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3-10髪留めを買ってみる
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「友人からということなら……」
「分かったわ、まずは友人からね。よろしくリタ、私の恋人候補さん」
「よ、よろしくティスタ。僕は初めて女性から、僕のことを好きだって言われたよ」
「あらあら、リタの近くには臆病な女の人しかいないのかしら」
「ただ単純に僕に魅力がない、それだけだと思うけれど」
「ふふふっ、私が好きになったエルフをそんなふうに言わないで」
こうして僕はティスタと友人としてから付き合うことになった、僕はこれからどうしていいのかよく分からなかった。ちょうどポエットが用事をすませて帰ってきたので、僕は頼んでいた衣服や防具を受け取って店を出た。ティスタがとても魅力的な、そして嬉しそうな笑顔で見送ってくれた。これは大変なことになってしまった、僕は宿屋の部屋に帰ったらもう戻っていたソアンにまず相談した。
「ソアン、どうやら僕はティスタと付き合うことになったよ」
「はぁ!? 一体どうしてたった半日で、そんな大変なことになっているんです!?」
「それが良く分からないんだ、話の流れでなんとなくかな。一応は友達から付き合うことになった」
「リタ様が押しに弱いのを忘れてました、そうですかティスタさんとですか。はぁ~」
「僕は何か間違ったのかな、それともこれで良かったんだろうか?」
「それはリタ様にしか分かりません、今は混乱しているから尚更分からないでしょう」
確かに生まれて初めて女性から口説かれて僕は混乱していた、ソアンはそんな僕をため息をつきながら見ていた。僕はティスタのことを好きになれるだろうか、確かに好ましい女性ではあるが何かが違うような気もしていた。ソアンはそんな押しに弱い僕に呆れてため息を何度もついた、どうも僕は好意を持った相手に強く言われると弱いようだった。
ソアンは僕自身でなければ良かったのか分からないと言った、そう言われたとおりなのかもしれなかった。恋心なんて持っている本人が分からなければ、他人は更に分からないものだろうからだ。そうしてしばらく僕たちは沈黙していたが、ソアンがそれじゃ部屋をもう一つ借りましょうと言ってきた。確かにティスタの恋人候補になった以上、それが養い子とはいえ成人しているソアンと僕は一緒に寝起きしてはいけなかった。
「ソアンと離れるなんて寂しいけど、いつかソアンも好きな者と一緒に遠くに行くのかな」
「そ、それは分かりません!! 特に今は好きな人が鈍感で困っています!!」
「ソアンの好きな者はあまり勘が良くないのか、それは君がとっても苦労しそうだね」
「大切な場面での勘は妙に鋭いんですけど、恋愛面では駄目だというのがよく分かりました!!」
「あんまりソアンに苦労はかけたくない、いつか僕にもソアンの好きな者を紹介しておくれ」
「はぁ~、そうですね。いつか絶対に紹介できますよ!! 私が失恋した後かもしれませんけど!!」
ソアンは僕とティスタが付き合うことになってどうも機嫌が悪かった、ティスタは人間で寿命が短いから最高の相手とは言えないが、こんなにソアンの機嫌が悪くなるとは思わなかった。そして、ソアンは宿屋の主人に言って部屋をもう一つ借りることにした、幸いにも僕たちはお金には困っていないからその点は大丈夫だった。
そうしてソアンが出ていってしまった部屋はどことなく寂しい感じがした、今までずっとソアンと一緒にいたから寂しいのだろうと僕は思った。ソアンは僕の大切な養い子、そしてとても大事な家族だ。だから寂しいのだろうと僕は思っていた、自分の本当の気持ちに気づくのは案外難しいものだった。だが気づいてしまえばそれなりに対処できた、僕はできるだけソアンといる時間を大切にしようと思ったのだ。
ソアンもいつかは誰か好きな相手ができて僕から離れてしまう、今はその練習のようなものだと自分に言い聞かせてみた。そうしたら寂しいけれども、それはソアンの成長の印なのだと納得できた。部屋は分かれてしまったけれど、それからも僕とソアンは一緒に行動した。最初の頃のソアンは不機嫌だったが、時間が経つにつれて落ち着いてきた。そんなある日のことだった、僕をティスタが訪ねてきたのだ。
