異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

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第二章 変わり始める互いの世界

悠生、領地へ行く

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 あの、領地を譲り受けた会議から2日後、ステファニアの父母であるスティーブとナンシーは自領であるカンデラ領へと帰っていった。理由は、王都での貴族への挨拶あいさつ回りが終わったことと、何といっても今は通常は領地にいる期間で、王都にいるのは特例だったからで、今は自領の管理をしなければならなかったからである。

 通常、貴族は半年は自領で過ごし、もう半年は王都で暮らす。貴族は領地運営の責任者であると同時に会議へ出席し、国の重要案件に意見を述べる、言わば、国会議員的な立場も併せ持っているのである。

 今回のように、貴族の配置移動を伴う会議は貴族全員の出席が必要である。貴族達は皆、掃き出し窓の魔法を使えるか、魔法の能力のない者は、従者に掃き出し窓の魔法を使える者を従えている。それで、今回の会議も貴族全員が出席し、会議が終わるやいなや、自領で暮らす期間の者は、自領へ帰って行ったのである。通常ならば、ステファニアの兄姉であるシフォン、マイク、リサも自領に帰るところだったが、せんだってから日本語教室があるため、3人とも王都へ残ったのだ。


 その2日後、会議から4日後、悠生ゆうせいは馬車に乗っていた。馬車は3台で列を組み、先頭から1番目と3番目に護衛と若干じゃっかんの荷物を載せ、悠生ゆうせい自身は真ん中の馬車に乗っていた。

 目指す先はハンサム領。

 先日悠生ゆうせいが譲り受けた、もうすぐアカツキ領になる予定の土地である。

 時刻は夕暮れ時、今頃は、通常なら悠生ゆうせいとステファニアが日本語教室の準備をしている頃だ。馬車列は宿場町、グレゾームに到着していた。先に放っていた従者によって、宿は確保されている。

 駐車場に馬車を止め、馬車に乗っていた護衛は宿へ入る。悠生ゆうせいは宿へ入る前に、


(ステファニア、聞こえる?)

(聞こえてるわよ。悠生ゆうせい)

(今、居る場所を覚えて)

(OK。覚えたわ)


 しばしリンクでステファニアと言葉を話し、宿へ入って自分が泊まる部屋へと向かう。

 すると悠生ゆうせいは意を決してカンデラ家の王都邸をイメージして魔力を込める。すると、ゆらゆらと波打っている円状の空間が現われる。あまり大きくはないその円状の空間を、悠生ゆうせいは四つんいになりながらくぐり抜けた。

 果たして、悠生ゆうせいはカンデラ家の王都邸へいたのである。初めての遠距離での掃き出し窓の魔法の成功であった。


     *


 悠生ゆうせいの魔法の進歩は目覚めざましかった。

 たった2ヶ月かそこらで10年はかかるとされている掃き出し窓の魔法を、小さいとは言え成功させたのである。

 それもこれも、悠生ゆうせいとステファニアがリンクでつながっており、互いの記憶にアクセスできるからである。

 しかし、魔力を扱える量というものは、やはり長年の努力というものが必要らしく、悠生ゆうせいには魔力量が足りなかった。

 とはいえ、掃き出し窓の魔法を成功させ、王都まで来たのである。その日の授業の準備をちゃっちゃと済ませ、講義に向かう悠生ゆうせいとステファニアであった。


     *


 講義が終わり、後片付けを済ませ、食事をするシフォン、マイク、リサと悠生ゆうせい、ステファニア。シフォン、マイク、リサは、今朝、ハンサム領へ旅立ったのは知っている。そこで疑問が、

「アカツキ男爵、君は今朝、ハンサム領へ旅だったのでは?」

「はい。宿場町のグレゾームまで馬車で行き、講義のために掃き出し窓の魔法で戻って来ました」

「あぁ、それで今ここにるのか」

「ところで、義弟に男爵はめてもらえませんかマイク兄さん」

「いいや、私は後継者の一人ではあるが、君と違って私は爵位は持っていない。敬意けいいを持って呼ぶのは当たり前だろう?」

「そういうものですか…」


 ここで双方そうほう認識にんしき齟齬そごがある。

 マイクは従者の誰かに掃き出し窓の魔法を使わせたと思っているが、悠生ゆうせいは自力で来たのである。

 この食い違いに悠生ゆうせいもステファニアも気付いていたが、ここであからさまにして話をややこしくするより、スルーしてらぬ説明をはぶいたのである。


 悠生ゆうせいは、カンデラ邸からグレゾームの宿屋の一室へ戻った。悠生ゆうせいがいないうちに夕食を済ませておくように指示を出しておいたので、皆、夕食は済ませている。悠生ゆうせいは護衛と少し話をした後、部屋で眠りにつくことにした。


