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10旅の途中
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「フォルのことは可愛いと思っているが、まだ夫になるほど惚れてはいない」
「可愛いとは思ってくれているんですね!!」
「フォルは可愛いよ、俺に猶予をくれているのが可愛い」
「むぅ、なんだか微妙な可愛さです」
「普通に女性としても可愛いぞ」
「へへっ、それならいいです」
「そういうところが可愛い」
旅の途中の出来事だった、その日は雨で先に進めずにいた。俺たちは天幕を張って雨をしのぎながらいろんな話をした。そうして俺は久々にこの天幕がテントくらい快適だったらなと思った。俺は異世界転生者で日本での記憶があるのだ。この世界でタトゥーアーティストになれてから、この世界も悪くないと思って生きてきた。でもやはり偶に日本のことが恋しくなる。
「フォル、俺の横にいてくれ。俺が元の世界に戻りたいと思わないようにな」
「元の世界ってなんです?」
「今では夢のような世界だよ、そうだ『幻覚』を使って料理を再現してみせようか」
「これはパイ?」
「グラタンだよ、海老の入った奴で俺が好きなんだ。飲み物は桃のジュースでいいか」
「あちちっ、これ熱いけどすごく美味しいです。ジュースも凄く甘くて美味しいです」
「『幻覚』だからお腹がいっぱいになることもないし、好きなだけ飲み食いしていいぞ」
「食べ終わりました、次の料理をお願いします」
俺はハンバーグやナポリタン、それにステーキやノンアルコールのカクテルなど様々な料理や飲み物を出していった。フォルはそれに大喜びをした、『幻覚』だからいくらでも食べられて味わうことができた。こっちの世界の料理は味付けが薄い、それに肉がなかなか出ない。俺が『幻覚』を彫ろうと思ったのも元の世界の料理を楽しむためだった。だからフォルと一緒に散々飲み食いをした。
「ふわぁ、美味しかったです。それで本物の料理はなんですか?」
「シチューだよ、これは元の世界から再現できた料理だ」
「うわぁ、このスープも熱いけど凄く美味しい」
「他の料理も再現できればいいんだけどな」
「お城のコックに命ずればどうにかなりますよ」
「ははっ、そう言って俺を夫にする前提で話すな」
まだ雨は止まない、今日は天幕のなかで野宿することになりそうだ。この天幕もできるだけ元の世界のテントを再現したものだから、基本的に雨が入ってくることはない。俺はシチューを食い終わったらフォルと一緒に寝転んだ。そうしているとフォルが俺の腕の中に入ってくる、いつものことだ。いつかこの柔らかいぬくもりを手放せなくなったら俺はフォルの夫になっているだろう。まだ決まった話じゃない、いつかの話しだ。
「でももう手放しがたいけどな」
「何のことです?」
「フォルは抱き心地が良いって話だ」
「へへっ、私もクライブに抱きしめられるの好きです」
そうしてフォルは俺の唇にキスをした、悪びれもなく楽しそうにするものだから怒れなかった。ただし、それ以上は防いでフォルを抱きしめた。元の世界では得られなかった幸福な時間だった。俺は元の世界では働いてばかりいた。いつか休みを満喫するのだと思いながら、休日は休息にあてていた。今考えるとどうしてそんなに働いてばかりいたのか分からない。こうやってフォルを抱きしめて過ごすように、誰か心を分かち合える相手を探せばよかったのにな。
「フォル、今日はここで野宿だ。俺をしっかり抱きしめてくれよな」
「もちろんです、嫌だと言っても離しません」
それは旅の途中の出来事だった。何気ない日常だったが、俺はだんだんフォルに惚れていっているような気がした。俺も絆されやすい性格だったんだなと自分を再発見した。元の世界に戻りたいという気持ちはあるが、フォルがいるならこの世界も悪くないな。
「可愛いとは思ってくれているんですね!!」
「フォルは可愛いよ、俺に猶予をくれているのが可愛い」
「むぅ、なんだか微妙な可愛さです」
「普通に女性としても可愛いぞ」
「へへっ、それならいいです」
「そういうところが可愛い」
旅の途中の出来事だった、その日は雨で先に進めずにいた。俺たちは天幕を張って雨をしのぎながらいろんな話をした。そうして俺は久々にこの天幕がテントくらい快適だったらなと思った。俺は異世界転生者で日本での記憶があるのだ。この世界でタトゥーアーティストになれてから、この世界も悪くないと思って生きてきた。でもやはり偶に日本のことが恋しくなる。
「フォル、俺の横にいてくれ。俺が元の世界に戻りたいと思わないようにな」
「元の世界ってなんです?」
「今では夢のような世界だよ、そうだ『幻覚』を使って料理を再現してみせようか」
「これはパイ?」
「グラタンだよ、海老の入った奴で俺が好きなんだ。飲み物は桃のジュースでいいか」
「あちちっ、これ熱いけどすごく美味しいです。ジュースも凄く甘くて美味しいです」
「『幻覚』だからお腹がいっぱいになることもないし、好きなだけ飲み食いしていいぞ」
「食べ終わりました、次の料理をお願いします」
俺はハンバーグやナポリタン、それにステーキやノンアルコールのカクテルなど様々な料理や飲み物を出していった。フォルはそれに大喜びをした、『幻覚』だからいくらでも食べられて味わうことができた。こっちの世界の料理は味付けが薄い、それに肉がなかなか出ない。俺が『幻覚』を彫ろうと思ったのも元の世界の料理を楽しむためだった。だからフォルと一緒に散々飲み食いをした。
「ふわぁ、美味しかったです。それで本物の料理はなんですか?」
「シチューだよ、これは元の世界から再現できた料理だ」
「うわぁ、このスープも熱いけど凄く美味しい」
「他の料理も再現できればいいんだけどな」
「お城のコックに命ずればどうにかなりますよ」
「ははっ、そう言って俺を夫にする前提で話すな」
まだ雨は止まない、今日は天幕のなかで野宿することになりそうだ。この天幕もできるだけ元の世界のテントを再現したものだから、基本的に雨が入ってくることはない。俺はシチューを食い終わったらフォルと一緒に寝転んだ。そうしているとフォルが俺の腕の中に入ってくる、いつものことだ。いつかこの柔らかいぬくもりを手放せなくなったら俺はフォルの夫になっているだろう。まだ決まった話じゃない、いつかの話しだ。
「でももう手放しがたいけどな」
「何のことです?」
「フォルは抱き心地が良いって話だ」
「へへっ、私もクライブに抱きしめられるの好きです」
そうしてフォルは俺の唇にキスをした、悪びれもなく楽しそうにするものだから怒れなかった。ただし、それ以上は防いでフォルを抱きしめた。元の世界では得られなかった幸福な時間だった。俺は元の世界では働いてばかりいた。いつか休みを満喫するのだと思いながら、休日は休息にあてていた。今考えるとどうしてそんなに働いてばかりいたのか分からない。こうやってフォルを抱きしめて過ごすように、誰か心を分かち合える相手を探せばよかったのにな。
「フォル、今日はここで野宿だ。俺をしっかり抱きしめてくれよな」
「もちろんです、嫌だと言っても離しません」
それは旅の途中の出来事だった。何気ない日常だったが、俺はだんだんフォルに惚れていっているような気がした。俺も絆されやすい性格だったんだなと自分を再発見した。元の世界に戻りたいという気持ちはあるが、フォルがいるならこの世界も悪くないな。
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