「こんにちわ、リタ。私と一緒に市場に遊びに行ってくれない?」
「分かった、ティスタ。少し待っててくれ」
その日は何も予定はなくて朝食の席でソアンと冒険者ギルドにでも行こう、そう話して計画していたけれどティスタが来たからソアンにそのことを話した。そうして予定を変更してもらった、僕はティスタと市場へ遊びに出かけた、ソアンも外に出かけるようだった。僕はいってらっしゃいと言うソアンの少し寂し気な顔が気になった、そんな不安な気持ちのままで僕はティスタと出かけることになった。
「急にごめんなさい、今日は月に一度の特別な市場が開くの」
「へぇ、それは知らなかったよ」
「街の普通の人も売り子になったりしてるわ、だからいろいろとリタと見てまわりたかったの」
「いろんな物が売っていそうだ、それは楽しそうな市場だね」
「ええ、リタも欲しい物があったら良い機会よ」
「それじゃ、ティスタに似合う物でも探してみるよ」
最初はソアンの顔がちらついて落ち着かなかったが、ティスタと話しているうちにそっちに集中できだした。彼女と一緒に時を過ごすのは嫌ではなかった、ソアンと一緒にいる時とはまた違って綺麗なティスタ、そう彼女は美しく魅力的な笑顔で話をしてくれた。ティスタは元々顔の作りが美人だが、どうしてか今まで以上に綺麗に見えた。
そうしながらも相変わらず僕は未来のソアンと話している、そんな不思議な感覚が起こってきていた。ソアンとティスタの髪や瞳の色はよく似ていて、ティスタを見ると未来のソアンと話しているような気がするのだ。そんな不思議な感覚のまま、僕とティスタは市場を見てまわった。面白そうな物があれば触ってみたし、知らない物があれば店主に何なのか聞いてみた。
「やっぱり、リタといると凄く楽しいわ」
「僕はなんだか、凄く不思議な気分だ」
「あっ、これ。とても綺麗ね」
「白い髪留めか、花が彫ってあって綺麗だね」
「うーん、買ってみようかしら」
「そうか、どうだろう。これを僕から君に贈らせて欲しい」
「えっ、良いの?」
「きっとその薄茶色の髪に似合う、ぜひつけて貰いたいんだ」
それで僕は市場で白い髪留めを買った、そんなに高いものじゃなかった。でも手彫りの牡丹の花の細工が細かくて、とても綺麗な髪留めだった。僕はそれを買ってティスタの髪につけてあげた、ティスタは頬を赤くして喜んでいた。そんな彼女を見て僕は良かったと思った、そうした後に僕は売っているもう一種類の髪留めが気になった。
それも白い髪留めだったが彫られていたのは桜だった、桜はソアンが好きな花で村では春によく見に行った。だから僕はソアンへのお土産としてその髪留めを二つ買った、ティスタにもソアンに贈るのだと話した。ティスタはいたずらっ子のような顔をしていた、とても面白そうに僕のことを見てそしてちょっと寂し気に笑った。
「ソアンちゃんは幸せね、こんなに良いお父さんがいるんだもの」
「お父さんというより兄かな、僕はソアンの兄のようなものかもしれない」
「ふふふっ、良いお兄さんね」
「僕はソアンに助けられたから彼女の為なら、できることは何でもしてあげたいんだ」
「……ソアンちゃんが羨ましいわ、でも今日のリタは私の一人占めよ」
「僕もティスタを一人占めだね、それじゃ街の男性たちから恨まれそうだ」
その後も珍しいランプを見たり、魔石を使った魔道具なんかを見てまわった。普段なら店にないような物が売っていた、さっきの髪留めもその一つだった。作っているのは細工師の職人で、趣味で作っているものだったらしい、僕たちがそれを買えたのは運がとても良かったということだ。いろいろと見てまわってあっという間に夕方になった、僕はティスタを裁縫屋である家まで送っていった。
ティスタは楽しそうに笑っていた、時々は市場の店主相手に値引き交渉などもしていた。そんな彼女は生き生きとして美しかった、僕はこんなに綺麗な人の恋人になれるのかと、そんなことを他人ごとのように思った。ティスタを店まで送ると彼女は僕にかがんでと言った、言われたとおりに少し膝を折って屈んだら、僕の頬にティスタは優しいキスをしてくれた。
