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008自分勝手
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いつもの冒険者ギルドの掲示板を眺めながら、何か良い依頼がないかと探していた。そうして見つけた、『クラーケン討伐』、水の精霊の使える範囲の技で退治することができると思った。そうして俺は港のある街まで走っていくことにした、さほど時間はかからずにグールドという街に着いた。そこで『クラーケン討伐』について、猟師たちにいろいろと聞こうとしたが港には誰もいなかった。それもそうだろう港の中からクラーケンが現れた、俺はその敵から距離をとって水の精霊に頼んだ。
「”氷の枷”、それに”氷の槍・十連」
まずはにょろにょろ足が長いクラーケンを、その長い足のあちこちを地面や港の建物に氷で磔にした。そうして動けなくしておいてからクラーケンの中心に氷の槍を十本ぶち込んだ、クラーケンの体に大きな穴が開いて力なく海に沈んでいこうとした。
「”氷の絨毯”」
それは勿体ないので氷を絨毯上にして沈もうとする体を受けとめた、こうすればクラーケンも食べることができるのだ、それに魔石を取り出しておくこともできた。
「ねぇねぇ、見物している皆さん。誰かクラーケンを料理できる人を知らない?」
そうしてしばらく待っていると年老いた老人があれこれと指示をしていた、たちまち港町はクラーケンを料理する台所になった。そうして焼いたクラーケンの足があちこちで提供されはじめた、ローラのご飯があるからちょっとだけ頂いたが、コリコリしていて蛸とイカのような食感だった。
「昔はよく食べたもんじゃ」
「クラーケンってうめぇ!!」
「漁では取れないもんね」
「コリこりした食感がたまらん!! 酒くれ!!」
「簡単に捕まえられたらいいのになぁ」
クラーケン自体には毒はないということで、俺は一部を切り取って買ってきた箱に氷を入れてローラへのお土産にすることにした。そうしてお土産を持って、帰り道を走っていると何かがこちらに高速で近づいてきた。
「ありゃ、何だ?」
そんな冒険者ギルドの帰り道での出来事だった、馬車が盗賊に襲われながら走ってきたのだ、このままだと俺は馬車に轢き殺されるところだった。
「”水のクッション”、”氷の壁”」
だから水をクッションになるように大量に出して、そうして氷の壁で馬車を止めた。そこを盗賊たちが襲ってきたのでこちらからも攻撃した。
「”氷の槍・三十連”」
それで馬車を襲おうとした盗賊たちがほとんど死んだ、逃げようとしたものは放っておいた。そうして馬車をみると護衛の兵士はもう一人しかいなかった、俺はあまり詮索するのもなと思って、氷の壁を解除して道を通れるようにした。
「それじゃ、お疲れ様です」
「おい、待て。魔法使い、先ほどは敵から助けてくれてありがとう。そのうえで姫様からお願いがある」
「嫌だ、聞きたくない!! 俺はお土産をもってお家に帰りたい」
「我が国の大事だ、聞かなければ罰を与える」
俺はしゅんとしてしまった、しかも馬車はよく見ればディアトロフィ王国の印が付いていた。そうして俺は馬車の中の人と引き合わされた、そうして紫の髪に水色の瞳を持つ美しい彼女はお礼を言ってくれた。
「プリムローズ・ラント・ディアトロフィですわ、危ないところを助けて頂き感謝致します。あらっ!? …………続きは馬車の中でお話しましょうか」
「姫、民間人を王家の馬車になど!!」
「内緒でお願いしますわ、エディ卿」
「はっ、かしこまりました!!」
そうしてエディ卿という黒髪に茶色い瞳の騎士は下がった。俺はお土産は取り上げられ、王家の馬車に放り込まられることになった。しかもプリムローズ第三王女は俺の知り合いだった、さっそく王家の馬車の中でこそこそ話が始まった。
