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1-5騎士になる
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「か、神や、音楽の神様がここにいる!!」
「えっ!? 僕はただのエルフで、神様でもなんでもないですよ」
「いーや、あんたは神や、あたしを助けてくれる神様やー!!」
「はっ、はい?」
それから僕に向かって頭を下げるミーティアという少女を宥めるのは大変だった、どうにかこうにかお話をして彼女を落ち着かせて、酒場の端っこにあるソアンの待っている席に二人で戻った。何故か席に戻るまでの道のりで銅貨や人によっては銀貨を全て合わせて何十枚か貰った、どうやら僕の歌に対するお礼らしいので有難く受け取っておいた。ソアンはミーティアを見てちょっと不満そうな顔をして何か言いかけたが、その彼女の可愛いお口に僕はパンの塊を押しつけて黙らせた。
「神様、どうかお願いや」
「ええと、僕は神様ではなくただのエルフです」
「それでもええのや、あたしの話を聞いてつかあさい」
「はぁ、まぁ、話だけなら」
「あたしの歌の師匠になってや!!いやなってください!!」
「し、師匠!?」
そうしてミーティアの話を聞いてみるとこういうことだった、ミーティアは元々親御さんが吟遊詩人だった。その親御さんに憧れてミーティアも吟遊詩人になった、でも親御さんにも教えて貰って彼らより上手くなったが、その親御さん以上に楽器の腕が上達しない、それに楽器に気をとられていると歌に集中できないということだった。だから、自分より上手い吟遊詩人に弟子入りしたかった、自分を変えたくてたまらなかったのだと彼女は教えてくれた。
「僕でできることなら教えてあげるけどね、楽器は練習しただけ上手くなるものだよ」
「でも昼間は冒険者稼業で忙しいし、練習ができるのは本番の夜だけやねん」
「あっ、冒険者なんだ。朝、早起きして練習してみたらどうかな」
「朝に楽器を弾くとうるさいって怒られんねん」
「そうか、吟遊詩人だけで食べていけないの?」
「あたしの腕やと無理、師匠くらい上手かったら別やけど」
確かにさっき貰った銅貨や銀貨だけで僕は数日は何もせずに食べていけるだろう、それに比べてミーティアが見せてくれた今日稼いだ金額は青銅貨や小銅貨が多かった。でもこれは練習量と持って生まれた才能の問題だった、ミーティアの才能は悪くない様に思う、だが本番の夜だけ楽器に触れるというのは少ない。僕はエルフだから若い頃は一日中だってハープを触っていたこともある、僕とミーティアとの違いは圧倒的な練習量なのは明らかだった。
「魔法みたいにすぐに上手くなる方法はない、僕は少なくとも教えられないよ」
「それでもいいけ、どうか指摘だけでもしてや。あたしはもうどこが良くて、どこが悪いかも分からんねん」
「それでもいいならいいよ、でも条件がある。ミーティアさん、貴女も僕に歌を教えてくれ」
「へっ、そんなんでええの?」
「それでいいよ、僕には圧倒的に知っている曲と情報が足りないんだ」
「ほんなんでええなら、取引するわ。これからよろしく、師匠!!」
そんなこんなで僕はミーティアに音楽を教えることになった、基本はできているのだから僕がするのは変に身についている癖をなおすこと、それに間違いをなおして正解を実演してみせることくらいだ。僕とミーティアとの取引にソアンは不満そうだった、でも口の中のパンを吐き出して抗議したりはしなかった。
翌日の朝になると僕たちは冒険者ギルドに出かけていった、僕の吟遊詩人という仕事だけでも十分に暮らしていけそうだが、何かの拍子にお金が必要になるかもしれないからだ。
「それじゃ、ソアン。どの仕事をしようか」
「うーん、そうですね。薬草採取をしながら、お金になりそうな動物を狩るっていうのはどうです?」
「いいね、安全を第一に」
「でもダンジョンとかにもいずれは行きたいですね」
「それはもっと強くなってから考えよう」
「はーい、私の力を見てくださいね」
こうして僕たちは薬草採取の依頼を受けて、近くにある森に入っていった。しかし、森はいい。そして、なにより今の自由がいい。ここには若長候補なんだから駄目な姿を見せないでくださいとか、若長候補なんですから研究を早くすすめてくださいとか、若長候補なんですからハーフエルフなんかと遊んではいけません。なんてお節介をやくエルフがいない、それだけで僕の心は随分と軽くなった。
「リタ様、薬草ありました!!」
「ああ、ソアン。それはよく似ているけど違う毒草だね」
「ど、毒!!」
「薬草は薬草なんだけど、このクレーネ草を口にすると頭の働きがとても鋭くなるんだ」
「で、でも毒草なんですよね?」
「そうこれには中毒性があってね、これを口にするといずれこれなしではいられなくなるそうだよ」
