾を飲んでしまい、玲花に気付かれなかったかと、ひやりとしました。
 ブラのホックを外そうとした玲花が手を止めました。
 わたしはやましい考えを悟られないようにと、動揺を押し隠します。うまく取り繕えているか自信はありません。
「脱がないの?」
「ぬ、脱ぐけど、玲花はためらいないなぁと思って。わたしは誰かといっしょに入るのってほとんどないから、ちょっと恥ずかしくって」
 ここは正直に言ってしまいました。そうすれば邪な気持ちも悟られないでしょう。
「女同士じゃない。なにを気にしてるの。あんまり意識されると、わたしまで恥ずかしくなるんだけど。勢いよ、勢い」
 そう言うと、玲花はブラジャーを外してしまいました。
 こぼれ落ちた、たわわなふたつの果実に、わたしは目を見開き、しっかり目に焼き付けた後、目を閉じてしまいました。
 さらに衣擦れの音がして、パンティを脱いだことが想像されました。しかし、これは想像というより妄想といったほうが正しいのかもしれません。目を閉じたことにより、玲花の裸身がより鮮明に思い浮かんで、思わず目を開けていました。
 玲花はすでにお風呂場のドアに手をかけていて、背中を向けていました。綺麗にS字を描いた背中から腰、お尻のライン——、目の毒なのか、眼福なのか、わたしにはもうわけがわかりませんでした。
「もう、日向!」
「あ、はい!」
「先に入っているから、すぐに来なよ」
「はい!」
 心なしかドアを閉める音が大きかったような気がします。
 ドアの向こうからは、お湯をかける音、浴槽に浸かる音が聞こえてきます。そのひとつひとつを玲花は裸で行っているのです。お風呂なので、当たり前のことなのに、その想像は背徳感でいっぱいでした。
「日向、なにしてるの?」
 ドアの向こうから、玲花がわたしを呼びます。少し急かす口調でした。
「今行く」
 わたしは覚悟を決めて服を脱ぎ始めました。
 全部脱いで、洗面台の鏡を見てしまいました。あらためて自分の体を確認します。そんなに悪くはないと思います。出るところはそれなりに、くびれるところはそれなりに、つまり、それなりに合格点だと思います。
 しかし、圧倒的なものの前では、どうしても見劣りがしてしまいます。食べてもそんなに体型が変わることもないので、普段からあまり容姿に関しては意識したことはありません。自分の出来はわかっているつもりなので、だらしなくならないよう、清潔感を第一に心がけてはいます。
 それでも、比較対象とわたしとの差がありすぎです。比較するのすら、おこがましいような気がします。
 わたしは小さくため息をつきました。
「風邪ひいちゃうよ」
 再び玲花の声がかかります。
「はーい」
 今度こそ、最後の覚悟です。せめてもの抵抗に胸元は腕で隠しつつ、お風呂場へと入って行きました。
 玲花は湯船に浸かり、わたしを待っていました。湯船のふちに腕を組んで、その上に不満気な顔を乗せていました。
「おっそーい! 茹だっちゃうところだったよ」
「あ、ごめんね」
 わたしはドアを閉めたところで、胸を隠している腕もそのままに、突っ立っていました。
「なにしてるの? 早く浸かりなよ。風邪ひくから」
 なんの屈託も感じさせない玲花の口調に、ようやくわたしは動き出せました。
 浴室は我が家の1.5倍ほどあります。浴槽も我が家より大きめで、大人ふたりが余裕で入れそうです。
 わたしは掛け湯をして、湯船に入ろうとしました。ところが、玲花はわたしと入れ替わるつもりがないのか、そのまま浸かったままで、体を端に寄せただけでした。
 つまり、これはいっしょに湯船に入るということでしょうか。
 確かに大人ふたりが余裕を持って入れるでしょう。
