現代最強とかなりたくない

アキナヌカ

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07ギルドへの誘いと普通の覚醒者

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「へぇ、そうか。悪いが俺はそのギルドとやらに興味が無い」
「ささらも和樹と同じー!!」

 すると生徒会長は長くて整えてある黒髪を揺らした、その目は茶色の瞳でこっちをキッと睨んだ、そうして話し出したのは恨み言に近かった。

「貴方たち数か月前に空に文字が出ていたこと知ってるでしょう、そしてその時に二人とも一週間欠席している、あれが大事な物だって知っていたのね」
「知らなかった、それに出席するのも欠席するのも俺たちの勝手だ」
「そうだよぉ、問題なし」

わたくし生徒会長である笹貫沙織ささぬきさおりに報告してもよかったわよ!! いいえ。もっと沢山の人に周知するべきだったんじゃない!?」
「なんでいちいちそんなことをしなければならない」
「競争率が上がるだけ」

「私はできるだけの近くにある光を集めることができたけど、学校を休んでまでとは思わなかった。今なら貴方たちと同じようにしておけば良かったと後悔してる、だからせめて私のギルドに入って頂戴」
「返事は変わらない」
「ささらもやっぱり和樹と同じー!!」

 そう言って俺たちは生徒会室を出ていくことにした、すると意外なことに笹貫沙織は俺達を止めなかった。ただ意味ありげに微笑んでいるだけだった、恨み言というか愚痴を少し言いたかっただけかもしれなかった。

「結局、何が言いたかったんだ?」
「うーん、人に盗られるまえに名前だけでも売りたかったっぽい」

「存在を知っていて欲しかっただけか」
「そうそう、覚醒者が他にもいるんだって、特に自分はお買い得ってお知らせっぽい」

 帰り道にささらと生徒会室でさっきのことを話していたら、ささらの意見ではとりあえず自分をアピールしておきたかっただけのようだ。覚醒者はやはり空の文字を見てふわふわの光を集めたんだろう、ただ俺達のように学校というものを休んでまでは熱心になれなかったようだ。

「そう言えば普通の覚醒者はどのくらい強いんだろうな?」
「あのふわふわした光はいっぱいあったから、多分物凄く強さに差が出ているはず」

「現代最強じゃなく普通に見えるようにしときたいなぁ」
「うーんと、それじゃ普通の覚醒者を組む?」

「組んで強さのほどを見せて貰うってことか」
「そうそう、政府の覚醒者用の受付付近にパーティを組みたい人がごろごろ」

 俺たち二人は一度だけ普通の覚醒者とパーティを組んでみることにした、その次の休みに政府の覚醒者用の受付近くで仲間になりそうな人を探してみた。ささらの交渉力ですぐに三人できているパーティと組むことになった、皆日本人らしく髪は黒く目の色は茶色だった。

押条めぐみおすじょうめぐみだよ、よろしくね!! 主にヒーラー」
大澤大輔おおざわだいすけだ、魔法剣士だ。よろしく!!」
芦田功あしだいさおです、まぁ魔法剣士です。よろしくお願いします」

 女の子がヒーラーで男二人が魔法剣士というパーティだった、覚醒者が出るようになってから銃刀法も改正されて、覚醒者なら武器を持ち歩くことが可能になっていた。三人は防具もつけていた、対しておれたちは私服で武器も防具も持っていなかった。

坂井和樹さかいかずきです、ええっ、ささらを守るタンクとヒーラーかな。よろしく」
今井ささらいまいささらだよ、魔法使いだね。よろしくー」

 どうやら俺とささらは三人のパーティにダンジョン初心者だと思われたらしく、無理をしないでいいからねとお気遣いのお言葉まで頂戴した。

「それじゃ、行ってみよう!! 今日のダンジョンは狼のダンジョンだ、数が多いから気をつけていこう!!」

 押条めぐみと名乗った少女がそう言って、俺たちはしばらく移動してゲートから狼のダンジョンに入っていった。他にも覚醒者が来ていて入り口はごった返していたが、皆で通路に出ると普通に歩けるようになった。そして六匹の狼がいきなり襲ってきた。

