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2-31どこにもいかないで傍にいる
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「ううぅ、リタ様、どこにも行かないでください。ぐすっ。わ、私が行けない場所に、どうかお一人で行かないで」
目が覚めたら僕は領主の館の客室に寝かされていた、そしてソアンがベッドの横に小さく丸くなって座っていた。そうしながらずっとソアンは小さな声で泣いていた、僕は早く彼女を安心させたくて起きようとした、でも体に力が入らなくて起き上がれなかった。僕の病気の症状がでていたのだ、窓から刺す光も高いしかなりの時間を僕は気絶していたようだった。
「…………ごめんよ、ソアン。僕はどこにもいかないよ、君の傍にずっといるよ」
「リタ様!?」
「いつもの病気の症状だ、体が重くて起き上がれない。それだけだよ、死んだりしないから大丈夫」
「うぅ、本当ですね!? お医者さんはクレーネ草を摂取し過ぎて、もしかしたら死ぬかもしれないと言いました!!」
僕はできる限り力を入れて右手を動かしてソアンの涙をぬぐった、それから大丈夫だと伝えるためにソアンに微笑んだ。ソアンをどうにかして安心させたかったのに、逆に彼女はボロボロとまた泣き出してしまった。そうしながら僕の右手をギュッと握り締めた、僕もできるだけの力で温かいソアンの手を握り返した。
「もう、リタ様はクレーネ草のお薬は飲んじゃ駄目です!!」
「それは困るな、あの薬が無いと魔法が使えない」
「魔法なんて使えなくてもいいんです!! それよりもリタ様のお命が大事です!!」
「そう言われると反論のしようがないね、確かに僕も命はなによりも大事だから」
しばらくソアンは僕の手をギュッと握りしめて泣いていたが、やがて落ち着いてきたのだろう涙をぬぐってこう言いだした。
「うぅ、本当は分かってるんです。あの時、クレーネ草の薬を使わなかったら、ジーニャスさんが死んでました」
「ああ、彼は大事な友人になったからね。だから、僕はどうしても助けたかったんだ」
「でも今度同じ状況になったら私はリタ様を止めるかもしれません、だって本当に死ぬかもしれなかったんです」
「ソアンが僕を心配してくれるのは嬉しいよ、でも多分……」
ソアンが僕のことを心配してくれるのは本当に嬉しい、こんなに頼りになる温かい家族がいることが幸せだ。でも同じようなことが起きたら僕はまたクレーネ草の薬を飲むんだろう、もしかしたら死ぬかもしれなくても僕の目の前で友人に死なれるほうが辛いからだ。でもそれで死んでしまうわけにもいかない、約束をした僕の命はソアンの命と同じくらい大切だからだ。
「クレーネ草の薬をまた改良するよ、毒性をもっと弱めるようにする」
「やっぱりです、リタ様。またご友人を助けるために、クレーネ草の薬を飲んでしまうんですね」
「そうしなかったら僕は僕でなくなる、それは死ぬよりも辛いことかもしれない」
「死ぬよりどんなに辛くても、私はリタ様が生きている方が良いです」
「僕は友人を助けられたかもしれないって、ずっと後悔して生きていくことになる」
「それでも、でも、リタ様が生きているほうが良いです。どうか私をおいていかないでください」
僕は本当に死ぬ寸前だったようだ、ソアンがどうか私だけおいていかないで欲しい、そう繰り返し言って僕に訴えかけた。どうか自分だけをおいていかないで欲しい、それはかつて僕が両親が亡くなった時に思ったことでもあった。あの時の僕にはまだソアンがいた、でも今度はどうだ僕がいなくなったら、ソアンを一人にしてしまっていた。
それは絶対にできないことだったのに、やっぱり僕はクレーネ草の薬を飲んだことを後悔してない。あの時に友人であるジーニャスを助けなければ、僕は心が死んでしまったと思うんだ。それは生きていてもとても辛いことだ、自分がとり返しのつかない大きな失敗をしたと、友人を見殺しにしてしまったと思って生きるのは辛過ぎるんだ。だから、僕はまたソアンにわがままを言ってしまった。
「ソアンをおいてどこにもいかないよ、クレーネ草の薬をもっと良く改良する」
「前半はとても良いことです、後半はどうか諦めてください」
「ごめんね、でもこれが僕だから、僕っていうエルフだからね」
「……分かっています、リタ様は心がとても優しい立派なエルフです」
ソアンがやっと笑顔を見せた、それはちょっと苦笑いだったけれど、僕の大好きな可愛い養い子の笑顔だった。それからソアンと僕はベッドに横になったままで沢山のお話をした、クレーネ草の薬を飲む量にはもっと注意すること、飲むのなら毒性を減らすように必ず改良するように言われた。僕はソアンの言うことに頷いて、しっかりとその警告を守ろうと思った。
僕が気がついてそうして沢山喋って安心したのか、ソアンもベッドの横で座ったまま寝てしまった。体が鉛のように重かったけれど、僕はソアンをベッドの上になんとか運んだ。そうして彼女を抱きしめて死ななくて良かったと思った、もしこれで僕が死んでいたらソアンは一人ぼっちになっていた。本当に死ななくて良かったと世界の大きな力に感謝した、世界の大きな光に僕の魂が帰ってしまわなくて良かった。
