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2-29こんな相手に負けられない
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「もう終わりだぜ、坊主」
「――――ッ!!」
俺は少しだけ油断をしてしまっていた、ラバードに隙がうまれないかと誘って動きながら、逆に俺にはほんの少しだけ隙ができていたのだ。それを見逃すような相手じゃなかった、俺は右肩から左の腹までをバッサリと大きく斬られた。このままだと俺はこのラバードという男に負ける、そうしたら俺はアクアという大切な家族や、それに大事な友人であるレンやリッシュを永遠に失ってしまうのだ。
アクアは防御や回復の上級魔法の使い手だった、それがバレたら国に囚われてしまうのは確実だった。レンはドラゴンだからもしその正体を人間が知ったら、生きたままで体をバラバラにされてしまうかもしれなかった。リッシュはエルフだから奴隷制がある国、このリジエール国ではきっと碌な扱いを受けれないはずだった。俺は咄嗟にそんな仲間たちの無残な姿の幻を見た、いやこのままでは確実にそうなる未来を見たのだ。
「おお、なんだ。そんな傷で立ち上がるのかよ、坊主」
「――――絶対に、――――ゆるせない!!」
俺の心臓が力強く早く脈打っていた、体のあちこちが熱くて今にも爆発しそうだった。こんな感覚は以前にも感じことがあった、そう体中が熱くなって力が湧き上がってくるのだ。これはドラゴンに変わる時にも似ていた、でもいつもの変身とは全く違っていた。俺はそうして人間の姿のままで、そう体がドラゴンに変わることなく、ただの人間の姿のままで中身だけが変化していった。体が熱くてしかたがなかった、でも俺の体にはドラゴンの時と同じような、とても大きな力が湧き上がってきた。
俺の体はドラゴンには変わらなかった、でもドラゴンのように強靭な皮膚が俺の体の表面を覆った。そして俺の爪は大きくはならなかったが、ドラゴンのようにとても固く鋭くなっていた。口の中でも歯が大きく変化して、少しだけ大きな牙らしきものに変わっていた。俺はドラゴンのように強い人間になった、そう最強の聖獣であるドラゴンのように、強く強靭な肉体を持つ何かに生まれ変わっていた。
「なんだぁ、この化け物は!?」
「煩い!! お前はもう死ねえぇぇ!!」
俺はラバードという男が防ぎきれないほどの速さで動き、そしてその目障りな男を思いっきり遠くまで右足で蹴り飛ばした、俺の蹴りを受けてラバードはそのあたりに偶々あった岩まで吹っ飛んだ。そうして内臓をどこかやられたのか口から少しだけ真っ赤な血を吐いた。それでもラバードはすぐに立ち直って、俺に向かって素早く走り寄ってきた。俺は体中に溢れ出てきた力を集中させた、それは俺の体にまた新たな変化を促した。
「おいおい、嘘だ……ろ…………」
「あああぁぁぁぁ!!」
俺は体にあった大きな傷が治っていくのを感じた、ラバードという男が振り下ろすロングソードの動きを感じた。そうして俺は今までにはない爆発的な力で、そんな力のままでショートソードをラバードに向かって振り下ろした。俺のショートソードは思わず防御したラバードのロングソードごと、そうロングソードすら断ち斬って、ラバードという男の体を真っ二つに斬り離してしまった。
「えっ!? こんなの嘘よ!! 嫌あああぁぁ!? ラバード!!」
「全く隙だらけだぜ、こんっのくそシーフ!!」
「え!? きゃあああぁぁぁ!!」
「死にやがれぇ!!」
俺とラバードの決着がついたその時だった、ラバードの仲間だったシーフのフェーヤは油断した。そうしてレンに対して隙を見せてしまった、レンがそんな好機を見逃すわけがなかった。レンは渾身の力のふりしぼって、ロングソードをフェーヤに向かって振り下ろした。フェーヤが悲鳴を上げて防御したが、そんな力ではもうレンの攻撃を受け止めることはできず、彼女はレンのロングソードで首から肩を斬り落とされていた。
「嘘よ、ラバードが!? 嫌あぁぁ、フェーヤ!!」
「ああ、神よ!?」
「お嬢様、どうか僕たち全員をお守りください!!」
「うん、分かったの!!」
