20 / 20
ゆきてかへらぬ
しおりを挟む
「もう、明るくなってきたし、これ以上彼女を待たせたくないから」
常夜灯のオレンジ色のほのかな灯りで満たされていた部屋が、いつの間にかカーテン越しの朝の光で満たされていました。
今日もいい天気なんだな、と刹那気が逸れてしまいました。
随分と長い時間話していたようです。
玲花は足を踏み出します。張り付いた何かを断ち切るように——。
足掻かなければ——、足掻かなければ、玲花は本当に行ってしまう。
「わたしもいっしょに行く! いっしょに連れて行って!」
「いっしょに行ってどうするの?」
「わかんない! わかんないけど、このままじゃ、玲花はもう戻ってこない気がする」
「それも——、それもいいかなって思ってる」
「ヤダよ!」
「もう、決心したんだ」
「この部屋はどうするの? わたしを置き去りにするつもり?」
「だから、合鍵を渡したんだよ。わたしがいついなくなってもいいように」
わたしは愕然としました。昨夜、クリスマスプレゼントだと渡された合鍵にはそんな意味があったのです。
いつでも玲花の部屋を訪ねられると、単純に喜んでいたわたしはなんだったのでしょう。
玲花が在宅中に訪ねると、おかえりと迎えてくれる。
玲花が留守でも、わたしはひとりで料理を作り、帰ってきた玲花がただいまと微笑む。
卒業して、いっしょに暮らす前の予行練習。
これじゃあ、半同棲じゃないかなんて、浮かれきっていた。
様々な妄想や夢想をしていたのに——。
バカみたい、バカみたい、バカみたい——!
わたしはその場に崩れ落ちました。
もう、涙も流れません。
わたしにとって突然の別れは、玲花にとっては以前から計画された別れだったのです。
「本当に行くね」
乾いた玲花の声。
足を一歩踏み出す気配がします。
「——もうすぐ卒業だよ」
また一歩。
「——大学はどうするの?」
また一歩。
「いっしょに暮らそうって言ったのに——」
一瞬足が止まり、呟かれた言葉は、
「ごめんね」
そして、玲花はもう立ち止まりませんでした。
寝室を出ていき、しばらくすると玄関のドアが静かに閉まる音が聞こえてきました。
その場に崩れ落ちたままだったわたしは、その音にはっと顔を上げ、足をもつれさせながらも駆け出しました。
靴を履くのももどかしく裸足のまま、玄関のドアを開け、通路にまろびでました。
エレベーターに乗り込み、今まさにドアを閉めようとする玲花の姿が見えました。
「待って!」
届いたのか届かなかったのか、玲花は顔を上げませんでした。するするとドアが閉じ、玲花の姿は見えなくなりました。
あまりの呆気なさに、思考が停止してしまいそうでした。けれど、すぐに、このままではと気を取り直し、駆け出そうとしました。
エレベーターは今降りていったばかりです。ならば階段のほうが早いかもしれない。
咄嗟に判断して、足を踏みだそうとした時、強い北風が全身に吹き付けてきました。
地上五階に吹く風は痛いほど冷たく、強烈な寒さを防ぐには、わたしはあまりに無防備でした。
まだパジャマのままでした。
わたしは再び崩れ落ちました。
すぐに、コンクリートの床の冷たさが下半身から這い上がってきました。
自分の間抜けさに呆れてしまいます。あるいは、着替えさせないのも、玲花の計算のうちだったのでしょうか。だとしたら、玲花の策略に、まんまとはまってしまったわけです。
このままでは、追いかけることもできない。
すぐに着替えれば——、でも追いつけるだろうか。
エレベーターはすでに一階に到着していました。
また北風が吹き付けてきました。上半身も下半身も、耐え難いほど冷えてきました。
それでも立ち上がる気にもならず、なんとなく空を見上げました。
晴れています。
冬の朝の明けたばかりの澄み切った、どこまでも青い空でした。一片の雲すら見えない、青い空でした。
わたしはなぜだか笑いが込み上げてきました。
玲花の仕打ち、わたしの間抜けさ、まだ見ぬ彼女の身勝手さ、それらすべてが、滑稽に思えて、声を出して笑いました。
笑いすぎて、咳き込んで、涙を流して、鼻水さえ垂れてきて、なんてかっこ悪くて、惨めなんだろうと思いました。
そうすると逆に冷静になって、ぴたりと笑いが止みました。
北風がひとつ、わたしの体を震わせて吹きすぎていきました。
わたしはゆっくりと立ち上がります。お尻や足についた埃を払って、部屋に戻りました。
洗面所に行き、冷たい水で顔を洗います。
鏡に映った誰かの顔は、泣き腫らしてものすごく醜く見えました。
それなのに、その両の瞳だけは凛と輝いているようでした。
まだ足掻ける。
まだできることはある。
そう訴えているようでした。
そうして、鏡の誰かと見つめあっているうちに、その誰かはわたしに融合するのでした。
寝室に着替えを取りにいきます。すぐに浴室に戻り、パジャマと下着を脱ぎ捨てます。
シャワーを浴びることにしました。
シャワーを浴びながら、追いかけようと決心しました。もちろん、玲花を追いかけるのです。