 問題は両者裸だということ、その上かなり距離が近いということです。
「どうしたの?」
 玲花は怪訝そうに小首を傾げます。
「玲花は出ないのかなって——」
「いいじゃない。ちょっと狭いかもだけど、いっしょに入ろう」
「あ、でも——。恥ずかしいというか、距離が近いというか——」
「もー、そういうのナシ! 滅多にないことだし、裸の付き合いってやつよ」
 なんだか、蓮っ葉なことを言っています。わたしはもう何度目かの最後の覚悟を決めて、湯船に浸かりました。
 目の前には玲花の満足そうな笑顔があります。そのすぐ下には、わたしがさっき目に焼き付けたたわわな膨らみ、湯船の底には玲花とわたしの足が触れ合い、絡まるように揺蕩い、やけに淫靡に見えました。
「だいじょうぶ? もう顔が赤いけど。熱かった?」
 首を左右に振りながら、誰のせいだと思っているのかと、抗議の声を上げたいほどでした。
 わたしは目のやり場をどこにしようかなどと考えながら、
「——だいじょうぶ……」
 と答えることしかできませんでした。
 玲花はほうと、息を吐きます。
「あったかいね」
 わたしはこくりと頷きます。
「狭くない?」
 また、頷くだけです。
「やっぱ、熱くない?」
 また、頷きます。
「おっぱい、大きいね」
 また、頷き——、わたしは慌てて胸を隠しました。睨みつけるように、玲花に顔を向けていました。
「やっと、目が合った」
 玲花はにやりと笑いました。すかさずわたしの頬を両手で挟み込んで、視線が外れないように固定してしまいました。
「な、なに——?」
「さっきも言ったけど、日向がそんなに意識すると、わたしまで意識しちゃうの。——そんなの、わたしだって日向のこと見ちゃうのに決まってるよ」
「見られるのはちょっと……。あまり比べられても……」
「比べたりなんかしないよ。日向は充分綺麗だし」
 直球が飛んできました。わたしは早くものぼせそうになっています。
 わたしの顔を挟み込んでいる玲花の手をそっと外して、わたしは湯船から出ました。
「やっぱり熱かった?」
 ちょっと心配そうな玲花の言葉に、首を左右に振ります。
「先に体、洗おうかと思って」
 色々無理です。
 玲花の体も言葉も、わたしには処理しきれません。湯船から出て、頭を冷やしたかったのです。
「じゃあ、背中を流しっこしようか」
 玲花は無邪気に追い打ちをかけてきました。言っている側から、湯船から出てきました。わたしの背中に回って、ボディーソープを泡立てています。
「こういうのやってみたかったんだ」
 鼻歌でも歌い出しそうにご機嫌でした。
 わたしは観念しました。こうなれば無の境地です。それに、玲花には背中を向けているので、裸を直接見ることもありません。ようやく人心地ついたようでした。
 泡たっぷりのボディータオルが背中に押し当てられて、上下に優しく、マッサージでもされているように擦り上げます。
 気持ちいい……。
 誰かに背中を流してもらうのも、幼い頃以来です。そういえば、母親とも背中の流しっこをよくやったものです。
 ちょっと、懐かしい童心に帰りかけていると、ボディータオルではない、もっと滑らかな感触のものが、わたしの背中を上から下へと撫でていきました。
「——! ひやゃゃ!」
 自分でも思ってもいない、変な声で叫んでいました。背骨を伝って、軽く電流が流れたような感覚です。くすぐったくもあり、怖気るようでもあり、初めての感覚でした。
「あー、びっくりした」
 その悪戯を仕掛けてきた当の本人は、棒読みのような口調です。
「びっくりしたのはこっちだよ!」
 振り返って見る玲花の表情は、にやにやと含み笑いをたたえていました。どうやら、玲花が指でわたしの背中を撫で下ろしたようでした。