「え? 嫌よ!! 死ぬのは嫌あぁぁ!!」
「神よ、か弱き我らをどうかお守りください!! 『聖なる守り』!!」
「僕の一撃を受けるといいでしょう、『抱かれよ煉獄の暴風撃』!!」
「私は皆を守ってみせるの、同時発動なの!! 『完全なる聖なる守り』!!」
ラミアという魔法使いは仲間たちの死、そうラバードそれにフェーヤの死に激しく動揺した。それでラミアは咄嗟に魔法を使えなかった、動揺したあまりに魔力を上手く扱えなかったのだ。それに対してリッシュが風の上級魔法を彼女達を中心に行使した、激しい風が吹きそれが肉を切り裂く斬撃となった。そうしてここにいる俺たち全員に向かって、死を運ぶ風が凄い勢いで襲い掛かってきた。
だが俺たちにはアクアがいた、そう心優しくとても強い仲間がいた。アクアは防御の上級魔法を俺にも、そしてレンにも、もちろん自分とリッシュにも同時に発動させた。こんなことは理論上は全く無茶な話だった、そしてアクアがかなりの魔力を持っていなければできないことだった。俺やレンそれにアクアとリッシュ、俺たち全員がアクアの魔法によって守り抜かれた。
それに対してラミアと一緒にいたエトワール、エトワールは防御の中級魔法を使った。でも風の上級魔法を防御の中級魔法だけでは防げなかった、やがて彼女たちの防御魔法を打ち破り、無慈悲な風の刃が二人の肉体を切り刻んでしまった。そうしてしばらくは暴風が荒れ狂っていたが、いくらか時間が経つとその風はおさまって、俺とアクアにレンそれにリッシュだけがその場に立ち尽くしていた。
「アクア無事か!!」
「うん、シエル。大丈夫なの」
「シエル、お前こそ大丈夫かよ」
「皆様、ああ、ご無事で良かった」
俺は真っ先に一番無茶をしたはずのアクアに駆け寄った、そうしたらアクアは大丈夫と言いながら、俺の腕の中に倒れこんできた。少しだけアクアの顔色は悪かったが、それは大量の魔力を一度に使ったせいだった。アクアの無事を確認したら俺も倒れそうになった、俺の姿はごく普通の人間に戻っていたが、なんというか俺の人間の体である全身が悲鳴を上げているようだった。
「リッシュ、お前も手伝え。シエルにだ、『大治癒』!!」
「はい、お手伝い致します。『大治癒』!!」
「一度じゃ駄目だ、『大治癒』!!」
「はい、何度でも使いましょう。『大治癒』!!」
「もう一回だ、『大治癒』!!」
「はい、『大治癒』!!」
どうやら俺の体は限界以上に動かしたせいで、あちこちの腱や小さな筋肉が千切れているようだった。レンとリッシュが自分たちのできるだけの魔法、回復の中級魔法を何度か使ってくれたので、それで俺はどうにか体を動かせるようになった。だが体の大きな脱力感だけはどうしようもなかった、これは大き過ぎる力を使ったせいで、体が自然と休養を欲しているのだった。それでも、俺は自分の足で立ち上がった。
「目立たないように早くこの山を下りてしまおう、さっきの大地震はきっと近くの街でも、いやこの国の人間なら皆が感じとれたはずだ」
「分かった、このチビは俺様が背負っていく!!」
「うん、アクアはレンに。シエルはリッシュに頼むの」
「分かりました、僕がシエル様をお運びしましょう!!」
そうして俺たちはさっさと山を下りることにした、リジエール国の軍事施設という危険なところから、一刻も早く俺たちは目立たずに消え去っておくべきだった。俺は自分で自由に動けないのが悔しかったが、リッシュの背中に乗せてもらって移動した、アクアもしっかりとレンが背負ってきてくれた。山を下りて行く間に俺たちは、誰かに監視されていないか常にそのことに注意した。
俺はリッシュの背中で『広範囲探知』の魔法を何とか使って、人間である大きな光は避けて進んで貰った。そうして俺たちは山を下りることができた、そこからは街道を使って普通の人間のふりをして進んだ、そして数日が経ってようやく隣の国の国境まで逃げ延びた。俺の体もいつも通りと言えるくらいに回復した、アクアもレンの背中でよく眠ってもう魔力も全回復していた。
国境ではポーラスタという国の兵士がいた、この国には奴隷制が無いと事前に俺たちは聞いていた。俺はいつものように商人らしく、そうただの商人に見えるように、愛想良く兵士たちに挨拶した。