シャワーを浴びている暇があれば、すぐにでも追いかければいいのにとも思いました。でも、気持ちを切り替えること、綺麗な自分でいること、それらがとても大切な儀式のように感じられたのです。
シャワーを手早く終わらせ、衣服を身につけ、髪の毛を乾かします。
リビングに戻ると、テーブルの上には、鍵と口紅。昨夜、酔っていたので、そのままにしてしまっていたようです。
置きっぱなしになっていた卓上ミラーに自分の顔を映します。泣いた後なので、目の周りはうっすらと赤く腫れています。化粧水くらいしか持っていないので、誤魔化しようがありません。
せめてもと、玲花にもらったクリスマスプレゼントの口紅をつけてみます。
濃い目のピンク色はやはりわたしにはまだ早いと思えるのです。この色に似合うわたしになれるのでしょうか。そのためには、玲花が側にいてくれないと、自信がありません。
そういえば、わたしがあげたネックレスはどうしたのだろう?
テーブルの上には見当たりません。寝室の机の上にもなかったように思えます。
きっと、玲花がまだ身につけているはずです。
それだけは信じたい。
信じられれば、わたしは玲花を追いかけられるのです。
玲花がくれた口紅、わたしがあげたネックレス。
それだけが玲花とわたしを繋ぐ確かなものだと思うのです。
けれど、追いかけてどうすればいいのかすらわからない。
そもそも、玲花の実家の住所すら知らない。
とりあえず、霧山学園のある街へ行こうと決めました。
玲花は、わたしのことが好きだと言ってくれました。そうして、接唇もしてくれました。
無駄だとは思いながらも、LINEを送ってみました。しばらく待ってみましたが、既読がつく気配はありません。開く気もないのか、すでにブロックされているのか——、そんなことはどうでもいいと開き直りにも似た気持ちになります。
玲花を追いかけると決心したのです。
わたしは鍵を手に取りました。もちろんこの玲花の部屋の鍵です。
この鍵も、わたしが後腐れなく出ていけるようにではないのかもしれません。
もしかして、この部屋を守ってほしいのではないかとも思えるのです。
この小さな田舎街で、玲花が唯一帰れる場所を、わたしに託したのではないのでしょうか。
それに、わたしが泊まりにきた日を選んで、出て行こうとしたことにも疑問が残ります。本当は引き止めて欲しかったのではないのでしょうか。もっと強い言葉で、行かないでほしいと訴えれば、あるいは——。
都合のいい解釈なのかもしれません。
それでもいい。玲花がわたしの元に帰ってくるという希望を持てるから。
それなら、ここで待つというのもひとつの案です。
でも、わたしは待っていられない。
ここでひとり待っているなんて耐えられないのです。
わたしは身支度を調えると、玲花の部屋の鍵を握り締めます。
そもそも、玲花を探し出せるのか怪しいのです。そして、会えたとしても、連れ戻すことができるのでしょうか。それでも今行かなければ後悔するのは目に見えています。
わたしは立ち上がり、歩き出し、ドアを開けます。
北風は冷たいけれど、空は快晴です。
ドアをゆっくりと閉めます。
わたしは唇に触れます。しっとりと指に吸い付く感覚に心が震えます。
再会できたら、接唇をしよう。玲花がくれた口紅を、玲花の唇に写してあげる。そうすれば、わたしは玲花の色に、玲花はわたしの色に染まる。
ふたりは繋がれるかもしれません。
そうしてふたりで一緒にこの街に帰ってくるのです。この玲花から預かった鍵でドアを開け、お帰りなさいと、玲花を迎えるのです。
だから今は、しっかりと鍵をかけて、この部屋を守るのです。
常夜灯のオレンジ色のほのかな灯りで満たされていた部屋が、いつの間にかカーテン越しの朝の光で満たされていました。
今日もいい天気なんだな、と刹那気が逸れてしまいました。
随分と長い時間話していたようです。
玲花は足を踏み出します。張り付いた何かを断ち切るように——。
足掻かなければ——、足掻かなければ、玲花は本当に行ってしまう。
「わたしもいっしょに行く! いっしょに連れて行って!」
「いっしょに行ってどうするの?」
「わかんない! わかんないけど、このままじゃ、玲花はもう戻ってこない気がする」
「それも——、それもいいかなって思ってる」
「ヤダよ!」
「もう、決心したんだ」
「この部屋はどうするの? わたしを置き去りにするつもり?」
「だから、合鍵を渡したんだよ。わたしがいついなくなってもいいように」
わたしは愕然としました。昨夜、クリスマスプレゼントだと渡された合鍵にはそんな意味があったのです。
いつでも玲花の部屋を訪ねられると、単純に喜んでいたわたしはなんだったのでしょう。
玲花が在宅中に訪ねると、おかえりと迎えてくれる。
玲花が留守でも、わたしはひとりで料理を作り、帰ってきた玲花がただいまと微笑む。
卒業して、いっしょに暮らす前の予行練習。
これじゃあ、半同棲じゃないかなんて、浮かれきっていた。
様々な妄想や夢想をしていたのに——。
バカみたい、バカみたい、バカみたい——!