「いやー、綺麗な背中だなって、思わず触りたくなっちゃって」
「だからって、ほんとに触らないの!」
「こんなにすべすべしてるんだもん、触るなっていうほうがムリ」
 そう言って、また指を這わせてきます。わたしは身体中に力を込めて、声を上げるのを我慢します。
 ぞわぞわと何かが背中から首筋を伝っていきます。その感覚に身体がぶるっと震えて、体温が一気に上昇するのを感じました。
「だから、やめてって——!」
 きつい言葉とは裏腹に、わたしの口調はかなり弱々しいものでした。
「ふふふ、日向は可愛いな」
 そっと囁かれた言葉は、からかっているようでもあり、慈しみが含まれているようでもあり、わたしにはどう答えていいのかわかりませんでした。ただ、動悸だけは激しく、お腹の辺りが燃えるように熱く、拒否する気持ちとは反対に、なぜかもう一度触れてほしいと思う気持ちも湧き上がってくるのでした。
 でも、そのあとは泡を流されて、
「今度はわたしね」
 と、玲花の背中を洗うことになりました。
 なんとなく、もやもやと、身体も心もすっきりしないまま、玲花の背中を見つめました。
 他人の背中をまじまじと見るのは初めての体験かもしれません。
 しみひとつない真っ白で滑らかな背中、首筋、肩甲骨、ほんの少し背骨が浮き出て、でも、痩せすぎている感じはなくて、むしろ健康的な肉付きで、腰からお尻にかけてのラインはとても艶かしく、やけに大人びた印象がありました。
「ひゃっ!」
 玲花の声に、わたしは我にかえりました。無意識のうちにわたしの手は玲花の無防備な脇腹に伸びていました。
「あ、ごめん」
 わたしは慌てて手を引っ込めようとします。玲花は逃すまいと、すかさずわたしの手首を握り締めました。
「さっきの仕返し?」
「つい、触りたくなっちゃって——」
 わたし自身、自分の行動に困惑しています。ついふらふらと誘われるように触っていました。白くてほっそりとして艶々と、張りがありそうで、でも触れるともっちり弾力がありそうな脇腹でした。実際、玲花の肌は吸い付くように滑らかで、その温もりはまだ手のひらに残っていました。
 玲花は眉根を寄せて、怒っているような表情を浮かべています。
「——我慢、してるのに……」
 わたしの手首を握る玲花の力が強くなりました。
 熱を帯びた瞳がわたしの瞳を見つめてきます。下唇をきゅっと噛んで、怒っているようでもあり、まさに何かを我慢しているようでもありました。
 でも、我慢て、なに?
 そんなわたしの思考を破ったのは、玲花に握りしめられた手首の痛みでした。玲花は無意識のうちに力を込めていました。
 わたしは痛みに顔をしかめながらも、なぜか振りほどくことができませんでした。
「玲花、痛い——」
 かろうじて、そう言うので精一杯でした。
 玲花ははっと我に返ったように、すぐに手を離してくれました。
「ご、ごめん……」
 手首には玲花の手形が赤く熱く残り、手先のほうは血の気を失ったように白くなっていました。こんなにも強くなにを我慢しているというのでしょうか。
 けれど、玲花はわたし以上に戸惑い、狼狽えているようでした。
 それが逆にわたしを冷静にさせました。
 そして、我慢しているのは、わたしも同じだと思うのでした。
 玲花の胸を触ってみたいと思ったり、脇腹を無意識に触ってみたり、なによりも、玲花の裸を直視できない。——心のどこかに、やましい気持ちがあるから?
 わたしは目の前にある玲花の背中を見つめています。もう一度触れてみたいという衝動が湧き上がってきます。そうして頬を擦り寄せて、唇を触れて、——そうすれば玲花は、そしてわたしは我慢をしなくてもよくなるような気がします。
 その先にあるものは?
