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1-22這い出てくる
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「歌っていた最中に一瞬だけど、本当に一瞬だったけど……、フェーダーの姿を見たんだ」
「フェーダーさん、魂になってリタ様の歌を聞きにって、それ死霊だ!! えええええぇぇぇ!!」
「本当に一瞬だったんだけれど、あの黒髪と赤い瞳はフェーダーで間違いないと思う」
「ええと、フェーダーさん。成仏というか……、世界の理に帰れていないのでしょうか」
「死霊もプルエールの森で見たことがあるけれど、あのフェーダーは姿がしっかりしていて、むしろゾンビに近かったような」
「またゾンビ、もしくは死霊ですか。ううぅ、リアルホラーは勘弁して欲しいものです」
フェーダーを見た話をしたら、当然ながら彼は死んでいるはずなので、ソアンは物凄く驚いていた。僕はプルエールの森にいた頃、迷い込んできた人間の死霊を見たことがある、姿がゆらめいてはっきりとはしていなかった。ではフェーダーはゾンビになってしまったのだろうか、それは明日以降にまずフェーダーのお墓を調べてみないと分からないが、掘り返すわけにもいかないから外観を見るだけだ。
その夜のソアンはまたオバケ怖い、ゾンビも嫌だと眠りながら魘されていた。僕はその小さな背中をトントンとゆっくりとした間隔で叩いて、ソアンはやがてすやすやと僕の腕の中で深い眠りについた。僕も死霊やゾンビに積極的に関わりたくはない、以前のように魔法が自由に使えた頃ならともかく、今の僕では彼らを相手にするには力不足なのだ。
だが気になってしまうものは仕方がない、怖がっているソアンには悪いがフェーダーのお墓だけでも、そうそれだけでも確認しておきたいんだ。何も変化がなければそれで終わりだ、僕の見間違いか幻覚を見たことになる、それはそれで心の病気が悪化しているようで嫌だ。だがフェーダーが世界の理に帰れずにいる、それよりは僕の見たものが幻覚だった方が良かった。
「それじゃ、行きますか。リタ様、いざ墓荒らしに!!」
「ソアン、さすがにいきなりそんなことはしないよ」
「ではお墓の状態を確認するだけ、それだけなんですか。ふうぅ、良かった」
「それ以上、僕たちに出来ることは無いからね」
「それならお花でも買っていきましょう、フェーダーさんに供えるために」
「うん、良い事だ、そうすることにしよう」
翌日僕たちは神殿の墓地まで行く途中で、小さな花売りをする少女からお花を買った。ゼーエンの街は大きいから、あんな8歳くらいの子どもまで働いていたりする。子どもには労働よりも勉学をして貰いたいものだが、庶民だと字を読むくらいならともかく、他の事は学ばないことが多いと聞いた。ちょっとだけこの国の将来のことを心配しつつ、神殿の墓地に僕たち二人はついた。ついたのは良いのだが、そこで僕たちは二人してしばらく唖然とした。
「り、り、リタ様。お墓が全部、掘り起こされてます!!」
「う、うん、一体どうしたんだろうか。…………誰かに話を聞いてみよう」
「この状態だったなら、リタ様が見たのはやっぱりフェーダーさん本人!?」
「まだ分からない、でもその可能性が出てきてしまったね」
「ううぅ、ゾンビはもうお腹いっぱいですよ!!」
「大丈夫かい、ソアン」
ゾンビが出てきても平気で戦えるソアンだが、実は戦闘中以外では結構な怖がりさんでもあるのだ。僕はそんなソアンが安心するように手を繋いで、偶々なのか神殿の墓地にいた神官に話しかけた。かなり年配の神官の男性だったが、僕の唐突な質問にも親切に答えてくれた。
「すみません、知人のお墓に花を供えに来たのですが」
「ああ、それは随分と驚かれたことでしょう」
「ええ、一体何があったのですか?」
「墓荒らしですじゃ、建国祭の前日の夜中にこうなっていたのです」
「ご遺体は見つかっていないのでしょうか?」
「それはまだ残念ながら……、何を目的に遺体を持ち去ったか分からんのです」
僕たちが見に来たフェーダーのお墓も掘り返されている、というかこれは墓の内側から何かが這い出ているのか、お棺の内側にひっかいったような爪痕がいくつも残されていた。それを見たソアンは僕の体にしっかりとしがみついた、僕は彼女が安心するようによしよしと頭を撫でて抱きしめた。しばらくそうしているとソアンも落ち着いた、これ以上は僕たちができることはもう何もなさそうだった。
だから僕たちは気分を変えに冒険者ギルドへ向かった、もしかしたら何か情報があるかもしれない、そんな都合の良い思いもあったのだ。だが冒険者ギルドの掲示板に神殿から、『墓荒らしの捕獲』という依頼が出ているだけで、他には何も変わりはなかった。ここでは死んだ者の安息よりも、生きている者の依頼の方が重要なのかもしれなかった。
「何も手掛かりがないね、ソアン」
「そうですね、犯人は何が目的なのでしょう?」
「僕にはフェーダーのお墓、あれは内側から何者かが出てきたように見えた」
「ううぅ、私にもそう見えました。ではフェーダーさんがゾンビになって這い出てきた?」
「聖なる結界が一番に強いのは、人間の街では神殿のはずなのに」
「それよりも力がある者がいるのか、それとも教えて貰えなかったけど、結界に不備があったのかも」
清められた土地では基本的にゾンビなど死霊が遺体につくことはない、だからこのゼーエンの街なら神殿の墓地が最も安心して死者が眠れる場所だった。でもその神殿の墓地から死者の遺体が消えてしまっている、そのうちにこのことは噂になって広まるだろうが、本当に何が目的なのかが分からなかった。もしかしてネクロマンサー、そんな邪悪な存在が関わっているのだろうかとふと思った。
だが死者を蘇らせる禁忌の術はエルフも人間も忌避している、そんなことに詳しい本なども禁書として処分されることになっている。僕もネクロマンサーの存在は知っていたが、具体的な死霊魔法のことは何も知らないのだ。それは村や国が徹底して、そんな禁忌に関する書籍や資料を燃やしたりして、全て詳しいことは処分してきたからだった。
僕たちが冒険者ギルドでどうしようか、これからのことを考えていると覚えのある声がした、その呼び声に反応して僕たち二人は一緒に振り返った。
「リタさん、ソアンさん、大変なのです!!」
「フェーダーさん、魂になってリタ様の歌を聞きにって、それ死霊だ!! えええええぇぇぇ!!」
「本当に一瞬だったんだけれど、あの黒髪と赤い瞳はフェーダーで間違いないと思う」
「ええと、フェーダーさん。成仏というか……、世界の理に帰れていないのでしょうか」
「死霊もプルエールの森で見たことがあるけれど、あのフェーダーは姿がしっかりしていて、むしろゾンビに近かったような」
「またゾンビ、もしくは死霊ですか。ううぅ、リアルホラーは勘弁して欲しいものです」
フェーダーを見た話をしたら、当然ながら彼は死んでいるはずなので、ソアンは物凄く驚いていた。僕はプルエールの森にいた頃、迷い込んできた人間の死霊を見たことがある、姿がゆらめいてはっきりとはしていなかった。ではフェーダーはゾンビになってしまったのだろうか、それは明日以降にまずフェーダーのお墓を調べてみないと分からないが、掘り返すわけにもいかないから外観を見るだけだ。
その夜のソアンはまたオバケ怖い、ゾンビも嫌だと眠りながら魘されていた。僕はその小さな背中をトントンとゆっくりとした間隔で叩いて、ソアンはやがてすやすやと僕の腕の中で深い眠りについた。僕も死霊やゾンビに積極的に関わりたくはない、以前のように魔法が自由に使えた頃ならともかく、今の僕では彼らを相手にするには力不足なのだ。
だが気になってしまうものは仕方がない、怖がっているソアンには悪いがフェーダーのお墓だけでも、そうそれだけでも確認しておきたいんだ。何も変化がなければそれで終わりだ、僕の見間違いか幻覚を見たことになる、それはそれで心の病気が悪化しているようで嫌だ。だがフェーダーが世界の理に帰れずにいる、それよりは僕の見たものが幻覚だった方が良かった。
「それじゃ、行きますか。リタ様、いざ墓荒らしに!!」
「ソアン、さすがにいきなりそんなことはしないよ」
「ではお墓の状態を確認するだけ、それだけなんですか。ふうぅ、良かった」