わたしはその場に崩れ落ちました。
もう、涙も流れません。
わたしにとって突然の別れは、玲花にとっては以前から計画された別れだったのです。
「本当に行くね」
乾いた玲花の声。
足を一歩踏み出す気配がします。
「——もうすぐ卒業だよ」
また一歩。
「——大学はどうするの?」
また一歩。
「いっしょに暮らそうって言ったのに——」
一瞬足が止まり、呟かれた言葉は、
「ごめんね」
そして、玲花はもう立ち止まりませんでした。
寝室を出ていき、しばらくすると玄関のドアが静かに閉まる音が聞こえてきました。
その場に崩れ落ちたままだったわたしは、その音にはっと顔を上げ、足をもつれさせながらも駆け出しました。
靴を履くのももどかしく裸足のまま、玄関のドアを開け、通路にまろびでました。
エレベーターに乗り込み、今まさにドアを閉めようとする玲花の姿が見えました。
「待って!」
届いたのか届かなかったのか、玲花は顔を上げませんでした。するするとドアが閉じ、玲花の姿は見えなくなりました。
あまりの呆気なさに、思考が停止してしまいそうでした。けれど、すぐに、このままではと気を取り直し、駆け出そうとしました。
エレベーターは今降りていったばかりです。ならば階段のほうが早いかもしれない。
咄嗟に判断して、足を踏みだそうとした時、強い北風が全身に吹き付けてきました。
地上五階に吹く風は痛いほど冷たく、強烈な寒さを防ぐには、わたしはあまりに無防備でした。
まだパジャマのままでした。
わたしは再び崩れ落ちました。
すぐに、コンクリートの床の冷たさが下半身から這い上がってきました。
自分の間抜けさに呆れてしまいます。あるいは、着替えさせないのも、玲花の計算のうちだったのでしょうか。だとしたら、玲花の策略に、まんまとはまってしまったわけです。
このままでは、追いかけることもできない。
すぐに着替えれば——、でも追いつけるだろうか。
エレベーターはすでに一階に到着していました。
また北風が吹き付けてきました。上半身も下半身も、耐え難いほど冷えてきました。
それでも立ち上がる気にもならず、なんとなく空を見上げました。
晴れています。
冬の朝の明けたばかりの澄み切った、どこまでも青い空でした。一片の雲すら見えない、青い空でした。
わたしはなぜだか笑いが込み上げてきました。
玲花の仕打ち、わたしの間抜けさ、まだ見ぬ彼女の身勝手さ、それらすべてが、滑稽に思えて、声を出して笑いました。
笑いすぎて、咳き込んで、涙を流して、鼻水さえ垂れてきて、なんてかっこ悪くて、惨めなんだろうと思いました。
そうすると逆に冷静になって、ぴたりと笑いが止みました。
北風がひとつ、わたしの体を震わせて吹きすぎていきました。
わたしはゆっくりと立ち上がります。お尻や足についた埃を払って、部屋に戻りました。
洗面所に行き、冷たい水で顔を洗います。
鏡に映った誰かの顔は、泣き腫らしてものすごく醜く見えました。
それなのに、その両の瞳だけは凛と輝いているようでした。
まだ足掻ける。
まだできることはある。
そう訴えているようでした。
そうして、鏡の誰かと見つめあっているうちに、その誰かはわたしに融合するのでした。
寝室に着替えを取りにいきます。すぐに浴室に戻り、パジャマと下着を脱ぎ捨てます。
シャワーを浴びることにしました。
シャワーを浴びながら、追いかけようと決心しました。もちろん、玲花を追いかけるのです。
シャワーを浴びている暇があれば、すぐにでも追いかければいいのにとも思いました。でも、気持ちを切り替えること、綺麗な自分でいること、それらがとても大切な儀式のように感じられたのです。
シャワーを手早く終わらせ、衣服を身につけ、髪の毛を乾かします。
リビングに戻ると、テーブルの上には、鍵と口紅。昨夜、酔っていたので、そのままにしてしまっていたようです。
置きっぱなしになっていた卓上ミラーに自分の顔を映します。泣いた後なので、目の周りはうっすらと赤く腫れています。化粧水くらいしか持っていないので、誤魔化しようがありません。
せめてもと、玲花にもらったクリスマスプレゼントの口紅をつけてみます。
濃い目のピンク色はやはりわたしにはまだ早いと思えるのです。この色に似合うわたしになれるのでしょうか。そのためには、玲花が側にいてくれないと、自信がありません。
そういえば、わたしがあげたネックレスはどうしたのだろう?