「ラウレール様、お久しぶりでございます。やっぱり生きていらしたのね」
「プリムローズ様も相変わらず、お元気そうで」
「よろしければ私と婚約してくださる? ラウレール様」
「よしてくれ!! 俺には今は妻もいる、名前だってラウルだ」
「あら、それは残念。ふふっ、私も異国の王太子に嫁ぐことが決まっておりますの、ラウレール様のことは黙っておきますわ」
「ナールング国か?」
「ご名答ですわ、海が隔てているとはいえ、あそこは良い貿易先ですから」
「それで俺は何をすればいい?」
「この先のシオンの街に船が用意されておりますので、そこまでの護衛をお願い足します。私はナールング国に嫁ぎますので、ラウレール様ことはここでお忘れしますし、護衛賃を金貨で百枚お払いしますわ」
「分かった」
そうして俺はこのプリムローズというお転婆姫を、シオンの街まで護衛することになったのだ。きな臭い話ではあった、まず王家の馬車が盗賊に襲われているところからして怪しかった。俺は新婚なのになぁと思いつつ、闇でローラに現状を書いた手紙を届けた。
「そもそも王家の護衛が一人ってないだろ、最初は何人いたんだ?」
「大切な結婚ですもの、最初は五十人いましたわ」
「そいつを狙う盗賊って、話が怪し過ぎるぞ」
「私もそう思っておりますの、私が死ねば第四女リリアが嫁げるからかもしれません」
「お前、側室の娘だもんな。正室ってマジむかつくし嫌な奴だな」
「まぁ、それ素敵な表現。でも本当にマジむかつくし嫌な奴ですわ」
そうして俺たちはさっきまでいたグールドの街に着いた。ここで馬車の護衛を補充し、俺は馬車から下りて馬を借りることになった。補充された兵士は二十名と少なかったが、街の規模を考えるとそんなに多くの兵士がいるわけもなかった。そうして今夜はグールドの街に泊まることになった、俺はプリムローズの食事に毒が入ってないことを確認した。そうして夜はプリムローズの部屋の扉に剣を持ったまま寄りかかって寝た。
「シオンの街まで、お姫さんを守り切ればよしか。でも何か起きるだろうからなぁ」
俺は嫌な予感がしながらシオンの街まで馬に乗りながら馬車に並走した、新しく補充した二十名の兵士にもおかしなところはなかった、エディ卿と呼ばれた兵士長が見事に指揮をとっていた。だがそれは起こった、山道を歩いている時に大きな岩が何個も上から落とされたのだった。
「”氷のレール”」
俺はプリムローズの乗っている馬車を守るために固い氷のレールを作り出した。岩たちは氷のレールで滑って馬車には当たらずに下に落ちていった。
「そして盗賊かよ、勘弁してくれ」
山道を走り終わって平坦な道にでたら盗賊が襲ってきた、百名はこえる大所帯だったので乱戦になる前に片付けた。
「”氷の槍・百連”」
それで襲ってきた盗賊達はほとんど死んだ、その残りを兵士達が片付けていた。でも俺はプリムローズが乗っている馬車の異変に気が付いていた、馬車は兵士たちを置いてもいけないので止まっていたが、その中でどうやら騒動が起きていた。
「お慕いしておりました、プリムローズ様、いやプリムローズ」
「あらっ、私は貴方のことが嫌いです。エディ卿」
「そんなこの道中だって、僕のことをじぃっと見つめてくれたじゃないですか、プリムローズ!!」
「それはつっかえねぇーなこの兵士長、敵の一人くらい倒しやがれと思っていたからですわ」
「そんな相思相愛の貴女のお傍を離れることなどできず」
「ふふっ、気持ち悪い。いつから相思相愛などになったのかしら」
「それは今から二年前……」
エディ卿は何かを言いかけたが、馬車の扉を開けた俺に馬車から放り出された。俺はプリムローズを背中に庇いながら、なにか戯言を言っているエディ卿を見ていた。