でもこのクレーネ草を一時的に薬として使うこともある、他の薬草と混ぜて使うと中毒性を和らげて、とても鋭い思考能力を与えてくれるそうだ。そういう薬を作るのもいいだろうと、僕は薬草入れの中にクレーネ草を入れておいた。そうしてからポーションの材料になる癒し草を探す、あちこちに生えているのだがクレーネ草に騙されそうになったりもした、それでも100本ほどが採れて冒険者ギルドで換金した。1本が銅貨1枚で合計で金貨1枚にもなった、だがこれでこの辺りの癒し草は取りつくしてしまった。根は残して葉だけをとってきたけれど、再び採取できるのはまたしばらく先になるはずだ。
「それでソアン、あれどうにかできる?」
「お任せください、リタ様。私の力を見せれる良い機会です!!」
次の日に薬草の様子を見に出てきて、ソアンに疑問を投げかけた僕の目線の先にはワイルドボアが一頭うろうろしていた、雑食性の猪のような魔物で肉の味は猪とそう変わりはないはずだ。雑食性なので冒険者の初心者に体当たりしてきて鋭い牙に突き刺し、押し倒して逆に冒険者が食べられる側になった。なんて話も聞く魔物である、以前なら僕が魔法で援護してあげれたので心配なかったが、ソアン一人で大丈夫だろうかと心配になった。
「リタ様は私がお守りします、このくらいの魔物ならご安心ください」
「くれぐれも無理はしないように」
「はい!! ではいきますっ――!!」
ソアンは自分の身長くらいある大剣を軽々と片手で持ち、ワイルドボアに逆に突っ込んでいった。僕は何が起こってもいいように短剣を取り出して、同時に近くにいる精霊に向かって呼びかけておいた。
僕の呼びかけに現れたのはシルフだった、透き通った羽の生えた人間のような女性で僕の手のひらくらいの大きさだがその力は絶大だ。ワイルドボアくらいの魔物なら両断してみせるだろう、でも精霊は気紛れなのが大きな欠点でもあるのだ。
今回は僕の呼びかけに現れてくれたが、いつも応じてくれるとは限らない。存在自体が世界の大きな力である精霊と、生身で生きている僕たちエルフでは考え方に物凄い差があるのだ。
そうしているうちにソアンはワイルドボアに辿り着き、ソアンに気づいたワイルドボアのその突き刺しを見事に躱して死角に潜り込み、持っている大剣で軽々とその首を斬り飛ばしてしまった。僕は精霊の力を行使しなくてすんでほっとした、精霊にはお礼を言ってまた世界の環に帰って貰った。
「リタ様、私やりました!!」
「凄いね!! ソアン」
「私のこの力はリタ様のために」
「ソアンは僕の小さな騎士さんみたいだ」
「はい、私はリタ様の騎士になりたいです!!」
「えっ!? 僕はただのエルフで、神様でもなんでもないですよ」
「いーや、あんたは神や、あたしを助けてくれる神様やー!!」
「はっ、はい?」
それから僕に向かって頭を下げるミーティアという少女を宥めるのは大変だった、どうにかこうにかお話をして彼女を落ち着かせて、酒場の端っこにあるソアンの待っている席に二人で戻った。何故か席に戻るまでの道のりで銅貨や人によっては銀貨を全て合わせて何十枚か貰った、どうやら僕の歌に対するお礼らしいので有難く受け取っておいた。ソアンはミーティアを見てちょっと不満そうな顔をして何か言いかけたが、その彼女の可愛いお口に僕はパンの塊を押しつけて黙らせた。
「神様、どうかお願いや」
「ええと、僕は神様ではなくただのエルフです」
「それでもええのや、あたしの話を聞いてつかあさい」
「はぁ、まぁ、話だけなら」
「あたしの歌の師匠になってや!!いやなってください!!」
「し、師匠!?」
そうしてミーティアの話を聞いてみるとこういうことだった、ミーティアは元々親御さんが吟遊詩人だった。その親御さんに憧れてミーティアも吟遊詩人になった、でも親御さんにも教えて貰って彼らより上手くなったが、その親御さん以上に楽器の腕が上達しない、それに楽器に気をとられていると歌に集中できないということだった。だから、自分より上手い吟遊詩人に弟子入りしたかった、自分を変えたくてたまらなかったのだと彼女は教えてくれた。
「僕でできることなら教えてあげるけどね、楽器は練習しただけ上手くなるものだよ」
「でも昼間は冒険者稼業で忙しいし、練習ができるのは本番の夜だけやねん」
「あっ、冒険者なんだ。朝、早起きして練習してみたらどうかな」
「朝に楽器を弾くとうるさいって怒られんねん」
「そうか、吟遊詩人だけで食べていけないの?」
「あたしの腕やと無理、師匠くらい上手かったら別やけど」
確かにさっき貰った銅貨や銀貨だけで僕は数日は何もせずに食べていけるだろう、それに比べてミーティアが見せてくれた今日稼いだ金額は青銅貨や小銅貨が多かった。でもこれは練習量と持って生まれた才能の問題だった、ミーティアの才能は悪くない様に思う、だが本番の夜だけ楽器に触れるというのは少ない。僕はエルフだから若い頃は一日中だってハープを触っていたこともある、僕とミーティアとの違いは圧倒的な練習量なのは明らかだった。
「魔法みたいにすぐに上手くなる方法はない、僕は少なくとも教えられないよ」
「それでもいいけ、どうか指摘だけでもしてや。あたしはもうどこが良くて、どこが悪いかも分からんねん」