「こんにちは。俺は商人のシエル、こっちは俺の妹のアクア。それに護衛であるレンとリッシュです」
「――――ッ!!」
俺は少しだけ油断をしてしまっていた、ラバードに隙がうまれないかと誘って動きながら、逆に俺にはほんの少しだけ隙ができていたのだ。それを見逃すような相手じゃなかった、俺は右肩から左の腹までをバッサリと大きく斬られた。このままだと俺はこのラバードという男に負ける、そうしたら俺はアクアという大切な家族や、それに大事な友人であるレンやリッシュを永遠に失ってしまうのだ。
アクアは防御や回復の上級魔法の使い手だった、それがバレたら国に囚われてしまうのは確実だった。レンはドラゴンだからもしその正体を人間が知ったら、生きたままで体をバラバラにされてしまうかもしれなかった。リッシュはエルフだから奴隷制がある国、このリジエール国ではきっと碌な扱いを受けれないはずだった。俺は咄嗟にそんな仲間たちの無残な姿の幻を見た、いやこのままでは確実にそうなる未来を見たのだ。
「おお、なんだ。そんな傷で立ち上がるのかよ、坊主」
「――――絶対に、――――ゆるせない!!」
俺の心臓が力強く早く脈打っていた、体のあちこちが熱くて今にも爆発しそうだった。こんな感覚は以前にも感じことがあった、そう体中が熱くなって力が湧き上がってくるのだ。これはドラゴンに変わる時にも似ていた、でもいつもの変身とは全く違っていた。俺はそうして人間の姿のままで、そう体がドラゴンに変わることなく、ただの人間の姿のままで中身だけが変化していった。体が熱くてしかたがなかった、でも俺の体にはドラゴンの時と同じような、とても大きな力が湧き上がってきた。
俺の体はドラゴンには変わらなかった、でもドラゴンのように強靭な皮膚が俺の体の表面を覆った。そして俺の爪は大きくはならなかったが、ドラゴンのようにとても固く鋭くなっていた。口の中でも歯が大きく変化して、少しだけ大きな牙らしきものに変わっていた。俺はドラゴンのように強い人間になった、そう最強の聖獣であるドラゴンのように、強く強靭な肉体を持つ何かに生まれ変わっていた。
「なんだぁ、この化け物は!?」
「煩い!! お前はもう死ねえぇぇ!!」
俺はラバードという男が防ぎきれないほどの速さで動き、そしてその目障りな男を思いっきり遠くまで右足で蹴り飛ばした、俺の蹴りを受けてラバードはそのあたりに偶々あった岩まで吹っ飛んだ。そうして内臓をどこかやられたのか口から少しだけ真っ赤な血を吐いた。それでもラバードはすぐに立ち直って、俺に向かって素早く走り寄ってきた。俺は体中に溢れ出てきた力を集中させた、それは俺の体にまた新たな変化を促した。
「おいおい、嘘だ……ろ…………」
「あああぁぁぁぁ!!」
俺は体にあった大きな傷が治っていくのを感じた、ラバードという男が振り下ろすロングソードの動きを感じた。そうして俺は今までにはない爆発的な力で、そんな力のままでショートソードをラバードに向かって振り下ろした。俺のショートソードは思わず防御したラバードのロングソードごと、そうロングソードすら断ち斬って、ラバードという男の体を真っ二つに斬り離してしまった。
「えっ!? こんなの嘘よ!! 嫌あああぁぁ!? ラバード!!」
「全く隙だらけだぜ、こんっのくそシーフ!!」
「え!? きゃあああぁぁぁ!!」
「死にやがれぇ!!」
俺とラバードの決着がついたその時だった、ラバードの仲間だったシーフのフェーヤは油断した。そうしてレンに対して隙を見せてしまった、レンがそんな好機を見逃すわけがなかった。レンは渾身の力のふりしぼって、ロングソードをフェーヤに向かって振り下ろした。フェーヤが悲鳴を上げて防御したが、そんな力ではもうレンの攻撃を受け止めることはできず、彼女はレンのロングソードで首から肩を斬り落とされていた。
「嘘よ、ラバードが!? 嫌あぁぁ、フェーヤ!!」
「ああ、神よ!?」
「お嬢様、どうか僕たち全員をお守りください!!」
「うん、分かったの!!」
「え? 嫌よ!! 死ぬのは嫌あぁぁ!!」
「神よ、か弱き我らをどうかお守りください!! 『聖なる守り』!!」
「僕の一撃を受けるといいでしょう、『抱かれよ煉獄の暴風撃』!!」