「とても楽しかったわ、リタ。それじゃあ、また明日!!」
「分かったわ、まずは友人からね。よろしくリタ、私の恋人候補さん」
「よ、よろしくティスタ。僕は初めて女性から、僕のことを好きだって言われたよ」
「あらあら、リタの近くには臆病な女の人しかいないのかしら」
「ただ単純に僕に魅力がない、それだけだと思うけれど」
「ふふふっ、私が好きになったエルフをそんなふうに言わないで」
こうして僕はティスタと友人としてから付き合うことになった、僕はこれからどうしていいのかよく分からなかった。ちょうどポエットが用事をすませて帰ってきたので、僕は頼んでいた衣服や防具を受け取って店を出た。ティスタがとても魅力的な、そして嬉しそうな笑顔で見送ってくれた。これは大変なことになってしまった、僕は宿屋の部屋に帰ったらもう戻っていたソアンにまず相談した。
「ソアン、どうやら僕はティスタと付き合うことになったよ」
「はぁ!? 一体どうしてたった半日で、そんな大変なことになっているんです!?」
「それが良く分からないんだ、話の流れでなんとなくかな。一応は友達から付き合うことになった」
「リタ様が押しに弱いのを忘れてました、そうですかティスタさんとですか。はぁ~」
「僕は何か間違ったのかな、それともこれで良かったんだろうか?」
「それはリタ様にしか分かりません、今は混乱しているから尚更分からないでしょう」
確かに生まれて初めて女性から口説かれて僕は混乱していた、ソアンはそんな僕をため息をつきながら見ていた。僕はティスタのことを好きになれるだろうか、確かに好ましい女性ではあるが何かが違うような気もしていた。ソアンはそんな押しに弱い僕に呆れてため息を何度もついた、どうも僕は好意を持った相手に強く言われると弱いようだった。
ソアンは僕自身でなければ良かったのか分からないと言った、そう言われたとおりなのかもしれなかった。恋心なんて持っている本人が分からなければ、他人は更に分からないものだろうからだ。そうしてしばらく僕たちは沈黙していたが、ソアンがそれじゃ部屋をもう一つ借りましょうと言ってきた。確かにティスタの恋人候補になった以上、それが養い子とはいえ成人しているソアンと僕は一緒に寝起きしてはいけなかった。
「ソアンと離れるなんて寂しいけど、いつかソアンも好きな者と一緒に遠くに行くのかな」
「そ、それは分かりません!! 特に今は好きな人が鈍感で困っています!!」
「ソアンの好きな者はあまり勘が良くないのか、それは君がとっても苦労しそうだね」
「大切な場面での勘は妙に鋭いんですけど、恋愛面では駄目だというのがよく分かりました!!」
「あんまりソアンに苦労はかけたくない、いつか僕にもソアンの好きな者を紹介しておくれ」
「はぁ~、そうですね。いつか絶対に紹介できますよ!! 私が失恋した後かもしれませんけど!!」
ソアンは僕とティスタが付き合うことになってどうも機嫌が悪かった、ティスタは人間で寿命が短いから最高の相手とは言えないが、こんなにソアンの機嫌が悪くなるとは思わなかった。そして、ソアンは宿屋の主人に言って部屋をもう一つ借りることにした、幸いにも僕たちはお金には困っていないからその点は大丈夫だった。
そうしてソアンが出ていってしまった部屋はどことなく寂しい感じがした、今までずっとソアンと一緒にいたから寂しいのだろうと僕は思った。ソアンは僕の大切な養い子、そしてとても大事な家族だ。だから寂しいのだろうと僕は思っていた、自分の本当の気持ちに気づくのは案外難しいものだった。だが気づいてしまえばそれなりに対処できた、僕はできるだけソアンといる時間を大切にしようと思ったのだ。
ソアンもいつかは誰か好きな相手ができて僕から離れてしまう、今はその練習のようなものだと自分に言い聞かせてみた。そうしたら寂しいけれども、それはソアンの成長の印なのだと納得できた。部屋は分かれてしまったけれど、それからも僕とソアンは一緒に行動した。最初の頃のソアンは不機嫌だったが、時間が経つにつれて落ち着いてきた。そんなある日のことだった、僕をティスタが訪ねてきたのだ。