「『氷撃矢アイスアロー』!! っておらぁ!!」
「『火炎矢フレイムアロー』!! っと、えいっ!!」
「『障壁バリア』それに『治癒ヒール』!!」

 二人の魔法戦士は最初に数本の矢の魔法で攻撃して一体ずつ倒し、もう四体は剣で斬り殺そうとしていた。ヒーラーは自分を『障壁バリア』で守りつつ、怪我をすればすぐに『治癒ヒール』をとばしてかけていた。

「なるほどささら、良い連携だ。それに同じ『氷撃矢アイスアロー』でも、大輔くんが使うのとささらが使うのとじゃ威力が格段に違うな」
「同じ魔法でも使う人によって威力が変わってくる、勉強になったね!!」

 そうして三人のパーティはどうには狼を六匹倒していた、怪我もしていたが回復魔法のおかげで大丈夫そうだった。そして落ち着いたら先に進むと、今度は十匹ほどの狼が走ってきた。三人のパーティが青い顔をすると、俺たちが今度は前に出た。

「お二人とも、無理よ!?」
「逃げんのも仕事のうちだぞ!!」
「無理はしないのです!!」

 俺はご心配なくと俺はささらをお姫様抱っこして『聖なる守りホーリーグラウンド』の魔法を使った、ささらは満足そうに笑いながら『氷撃矢アイスアロー』で百本を超える矢を狼に飛ばして十匹いじょういた狼を打ち取っていた。

「過剰防衛だが、俺のお姫様は大事に守らねばなるまい。『聖なる守りホーリーグラウンド』」
「和樹にお姫様扱いされるとゾクゾクするぅ、いっちゃえ『氷撃矢アイスアロー』!!」

 こうして十匹以上の狼は倒した、俺たち以外の三人のパーティはポカーンと口を開けていた。

「狼たちは倒しました、先へ進もう」
「ひゃ、ひゃい」

 俺の言葉に押条めぐみさんが辛うじて返事をした、それからも狼の数が少なければ三人のパーティに、多ければ俺とささらが魔法で殺していった。そうやって進んでボスの部屋に着いたのだが、残念なことに他のパーティがボスを倒して出てきたところだった。俺たちは来た道を戻り、政府の覚醒者専用受付に戻ってきていた。そこで魔石を換金して三人のパーティは大喜びしていた、おそらく良い収入になったのだ。

「ああ、忘れないうちに頼む。今日はとても良い稼ぎになったと思う、その報酬に免じて俺たちのことは忘れてくれないか? 当分パーティを組む予定はないんだ」
「そうそう、ささらたちのことは夢幻だったと思って」
「………………はっ、はい!!」
「………………わっ、分かった!!」
「………………りっ、了解です!?」

 三人のパーティは快く頷くと、逃げるようにして帰っていった。俺たちも普通の覚醒者の戦い方を見るという目的が達成されたので、お祝いにちょっと高い美味しいステーキをだす店にいくことにした。そして食べながらささらと話し合った。

「普通の覚醒者ってあんなに弱いのか」
「和樹と私が異常なの!!」

「俺はただふわふわした光を集めただけなのに」
「あれがどうも魔力を生み出す塊だと思うんだよね」

「そういえば俺たちは魔力切れを起こした事も無いな」
「そうだね。向こうのパーティ、途中で魔力切れてた」

 まぁ俺は今回の件で普通の覚醒者がどんなものか学んだ、俺とささらも誰かと組む時は普通の覚醒者っぽく振る舞おうと思った。そうしてふと気になった、現代最強の方はどれほど強いのだ。

「今、現代最強っていうのは誰なんだ?」
「世界一は知らないけど、日本一なら河田めぐみかわだめぐみってひとがニューチューブで言ってたよ。あくまでも自称、日本最強だけど」

 自称といえど日本最強というくらいだ、どれだけ強いのだろうか、見てみたいと俺は強く思った。

「それじゃ、俺は帰ったらその動画を見てみる」
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