「早く背中洗ってよ」
 玲花の声に我に返ります。立ち直ろうとするかのように、ぶっきらぼうな口調でした。今度はわたしが狼狽える番です。やけに淫らな妄想をしていました。
 わたしは玲花とそのような関係を望んでいるのでしょうか。
「もう、イタズラはナシだからね」
 わたしに向けられた背中は警戒しているのか、少し固くなっていました。警戒しながらも、まだ背中を洗わせようとする玲花が可愛くて、わたしはくすりと笑っていました。
 深く考えることなんてないのだと思いました。お互いの小さなイタズラです。笑い飛ばせばいいのです。冗談にしてしまえばいいのです。
 わたしは玲花の背中を洗い始めました。泡をたっぷり含ませて、痛くならないように、優しく擦るように、さわさわと洗っていきます。
「ねえ、気持ちいい?」
 わたしの問いかけに、
「——うん」
 玲花は素直に頷きました。
「ねえ、やっぱり、背中、触っていい?」
 玲花の肩がぴくりと揺れました。
「な、なんで? イタズラはやめてって——」
「だから、断ってるじゃない」
「で、でも、なんで?」
 繰り返される疑問にわたしは言葉少なく答えます。
「綺麗だから——」
 綺麗なものに触れたい、ただそれだけでした。
「——」
「ダメ?」
「——いい、よ」
 わたしは背中の泡を洗い流しました。
 改めて、綺麗な背中だと思いました。真っ白で滑らかで、水滴が玉になって転がり落ちていきます。その水滴が照明を反射してきらきらと輝き、玲花をより引き立てます。
 心持ち、力の入った玲花の背中に、手のひらをぴたりと押し当てました。びくりと玲花の肩が揺れました。
 少しひんやりとして、白磁を思わせます。わたしの手のひらにぴたりと吸い付いてくるようです。わたしの熱が伝わるように、玲花の背中がじんわりと熱くなってきました。微かに早い鼓動を感じます。
 わたしはゆっくりと玲花の背中を撫で下ろします。背骨と肋骨の形を感じます。柔らかな中にあるこつこつとした骨に、玲花を形造る芯を感じました。
 下に向かうほどに手のひらから指先へと、背中を撫でる感触が変化していきます。
 玲花の背中はその間も、耐えるように小刻みに震えていました。時折吐息が漏れてきます。それは甘く切なく、わたしの耳に届きます。
 わたしの指が玲花の背中を離れた刹那、玲花は大きく体を反らせました。そして、今まで以上の大きな吐息を漏らすのでした。
 その吐息の熱さに、わたしの中のなにかが反応します。
 最初は綺麗だから触りたかっただけなのに、玲花の反応があまりにも官能的で、わたしまでおかしな気持ちになりそうでした。
 でも、その気持ちを否定することも、拒否することもできません。このまま、そしてこれ以上、それを望む心が湧き上がってきます。
 わたしはその心に従って、無意識のうちに手を伸ばしていました。もう少しで玲花の背中に手が届きそうなところで、またも手首を掴まれました。
「もう、ダメだよ——」
 訴えかけるようにわたしを見つめる玲花の瞳は熱く潤んでいました。
 わたしの手首を掴む玲花の手はさっきよりも強く感じました。けれど、手首の痛みより、玲花の瞳の熱に、気持ちは取り込まれていました。誘われるようにわたしの体温も上昇していくみたいです。
 わたしは掴まれていない方の手を伸ばしかけていました。玲花の肌に触れることが、正しい選択のような気がしたのです。
 その時、中途半端に体を捻っているだけだった玲花が、わたしに向き直りました。驚く隙も与えず、わたしの腕を引き寄せます。
 あっという間でした。わたしは玲花に抱きすくめられていました。
 首の周りに玲花の腕が絡まっています。わたしの顔左側には玲花の顔があります。耳の側には玲花の唇があります。頬と頬が触れ合いそうな距離です。胸と胸が密着して、お互いの鼓動が届いてしまいそうです。
 耳朶に届く玲花の吐息は激しく荒く、そして、熱くて、わたしも知らぬ間に吐息を漏らしていました。
「これ以上は——」
 玲花は最後まで言いませんでした。