「それでもいいならいいよ、でも条件がある。ミーティアさん、貴女も僕に歌を教えてくれ」
「へっ、そんなんでええの?」
「それでいいよ、僕には圧倒的に知っている曲と情報が足りないんだ」
「ほんなんでええなら、取引するわ。これからよろしく、師匠!!」
そんなこんなで僕はミーティアに音楽を教えることになった、基本はできているのだから僕がするのは変に身についている癖をなおすこと、それに間違いをなおして正解を実演してみせることくらいだ。僕とミーティアとの取引にソアンは不満そうだった、でも口の中のパンを吐き出して抗議したりはしなかった。
翌日の朝になると僕たちは冒険者ギルドに出かけていった、僕の吟遊詩人という仕事だけでも十分に暮らしていけそうだが、何かの拍子にお金が必要になるかもしれないからだ。
「それじゃ、ソアン。どの仕事をしようか」
「うーん、そうですね。薬草採取をしながら、お金になりそうな動物を狩るっていうのはどうです?」
「いいね、安全を第一に」
「でもダンジョンとかにもいずれは行きたいですね」
「それはもっと強くなってから考えよう」
「はーい、私の力を見てくださいね」
こうして僕たちは薬草採取の依頼を受けて、近くにある森に入っていった。しかし、森はいい。そして、なにより今の自由がいい。ここには若長候補なんだから駄目な姿を見せないでくださいとか、若長候補なんですから研究を早くすすめてくださいとか、若長候補なんですからハーフエルフなんかと遊んではいけません。なんてお節介をやくエルフがいない、それだけで僕の心は随分と軽くなった。
「リタ様、薬草ありました!!」
「ああ、ソアン。それはよく似ているけど違う毒草だね」
「ど、毒!!」
「薬草は薬草なんだけど、このクレーネ草を口にすると頭の働きがとても鋭くなるんだ」
「で、でも毒草なんですよね?」
「そうこれには中毒性があってね、これを口にするといずれこれなしではいられなくなるそうだよ」
でもこのクレーネ草を一時的に薬として使うこともある、他の薬草と混ぜて使うと中毒性を和らげて、とても鋭い思考能力を与えてくれるそうだ。そういう薬を作るのもいいだろうと、僕は薬草入れの中にクレーネ草を入れておいた。そうしてからポーションの材料になる癒し草を探す、あちこちに生えているのだがクレーネ草に騙されそうになったりもした、それでも100本ほどが採れて冒険者ギルドで換金した。1本が銅貨1枚で合計で金貨1枚にもなった、だがこれでこの辺りの癒し草は取りつくしてしまった。根は残して葉だけをとってきたけれど、再び採取できるのはまたしばらく先になるはずだ。
「それでソアン、あれどうにかできる?」
「お任せください、リタ様。私の力を見せれる良い機会です!!」
次の日に薬草の様子を見に出てきて、ソアンに疑問を投げかけた僕の目線の先にはワイルドボアが一頭うろうろしていた、雑食性の猪のような魔物で肉の味は猪とそう変わりはないはずだ。雑食性なので冒険者の初心者に体当たりしてきて鋭い牙に突き刺し、押し倒して逆に冒険者が食べられる側になった。なんて話も聞く魔物である、以前なら僕が魔法で援護してあげれたので心配なかったが、ソアン一人で大丈夫だろうかと心配になった。
「リタ様は私がお守りします、このくらいの魔物ならご安心ください」
「くれぐれも無理はしないように」
「はい!! ではいきますっ――!!」
ソアンは自分の身長くらいある大剣を軽々と片手で持ち、ワイルドボアに逆に突っ込んでいった。僕は何が起こってもいいように短剣を取り出して、同時に近くにいる精霊に向かって呼びかけておいた。
僕の呼びかけに現れたのはシルフだった、透き通った羽の生えた人間のような女性で僕の手のひらくらいの大きさだがその力は絶大だ。ワイルドボアくらいの魔物なら両断してみせるだろう、でも精霊は気紛れなのが大きな欠点でもあるのだ。
今回は僕の呼びかけに現れてくれたが、いつも応じてくれるとは限らない。存在自体が世界の大きな力である精霊と、生身で生きている僕たちエルフでは考え方に物凄い差があるのだ。
そうしているうちにソアンはワイルドボアに辿り着き、ソアンに気づいたワイルドボアのその突き刺しを見事に躱して死角に潜り込み、持っている大剣で軽々とその首を斬り飛ばしてしまった。僕は精霊の力を行使しなくてすんでほっとした、精霊にはお礼を言ってまた世界の環に帰って貰った。
「リタ様、私やりました!!」
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「はい、私はリタ様の騎士になりたいです!!」
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この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
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