タトゥーアーティスト

アキナヌカ

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03とにかく先立つものがない

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「い、いや!? 俺は成功報酬しか受け取らない!!」

 とそこで俺は我にかえった。王女様の処女なんて貰ってしまったら何が起こるか分からない。報酬は彼女が無事に第二王女に戻ってから金銭として貰えばいい。そう考えて俺は彼女への手を引いた。

「そうですか、分かりました。クライブさん、それじゃ『浄化』でこのできそこないのタトゥーを消してください」
「ああ、分かった。少し体が熱くなるぞ」

「うっ!?」
「『浄化』と一緒に『治癒』も使っているから痛くはないはずだ」

「はい、体のあちこちがとても熱いです」
「タトゥーが消えていく証拠だ、少しだけ我慢しろ。しばらくかかる」

 俺は『浄化』と『治癒』を使ってフォルの体に彫ってあるタトゥーを消していった。フォルの体の中から染料が流れ出てきてシーツが汚れた。宿屋の主人に文句を言われるかもしれなかったが仕方がない。こうしてフォルの体は真っ白な肌に戻った、俺はすぐに服を着るようにいった。

「『神聖』と『業火』は彫って貰えないんですか?」
「彫りたくても染料が無い、染料を買うには金がかかるが、俺もそんなに先立つものがない」

「どうしてそんな凄いタトゥーが彫れるのにお金が無いんです」
「旅をしているから大金は持ち歩かない、まぁ二、三人客をとって稼ぐさ」

 そう言うと俺は今日はフォルに寝るように言った、フォルのベッドのシーツは染料で汚れていたから、必然的に俺と一緒に寝ることになった。フォルは俺の腕の中ですぐに眠ってしまった。命を狙われて街まで随分歩いたから疲れたのだろう。俺もフォルを腕の中に抱いてすぐに眠りにおちた。そうして翌日だ、俺たちは市場に来ていた。フォルに使う染料を探すのと俺の客を探すのが目的だった。

「お願いします、私にタトゥーを彫ってください」

 俺が上だけ脱いで歩けば客はすぐに見つかった。彫るタトゥーは普通の人が良く彫る『炎』と『水』だった。簡単なタトゥーで右手に『炎』を、左手に『水』を彫ってみせた。その出来栄えは我ながら見事なものだったから、客は喜んで多めに金を払ってくれた。普通の人間が『炎』と『水』を彫りたがるのは生活がそれで便利になるからだ。冒険者なんかだともっと攻撃的な文様や魔法を彫る。

「見事なタトゥーが欲しい方は今がいい機会ですよー!!」

 フォルはタトゥーを彫る役には立たないので、俺の宣伝をして一緒に歩いてくれた。一日で五人ほどの客が見つかったが『神聖』と『業火』を彫るにはまだ金が足りなかった。だからまだフォルにタトゥーを彫ることはできなかった。フォルは少しがっかりしていたが、明日こそはとやる気に満ちていた。

「フォル、第二王女に戻ったら報酬ははずんでくれよな」
「も、もちろん私の体を好きにしてください!!」

 あっ、ヤバイ俺はまだ第二王女に戻ったら報酬は金銭で良いとフォルに言っていなかった。フォルは処女を俺に貰って貰うのだと勘違いしたままだ。俺はおもしろいからその勘違いを指摘しなかった。彼女が第二王女に戻ったら改めて報酬の話をすればいい。そうやって俺たちが順調に稼いで一週間ほどが経った。ようやく俺はフォルに使う染料を確保した、だがフォルの敵も馬鹿ではなかったようだ。金の髪に青い少女が誘拐されましたと新聞に載せていた。そしてそんな追っ手におれたちは見つかった。

「そこの男と金髪の女、一緒に来てもらおうか」

 そう言われて素直に従う馬鹿はいない、俺とフォルも逃げ出した。するとその追っ手たちにおいかけられた。俺はまた『疾風』を使って風に体を押して貰い、フォルを抱えて風のように早く走った。それでどうにか追っ手はまくことができたが、このままこの街にいるのは危険だと判断して街を出た。次の街で部屋を借りて、ゆっくりとフォルにタトゥーを彫ればいい。最初はそんな甘い考えだった。

「金の髪に青い目の少女は王宮に連れて行くことになっている、それでも街に入るか?」
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