 いきなり、わたしの左肩に歯を立ててきたのです。それは甘噛みなどというほど、甘くはありませんでした。くっきりと歯形が残るのではないかと思えるほどきつく噛んできました。
 わたしは目を閉じてその痛みに耐えました。抗議の声を上げることもなく、振り払うこともせず、ただただ、奥歯を噛み締めていました。
 下半身からぞくぞくと寒気にも似たようなものが、わたしの中を駆け上っていきます。それはすぐに熱に変わり、体の内部から熱くなっていきます。特に、噛まれている左肩は、そこだけ脈打ち、激しく発熱をしているようでした。
 どれくらいの時間噛まれていたのかはわかりません。やがて苦痛は快感となり、恍惚とした幸福感すら感じてくるのでした。
 けれど、その幸福な時間も終わりを告げます。玲花がそっと口を離しました。深呼吸をするように、大きく息を吐き出しました。
 玲花はわたしを抱きすくめたままの体勢で、耳元で囁きました。
「これは、罰——」
 わたしは小さく頷いていました。
 でも、これは玲花、それともわたし、どちらに対しての罰なのでしょうか。
 そして、どのような罪に対する罰なのでしょうか。
 わたしはそれを確かめたくて、玲花の首に腕を絡ませようとしました。けれど、それよりも先に、玲花はわたしの両肩に手を置いて引き離してしまいました。目は合いません。玲花は俯いたままです。
「体、冷えちゃったね。お湯に浸かろう」
 そこからは、わたしたちは無言のままでした。
 再び、向かい合う形で湯船に浸かりました。やはり、目を合わせることもなく、お湯の底を見ていました。
 はぐらかされたと思う気持ちと、これでよかったのだと思う気持ちがせめぎ合っていました。
 玲花はなにを考えているのでしょうか。
 俯きがちなその表情からはなにも読み取れません。
 ただ、湯船の底に揺蕩う、玲花とわたしの足が、最初の時よりも、より激しく絡まり合って見えました。

 わたしたちは言葉少なでした。
 明日は何時に起きようか、明日の朝食はなんだっけ、明日はなにする、——ありきたりの、わかりきった会話をつなげていました。
 まるで、今夜が存在しないような、今夜をはぐらかすような、今夜を怖がるような、会話が続きました。
 それでも、どんなに抵抗しても、夜は更けていきます。十二時を過ぎた頃、会話が途切れてしまいました。気まずく、居心地が悪い、しんとした時間と空間。お互いが相手の出方をさぐる心理戦。
 そんな状態が息苦しく感じ始めた頃、どちらからともなく、
「そろそろ寝ようか——?」
 目が合って、すぐに逸らして、なにを意識しているのだろうかと思います。深夜になって寝る時間がきたから眠るだけです。いつもより遅いくらいです。
 なのに、玲花に噛まれた肩が疼きます。
 心臓がいつもより早く跳ねています。
 こんなことでは、到底眠れるとは思えません。
 眠るだけ眠るだけ、自分に言い聞かせながら、ますます意識は眠りの外へ行ってしまいます。
 玲花といっしょに寝室に入りました。セミダブルのベッドがやけに存在を主張してくるようでした。
 玲花はさっさとベットに入り、掛け布団をめくって、
「寝よ……」
 わたしは誘われるままに、ふらふらと布団の中に入りました。玲花はわたしの肩までしっかりと布団をかけてくれました。世話焼きのお母さんみたいで少しくすぐったく感じました。
「電気、消すね」
 枕元にあったリモコンで照明が消されて、寝室は真っ暗になりました。
 わたしたちは背中合わせでした。自然とそうなっていました。お互いの体温が届きそうで届かない、そんな微妙な距離でした。
 ふたりとも身じろぎもしない時間がしばらく続きました。布団の中もいい感じにあったまってきました。
 すると、玲花がもそもそと動いて、仰向けになる気配がしました。
「ねえ、起きてる?」
「うん——」
 眠れるわけがないわたしは即座に返答していました。後頭部のほうで囁かれる玲花の声は布団の影響か、少しこもって聞こえました。
「小さい灯り、点けてもいいかな?」
「——いいよ」
