大剣と薔薇 ~女性で『不死身』のルーシーと奴隷の男の子ローズの物語~

アキナヌカ

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02ギフト

「ローズ、そこから絶対に動くなよ。それじゃあ、どうりゃああああぁぁぁ!!」
「うわっ!?」

 私は安全な物陰にローズを置いておいて、サラマンダー狩りをしていた。冒険者ギルドに行ったら運良くこんな依頼があったのだ、そして私はサラマンダーが暴れているという街道に行き、ものの見事にサラマンダーの首を落としてみせた。ローズはその私の様子を目を見開いて驚き見ていた、ふふんどうだ私だって銀の冒険者だ、このくらいは朝飯前の仕事なのだ。

「それじゃ、心臓にある魔石をとって……、ローズ!! 皮を剥ぎ取るぞ!!」
「俺は皮を剥いだことなんかねぇよ!!」

「教えてやるから覚えろ、サラマンダーの皮は燃えないから高く売れるんだ」
「くっそ、分かったよ!!」

「そうそう肉をそぎおとして、皮に穴を開けるなよ」
「難しいな、手間のかかる」

 ローズは私が教えたら大人しく剥ぎ取りを始めた、ここで口ごたえしてくるようだったら、キスして黙らせてやろうと思っていたのに残念だ。やがてサラマンダーの皮の使えそうな所は全部剥ぎ取った、ローズは意外と器用で仕事は丁寧だった。だからよしよしと頭を撫でて褒めてやったのに、私の手をはらいのけてくれた、このくらい反抗的なところも彼の可愛いところだ。

「ガキ扱いするなよな!! 俺だって十五歳の大人だ!!」
「へぇ、私は二十五歳だ。十歳差か、若さが羨ましい」

「しかしそんな大剣よく振り回せるな、あんた本当に女か?」
「私は生まれつき『怪力』でな、父や母も手をやいていた」

「……ギフトってやつか?」
「多分、そうなんだろうな」

 ギフトという神の祝福とも言う能力があるのだった、それらは千差万別でギフトを持っているのは珍しいことだった。私の『怪力』も物凄いギフトで私は大剣くらい小枝のように振り回せた、父や母はそんな力持ちの私を恐れてあまり世話をしてくれなかった。彼らは大人になったら奴隷商に売り飛ばそうなどと密談していて、幸いそれをこっそりと聞いていた私はその前に村を逃げ出したのだ。

「私もひょっとしたらローズと同じ奴隷だったかもしれん」
「なんだ、あんたも親に捨てられたのか?」

「そうだ、あやうく売り飛ばされるところだった」
「別に珍しいことじゃねぇだろ」

「ああ、珍しいことじゃない。それよりちゃんとサラマンダーの皮を運べよ」
「分かってるさ!!」

 ローズは平然としていたがそれは世間を知らないからだった、本来ならサラマンダーは一人の冒険者の手におえる獲物じゃない、火を吹いてくるうえに皮が鋼鉄のように固いからだ。まぁ『怪力』をもつ私にはいい獲物なのだが、これでしばらく金の心配をしなくてすむはずだ。その後、思った通り冒険者ギルドに魔石とサラマンダーの皮を売ったらいい金になった。

「三カ月は遊んで暮らせるな、ローズを口説いて遊ぼう」
「俺で遊ぶんじゃねぇ!!」

「冗談だ、ローズにギフトがないか調べてみよう」
「俺はギフトなんか持ってない、持ってたら奴隷商人もちゃんと飯をくれた」

「物は試しだ、いろいろ本を読んでやろう」
「俺は文字なんて読めねぇからな」

 私はローズに何かギフトがないかを探し始めた、ギフトを持っている人間は滅多にいないから、無駄かもしれなかったが暇つぶしにはちょうど良かった。それと同時にローズに文字を教えてやった、文字が読めた方がいいのは明らかだから、ローズも文句を言いつつ真面目に勉強していた。そして魔法の本を読んでいる時のことだった、ローズが『治癒ヒール』と唱えたとたん私は体が温かくなるのが分かった、そして微かにあった擦り傷などが癒えていた。

「…………ローズ、お前は凄いギフト持ちだぞ」
「俺にギフトがあるのか!?」

「ああ、『魔法』のギフト持ちだ」
「嘘だろ!? 『魔法』なんておとぎ話の中のものだ!!」

「いや、お前は『魔法』のギフト持ちだ。絶対にこのことを他の人に言うな、『魔法』のギフトはここ百年ほど見つかっていない、もし見つかったら王や貴族に捕まる」
「おっ、おう。分かった、誰にも言わない」