しばらくして一度だけジーニャスが様子をソッと見に来た、僕が左手をあげて生きていることを知らせると、彼は気をつかって静かに客室から出ていった。そうして夕方まで僕は動けなくて横になっていた、昨日の夜眠れなかったのだろうソアンはスヤスヤとよく眠っていた。夕方になって僕が起き上がれるようになるとソアンも目を覚ました、そうして今度はソアンに僕の体ごとギュッと抱きしめられた、僕も元気になったことが分かるように力をこめてソアンのことを抱きしめた。
「リタ様が生きていて本当に良かったです」
「僕も本当にそう思っている、死ななくて良かったよ」
「いっぱいお話したこと、ちゃんと実行してください」
「うん、分かっている。ソアンに言ったことは必ず守るよ」
そうして起きれるようになって客室を出ると、いつからいたのだろうかジーニャスが僕たちを待っていた。そして僕は改めてお礼を言われた、命の恩人だとまで言われてしまって困った。それからジーニャスがあれからのことを教えてくれた、フォルクは皆の前で非のないジーニャスを殺そうとした、だから今は街の牢獄に繋がれているということだった。
フォルクはやはり変わることができない人だった、自分を助けに来た弟のジーニャスでさえ殺そうとした。彼は弟が助けにきたのだと感謝することも、それすら思い浮かばないようだった。そうして軍の指揮権を奪われると短絡的に殺そうとした、そうしても自分は許されると思っていたのだろう、実際には許されるわけがない行動だった。
明日、領主を交えてフォルクは裁判にかけられるそうだ。ジーニャスを二度も殺しかけたことを正式に発表するのだ、何の非もない人間を殺そうとしたのだから言うまでもなく重罪だった。だからだろうか暗い顔をジーニャスはしていた、二度殺されかけてもフォルクは彼にとっては兄なのだ。でもジーニャスはいずれこの地を治める者であった、だから静かにもう決まっている判決を僕たちに伝えた。
「兄上は当然だが、多くの兵を無駄に失った罪で廃嫡される」
フォルクはエリクサーを手に入れるために領主の軍を動かした、フォルクに与えられていた権利ではあったがそれにしても結果が酷かった。彼についていった兵士や魔法使いは誰一人生きて戻れなかった、だからその罪で廃嫡され貴族ではなくなり平民になるのだ。でもジーニャスの言葉には更に続きがあった、彼は心から無念で堪らないというように少し震える声でこう言った。
「それに加えて俺を二度殺しかけたことで、……兄上は処刑されることになった」
目が覚めたら僕は領主の館の客室に寝かされていた、そしてソアンがベッドの横に小さく丸くなって座っていた。そうしながらずっとソアンは小さな声で泣いていた、僕は早く彼女を安心させたくて起きようとした、でも体に力が入らなくて起き上がれなかった。僕の病気の症状がでていたのだ、窓から刺す光も高いしかなりの時間を僕は気絶していたようだった。
「…………ごめんよ、ソアン。僕はどこにもいかないよ、君の傍にずっといるよ」
「リタ様!?」
「いつもの病気の症状だ、体が重くて起き上がれない。それだけだよ、死んだりしないから大丈夫」
「うぅ、本当ですね!? お医者さんはクレーネ草を摂取し過ぎて、もしかしたら死ぬかもしれないと言いました!!」
僕はできる限り力を入れて右手を動かしてソアンの涙をぬぐった、それから大丈夫だと伝えるためにソアンに微笑んだ。ソアンをどうにかして安心させたかったのに、逆に彼女はボロボロとまた泣き出してしまった。そうしながら僕の右手をギュッと握り締めた、僕もできるだけの力で温かいソアンの手を握り返した。
「もう、リタ様はクレーネ草のお薬は飲んじゃ駄目です!!」
「それは困るな、あの薬が無いと魔法が使えない」
「魔法なんて使えなくてもいいんです!! それよりもリタ様のお命が大事です!!」
「そう言われると反論のしようがないね、確かに僕も命はなによりも大事だから」
しばらくソアンは僕の手をギュッと握りしめて泣いていたが、やがて落ち着いてきたのだろう涙をぬぐってこう言いだした。
「うぅ、本当は分かってるんです。あの時、クレーネ草の薬を使わなかったら、ジーニャスさんが死んでました」
「ああ、彼は大事な友人になったからね。だから、僕はどうしても助けたかったんだ」
「でも今度同じ状況になったら私はリタ様を止めるかもしれません、だって本当に死ぬかもしれなかったんです」
「ソアンが僕を心配してくれるのは嬉しいよ、でも多分……」
ソアンが僕のことを心配してくれるのは本当に嬉しい、こんなに頼りになる温かい家族がいることが幸せだ。でも同じようなことが起きたら僕はまたクレーネ草の薬を飲むんだろう、もしかしたら死ぬかもしれなくても僕の目の前で友人に死なれるほうが辛いからだ。でもそれで死んでしまうわけにもいかない、約束をした僕の命はソアンの命と同じくらい大切だからだ。
