俺は死んでるんです

アキナヌカ

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016閃光

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「ヤダ!! 光の精霊。”捕まえよ”」

 聖女ファリーナは俺を捕まえようとした、光の精霊の結界に俺は入れられてしまった。でも俺は慌てずに聖女ファリーナの説得をしてみた。

「聖女ファリーナ、こんなことをしなくてもまた来るよ」
「ずっと一緒にいるのじゃ!! ずっと、ずっと、ずぅっと一緒じゃ!」

「お願いだから、話を聞いてくれ。聖女ファリーナ」
「ヤダ!! 聖者がいたのじゃ、皆。捕まえよ!!」

 今度は神官たちが騒ぎを聞きつけてやってきて、俺を見つけると捕えようとした。俺は落ち着いて金の精霊に頼んで魔法をつかった。

「”幻の剣を今一時だけここに”」

 すると闇を基調とした黒い長剣が現れた、金の精霊が一時だけの幻のような剣を作り出す魔法だ。そうしてその魔剣で俺は自分を包んでいる光の結界を粉々にしてしまった。そうして聖女ファリーナにまたねって言っておいた。

「またね、聖女ファリーナ。また君が一人でいるこんな夜に会いに来るよ」
「ヤダ!? 我も連れていけ!?」

 そうして聖女ファリーナの住んでいる神殿を俺は出て行った、追っ手がかかったが空を飛べる俺に追いつける者はいなかった。そうやって俺はようやくローラの待つ家に帰ってきた、ローラはまた待っていてくれて黒いローブや仮面を外してくれた。金の精霊が生み出した魔剣は役目を終えると消えていってしまった。

「ローラ、これから時々は夜の散歩に行くよ」
「あらやだ、浮気?」

「ははっ、だったら浮気相手は白い髪に赤い瞳の幼い女の子だよ。聖女ファリーナっていうんだ」
「聖女様相手だったら浮気も仕方ないのかしら?」

「俺はローラ一筋だって」
「ふふっ、分かってるわよ。言ってみただけよ、お友達がその子にもいればいいのにね」

 ローラは聖女ファリーナの話を聞いて、俺がこれからも彼女に会いに行くことを許してくれた。俺もローラのようにあの小さな聖女ファリーナにも、友達がいればいいのにと思った。同じ力を持たなくても親身になって相手になってくれる者だ、そういった者くらいなら神殿も用意できるだろうに、今は誰も聖女ファリーナの心の傍にはいてくれないのだ。俺はそれをどうにかできないだろうかと思いつつ、ローラと抱き合って眠ってしまった。翌日は鍛冶屋に行ってみた、そろそろ前に頼んだオリハルコンの剣ができているかなと行ってみた。

「俺の渾身の力で作った逸品だ、でもドワーフたちはもっと良い物を作る。その時は打ち直してもらえ、ほらっ余ったオリハルコンだ」
「へぇ、見た目は黒のロングソードか。切れ味を試してもいいか?」

「店の後ろにわら束を竹に巻いて、何本かおいてある。全部、たたっ斬っていいぞ」
「そうか、それじゃ遠慮なく。おおっ、凄い切れ味だ」

 俺はもしかしてと思って安い剣を買った、銀貨八枚くらいの安い長剣だ。それを竹に刺して置いて黒のロングソードで斬ってみたら、その剣は真っ二つになってしまった。切れ味が異常に良い黒のロングソードだ、鞘も見た目はぼろっちいでも包み込むように持てるものを、鍛冶屋のおっちゃんはつけてくれた。そして鍛冶屋のおっちゃん自身も剣が真っ二つになるのを見て驚いていた。

「まさか、剣まで切るとは思わなかった。取り扱いにはよーく気をつけろよ」
「この剣、名前はあるのか?」

「そうだな名をつけるなら、『閃光』かな」
「『閃光』か、いいね。気に入った」

「ありがとう、鍛冶屋のおっちゃん」
「いやこちらも良い仕事させてもらった、ありがとう」

 そうやって俺は『閃光』という良い剣を手に入れた、泥棒とかに持ってかれちゃ困るから鞘は質素な物だが中身は逸品だ。さっそく俺はローラに報告しにいった、そうしたらローラが笑って言った。

