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08しつこい女
俺たちはいつものように市場で客を探していた、そうしたらまたシャラという女から声をかけられた。街を移ったのにしつこい女だ。よく俺たちの行き先が分かったもんだと感心すらした。だが俺には弟子をとる気はさらさら無かった。
「前にも言ったが断る。他のタトゥーアーティストを探してくれ」
「貴方が承諾してくれるまで、私は諦めませんわ」
そう言うとシャラは黙って俺たちの商売の邪魔にならないようにしていた。俺も商売を妨害されたらここの役人などに文句が言えるが、シャラはそんなことはしなかったので無視するしかなかった。俺が自分に彫っているタトゥーは見事な出来だから、客には困らなかった。そうして稼いで夕方になったらフォルと一緒に逃げ出した。
「あの女、しつこい!! 追いかけては来ないようだが、きっとまた来るぞ」
「無視するしかないようですね、クライブ」
「ああ、そうだな。早く諦めてくれることを祈るばかりだ」
「それはちょっと難しいかも」
「どうしてだ?」
「あのシャラという女の人、クライブのタトゥーを彫る腕をうっとりして見てますもん」
俺が凄腕のタトゥーアーティストだということが裏目に出ている。だからといって客をとらないわけにもいかなかった。稼げる時に稼いでおかないと何があるか分からないからだ。庶民はつらい、日銭を稼ぐのを止められない。その晩もフォルは俺のベッドにもぐりこんできたが、俺はシャラという女がなんだか怖くなっていたから、湯たんぽ代わりにフォルを抱きしめて寝た。
「お願いです、貴方の弟子にしてください!!」
「チッ、断る」
そして当然のように市場に稼ぎにいったらシャラという女がいた。そして俺の仕事を黙って見ているのも同じだった。俺はいつも以上に手先が狂わないよう注意しながら客に望まれたタトゥーを彫った。チラリと横目で見たが、確かにシャラという女は俺のタトゥーを彫る腕に見入っていた。夕方になってフォルと一緒に逃げ出すのも同じだった。
「俺はだんだんあのシャラという女が怖くなってきたぞ」
「ああ熱心に見つめられたら、ちょっと怖いですもんね」
「かといって別の街に移ってもついてきそうだ」
「まぁ、まず間違いなくついてくるでしょう」
「フォル、今日は一緒に寝ようぜ。あの怖い女を忘れたい」
「夜のお誘いですか!?」
「違う、ただ一緒に寝るだけだ」
「私はそれで幸せですから、いいですよ。夜のお誘いがあればもっといいです」
俺は本当にあのシャラという女が怖くて、フォルと一緒に寝て貰った。俺は誓って何もしなかったが、フォルから唇を奪われた。最近のフォルは積極的に俺を誘ってくるのだ。小さくて良い匂いがする柔らかい女の体に正直ちょっとくらりとした。だが俺は旅を続けたかったので、フォルには手をださなかった。
「クライブ、手を出しても内緒にしてもいいですよ」
「いや、手を出した時点で終わりだろ」
「やぁ、まぁ、王配になって貰ったりするかもしれませんね」
「俺の人生の終点じゃねーか!? 絶対にフォルには手を出さないからな」
「絶対に幸せにするのに」
「フォル、それはどちらかというと男が言うセリフだ」
夜のベッドの中で俺とフォルとの攻防戦は続いていたが、今のところ俺はフォルに手を出さずに済んでいた。正直抱きたいくらい可愛らしいのだが、まだ俺は旅を続けていろんなところへ行きたかった。だからフォルを抱かずに抱きしめるだけにしていた。
「俺より良い男をみつけてくれよ、フォル」
「私にはもうクライブ以外、男の人は目に入りません」
そんなことを言いながら俺たちは一緒に眠った。シャラという女のことも眠っている間は忘れることができた。そんな日々を繰り返していたある日のことだった。いきなり宿屋に役人たちがやってきた。
「クライブという男、フォルという女。領主さまの館に来てもらおうか」
「前にも言ったが断る。他のタトゥーアーティストを探してくれ」
「貴方が承諾してくれるまで、私は諦めませんわ」
そう言うとシャラは黙って俺たちの商売の邪魔にならないようにしていた。俺も商売を妨害されたらここの役人などに文句が言えるが、シャラはそんなことはしなかったので無視するしかなかった。俺が自分に彫っているタトゥーは見事な出来だから、客には困らなかった。そうして稼いで夕方になったらフォルと一緒に逃げ出した。
「あの女、しつこい!! 追いかけては来ないようだが、きっとまた来るぞ」
「無視するしかないようですね、クライブ」
「ああ、そうだな。早く諦めてくれることを祈るばかりだ」
「それはちょっと難しいかも」
「どうしてだ?」
「あのシャラという女の人、クライブのタトゥーを彫る腕をうっとりして見てますもん」
俺が凄腕のタトゥーアーティストだということが裏目に出ている。だからといって客をとらないわけにもいかなかった。稼げる時に稼いでおかないと何があるか分からないからだ。庶民はつらい、日銭を稼ぐのを止められない。その晩もフォルは俺のベッドにもぐりこんできたが、俺はシャラという女がなんだか怖くなっていたから、湯たんぽ代わりにフォルを抱きしめて寝た。
「お願いです、貴方の弟子にしてください!!」
「チッ、断る」
そして当然のように市場に稼ぎにいったらシャラという女がいた。そして俺の仕事を黙って見ているのも同じだった。俺はいつも以上に手先が狂わないよう注意しながら客に望まれたタトゥーを彫った。チラリと横目で見たが、確かにシャラという女は俺のタトゥーを彫る腕に見入っていた。夕方になってフォルと一緒に逃げ出すのも同じだった。
「俺はだんだんあのシャラという女が怖くなってきたぞ」
「ああ熱心に見つめられたら、ちょっと怖いですもんね」
「かといって別の街に移ってもついてきそうだ」
「まぁ、まず間違いなくついてくるでしょう」
「フォル、今日は一緒に寝ようぜ。あの怖い女を忘れたい」
「夜のお誘いですか!?」
「違う、ただ一緒に寝るだけだ」
「私はそれで幸せですから、いいですよ。夜のお誘いがあればもっといいです」
俺は本当にあのシャラという女が怖くて、フォルと一緒に寝て貰った。俺は誓って何もしなかったが、フォルから唇を奪われた。最近のフォルは積極的に俺を誘ってくるのだ。小さくて良い匂いがする柔らかい女の体に正直ちょっとくらりとした。だが俺は旅を続けたかったので、フォルには手をださなかった。
「クライブ、手を出しても内緒にしてもいいですよ」
「いや、手を出した時点で終わりだろ」
「やぁ、まぁ、王配になって貰ったりするかもしれませんね」
「俺の人生の終点じゃねーか!? 絶対にフォルには手を出さないからな」
「絶対に幸せにするのに」
「フォル、それはどちらかというと男が言うセリフだ」
夜のベッドの中で俺とフォルとの攻防戦は続いていたが、今のところ俺はフォルに手を出さずに済んでいた。正直抱きたいくらい可愛らしいのだが、まだ俺は旅を続けていろんなところへ行きたかった。だからフォルを抱かずに抱きしめるだけにしていた。
「俺より良い男をみつけてくれよ、フォル」
「私にはもうクライブ以外、男の人は目に入りません」
そんなことを言いながら俺たちは一緒に眠った。シャラという女のことも眠っている間は忘れることができた。そんな日々を繰り返していたある日のことだった。いきなり宿屋に役人たちがやってきた。
「クライブという男、フォルという女。領主さまの館に来てもらおうか」
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