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魔王のロック1
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そして8月上旬。
「えーと、全部のせのアサイーボウルと」
「バナナのアサイーパフェ下さい」
「はいっ、少々お待ちくださいませっ」
さっそくアサイー屋台は賑わっていた。
ただ男性客にはやっぱりピンとこないようで、こちらのカップル様は……
「私はアサイービアで」
「じゃあ俺は、なんかオススメの焼酎で」
おそらく、うちの記事を見た彼女さんに付き合わされたんだろう。
「そーですねぇ……
麦だと兼八とか中々とか、芋だと佐藤とか魔王とかが人気ですけど」
「魔王!名前がカッコいいなっ。
でも芋は臭くて飲みにくいからな~」
「魔王は飲みやすいですよっ?
こんな強そうな名前からは想像もつかないくらい、さらには芋焼酎とは思えないくらいスッキリフルーティーで。
今までの焼酎イメージを変えたって言われてるほど、ギャップ萌えの焼酎なんです」
「そうなんだっ?
じゃあそれにしょっかな」
「はいっ、飲み方はどうされますか?
オススメは、甘味やフルーティーさが引き立つロックですけど」
「じゃあロックでお願いしますっ」
そんな魔王は、あたしのお気に入り焼酎でもある。
なぜなら、推しのYOSAKOIチームと同じ名前だし。
「魔王か……
俺もラベルに惹かれてよく飲んでたなぁ」
今日も来ていた京太くんが、そう意図するように……
ラベルにはあたしの名前(粋)が入ってるから。
てゆうか、その遠回しな口説き文句もどきになんて返せばいーのっ?
すると、ここで働きたがってる翔くんファンのお客様が……
翔くんが他ファンの相手をしてるため、待ち切れずあたしにカクテルを頼んできた。
「お待たせしましたっ。
トムコリンズです」
「どーも~」
常連さんなのにいつもあんまり絡めないから、なんか嬉しいな……
そう思って、会話を広げようとした矢先。
「うわマズっ。
翔くんのと全然違うし!」
まさかのダメ出しを食らってしまう。
「わ~すみませんっ、すぐ作り直しますねっ?
いつもはもっと、どんな感じでしたっ?」
「ええっ?
いつもは……
てゆーかなにこれ!」
今度は俯いて口元に手を当てるお客様。
ひぃ~!今度はなんなのっ……
「てかありえない……
髪の毛入ってたんですけどっ?」
目の前にそれを突き付けられる。
「すみませんっ!
うわどーしよっ、すぐおしぼりをっ」
「いいよ、あとは俺がやる」
そこで翔くんがこっちに戻ってきた。
「ごめん翔くんっ、あたしのせいでっ……」
大事なお客様に不快な思いをさせて、あっちのお客様の接客まで中断させて……
「いいから他の仕事よろしく」
その口調は素っ気なくて、眉をひそめた表情で……
おお怒ってらっしゃる!
再度お客様に深々頭を下げて、他の業務に取り掛かるも……
うおお何やってんだあたし!
ほんとにすみませんお客様っ。
と思いっきり落ち込む。
「別にわざとじゃねんだし、粋の髪とは限らないだろ」
そうフォローの言葉をかけてくれた、京太くんの気持ちはありがたいけど。
「いやそーゆう問題じゃないからっ」
お客様を不快にさせたのは変わりないんだしっ……
そんな聞こえる声で逆なでしないでー!
「まぁでも、粋らしくないんじゃないか?
失敗を次に活かして、めげないのが粋だっただろ?」
確かにあたしは、そんなふうに頑張ってきた。
とはいえ、気持ちをコントロールするのは簡単な事じゃないし。
翔くんのあんな態度初めてだったから、やたらと落ち込んでしまったけど……
そう、そんな暇があったら頑張って気を付けるしかない!
「うんそうだね、ありがとう京太くんっ」
そうやってわかってくれてた事や、励ましてくれた事が嬉しくて、自然と笑顔が零れると。
京太くんも、その整った顔を優しくほころばせた。
「なんか俺、この2年間辛くてさ……
やっぱりすげぇ焦ってた。
けど今思い出したよ……
俺はいつだって、粋の笑顔が見たかっただけなのにって」
その言葉はあたしの胸にじわりと染み込んだけど……
やっぱり恥ずかしいからここでそーゆー話やめません!?
そうして、気まずい閉店時間を迎えると。
「さっきはごめん……」
「え、なんで翔くんが謝るのっ?
いやもうあたしがほんとごめんっ」
「や、俺のせいだしっ。
粋にはいつも、ヤな思いばっかさせて……
だからさっきも、あんなふうにその場から遠ざけるしか出来なくて」
それってつまり……
怒ってたんじゃなくて、助けてくれたって事?
うっそなにそれ感激すぎる!
こんな至らないコなのにっ……
「ありがとう、翔くん。
でも別にヤな思いとかしてないし、むしろこれからはちゃんと気を付けるねっ。
そーだ、翔くんのトムコリンズの作り方聞いてもいっ?」
そんで同じミスが起きないように……
髪は元々結んでるけど、前髪もパッチン止めして封じてやるっ。
そーやって元気はほぼほぼ取り戻せたものの。
あとはあさってのYOSAKOI祭りで完全チャージだ!