 枕元のリモコンを操作するために、玲花が体を起こすのがわかりました。布団が捲れて、わたしの背中に冷気が流れ込んできました。すぐに真っ暗だった部屋に、オレンジ色の仄かな灯りが灯りました。
「う、寒っ」
 玲花は布団に潜り込みました。心なしか、距離が少し縮んだような……。
 わたしは玲花に背中を向けたままでしたが、玲花はわたしに向かって体を横にして寝転んだようでした。
 オレンジ色の灯りは、部屋の中を幻想的に浮かび上がらせました。知らない、初めての部屋だけに、不思議な空間にいるようでした。
 玲花がわたしの背中に話しかけてきます。
「いつもね、真っ暗にはしないの」
「じゃあ、どうして最初に暗くしたの?」
「日向が明るいのがイヤかなって思って」
「わたしは全部消して寝てるけど、玲花に合わせるよ」
「ありがとう。日向ならそう言ってくれると思った」
 玲花は言葉を切りました。
 しんとした時間でした。オレンジの灯りに慣れてくると、すべてのものが鮮明になって、くっきりと見えてきました。それでも見慣れない部屋は、不思議な雰囲気に満たされたままでした。
 この灯りの下なら、玲花の顔が見れるのだと、思いつきます。見てみたいと、思います。
 せめて、仰向けになろうかと考えていると、玲花が再び口を開き始めました。わたしは動きを止めて、玲花の言葉を待ちます。
「ここに引っ越してくる前は、真っ暗にして眠ってた。でも、ここにきてからはね、ひとりっきりだとね、——怖いっていうんじゃないな、心細くなるの」
 玲花は小さく息を継ぎました。「ひとり暮らしなのに、こんな広い部屋を与えられて、ほんとにひとりぼっちになったような気がして、——真っ暗にすると、ますますそんな気持ちが大きくなって」
 わたしには玲花の孤独がどのようなものなのか、どれほどの深さなのか、軽々しくわかるとは言えません。ただ、わたしだったらと想像するくらいしかできません。そして、少しでも玲花の孤独に寄り添えたらと、願うばかりです。
 だから、玲花が、
「手、繋いで——」
 そう言ったとき、自然と体勢を変えて、わたしは玲花と向かい合う格好となりました。玲花の顔は思いのほか間近にあって、互いの息がかかりそうな距離でした。
 オレンジ色の灯りの下の玲花は、なんだかぼんやりと見えました。そのまま、灯りの中に溶け込んでしまうのではないかと、思えるほどでした。瞳は潤み、鼻腔が少し膨らみ、下唇を軽く噛んでいます。わたしまで切なく、心細くなってしまいます。
 玲花とわたしは、お互いの両手を包み込むように握りしめました。まるで、なにかを祈るように——。
 どうして、そんな孤独を抱えてまで、この街で暮らさなければならないのでしょうか。
 この街に来た理由、それが今なら聞けるような気がします。
 でも、玲花の弱った心につけ込むようで、ためらわれます。もっと、適切な瞬間があるのではないかと思えてくるのです。
「わたし、ここにいるよ」
 わたしは手に力を入れます。それに応えるように、玲花も力を込めて握り返してくれました。玲花は目を固く閉じ、次目を開けると、顔を明るくしていました。
「明日の朝もいるんだよね。朝起きたら、日向が横にいてくれるんだよね」
 わたしは頷きます。玲花自身に言っているのか、わたしに対して言っているのか、その境界は曖昧でした。それだけに、切実に聞こえて、言葉を発することができませんでした。ただ頷くことで、わたしが今ここにいて、明日の朝もここにいるということを、伝えることしかできないのでした。
「起きたら、日向の朝ごはんが食べられるんだよね。ほんと、楽しみ」
 玲花が笑みを深めます。
「食いしん坊だね」
 呆れたように言ってみます。
「こんな体に誰がしたの?」
 甘えた声で、上目遣いに言われてしまいました。ふざけていると分かっていながら、どきりとしてしまいます。
 わたしが言葉に詰まっていると、玲花は真顔に戻って、
「やっぱり、ちゃんと料理やお菓子を教えてもらおうかな?」
「どうして? 心境の変化?」