テーブルの上には見当たりません。寝室の机の上にもなかったように思えます。
きっと、玲花がまだ身につけているはずです。
それだけは信じたい。
信じられれば、わたしは玲花を追いかけられるのです。
玲花がくれた口紅、わたしがあげたネックレス。
それだけが玲花とわたしを繋ぐ確かなものだと思うのです。
けれど、追いかけてどうすればいいのかすらわからない。
そもそも、玲花の実家の住所すら知らない。
とりあえず、霧山学園のある街へ行こうと決めました。
玲花は、わたしのことが好きだと言ってくれました。そうして、接唇もしてくれました。
無駄だとは思いながらも、LINEを送ってみました。しばらく待ってみましたが、既読がつく気配はありません。開く気もないのか、すでにブロックされているのか——、そんなことはどうでもいいと開き直りにも似た気持ちになります。
玲花を追いかけると決心したのです。
わたしは鍵を手に取りました。もちろんこの玲花の部屋の鍵です。
この鍵も、わたしが後腐れなく出ていけるようにではないのかもしれません。
もしかして、この部屋を守ってほしいのではないかとも思えるのです。
この小さな田舎街で、玲花が唯一帰れる場所を、わたしに託したのではないのでしょうか。
それに、わたしが泊まりにきた日を選んで、出て行こうとしたことにも疑問が残ります。本当は引き止めて欲しかったのではないのでしょうか。もっと強い言葉で、行かないでほしいと訴えれば、あるいは——。
都合のいい解釈なのかもしれません。
それでもいい。玲花がわたしの元に帰ってくるという希望を持てるから。
それなら、ここで待つというのもひとつの案です。
でも、わたしは待っていられない。
ここでひとり待っているなんて耐えられないのです。
わたしは身支度を調えると、玲花の部屋の鍵を握り締めます。
そもそも、玲花を探し出せるのか怪しいのです。そして、会えたとしても、連れ戻すことができるのでしょうか。それでも今行かなければ後悔するのは目に見えています。
わたしは立ち上がり、歩き出し、ドアを開けます。
北風は冷たいけれど、空は快晴です。
ドアをゆっくりと閉めます。
わたしは唇に触れます。しっとりと指に吸い付く感覚に心が震えます。
再会できたら、接唇をしよう。玲花がくれた口紅を、玲花の唇に写してあげる。そうすれば、わたしは玲花の色に、玲花はわたしの色に染まる。
ふたりは繋がれるかもしれません。
そうしてふたりで一緒にこの街に帰ってくるのです。この玲花から預かった鍵でドアを開け、お帰りなさいと、玲花を迎えるのです。
だから今は、しっかりと鍵をかけて、この部屋を守るのです。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
【完結】“熟年恋愛”物語
山田森湖
恋愛
妻を亡くし、独りで過ごす日々に慣れつつあった 圭介(56)。
子育てを終え、長く封じ込めていた“自分の時間”をようやく取り戻した 佳奈美(54)。
どちらも、恋を求めていたわけではない。
ただ——「誰かと話したい」「同じ時間を共有したい」、
そんな小さな願いが胸に生まれた夜。
ふたりは、50代以上限定の交流イベント“シングルナイト”で出会う。
最初の一言は、たった「こんばんは」。
それだけなのに、どこか懐かしいような安心感が、お互いの心に灯った。
週末の夜に交わした小さな会話は、
やがて食事の誘いへ、
そして“誰にも言えない本音”を語り合える関係へと変わっていく。
過去の傷、家族の距離、仕事を終えた後の空虚——
人生の後半戦だからこそ抱える孤独や不安を共有しながら、
ふたりはゆっくりと心の距離を縮めていく。
恋に臆病になった大人たちが、
無理をせず、飾らず、素のままの自分で惹かれ合う——
そんな“優しい恋”の物語。
もう恋なんてしないと思っていた。
でも、あの夜、確かに何かが始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる