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2-15黄金の本には秘密がある
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「……の薬が156本? ……の薬が20本? ……これはもしかして、普通の本じゃないのか」
僕がしばらく金の表紙の本を開いて見ていると、なんと次々に内容が書き変わっていった。何の薬なのか分からなかったが、その本数がだんだんと減っていったのだ。他のページでも同じようなことが何度も起こった、どの薬も次第にその数を減らしていったのだ。そんな状態の黄金の本を見て僕は思った、これはただの記録を残す本ではなかったのだ。これは現在進行形で動いている薬品庫の目録だったのだ、あのエテルノのダンジョンにある薬の全てを管理する本だった。
「もしかしてエテルノのダンジョンから、誰かが外に薬を持ち出すと数が減る、そういう仕掛けなのか!?」
僕はその黄金の本の仕掛けに気づいて、慌てて後の方のページから目的の物を探しはじめた。エリクサーは最も重要な薬の一つだろうから、その数が管理されて書いてあるのなら最後の方に違いなかった。そうして僕が最後のページを見てみると、確かに最後のページにエリクサーと書かれていた、その本数は残りたったの1本だった。僕はそのエリクサーの数を見て物凄く焦った、今すぐにエテルノのダンジョンに行きたくなった。
「いや駄目だ!! ……もう今日は時間が遅い、今からエテルノのダンジョンに行って、そして無事に帰ってくるのは無理だ」
だから僕は深呼吸を何度かして自分を落ち着かせた、とにかくエリクサーが必ず1本は残っているのだ。カイトのような余程の幸運に恵まれない限り、そのエリクサーを見つけるのは難しいはずだった。だから焦るなと自分に言い聞かせた、焦ってあの危ないエテルノのダンジョンに、やみくもに飛び込むのは危険だからだ。そして、黄金の本をもう一度最初から最後まで目を通してみた。
そうしたら表紙の裏に描かれている模様に気がついた、それはよく見てみると地図だったが一体どこの地図だろうか、そんなのは決まっているエテルノのダンジョンの地図だった。でもエテルノのダンジョンは入る度に姿を変えるダンジョンだ、地図なんか役に立たないというのがカイトの話だった。でもそれが間違っていたとしたら、実はエテルノのダンジョンには地図があるとしたら大変な話だった。
「僕たちはエテルノのダンジョンに行くたびに、異世界に飛ばされているんじゃない、どこかの別の場所に古代遺跡がきっとあるんだ」
黄金の本の裏表紙にある地図は広い一つの大きな島になっていた、だがよく見てみると今まで僕たちが作った地図、エテルノのダンジョンの地図にあてはまる箇所がいくつもあった。僕たちは毎回違った異世界に飛ばされていると思っていたが、いいやその推測は間違っていてそうではないのだ。僕たちは同じ世界のどこかにある別の島に『転移』していた、実はエテルノのダンジョンにはしっかりとした地図があったのだ。
「今までエテルノのダンジョンという場所に、バラバラな入り口から毎回そこに入っていた。だから誰もそこが同じ世界だとは考えなかった、そこの正確な地図を作ろうとしなかったんだ」
これは今までの考え方を覆す大きな発見だった、この黄金の本を見つけて本当に良かった。そうでなければエテルノのダンジョンは異世界に繋がるダンジョン、そう勘違いをしていたままくじ引きのような薬の捜索を続けていたはずだ。それが今度は話が全て変わってくる、この地図を元に動くことができたなら、少なくとも同じ場所を探すという間違いをしなくてすむのだ。
「ソアン、ちょっと聞いてくれ。大事な話なんだ!!」
「リタ様!? はい、何でしょうか!!」
僕は慌てて裏庭にいるソアンを呼びにいった、そうして今までの仮説をソアンに話して聞かせた。ソアンはしばらく驚いていたが、実際に数が変わっていく黄金の本をみて、その裏表紙に描かれた地図を見てからようやく理解してくれた。これからはこの地図を元にエテルノのダンジョンを少しずつ探していく、いろんな建物も描かれていたからそういった場所を中心に探した方が良さそうだった。
「ソアン、これで少なくとも同じ場所を探すということはなくなる」
「はい、リタ様。これは凄い本です、物凄い発見です!!」
「明日からまたエテルノのダンジョンに行こう、この地図と比べてみながらエリクサーを見つけるんだ」
「残り1本のエリクサーですね、ですが運だけの勝負ではなくなりました」
「ああ、丁寧に調べていけばいつかは見つかるはずだ。誰かに先をこされることだけが問題だけど」
「それもまた運です、精一杯やって見つからなければ、私たちはエリクサーとは縁が無かったのです」
ソアンと明日のことを話しあって僕らは夜までは鍛錬して、そうして早めに眠りにつくことにした。だがなかなか興奮して眠れなかった、その夜の短い夢の中では誰か別の人がエリクサーを持っていく、そんな嫌な夢を何度も見て目が覚めてその度に眠りなおした。そうして、翌日は最悪だった。僕の病気がまたでてしまったのだ、体が鉛のように重かった。起きてエリクサーを探しに行きたいのに、僕の体はちっとも僕の思いどおりには動いてくれなかった。
「落ち着いてください、リタ様。」
「分かっている、ソアン。こんな状態ではエテルノのダンジョンには行けない」
「ええ、でもそんなに落ち込まないでください、これは焦るなという森の導きかもしれません」
「そうかもしれないけど、やっぱり僕は自分のことが情けないよ」
「リタ様はご立派です!! 黄金の本をほぼ解読しました!! エテルノのダンジョンの秘密にも気がつきました!!」
「そうなんだけどね、今の僕は自由に動ける体が欲しいよ。ソアン」
誰かに焦るなと言われているような気がした、確かに今の僕は心はすごく興奮していて、うっかりすると簡単な罠にでも引っかかりそうだった。僕の病気の症状が出たらできることはほとんどない、体が動かせないから何もできないし、心のほうも思考力が鈍っているから良い考えはでてこないのだ。大体がこういう時の僕は悲観的に考えてしまうのだった、きっとこうして僕が動けないでいるうちに、どこかの誰かがエリクサーを手に入れてしまうのだ。
「エリクサーを手に入れられなかったらどうしようか、ソアン」
「何も変わりません!! リタ様はゆっくりと休んでお心を治せば良いのです!!」
「ソアンがそう言ってくれると、なんだかエリクサーも大した薬じゃないみたいだよ」
「何千年か何万年か前のお薬です!! 今も効果があるのかは分かりません!!」
「ふふふっ、そうか。そうだね、そうかもしれないね。ソアン」
「ええ、リタ様。決して焦る必要はないのです」
ソアンが落ち着いて僕の話し相手をしてくれたから、僕は体は動かなかったけどやたらと焦る気持ち、そんな厄介な感情は随分と落ち着いてしまった。そうエリクサーが手に入らなくてもいいのだ、その時は僕自身の回復力を信じて、ゆっくりと休んで心の病気を治していけばいいのだ。なにもエリクサーが見つからなければ死ぬ、僕はそんな恐ろしい病気ではないのだからいいのだ。
それから7日間も僕は動けなかった、仕方がないので黄金の本を時々眺めながら過ごした。幸いなことに最後のページにあるエリクサーの数が変わることはなかった、つまり僕たち以外の誰かがエリクサーを手に入れてはいないのだ。この本の良いところはもう一つあった、エリクサーらしきものを見つけた時に、その『鑑定』を誰に頼めばいいのか悩んでいたのだ。
だがこの黄金の本があればエリクサーを持ち出したら分かる、その残りの数が0になったら持ち出したその薬がエリクサーなのだ。そうなったら誰か信頼できる人物に『鑑定』して貰えばよかった、そうして貰えば冒険者ギルドなどで騒がれることもなく、見つけたエリクサーを領主など貴族に狙われる心配もなくなるのだ。
特に領主の長男であるフォルクなどは難癖をつけて、僕たちからエリクサーを取り上げかねなかった。その心配が少しだけ減ったというわけだ、少しだけ重いけれどもこの黄金の本は手放せなくなった。