「ちょっと、憧れちゃった。日向みたいに、手際よく料理したり、包丁使ったり、ほら、フライパンを振ったりするの、かっこいいし」
「玲花は形から入るタイプ?」
「そうかな?——そうかも」
「きっかけはなんでもいいし、決意は認めるけど、玲花は料理しなくていいよ」
「え、なんで? 今日だって、クッキー作りを教えてくれるつもりだったのに?」
「まあ、そうだけど——」
 わたしは言葉を濁します。今となっては昔のことです。確かにクッキーの作り方を教えるというのが、ここに来た目的でした。しかし、それはあくまでも口実でしかありませんでした。玲花とお近づきになりたい、その一心で発した誘い文句でした。つまり、目的と手段は、まったく逆なのです。クッキー作りは、わたしが無理矢理捻り出した手段でしかないのです。
 でも、そんなことを言えるわけがありません。言う必要もないでしょう。本来の目的は達成できたのですから。
「あ、わたしが鈍臭いと思ってるな!」
「うん」
 勝手に答えを導き出した玲花に乗っかりました。
「あれ? 即答?」
 わたしは噛み殺した笑いで答えます。膨れっ面の玲花の顔、元気を取り戻したみたいで、よかったなと思います。
「わたしが——、わたしが玲花のために作ってあげる。だから、玲花は料理を憶えなくていいの」
 玲花が目を見開きます。そして、破顔して、
「うん、嬉しい——!」
 わたしの手を握る玲花の手に、力が加わります。「約束ね」
 わたしは頷きました。
 玲花のほくほくとした笑顔は、わたしの心まで温かくして、本当にそんな未来もあるのかもしれないと、信じさせてくれました。
 わたしが玲花のご飯を毎日作って、玲花はそれを食べてくれる。そんな未来が訪れてくれると、夢を見させてくれました。
 だからなのでしょうか。わたしは俯いてしまいました。玲花の笑顔が眩しすぎました。
 無邪気に屈託のない笑顔を見せる玲花は、未来を信じているのでしょうか?
 あまり、自分のことを話したがらない玲花は、どこまで本気なのかわかりません。
 信じているのではなく、信じたいだけなのかもしれません。
 こんなふうに玲花の本心を探ろうとする自分が嫌になります。
「日向、どうしたの?」
 わたしも信じたい、玲花との未来を——。
 それだけは嘘じゃない。
 だから、玲花のことも信じていたい。
「わたしね——」
 なにを語ろうというのか、自然と言葉が溢れ出てきました。囁くようなわたしの声をはっきりと聞き取ろうとするかのように、玲花はさらに身を寄せてきました。玲花の息をおでこのあたりに感じます。
「——わたし、なんにもないの。昔から人見知りで、人の顔色ばかり伺って、でも、誰からも嫌われたくなくて——」
 わたしはなにを告白しようとしているのでしょう。
「ずっと、笑ってた。嫌なことがあった時も、怒っている時も、悲しいことがあった時も、ずっと笑って誤魔化してた」
 なにを話し始めているのか自分でもわからなくなってきました。
「そしたら、そんな人間になっていた。いつもへらへら笑ってる、おバカでノー天気な、人畜無害の人間」
 みっともない、みっともないと思います。こんな自分をさらけ出すなんて、みっともない——。
「わたし、自分を守る方法なんて、わからなかったから、それしかできなかったから——、でも、そんな自分がほんとは嫌で——」
 言葉が止まりません。
「だから、料理やお菓子を作ることにしたの。自分で自分を褒められるような、なにかを身につけたかったの」
 玲花が頷く気配を感じました。
「最初はお母さんに習って、それから本やネットで調べたりして——、お菓子も作れるようになって——」
 声が震えているようでした。玲花はそっと片手を離しました。わたしを抱き寄せるように、首に手を回します。
「初めて学校にクッキーを作って持っていったら、みんなが美味しいって食べてくれて、すごく嬉しかった」
 近い玲花の息遣いと体温に、いつもなら狼狽えるばかりなのに、今は大きな安堵を感じていました。その安堵感にわたしの心は溶けていきます。