今から楽しみで仕方ない。
「えーと、全部のせのアサイーボウルと」
「バナナのアサイーパフェ下さい」
「はいっ、少々お待ちくださいませっ」
さっそくアサイー屋台は賑わっていた。
ただ男性客にはやっぱりピンとこないようで、こちらのカップル様は……
「私はアサイービアで」
「じゃあ俺は、なんかオススメの焼酎で」
おそらく、うちの記事を見た彼女さんに付き合わされたんだろう。
「そーですねぇ……
麦だと兼八とか中々とか、芋だと佐藤とか魔王とかが人気ですけど」
「魔王!名前がカッコいいなっ。
でも芋は臭くて飲みにくいからな~」
「魔王は飲みやすいですよっ?
こんな強そうな名前からは想像もつかないくらい、さらには芋焼酎とは思えないくらいスッキリフルーティーで。
今までの焼酎イメージを変えたって言われてるほど、ギャップ萌えの焼酎なんです」
「そうなんだっ?
じゃあそれにしょっかな」
「はいっ、飲み方はどうされますか?
オススメは、甘味やフルーティーさが引き立つロックですけど」
「じゃあロックでお願いしますっ」
そんな魔王は、あたしのお気に入り焼酎でもある。
なぜなら、推しのYOSAKOIチームと同じ名前だし。
「魔王か……
俺もラベルに惹かれてよく飲んでたなぁ」
今日も来ていた京太くんが、そう意図するように……
ラベルにはあたしの名前(粋)が入ってるから。
てゆうか、その遠回しな口説き文句もどきになんて返せばいーのっ?
すると、ここで働きたがってる翔くんファンのお客様が……
翔くんが他ファンの相手をしてるため、待ち切れずあたしにカクテルを頼んできた。
「お待たせしましたっ。
トムコリンズです」
「どーも~」
常連さんなのにいつもあんまり絡めないから、なんか嬉しいな……
そう思って、会話を広げようとした矢先。
「うわマズっ。
翔くんのと全然違うし!」
まさかのダメ出しを食らってしまう。
「わ~すみませんっ、すぐ作り直しますねっ?
いつもはもっと、どんな感じでしたっ?」
「ええっ?
いつもは……
てゆーかなにこれ!」
今度は俯いて口元に手を当てるお客様。
ひぃ~!今度はなんなのっ……
「てかありえない……
髪の毛入ってたんですけどっ?」
目の前にそれを突き付けられる。
「すみませんっ!
うわどーしよっ、すぐおしぼりをっ」
「いいよ、あとは俺がやる」
そこで翔くんがこっちに戻ってきた。
「ごめん翔くんっ、あたしのせいでっ……」
大事なお客様に不快な思いをさせて、あっちのお客様の接客まで中断させて……
「いいから他の仕事よろしく」
その口調は素っ気なくて、眉をひそめた表情で……
おお怒ってらっしゃる!
再度お客様に深々頭を下げて、他の業務に取り掛かるも……
うおお何やってんだあたし!
ほんとにすみませんお客様っ。
と思いっきり落ち込む。
「別にわざとじゃねんだし、粋の髪とは限らないだろ」
そうフォローの言葉をかけてくれた、京太くんの気持ちはありがたいけど。
「いやそーゆう問題じゃないからっ」
お客様を不快にさせたのは変わりないんだしっ……
そんな聞こえる声で逆なでしないでー!
「まぁでも、粋らしくないんじゃないか?
失敗を次に活かして、めげないのが粋だっただろ?」
確かにあたしは、そんなふうに頑張ってきた。
とはいえ、気持ちをコントロールするのは簡単な事じゃないし。
翔くんのあんな態度初めてだったから、やたらと落ち込んでしまったけど……
そう、そんな暇があったら頑張って気を付けるしかない!
「うんそうだね、ありがとう京太くんっ」
そうやってわかってくれてた事や、励ましてくれた事が嬉しくて、自然と笑顔が零れると。
京太くんも、その整った顔を優しくほころばせた。
「なんか俺、この2年間辛くてさ……
やっぱりすげぇ焦ってた。
けど今思い出したよ……
俺はいつだって、粋の笑顔が見たかっただけなのにって」
その言葉はあたしの胸にじわりと染み込んだけど……
やっぱり恥ずかしいからここでそーゆー話やめません!?
そうして、気まずい閉店時間を迎えると。
「さっきはごめん……」
「え、なんで翔くんが謝るのっ?
いやもうあたしがほんとごめんっ」
「や、俺のせいだしっ。
粋にはいつも、ヤな思いばっかさせて……
だからさっきも、あんなふうにその場から遠ざけるしか出来なくて」
それってつまり……
怒ってたんじゃなくて、助けてくれたって事?
うっそなにそれ感激すぎる!
こんな至らないコなのにっ……
「ありがとう、翔くん。
でも別にヤな思いとかしてないし、むしろこれからはちゃんと気を付けるねっ。
そーだ、翔くんのトムコリンズの作り方聞いてもいっ?」
そんで同じミスが起きないように……
髪は元々結んでるけど、前髪もパッチン止めして封じてやるっ。
そーやって元気はほぼほぼ取り戻せたものの。
あとはあさってのYOSAKOI祭りで完全チャージだ!
今から楽しみで仕方ない。
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