「私は皆を守ってみせるの、同時発動なの!! 『完全なる聖なる守り』!!」
ラミアという魔法使いは仲間たちの死、そうラバードそれにフェーヤの死に激しく動揺した。それでラミアは咄嗟に魔法を使えなかった、動揺したあまりに魔力を上手く扱えなかったのだ。それに対してリッシュが風の上級魔法を彼女達を中心に行使した、激しい風が吹きそれが肉を切り裂く斬撃となった。そうしてここにいる俺たち全員に向かって、死を運ぶ風が凄い勢いで襲い掛かってきた。
だが俺たちにはアクアがいた、そう心優しくとても強い仲間がいた。アクアは防御の上級魔法を俺にも、そしてレンにも、もちろん自分とリッシュにも同時に発動させた。こんなことは理論上は全く無茶な話だった、そしてアクアがかなりの魔力を持っていなければできないことだった。俺やレンそれにアクアとリッシュ、俺たち全員がアクアの魔法によって守り抜かれた。
それに対してラミアと一緒にいたエトワール、エトワールは防御の中級魔法を使った。でも風の上級魔法を防御の中級魔法だけでは防げなかった、やがて彼女たちの防御魔法を打ち破り、無慈悲な風の刃が二人の肉体を切り刻んでしまった。そうしてしばらくは暴風が荒れ狂っていたが、いくらか時間が経つとその風はおさまって、俺とアクアにレンそれにリッシュだけがその場に立ち尽くしていた。
「アクア無事か!!」
「うん、シエル。大丈夫なの」
「シエル、お前こそ大丈夫かよ」
「皆様、ああ、ご無事で良かった」
俺は真っ先に一番無茶をしたはずのアクアに駆け寄った、そうしたらアクアは大丈夫と言いながら、俺の腕の中に倒れこんできた。少しだけアクアの顔色は悪かったが、それは大量の魔力を一度に使ったせいだった。アクアの無事を確認したら俺も倒れそうになった、俺の姿はごく普通の人間に戻っていたが、なんというか俺の人間の体である全身が悲鳴を上げているようだった。
「リッシュ、お前も手伝え。シエルにだ、『大治癒』!!」
「はい、お手伝い致します。『大治癒』!!」
「一度じゃ駄目だ、『大治癒』!!」
「はい、何度でも使いましょう。『大治癒』!!」
「もう一回だ、『大治癒』!!」
「はい、『大治癒』!!」
どうやら俺の体は限界以上に動かしたせいで、あちこちの腱や小さな筋肉が千切れているようだった。レンとリッシュが自分たちのできるだけの魔法、回復の中級魔法を何度か使ってくれたので、それで俺はどうにか体を動かせるようになった。だが体の大きな脱力感だけはどうしようもなかった、これは大き過ぎる力を使ったせいで、体が自然と休養を欲しているのだった。それでも、俺は自分の足で立ち上がった。
「目立たないように早くこの山を下りてしまおう、さっきの大地震はきっと近くの街でも、いやこの国の人間なら皆が感じとれたはずだ」
「分かった、このチビは俺様が背負っていく!!」
「うん、アクアはレンに。シエルはリッシュに頼むの」
「分かりました、僕がシエル様をお運びしましょう!!」
そうして俺たちはさっさと山を下りることにした、リジエール国の軍事施設という危険なところから、一刻も早く俺たちは目立たずに消え去っておくべきだった。俺は自分で自由に動けないのが悔しかったが、リッシュの背中に乗せてもらって移動した、アクアもしっかりとレンが背負ってきてくれた。山を下りて行く間に俺たちは、誰かに監視されていないか常にそのことに注意した。
俺はリッシュの背中で『広範囲探知』の魔法を何とか使って、人間である大きな光は避けて進んで貰った。そうして俺たちは山を下りることができた、そこからは街道を使って普通の人間のふりをして進んだ、そして数日が経ってようやく隣の国の国境まで逃げ延びた。俺の体もいつも通りと言えるくらいに回復した、アクアもレンの背中でよく眠ってもう魔力も全回復していた。
国境ではポーラスタという国の兵士がいた、この国には奴隷制が無いと事前に俺たちは聞いていた。俺はいつものように商人らしく、そうただの商人に見えるように、愛想良く兵士たちに挨拶した。
「こんにちは。俺は商人のシエル、こっちは俺の妹のアクア。それに護衛であるレンとリッシュです」
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