「クレーネ草の薬をまた改良するよ、毒性をもっと弱めるようにする」
「やっぱりです、リタ様。またご友人を助けるために、クレーネ草の薬を飲んでしまうんですね」
「そうしなかったら僕は僕でなくなる、それは死ぬよりも辛いことかもしれない」
「死ぬよりどんなに辛くても、私はリタ様が生きている方が良いです」
「僕は友人を助けられたかもしれないって、ずっと後悔して生きていくことになる」
「それでも、でも、リタ様が生きているほうが良いです。どうか私をおいていかないでください」
僕は本当に死ぬ寸前だったようだ、ソアンがどうか私だけおいていかないで欲しい、そう繰り返し言って僕に訴えかけた。どうか自分だけをおいていかないで欲しい、それはかつて僕が両親が亡くなった時に思ったことでもあった。あの時の僕にはまだソアンがいた、でも今度はどうだ僕がいなくなったら、ソアンを一人にしてしまっていた。
それは絶対にできないことだったのに、やっぱり僕はクレーネ草の薬を飲んだことを後悔してない。あの時に友人であるジーニャスを助けなければ、僕は心が死んでしまったと思うんだ。それは生きていてもとても辛いことだ、自分がとり返しのつかない大きな失敗をしたと、友人を見殺しにしてしまったと思って生きるのは辛過ぎるんだ。だから、僕はまたソアンにわがままを言ってしまった。
「ソアンをおいてどこにもいかないよ、クレーネ草の薬をもっと良く改良する」
「前半はとても良いことです、後半はどうか諦めてください」
「ごめんね、でもこれが僕だから、僕っていうエルフだからね」
「……分かっています、リタ様は心がとても優しい立派なエルフです」
ソアンがやっと笑顔を見せた、それはちょっと苦笑いだったけれど、僕の大好きな可愛い養い子の笑顔だった。それからソアンと僕はベッドに横になったままで沢山のお話をした、クレーネ草の薬を飲む量にはもっと注意すること、飲むのなら毒性を減らすように必ず改良するように言われた。僕はソアンの言うことに頷いて、しっかりとその警告を守ろうと思った。
僕が気がついてそうして沢山喋って安心したのか、ソアンもベッドの横で座ったまま寝てしまった。体が鉛のように重かったけれど、僕はソアンをベッドの上になんとか運んだ。そうして彼女を抱きしめて死ななくて良かったと思った、もしこれで僕が死んでいたらソアンは一人ぼっちになっていた。本当に死ななくて良かったと世界の大きな力に感謝した、世界の大きな光に僕の魂が帰ってしまわなくて良かった。
しばらくして一度だけジーニャスが様子をソッと見に来た、僕が左手をあげて生きていることを知らせると、彼は気をつかって静かに客室から出ていった。そうして夕方まで僕は動けなくて横になっていた、昨日の夜眠れなかったのだろうソアンはスヤスヤとよく眠っていた。夕方になって僕が起き上がれるようになるとソアンも目を覚ました、そうして今度はソアンに僕の体ごとギュッと抱きしめられた、僕も元気になったことが分かるように力をこめてソアンのことを抱きしめた。
「リタ様が生きていて本当に良かったです」
「僕も本当にそう思っている、死ななくて良かったよ」
「いっぱいお話したこと、ちゃんと実行してください」
「うん、分かっている。ソアンに言ったことは必ず守るよ」
そうして起きれるようになって客室を出ると、いつからいたのだろうかジーニャスが僕たちを待っていた。そして僕は改めてお礼を言われた、命の恩人だとまで言われてしまって困った。それからジーニャスがあれからのことを教えてくれた、フォルクは皆の前で非のないジーニャスを殺そうとした、だから今は街の牢獄に繋がれているということだった。
フォルクはやはり変わることができない人だった、自分を助けに来た弟のジーニャスでさえ殺そうとした。彼は弟が助けにきたのだと感謝することも、それすら思い浮かばないようだった。そうして軍の指揮権を奪われると短絡的に殺そうとした、そうしても自分は許されると思っていたのだろう、実際には許されるわけがない行動だった。
明日、領主を交えてフォルクは裁判にかけられるそうだ。ジーニャスを二度も殺しかけたことを正式に発表するのだ、何の非もない人間を殺そうとしたのだから言うまでもなく重罪だった。だからだろうか暗い顔をジーニャスはしていた、二度殺されかけてもフォルクは彼にとっては兄なのだ。でもジーニャスはいずれこの地を治める者であった、だから静かにもう決まっている判決を僕たちに伝えた。
「兄上は当然だが、多くの兵を無駄に失った罪で廃嫡される」
フォルクはエリクサーを手に入れるために領主の軍を動かした、フォルクに与えられていた権利ではあったがそれにしても結果が酷かった。彼についていった兵士や魔法使いは誰一人生きて戻れなかった、だからその罪で廃嫡され貴族ではなくなり平民になるのだ。でもジーニャスの言葉には更に続きがあった、彼は心から無念で堪らないというように少し震える声でこう言った。
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