「こんにちわ、リタ。私と一緒に市場に遊びに行ってくれない?」
「分かった、ティスタ。少し待っててくれ」
その日は何も予定はなくて朝食の席でソアンと冒険者ギルドにでも行こう、そう話して計画していたけれどティスタが来たからソアンにそのことを話した。そうして予定を変更してもらった、僕はティスタと市場へ遊びに出かけた、ソアンも外に出かけるようだった。僕はいってらっしゃいと言うソアンの少し寂し気な顔が気になった、そんな不安な気持ちのままで僕はティスタと出かけることになった。
「急にごめんなさい、今日は月に一度の特別な市場が開くの」
「へぇ、それは知らなかったよ」
「街の普通の人も売り子になったりしてるわ、だからいろいろとリタと見てまわりたかったの」
「いろんな物が売っていそうだ、それは楽しそうな市場だね」
「ええ、リタも欲しい物があったら良い機会よ」
「それじゃ、ティスタに似合う物でも探してみるよ」
最初はソアンの顔がちらついて落ち着かなかったが、ティスタと話しているうちにそっちに集中できだした。彼女と一緒に時を過ごすのは嫌ではなかった、ソアンと一緒にいる時とはまた違って綺麗なティスタ、そう彼女は美しく魅力的な笑顔で話をしてくれた。ティスタは元々顔の作りが美人だが、どうしてか今まで以上に綺麗に見えた。
そうしながらも相変わらず僕は未来のソアンと話している、そんな不思議な感覚が起こってきていた。ソアンとティスタの髪や瞳の色はよく似ていて、ティスタを見ると未来のソアンと話しているような気がするのだ。そんな不思議な感覚のまま、僕とティスタは市場を見てまわった。面白そうな物があれば触ってみたし、知らない物があれば店主に何なのか聞いてみた。
「やっぱり、リタといると凄く楽しいわ」
「僕はなんだか、凄く不思議な気分だ」
「あっ、これ。とても綺麗ね」
「白い髪留めか、花が彫ってあって綺麗だね」
「うーん、買ってみようかしら」
「そうか、どうだろう。これを僕から君に贈らせて欲しい」
「えっ、良いの?」
「きっとその薄茶色の髪に似合う、ぜひつけて貰いたいんだ」
それで僕は市場で白い髪留めを買った、そんなに高いものじゃなかった。でも手彫りの牡丹の花の細工が細かくて、とても綺麗な髪留めだった。僕はそれを買ってティスタの髪につけてあげた、ティスタは頬を赤くして喜んでいた。そんな彼女を見て僕は良かったと思った、そうした後に僕は売っているもう一種類の髪留めが気になった。
それも白い髪留めだったが彫られていたのは桜だった、桜はソアンが好きな花で村では春によく見に行った。だから僕はソアンへのお土産としてその髪留めを二つ買った、ティスタにもソアンに贈るのだと話した。ティスタはいたずらっ子のような顔をしていた、とても面白そうに僕のことを見てそしてちょっと寂し気に笑った。
「ソアンちゃんは幸せね、こんなに良いお父さんがいるんだもの」
「お父さんというより兄かな、僕はソアンの兄のようなものかもしれない」
「ふふふっ、良いお兄さんね」
「僕はソアンに助けられたから彼女の為なら、できることは何でもしてあげたいんだ」
「……ソアンちゃんが羨ましいわ、でも今日のリタは私の一人占めよ」
「僕もティスタを一人占めだね、それじゃ街の男性たちから恨まれそうだ」
その後も珍しいランプを見たり、魔石を使った魔道具なんかを見てまわった。普段なら店にないような物が売っていた、さっきの髪留めもその一つだった。作っているのは細工師の職人で、趣味で作っているものだったらしい、僕たちがそれを買えたのは運がとても良かったということだ。いろいろと見てまわってあっという間に夕方になった、僕はティスタを裁縫屋である家まで送っていった。
ティスタは楽しそうに笑っていた、時々は市場の店主相手に値引き交渉などもしていた。そんな彼女は生き生きとして美しかった、僕はこんなに綺麗な人の恋人になれるのかと、そんなことを他人ごとのように思った。ティスタを店まで送ると彼女は僕にかがんでと言った、言われたとおりに少し膝を折って屈んだら、僕の頬にティスタは優しいキスをしてくれた。
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