タトゥーアーティスト

アキナヌカ

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22タトゥーアーティストとしての失敗

「フォル、俺は今『転移』のタトゥーを彫るかどうか迷ってる」
「えっ? 『転移』なんてできたら凄く便利じゃないですか」

「だがこのタトゥーは彫るのが物凄く難しいんだ。あと俺じゃなくてフォルに彫る」
「私にですか!? それは確かにちょっと怖いですね」

「『転移』のタトゥーはきちんと彫らないと目的地に転移できない」
「はぁ、昔話で土に埋まったり、岩にめりこんだりしたことを聞きました」

 俺は『転移』のタトゥーを彫っておいたら凄く便利だと思っていた。俺じゃなくてフォルに彫るのは俺はもうたくさんタトゥーを入れ過ぎているからだ。フォルが怖がるなら彫るのを止めようと思った、だがフォルはこう言った。

「クライブ、私は貴女のタトゥーアーティストとしての腕を信じてますよ」
「つまり『転移』のタトゥーを彫っていいということか」

「はい、私なら大丈夫です。覚悟はできてます」
「分かった、そうと決まれば街で『炎』と『水』のタトゥーが入ってないやつに彫ってやる」

「しばらくタトゥーを彫って無いから手慣らしですね」
「ああ、タトゥーを彫る感覚を取り戻したい」

 こうして俺は正体を隠して街の市場で『炎』と『水』のタトゥーを彫った。フォルも正体を隠して呼び込みをしてくれた。『劫火』や『疾風』など難しいタトゥーを頼まれることもあった。そうして俺はタトゥーを彫る感覚を取り戻していった。だが『転移』は奇跡への挑戦と言われるほど難しいタトゥーだった。タトゥーを彫る感覚を取り戻して、そしてとうとう『転移』のタトゥーをフォルの背中に彫ることにした。

「く、クライブ。空間が歪んでますよ!?」
「チッ、これだから『転移』のタトゥーは難しいんだ。フォル、気にするな」

 『転移』のタトゥーを彫りながら俺は時間と空間の精霊がチカチカと輝き舞い踊るのを感じた。それはつまり『転移』のタトゥーが今のところ成功しているということだった。俺はゆっくりと慎重にフォルの背中に『転移』のタトゥーを彫っていった。そうして彫り終えたら、俺は集中力を使い過ぎたせいで倒れた。フォルの心配する声が聞こえたが返事はできず意識は遠ざかっていった。

「もうクライブはやり過ぎです、少し休んで下さい」
「分かった、フォル。俺が休んでいる間、『転移』のタトゥーを試そうとするなよ」

「ええ、分かりました。けどどうしてです?」
「俺も一緒に『転移』するからだ」

「なるほど難しいタトゥーだから、二人で試そうというわけですね」
「そうだよ、失敗していても二人でいたら平気さ」

 俺はタトゥーを彫って一日経てば回復した、フォルの『転移』のタトゥーは綺麗に彫れていた。そうして、俺とフォルの二人で『転移』を試すことにした。

「最初はよく行ったことのある場所がいいぞ」
「それなら王宮の私の部屋を目指します」

「分かった、それじゃフォル頼む」
「はい、『転移』!!」

 転移のタトゥーを試した途端、俺達は千メートルはあろう空の上に放り出された。完全な失敗だ。命綱を付けていて良かった。俺はフォルを抱き寄せ『疾風』で空を飛びゆっくりと地面に下りた。

「こ、怖かった」
「『転移』は失敗したな、もう使わない方がいいから近くの街に歩いていこう」

「でもどうして失敗したんでしょう。クライブは腕の良いタトゥーアーティストです」
「何かが足りないのかもしれない、それか『転移』のタトゥーが上手く彫れてないのかもしれない」

「いいえ、クライブがタトゥーを彫りそこなうことなんてありません。きっと何かが足りないんですよ」
「俺のタトゥーアーティストとしての腕を信用してくれてありがとな、フォル」

 その晩は街の宿屋に泊まった、家である侯爵家のほうは出かけると言ってあるから心配ない。しかし何故『転移』が失敗したのか、俺はずっとそれを考え続けた。
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