「それ以上、僕たちに出来ることは無いからね」
「それならお花でも買っていきましょう、フェーダーさんに供えるために」
「うん、良い事だ、そうすることにしよう」
翌日僕たちは神殿の墓地まで行く途中で、小さな花売りをする少女からお花を買った。ゼーエンの街は大きいから、あんな8歳くらいの子どもまで働いていたりする。子どもには労働よりも勉学をして貰いたいものだが、庶民だと字を読むくらいならともかく、他の事は学ばないことが多いと聞いた。ちょっとだけこの国の将来のことを心配しつつ、神殿の墓地に僕たち二人はついた。ついたのは良いのだが、そこで僕たちは二人してしばらく唖然とした。
「り、り、リタ様。お墓が全部、掘り起こされてます!!」
「う、うん、一体どうしたんだろうか。…………誰かに話を聞いてみよう」
「この状態だったなら、リタ様が見たのはやっぱりフェーダーさん本人!?」
「まだ分からない、でもその可能性が出てきてしまったね」
「ううぅ、ゾンビはもうお腹いっぱいですよ!!」
「大丈夫かい、ソアン」
ゾンビが出てきても平気で戦えるソアンだが、実は戦闘中以外では結構な怖がりさんでもあるのだ。僕はそんなソアンが安心するように手を繋いで、偶々なのか神殿の墓地にいた神官に話しかけた。かなり年配の神官の男性だったが、僕の唐突な質問にも親切に答えてくれた。
「すみません、知人のお墓に花を供えに来たのですが」
「ああ、それは随分と驚かれたことでしょう」
「ええ、一体何があったのですか?」
「墓荒らしですじゃ、建国祭の前日の夜中にこうなっていたのです」
「ご遺体は見つかっていないのでしょうか?」
「それはまだ残念ながら……、何を目的に遺体を持ち去ったか分からんのです」
僕たちが見に来たフェーダーのお墓も掘り返されている、というかこれは墓の内側から何かが這い出ているのか、お棺の内側にひっかいったような爪痕がいくつも残されていた。それを見たソアンは僕の体にしっかりとしがみついた、僕は彼女が安心するようによしよしと頭を撫でて抱きしめた。しばらくそうしているとソアンも落ち着いた、これ以上は僕たちができることはもう何もなさそうだった。
だから僕たちは気分を変えに冒険者ギルドへ向かった、もしかしたら何か情報があるかもしれない、そんな都合の良い思いもあったのだ。だが冒険者ギルドの掲示板に神殿から、『墓荒らしの捕獲』という依頼が出ているだけで、他には何も変わりはなかった。ここでは死んだ者の安息よりも、生きている者の依頼の方が重要なのかもしれなかった。
「何も手掛かりがないね、ソアン」
「そうですね、犯人は何が目的なのでしょう?」
「僕にはフェーダーのお墓、あれは内側から何者かが出てきたように見えた」
「ううぅ、私にもそう見えました。ではフェーダーさんがゾンビになって這い出てきた?」
「聖なる結界が一番に強いのは、人間の街では神殿のはずなのに」
「それよりも力がある者がいるのか、それとも教えて貰えなかったけど、結界に不備があったのかも」
清められた土地では基本的にゾンビなど死霊が遺体につくことはない、だからこのゼーエンの街なら神殿の墓地が最も安心して死者が眠れる場所だった。でもその神殿の墓地から死者の遺体が消えてしまっている、そのうちにこのことは噂になって広まるだろうが、本当に何が目的なのかが分からなかった。もしかしてネクロマンサー、そんな邪悪な存在が関わっているのだろうかとふと思った。
だが死者を蘇らせる禁忌の術はエルフも人間も忌避している、そんなことに詳しい本なども禁書として処分されることになっている。僕もネクロマンサーの存在は知っていたが、具体的な死霊魔法のことは何も知らないのだ。それは村や国が徹底して、そんな禁忌に関する書籍や資料を燃やしたりして、全て詳しいことは処分してきたからだった。
僕たちが冒険者ギルドでどうしようか、これからのことを考えていると覚えのある声がした、その呼び声に反応して僕たち二人は一緒に振り返った。
「リタさん、ソアンさん、大変なのです!!」
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