「男の子って玩具をすぐ見せびらかしたがるのよね」
「玩具じゃなくて『閃光』、凄く良く斬れる剣だぜ」

「扱いには気をつけてね」
「大丈夫さ」

 その日は『閃光』の切れ味をあちこちで試して回った、そして夜に帰ってくるとローラからこう言われた。

「ああ、そういえばつきのものが終わったわ」
「ローラ、教えてくれてありがとう。今夜、抱いていいか?」

「手加減をして頂戴、久しぶりだから優しくね」
「うん、分かった」

 その夜俺はローラに優しく触れていった、ローラが喜ぶ愛撫も俺なりに手加減をした。それでもローラが色っぽい声でなくものだから、俺は滅茶苦茶にローラを抱きたくなって我慢した。

「どうしたの、ラウル。気持ち良くないの?」
「気持ち良いよ、でもローラを壊しちゃいそうで怖い」

「そうどんなふうになるのか見せてみて」
「そんな挑発して、俺は知らないからな」

 そこから俺はローラを激しく抱いた、ローラのあげる声が耳に心地よかった。ローラからキスもして貰えた、俺からも何度目か分からないキスをした。そんなふうにして手加減と優しくを忘れずにローラを抱いた、ローラも気持ち良さそうにしていた。

「あっ、ああっ、ああっ、ラウル。ああっ、ああっ ああっ、私いっちゃいそう!!」
「俺もだ気持ちが良い、ローラ、ローラ。君は世界一良い女だ」

 そんな幾夜かの夜を過ごして、俺は聖女ファリーナのことを思い出した。一週間も過ぎているが、十日にはなっていなかった。俺はローラから笑われた。

「ふふっ、幼い子の一晩は長いわよ、それが続けばなおのことね」
「君が魅力的すぎて、すっかり忘れてた」

 そうして黒いマントと目元には仮面をつけて、聖女ファリーナに会いに行ってみた。多分だが相当怒ってらっしゃるはずで、実際に彼女は怒っていた。

「九日も会いに来ないとは何事じゃ!! 我は怒っとるのじゃぞ、笑うな!!」
「ごめん、君の怒っている顔が面白くて、ははっ」

「……もう来ぬのかと思うたのじゃ」
「また来るっていっただろ、いやうちの奥さんが愛おしくてね」

「我に会いに来ないのならその奥方は……」
「駄目、駄目だよ。聖女ファリーナ、俺は奥さんを愛してるから、傷つけるようなことは許さない」

 そう言うと聖女ファリーナは黙った、クッションがいっぱい置いてある寝所で、そのクッションをポカポカと叩きだした。

「そうそう、聖女ファリーナ。今日は君に保護者にも会いたくてきたんだ」
「我の保護者か、神官長じゃ。誰か、起こしてつれてくるのじゃ」

 俺が聖女ファリーナが一人でいるところに降り立ってから、すぐに密かに人が集まりだした。聖女ファリーナを守るためだ、そしてそのうちの一人は白髪に黒い瞳の老人である神官長を連れてきた。

「あのさ、神官長様。聖女ファリーナには友達が必要だよ、ここは安全で綺麗な監獄だ」
「確かにそうではあるのですが、聖女ファリーナ様のお相手となるとすぐには用意できません」
「何故、用意できんのじゃ!?」

「神殿にいる同い年の孤児院の子とかでいいんじゃないの?」
「そんな子どもたちが聖女様に傷をつけでもしたら!?」
「我は構わんぞえ、我も友達と喧嘩や仲直りをするのじゃ!!」

 そうして神官長は聖女ファリーナの同い年の女の子を、友達として孤児院から選ぶと約束した。俺は確かにそう聞いた、俺は約束を守らないやつは大嫌いだ。くれぐれも頼むよと神官長を脅しておいて俺は聖女ファリーナにさよならを言って今日は別れた。

「さようなら、聖女ファリーナ。次は君の友達を紹介しておくれ」
「うむ、分かったのじゃ。また必ずくるのじゃぞ」

 そうしてその日は別れた、また彼女と会う時が楽しみだった。どんなお友達を神殿が用意するのか、それは見る価値があるものだった。それから俺は普通の日々を過ごして、一週間後に聖女ファリーナの様子を見に行った。

「お友達というのはすかん!!」
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