第二王女と年下国王

miki

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17 犯人

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お父様は解放され、再び王の座に復帰しました。

多少の混乱はあったものの、叔父様という首領を失った反乱を起こした派閥は急速に解体され、落ち着きを取り戻して行きました。

その派閥の幹部たちは捕らえられました。その中にはバルディーニさんもいました。

基本皆さん、クーデターを起こした時に覚悟を決めていたのか、大人しく処置に従いましたが、バルディーニさんだけは素直に連行されれることなく、どうしてもお父様に話したいことがある、と抵抗するのでした。

お父様は彼の態度に疑問を思ったのか、バルディーニさんを私とアノンさんも同席するところに呼び、話を聞くことになりました。

バルディーニさんは手と足を縛られ、跪いています。皮肉なことにもあの時と状況が全く逆です。

「バルディーニよ、言いたいこととは何か?」

お父様は立ったまま彼を見下すようにして抑揚なく問います。
バルディーニさんはお父様の声に顔を上げると、その彼の現在の状況に反して意気揚々と話し始めました。

「陛下、一時はエンゾ様の配下につきましたが、それはエンゾ様を油断させるため。エンゾ様に近づくことで、私は彼を毒殺することに成功しました。」

なるほど、彼が犯人でしたか。
ごたごたの後片付けに忙しく、おそらく他殺であろうと考えられていたのですが、犯人探しをする暇がありませんでしたし、もし犯人がいるとしたらその人は私たちを助けたことになります。つまり、私たちの敵ではないので、犯人を特定するということは優先度として低かったというのもあります。

お父様は知っていたかのように顔色ひとつかえません。

「お前がやったのか」

「は、さようでございます。」

「だから自分を咎めるのは違うと、そういうことか?」

「つつみ隠さず言うとそういうことになります。」

「素直な奴だな。」

お父様は軽く苦笑いしましたが、すぐにそれをひっこめると真剣な顔に戻しました。

「お前のおかげで我々は助かった。その点においては感謝している。」
「ただ、王族殺しは王族殺しだ。周りへのけじめのためにも一旦牢獄には入ってもらう。」

お父様がそう言うとバルディーニさんは血相を変えて大声で喚きます。

「そんな…私はあなた様のために命をかけて助けたのですよ!!なぜですか??」

「まあ最後までよく聞け。なにも殺すとは一言も言っていないだろ。ことが全ておさまるまではそこで大人しくしていろ、ということだ。」

バルディーニさんは安心したように「ありがとうございます、承知しました。」と頭を下げると、兵に連れられていくのでした。


お父様は彼の後ろ姿を見ながら

「私たちは彼の短気さにすくわれたのかな」

とぽつりとつぶやくのでした。
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