 朝、3台の馬車はハンサム領を目指して進み始めた。もうすぐお昼になろうかという頃、うっすらと遠くに領主邸のある街が見えた。

 馬車を止めて昼食を取り、また走り始める。日が傾きかけた頃、街へと入った。馬車はまっすぐ領主邸を目指す。領主邸の門をくぐり抜けて、領主館の前まで来たところで悠生ゆうせいは馬車を降りる。


(ステファニア、聞こえる?また場所を覚えてもらいたいんだけど)

(聞こえてるわよ。悠生ゆうせい)

(今、館の前にいるんだけど、この場所を覚えて)

(OK。覚えたわ)


 これで悠生ゆうせいもステファニアも掃き出し窓の魔法で自由にこの館へと来られるようになった。

 領主邸に入ると使用人たちが慌ただしく働いていた。悠生ゆうせいは執事に領主への面会をお願いした。執事に案内されて、書斎まで来たはいいものの、あの、恨むような眼差しは忘れられなかった。悠生ゆうせいは意を決して扉を開けた。


「ユウセイ君、長旅ご苦労であったね」

「いえいえとんでもございません」


 部屋にたのは、先日恨むような眼差しでにらんできたレオニー・ハンサム伯爵であったが、今日はおだやかな顔つきになっている。


「先だっては失礼したね。これからの苦労を思って殺気立ってしまっていてね。それと」

「それと?」

「君が裏から手を回してこの領地をうばい去ったと思ってしまってね」

「そんな」

「いやいや、誤解はもう解けたよ。
 私も貴族に名をつらねるもの、裏で手を回したとならばどういう手を使ったかくらいは調べる。
 しかし君は、裏で手を回すどころかあの会議の前まで、この領地をゆずり受けるどころか爵位しゃくいを与えられることすら知らなかったと知ってね。あの時は済まなかった」

「いえいえそんな」


 らぬわだかまりが解けたことと、また、あの目でにらまれることを回避したことに安堵する悠生ゆうせいであった。


「今、私物は倉庫にでも放り込もうと私も、使用人たちさわががしくしていてまないね」

「いえいえとんでもありません」

「片付けが済んだらこの屋敷のあるじは君だ。残る従者じゅうしゃ共々ともどもよろしく頼むよ」

「分かりました。おまかせ下さい」

 その後、少し世間話をして、部屋を出た。それから執事の案内で、一番豪華ごうかな客室に通され、

「これからこちらの領主様におなりになる方に客室とは失礼かとぞんじますが、まだ伯爵様が執務室や寝室を使われます故、こちらでご勘弁下さい」

「いえいえこちらで十分です」


 悠生ゆうせいは、執事にこの後講義に向かうため、夕食は要らないことと、護衛と馬車は、明日、掃き出し窓の魔法で王都へ戻すむねを伝えた。


     *


 昨日と同じ要領で王都へ行き、講義を終え、片付ける前に一度風呂へ入った。

 風呂から出た後に講義の後片付けをして、食堂へ向かう。ステファニアと2人で遅い夕食を取った後、ハンサム領主館のあの客間へと戻った。

 メイドと一緒に来た護衛と少し話した後、もう一度王都へ行き、明日の教材の準備をした後にまたハンサム領主館の客間へと戻り、眠りについた。

 次の日、目が覚めて、衣服を着替え、顔を洗い、軽く歯をブラッシングした後、


(ステファニア、おはよう)

(おはよう悠生ゆうせい)


 脳内会話をした後、昨日連れて来た馬車と護衛を集めた。


(ステファニア、掃き出し窓の魔法をつないで)

(分かったわ)


 執事にまた近いうちにステファニアと二人で来るむねを伝えてみなで王都へと帰ったのだった。
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