「あれは今から二年前、プリムローズ様のほうから熱い視線を感じました。それは時が過ぎても変わることはなかった、むしろますます熱くなっていったのです。姫という手前、私を見つめるしかできなかたのでしょう。でも今度の護衛は好機なのです!!」
俺は一方的に愛の言葉を語るエディ卿を見ていた、そしていい加減頭が痛くなってきたのでプリムローズにこう聞いた。
「それでもうこのおっさん、始末していいか?」
「”氷の枷”、それに”氷の槍・十連」
まずはにょろにょろ足が長いクラーケンを、その長い足のあちこちを地面や港の建物に氷で磔にした。そうして動けなくしておいてからクラーケンの中心に氷の槍を十本ぶち込んだ、クラーケンの体に大きな穴が開いて力なく海に沈んでいこうとした。
「”氷の絨毯”」
それは勿体ないので氷を絨毯上にして沈もうとする体を受けとめた、こうすればクラーケンも食べることができるのだ、それに魔石を取り出しておくこともできた。
「ねぇねぇ、見物している皆さん。誰かクラーケンを料理できる人を知らない?」
そうしてしばらく待っていると年老いた老人があれこれと指示をしていた、たちまち港町はクラーケンを料理する台所になった。そうして焼いたクラーケンの足があちこちで提供されはじめた、ローラのご飯があるからちょっとだけ頂いたが、コリコリしていて蛸とイカのような食感だった。
「昔はよく食べたもんじゃ」
「クラーケンってうめぇ!!」
「漁では取れないもんね」
「コリこりした食感がたまらん!! 酒くれ!!」
「簡単に捕まえられたらいいのになぁ」
クラーケン自体には毒はないということで、俺は一部を切り取って買ってきた箱に氷を入れてローラへのお土産にすることにした。そうしてお土産を持って、帰り道を走っていると何かがこちらに高速で近づいてきた。
「ありゃ、何だ?」
そんな冒険者ギルドの帰り道での出来事だった、馬車が盗賊に襲われながら走ってきたのだ、このままだと俺は馬車に轢き殺されるところだった。
「”水のクッション”、”氷の壁”」
だから水をクッションになるように大量に出して、そうして氷の壁で馬車を止めた。そこを盗賊たちが襲ってきたのでこちらからも攻撃した。
「”氷の槍・三十連”」
それで馬車を襲おうとした盗賊たちがほとんど死んだ、逃げようとしたものは放っておいた。そうして馬車をみると護衛の兵士はもう一人しかいなかった、俺はあまり詮索するのもなと思って、氷の壁を解除して道を通れるようにした。
「それじゃ、お疲れ様です」
「おい、待て。魔法使い、先ほどは敵から助けてくれてありがとう。そのうえで姫様からお願いがある」
「嫌だ、聞きたくない!! 俺はお土産をもってお家に帰りたい」
「我が国の大事だ、聞かなければ罰を与える」
俺はしゅんとしてしまった、しかも馬車はよく見ればディアトロフィ王国の印が付いていた。そうして俺は馬車の中の人と引き合わされた、そうして紫の髪に水色の瞳を持つ美しい彼女はお礼を言ってくれた。
「プリムローズ・ラント・ディアトロフィですわ、危ないところを助けて頂き感謝致します。あらっ!? …………続きは馬車の中でお話しましょうか」
「姫、民間人を王家の馬車になど!!」
「内緒でお願いしますわ、エディ卿」
「はっ、かしこまりました!!」
そうしてエディ卿という黒髪に茶色い瞳の騎士は下がった。俺はお土産は取り上げられ、王家の馬車に放り込まられることになった。しかもプリムローズ第三王女は俺の知り合いだった、さっそく王家の馬車の中でこそこそ話が始まった。
「ラウレール様、お久しぶりでございます。やっぱり生きていらしたのね」
「プリムローズ様も相変わらず、お元気そうで」
「よろしければ私と婚約してくださる? ラウレール様」
「よしてくれ!! 俺には今は妻もいる、名前だってラウルだ」
「あら、それは残念。ふふっ、私も異国の王太子に嫁ぐことが決まっておりますの、ラウレール様のことは黙っておきますわ」