「特別なわたしの居場所を見つけられたみたいで、笑ってるだけじゃなくていいんだって思った——」
 目頭が熱くなって、喉の奥に重たい石を飲み込んだようになって——、それは、だから、玲花のせいなんだと思います。
 玲花が弱い心を見せるから。
 玲花が優しくするからなんだと思います。そして玲花がわたしを胸元に抱き寄せるからなんだと思います。
「そこにいるだけの、ただ笑っているだけの、なんにもなかったわたしが、やっとみんなに認められた気がして、料理とお菓子だけはがんばったの……」
 溢れ出した涙は止まらなくて、わたしはいつしか玲花に抱きついていました。涙は見せたくありませんでした。自分語りで泣くなんて、あまりにも惨めでかっこわるい。でも、きっと玲花のパジャマはわたしの涙でぐっしょりと濡れています。
 しばらくして、玲花の手がわたしの頭に置かれて、優しく撫で始めました。
「うん、日向はがんばったね。エライエライ。——わたしが食べた料理が証明してる」
 わたしは泣きながら、小さく頷きます。
「でも、日向はすごいなぁ。自分で自分の居場所を作れるんだから」
「すごく、ないよ……」
 小さな小さな、くぐもった声。湿り気を帯びた声。素直になれない自分がいます。
「好きなこと、得意なことを見つけて、それでみんなに認めてもらえるんだもん、自分に自信を持ってもいいんじゃないかな」
「でもね、笑うのがやめられないの。なにかあると、笑って誤魔化そうとするのが、やめられなくて、イヤなの」
「わたしは好きだよ、日向の笑顔。なんか、癒される。——こんなふうに、受け止めかたは人それぞれじゃないかな。日向の笑顔に救われる人もいると思うよ」
 わたしの笑顔が好き——。
 いつもなら、こんなストレートな言葉に狼狽えてしまうはずでした。でも、この時は玲花の言葉がやけに心に沁みて、先ほどまでの涙とは、違う種類の涙が溢れそうになりました。
「でも——、でも、自分の気持ちを隠して、誤魔化して、嘘ついて、本心からの笑顔じゃないんだよ」
 素直じゃないと思います。嬉しいくせに、ひねくれた言葉が溢れます。
「だったら、わたしには、教えて、日向の本当の気持ちを。悲しいことも、怒っていることも、ぜんぶ受け止めてあげる」
「本当の気持ちなんて言ったら、玲花に嫌われちゃう。かっこ悪くて、醜くて——、だったら、嘘の笑顔でも——」
「それだと、日向が苦しいよね。自分にも嘘をついているわけだから、日向が一番辛いよね」
 ああ、この人は本当にズルい。
 わたしの欲しかった言葉を、さらりと投げかけてくる。
 わたしはやっぱり涙を見られたくなくて、顔を玲花の胸に押し付けます。すると、玲花の鼓動が、ぴくんと少し跳ね上がったような気がしました。さらに早まる鼓動。わたしを抱く、玲花の手にも力が加わります。まるでわたしを守ってくれているようです。
 ここもわたしの居場所にしていいのかな、と思います。
 それがわたしの自惚れや誤解だったとしても、大きな心の支えになります。
「玲花は、わたしの料理、好き?」
「うん、すごく美味しい。毎日食べたいくらい」
「じゃあ、いっしょに暮らせるようになったら、毎日作ってあげる。だけど、献立はふたりで考えるの。なんでもいいなんて許さないからね」
「えー、わたし、料理のこと詳しくないからなぁ」
「それでも、ふたりで考えるの」
 わたしは思い切って、玲花の腰に腕を回して、抱きつきました。胸に顔をうずめたままなので、玲花の表情はわかりません。
「玲花の中にも、わたしの居場所ができるかな——?」
「——そんなの!」
 玲花は最後まで言ってくれませんでした。代わりに、わたしを力強く抱きしめてくれるのでした。
 それは、言葉よりも確かな答えのようでした。わたしはずっと探し求めていたものを、逃がさないようにと、強く玲花を抱きしめるのでした。
 わたしの中にも、玲花は自分の居場所を見出してくれるでしょうか。
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