異世界への転生方法

miki

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異世界への転生方法

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人類のほとんどがサイボーグ化され、死という概念が無くなって数世紀がたった頃。


考古学者であるナロウ博士はついに長年の謎であった異世界への転生方法を発見したと発表し、この業績はメディアで大々的に取り上げられ、考古学最大の未解決問題とされていた異世界転生についてついに解明されたと世間を賑わせました。

異世界転生が考古学最大の謎と言われるのはなぜか。
数千年前に栄えていたとされている古代文明があり、その当時のものと思われる文書の電子記録が遺跡に埋まっていた、薄く、縦横数十cmの箱型の記録媒体に残っており、その文書は人がこの世界ではない、“異世界”という別世界に転生し、その世界での彼らの活動を記録したものであったのです。
その後の発掘により、別の“異世界”を旅した者の記録文書がいくつも見つかり、数千年前には異世界へ転生する技術があったのではないかということが有力視され始めました。しかし、記録されている異世界へ転生する方法は「車にはねられる」「電車に飛び込む」「首を吊る」など様々であったため、長い間議論がなされてきたのでした。


ナロウ博士は発案した方法を自らが被験者となって実験するとして、その世紀の実験の様子を公開することにしました。


発表の翌日、彼は実験を公開するために自分の研究室に報道陣を招きました。
ナロウ博士は集まった数十人の報道陣を前に「ごほん」と咳払いをすると自信に満ち溢れた声で話し始めました。

「今日は私の異世界への転生公開実験にお集まりいただきありがとうございます。」
「まず、今回発見した方法についてその理論から説明いたしましょう。」

彼はテーブルの上のプロジェクターを起動し、空中にスライドを映し出します。

「これまで、発見された異世界転生に関する文書ですが、このスライドに書かれているように“車にはねられた”、“電車に飛び込む”など、そもそも我々は“車”や“電車”と言ったものがどのようなものだったかさえ理解もできていませんが、様々な方法が記録されていたということは皆さんも周知のことだと思われます。」
「今まで、それぞれの方法について共通性がないと思われていましたが、私はついにその共通性を見つけました。」

ナロウ博士の発言に記者たちはどよめきます。
ナロウ博士はその驚きようを楽しむかのように間をとって記者たちを見回していましたが、記者団の最前列にいた女性の容姿をした記者が我慢できなくなったのか

「博士、それはどのような共通性でしょうか?」

とナロウ博士に問いただします。
ナロウ博士は自分が悦に入っているところを邪魔され、一瞬少し不機嫌な顔をしましたが、彼女の輝くきれいな目に見つめられ気をよくしたのか

「よくぞ聞いてくれました!」

と再び前のめりになります。
ナロウ博士は一呼吸おくとこう言い放ちました。

「その共通性とは、つまり、“意識を失う”ということです!」

ナロウ博士の発言に記者たちはポカンとしています。
記者たちの疑問を代弁するようにさきほど先走った記者がもう一度ナロウ博士に質問します。

「あの~、”意識を失う”というのはどういう状態をさすのでしょうか?」

ナロウ博士は予想していた質問なのか、うんうんとうなずくと機嫌良く答えます。

「"意識を失う”というのは、五感すべてが麻痺してしまう状態のことです。文書に記録されているいずれの場合においてもそのような記述が確認できました。」

「なるほど、、、理屈ではなんとなく理解できましたが、なかなか想像できませんね…」
記者の彼女は首を傾げます。

「はは、実をいうとかくいう私も言葉として理解しているだけで、具体的なものとしては理解できていないのですよ。今まで誰もこれに気づかなかったのは"意識を失う"という概念に辿りつかなかったためだと思われます。」

ナロウ博士は苦笑します。

「そのようなこともありますので、ここからは私が考案した方法の実験を実際に見せるのが早いでしょう。」

そう言うとナロウ博士は、彼の後ろにあった人間がちょうど一人入れるような透明なコンテナの中に入りました。コンテナは天井を突き抜けており、上に長く伸びています。

コンテナの中に入ったナロウ博士は記者団の方を向き、笑顔で手を振ります。

「それでは異世界に転生してまいります!」

ナロウ博士はそう言うとポケットからボタンを取り出し、それを右手で上に掲げ、押しました。

すると、天井を貫通しているコンテナの上からコンテナとほぼ同じくらいの大きさの巨大な黒い物体が凄まじいスピードで落下してきて、ナロウ博士をぺしゃんこに押し潰し、彼の体を構成する部品、そして厳重に装甲によって守られていた体の唯一の有機物である脳髄までも破壊してしまうのでした。
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