「ナールング国か?」
「ご名答ですわ、海が隔てているとはいえ、あそこは良い貿易先ですから」
「それで俺は何をすればいい?」
「この先のシオンの街に船が用意されておりますので、そこまでの護衛をお願い足します。私はナールング国に嫁ぎますので、ラウレール様ことはここでお忘れしますし、護衛賃を金貨で百枚お払いしますわ」
「分かった」
そうして俺はこのプリムローズというお転婆姫を、シオンの街まで護衛することになったのだ。きな臭い話ではあった、まず王家の馬車が盗賊に襲われているところからして怪しかった。俺は新婚なのになぁと思いつつ、闇でローラに現状を書いた手紙を届けた。
「そもそも王家の護衛が一人ってないだろ、最初は何人いたんだ?」
「大切な結婚ですもの、最初は五十人いましたわ」
「そいつを狙う盗賊って、話が怪し過ぎるぞ」
「私もそう思っておりますの、私が死ねば第四女リリアが嫁げるからかもしれません」
「お前、側室の娘だもんな。正室ってマジむかつくし嫌な奴だな」
「まぁ、それ素敵な表現。でも本当にマジむかつくし嫌な奴ですわ」
そうして俺たちはさっきまでいたグールドの街に着いた。ここで馬車の護衛を補充し、俺は馬車から下りて馬を借りることになった。補充された兵士は二十名と少なかったが、街の規模を考えるとそんなに多くの兵士がいるわけもなかった。そうして今夜はグールドの街に泊まることになった、俺はプリムローズの食事に毒が入ってないことを確認した。そうして夜はプリムローズの部屋の扉に剣を持ったまま寄りかかって寝た。
「シオンの街まで、お姫さんを守り切ればよしか。でも何か起きるだろうからなぁ」
俺は嫌な予感がしながらシオンの街まで馬に乗りながら馬車に並走した、新しく補充した二十名の兵士にもおかしなところはなかった、エディ卿と呼ばれた兵士長が見事に指揮をとっていた。だがそれは起こった、山道を歩いている時に大きな岩が何個も上から落とされたのだった。
「”氷のレール”」
俺はプリムローズの乗っている馬車を守るために固い氷のレールを作り出した。岩たちは氷のレールで滑って馬車には当たらずに下に落ちていった。
「そして盗賊かよ、勘弁してくれ」
山道を走り終わって平坦な道にでたら盗賊が襲ってきた、百名はこえる大所帯だったので乱戦になる前に片付けた。
「”氷の槍・百連”」
それで襲ってきた盗賊達はほとんど死んだ、その残りを兵士達が片付けていた。でも俺はプリムローズが乗っている馬車の異変に気が付いていた、馬車は兵士たちを置いてもいけないので止まっていたが、その中でどうやら騒動が起きていた。
「お慕いしておりました、プリムローズ様、いやプリムローズ」
「あらっ、私は貴方のことが嫌いです。エディ卿」
「そんなこの道中だって、僕のことをじぃっと見つめてくれたじゃないですか、プリムローズ!!」
「それはつっかえねぇーなこの兵士長、敵の一人くらい倒しやがれと思っていたからですわ」
「そんな相思相愛の貴女のお傍を離れることなどできず」
「ふふっ、気持ち悪い。いつから相思相愛などになったのかしら」
「それは今から二年前……」
エディ卿は何かを言いかけたが、馬車の扉を開けた俺に馬車から放り出された。俺はプリムローズを背中に庇いながら、なにか戯言を言っているエディ卿を見ていた。
「あれは今から二年前、プリムローズ様のほうから熱い視線を感じました。それは時が過ぎても変わることはなかった、むしろますます熱くなっていったのです。姫という手前、私を見つめるしかできなかたのでしょう。でも今度の護衛は好機なのです!!」
俺は一方的に愛の言葉を語るエディ卿を見ていた、そしていい加減頭が痛くなってきたのでプリムローズにこう聞いた。
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