「あとは全ては運任せか、……僕はあまり運は良くないんだけどね」
僕がしばらく金の表紙の本を開いて見ていると、なんと次々に内容が書き変わっていった。何の薬なのか分からなかったが、その本数がだんだんと減っていったのだ。他のページでも同じようなことが何度も起こった、どの薬も次第にその数を減らしていったのだ。そんな状態の黄金の本を見て僕は思った、これはただの記録を残す本ではなかったのだ。これは現在進行形で動いている薬品庫の目録だったのだ、あのエテルノのダンジョンにある薬の全てを管理する本だった。
「もしかしてエテルノのダンジョンから、誰かが外に薬を持ち出すと数が減る、そういう仕掛けなのか!?」
僕はその黄金の本の仕掛けに気づいて、慌てて後の方のページから目的の物を探しはじめた。エリクサーは最も重要な薬の一つだろうから、その数が管理されて書いてあるのなら最後の方に違いなかった。そうして僕が最後のページを見てみると、確かに最後のページにエリクサーと書かれていた、その本数は残りたったの1本だった。僕はそのエリクサーの数を見て物凄く焦った、今すぐにエテルノのダンジョンに行きたくなった。
「いや駄目だ!! ……もう今日は時間が遅い、今からエテルノのダンジョンに行って、そして無事に帰ってくるのは無理だ」
だから僕は深呼吸を何度かして自分を落ち着かせた、とにかくエリクサーが必ず1本は残っているのだ。カイトのような余程の幸運に恵まれない限り、そのエリクサーを見つけるのは難しいはずだった。だから焦るなと自分に言い聞かせた、焦ってあの危ないエテルノのダンジョンに、やみくもに飛び込むのは危険だからだ。そして、黄金の本をもう一度最初から最後まで目を通してみた。
そうしたら表紙の裏に描かれている模様に気がついた、それはよく見てみると地図だったが一体どこの地図だろうか、そんなのは決まっているエテルノのダンジョンの地図だった。でもエテルノのダンジョンは入る度に姿を変えるダンジョンだ、地図なんか役に立たないというのがカイトの話だった。でもそれが間違っていたとしたら、実はエテルノのダンジョンには地図があるとしたら大変な話だった。
「僕たちはエテルノのダンジョンに行くたびに、異世界に飛ばされているんじゃない、どこかの別の場所に古代遺跡がきっとあるんだ」
黄金の本の裏表紙にある地図は広い一つの大きな島になっていた、だがよく見てみると今まで僕たちが作った地図、エテルノのダンジョンの地図にあてはまる箇所がいくつもあった。僕たちは毎回違った異世界に飛ばされていると思っていたが、いいやその推測は間違っていてそうではないのだ。僕たちは同じ世界のどこかにある別の島に『転移』していた、実はエテルノのダンジョンにはしっかりとした地図があったのだ。
「今までエテルノのダンジョンという場所に、バラバラな入り口から毎回そこに入っていた。だから誰もそこが同じ世界だとは考えなかった、そこの正確な地図を作ろうとしなかったんだ」
これは今までの考え方を覆す大きな発見だった、この黄金の本を見つけて本当に良かった。そうでなければエテルノのダンジョンは異世界に繋がるダンジョン、そう勘違いをしていたままくじ引きのような薬の捜索を続けていたはずだ。それが今度は話が全て変わってくる、この地図を元に動くことができたなら、少なくとも同じ場所を探すという間違いをしなくてすむのだ。
「ソアン、ちょっと聞いてくれ。大事な話なんだ!!」
「リタ様!? はい、何でしょうか!!」
僕は慌てて裏庭にいるソアンを呼びにいった、そうして今までの仮説をソアンに話して聞かせた。ソアンはしばらく驚いていたが、実際に数が変わっていく黄金の本をみて、その裏表紙に描かれた地図を見てからようやく理解してくれた。これからはこの地図を元にエテルノのダンジョンを少しずつ探していく、いろんな建物も描かれていたからそういった場所を中心に探した方が良さそうだった。
「ソアン、これで少なくとも同じ場所を探すということはなくなる」