 大変なことが分かってしまった、『魔法』のギフトはそれほど珍しいものなのだ。ローズが奴隷でさえなかったら国の要職につけるくらい凄いものだ、ローズも王や貴族に捕まるのは嫌なのか、それ以後『魔法』のギフトのことを他人に口にしなかった。私はいろんな『魔法』をローズに教えてやった、ローズはそれらの『魔法』を次々と覚えてしまった。

「ローズ、『魔法』はお前が死にそうな時にだけ使え」
「うっ、うん。分かった」

「王や貴族はしつこい、お前が『魔法』のギフト持ちだと分かったら私を殺して、お前を自分たちの奴隷にするだろう」
「ルーシーは『魔法』は使わせないのか、俺のギフトは凄いんだろう?」

「なるべく使わせたくない、だから魔法契約に基づきお前にこう命令する。私が死んだ時にはローズを奴隷の身分から解放する」
「え!?」

 私は自分が殺された時にローズが奴隷の身分から解放されるようにした、こうしておけば私が死んでもローズは自由に生きていくことができるのだ。そのことにローズはびっくりしていた、ローズには魔法契約があるから私を殺せないが、間接的に殺す手段ならいくらでもあった。私はポカンとした顔をしているローズの頭を撫でた、今度はローズも大人しく撫でられていた。

「これで大丈夫だ、私が死んでもお前は自由に生きていける」
「いや、あんたが死んだら駄目だろ!!」

「これでも冒険者だ、いつ死ぬのか自分でも分からん」
「そこは意地汚く生き残るって言うところだろ!!」

「案外死んだら魂が日本に帰れるかもしれん、死もそんなに悪いことではないかもしれん」
「に、日本って何だ? とにかくあんたは死んだら駄目だ!!」

 ローズは真剣なそして泣きそうな顔をしてそう言った、私の身を案じてくれるとは結構仲が良くなっているのだ。私は笑ってそんなに簡単には死なんと言った、ローズは絶対に死ぬなよと言ってくれた。その夜私たちは口喧嘩もせずに仲良く一緒に眠った、私が眠った後にローズが私の頭を撫でてくれたような気がした。

「暇だしカーポ商会のスレイヤにでも会いに行こう」
「あの俺に大量に服を着せたやつか」

「ここぞとばかりに売りつけてくれたな、さすがにやり手の商人だ」
「奴隷がこんなに良い服を着てていいのかよ」

「そもそも私はローズを奴隷だと思っていない、私を抱いて欲しいが無理強いする気も無い」
「それじゃ俺のいる意味ってなんなんだ」

 私はカーポ商会のスレイヤに会いにいった、そうしたらコンドームのことで苦情がきていると言われた。使ったのに妊娠した娼婦がいたそうだ、でも私は最初から完全に避妊できるわけではないとスレイヤに言っておいた。スレイヤも娼館にそう言っていたが、相手は完全に避妊できると思っていたらしい、コンドームを正しく使用しても二%くらいの確率で妊娠はしてしまうのだ。

「それでコンドームは売れなくなったのか?」
「いや、売れてる。完全にじゃないけど避妊の効果があるのは認められた、苦情を言ってるのは私の話をよく聞かなかった娼館だけだ」

「それなら良かった」
「それでルーシーはどうなんだ、試してみてどうだった?」

「まだ試して無いんだ、私に女の魅力がないとローズが言うんでな」
「なにそれ酷い!!」

 その後ローズはスレイヤから説教を受けていた、奴隷を私のように大事に扱う主人は珍しいからだ、大抵の奴隷は首輪をつけられたり床にしか座れなかったりするのだ。私は恩をきせて抱いて貰うのも気がひけたから、今はローズを口説くのが楽しいんだとスレイヤに言った。スレイヤは物好きねぇと呆れていた、そうして私たちは軽く世間話をして宿屋に帰った。

「…………俺、あんたを抱いてもいい」
「いきなりどうしたローズ」

「だってあんたからはよくして貰ってるし、俺のこと心配してくれてるし」
「私は恩をきせて抱かれたくない、ローズが本気でその気になった時でいい」

「そんなこと言ってると、一生抱かれないかもしれないぞ」
「それならそれでいい、処女のまま死ねると妖精になるという話もある」

 処女のまま死んだ乙女は妖精になるというおとぎ話があった、もちろん本当かどうか確かめようがないが、本当だったら面白そうな話だから私は処女のままでも良かった。その夜も私はローズと一緒に仲良く眠った、私が眠ったふりをしていたらローズが髪を撫でてくれた。それだけでも私はローズが可愛くて仕方がなかった、だから寝たふりをしながらその手の感触を楽しんだ。そうして、いつの間にか眠ってしまった。
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