「はい、リタ様。これは凄い本です、物凄い発見です!!」
「明日からまたエテルノのダンジョンに行こう、この地図と比べてみながらエリクサーを見つけるんだ」
「残り1本のエリクサーですね、ですが運だけの勝負ではなくなりました」
「ああ、丁寧に調べていけばいつかは見つかるはずだ。誰かに先をこされることだけが問題だけど」
「それもまた運です、精一杯やって見つからなければ、私たちはエリクサーとは縁が無かったのです」
ソアンと明日のことを話しあって僕らは夜までは鍛錬して、そうして早めに眠りにつくことにした。だがなかなか興奮して眠れなかった、その夜の短い夢の中では誰か別の人がエリクサーを持っていく、そんな嫌な夢を何度も見て目が覚めてその度に眠りなおした。そうして、翌日は最悪だった。僕の病気がまたでてしまったのだ、体が鉛のように重かった。起きてエリクサーを探しに行きたいのに、僕の体はちっとも僕の思いどおりには動いてくれなかった。
「落ち着いてください、リタ様。」
「分かっている、ソアン。こんな状態ではエテルノのダンジョンには行けない」
「ええ、でもそんなに落ち込まないでください、これは焦るなという森の導きかもしれません」
「そうかもしれないけど、やっぱり僕は自分のことが情けないよ」
「リタ様はご立派です!! 黄金の本をほぼ解読しました!! エテルノのダンジョンの秘密にも気がつきました!!」
「そうなんだけどね、今の僕は自由に動ける体が欲しいよ。ソアン」
誰かに焦るなと言われているような気がした、確かに今の僕は心はすごく興奮していて、うっかりすると簡単な罠にでも引っかかりそうだった。僕の病気の症状が出たらできることはほとんどない、体が動かせないから何もできないし、心のほうも思考力が鈍っているから良い考えはでてこないのだ。大体がこういう時の僕は悲観的に考えてしまうのだった、きっとこうして僕が動けないでいるうちに、どこかの誰かがエリクサーを手に入れてしまうのだ。
「エリクサーを手に入れられなかったらどうしようか、ソアン」
「何も変わりません!! リタ様はゆっくりと休んでお心を治せば良いのです!!」
「ソアンがそう言ってくれると、なんだかエリクサーも大した薬じゃないみたいだよ」
「何千年か何万年か前のお薬です!! 今も効果があるのかは分かりません!!」
「ふふふっ、そうか。そうだね、そうかもしれないね。ソアン」
「ええ、リタ様。決して焦る必要はないのです」
ソアンが落ち着いて僕の話し相手をしてくれたから、僕は体は動かなかったけどやたらと焦る気持ち、そんな厄介な感情は随分と落ち着いてしまった。そうエリクサーが手に入らなくてもいいのだ、その時は僕自身の回復力を信じて、ゆっくりと休んで心の病気を治していけばいいのだ。なにもエリクサーが見つからなければ死ぬ、僕はそんな恐ろしい病気ではないのだからいいのだ。
それから7日間も僕は動けなかった、仕方がないので黄金の本を時々眺めながら過ごした。幸いなことに最後のページにあるエリクサーの数が変わることはなかった、つまり僕たち以外の誰かがエリクサーを手に入れてはいないのだ。この本の良いところはもう一つあった、エリクサーらしきものを見つけた時に、その『鑑定』を誰に頼めばいいのか悩んでいたのだ。
だがこの黄金の本があればエリクサーを持ち出したら分かる、その残りの数が0になったら持ち出したその薬がエリクサーなのだ。そうなったら誰か信頼できる人物に『鑑定』して貰えばよかった、そうして貰えば冒険者ギルドなどで騒がれることもなく、見つけたエリクサーを領主など貴族に狙われる心配もなくなるのだ。
特に領主の長男であるフォルクなどは難癖をつけて、僕たちからエリクサーを取り上げかねなかった。その心配が少しだけ減ったというわけだ、少しだけ重いけれどもこの黄金の本は手放せなくなった。
「あとは全ては運任せか、……僕はあまり運は良くないんだけどね」
応援ありがとうございます!
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