異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

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第五章 流通革命

サーメイヤ語学会の会長のお仕事

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 とある講習の日の昼休み。

 ちょっと気になることがあったので、汲広くみひろ岡倉おかくらたずねてみた。


「こんなセンターまで作って、そんなに生徒を見込めるんですか?」

「掃き出し窓の能力は欲しい人はいくらでもいます。今、募集が殺到している状態で、今のペースで講習を続けるとして、落ち着くまで数年はかかりますよ」


 人材を育てて欲しいけど、講習に時間がかかり、こちらのセンターに受け入れるだけの能力がない。

 需要過多。

 今はそんな状態なのだそうだ。


「かと言って、講習期間を短くすれば、教育不足で使えない人材を送ることになる。かぁー」

「まぁ、そういうことですね。」


 有効な講習期間の短縮方法は誰も思いつかない。汲広くみひろは、


たとえば、初期の講習だけして、あとは先輩に教えてもらってね♪と送り出したら?」

「こちらで教える期間より育てる期間が長くなりますし、ただでさえ少ないその先輩の能力者の時間をくわけですから、こちらで育てた方が効率がいいですね」


 案を出してみたものの、岡倉おかくらに、すぐに否定されるのであった。


「このペースをくずさずに、地道にやるしか仕方がないですね」


 岡倉おかくらは、そう言うのであった。


     *


「さすがに放置しすぎたかな?」

「一応メールやお電話はしていたんですけどね」


 講習が終わり、受講生を送り出して、次の講習が始まるまでの間の空いた日に、汲広くみひろとアントネラは久々に、サーメイヤ語学会の事務所に顔を出すことにした。受付で、


岡塚おかつかアントネラと申します」

「へ?か、会長?」

「はい。名前だけの会長です」

「少々お待ちください」


 受付のお姉さんは血相を変えて駆け出して行ってしまった。

 しばらくして戻ってくると、


「あ、会長!」

「お久しぶりです。永星ながほしさん」

「この間のテレビ電話以来ですね」

「いつもお世話になってます」


 現われたのは、サーメイヤ語学会の理事長、永星ながほし明美あけみであった。

 
「どう?お変わりない?」

「はい。健康にやっております。立ち話も何ですので会長室へどうぞ」


 どうやら会長室があるらしい。

 会長室に通された。

 アントネラはインジスカン王国にいる間にも、何とか時間を作って会長しか決算できない書類仕事は一応してきていた。

 少し世間話やら、学会の話をした。

 間、気になったのが、執務机に詰まれていく書類であった。

 すると、永星ながほしは、


「せっかくいらしたんですから、あちらの書類を処理していってくださいませ」


 大量に詰まれた書類をアントネラがチェックし、汲広くみひろが判を押す。

 連携作業だ。

 朝に来て、昼食を挟んで夕方になるまで書類仕事をしたら仕事が片付いた。

 やればできるものである。

 汲広くみひろは、


「ちょっと永星ながほしさん呼んでくる」


 と言って、部屋を出て行った。

 汲広くみひろ永星ながほしと一緒に戻って来て、


「まぁ、あれだけあった書類が、もう片付いたんですか!?」


 信じられないという顔をしているが、もう終わった。


「後の処理はお願いしますね」

「はい。分かりました」


 永星ながほしは、職員にテキパキと指示を出している。

 書類がくなったところで、


「ねぇ、永星ながほしさん」

「はい」

「私がいつまでも会長でいるわけにはいかないと思うの」

「何度もその話は聞きましたが、あなたが会長でいてもらわないと困ります」


 他国へ行ったりして、いつまで日本に居られるか分からないアントネラより、もっと会長にふさわしい人に会長職をゆずりたいとかねてからアントネラは言っていた。

 しかし、永星ながほしは首を横に振り続けた。


「あなたほど日本語もサーメイヤ語も理解している人がいないのですよ」

「それなら、一般の学会員でもいいんじゃない?」

「いえ、知識に富んだ人が会長であるべきです」


 何度も繰り返された言葉。

 アントネラが会長職を降りたいと言い、永星ながほしが拒否した。


「本当は私よりふさわしい人がいると思うんですけどね」


 汲広くみひろとアントネラが学会の建物から出た後、アントネラがそうこぼした。


永星ながほしさんは頑固がんこだね」

「いつになったら会長職を降りられるのかしら」


 会長職に居座ったまま他国に行ったら、会長しか決算できない書類を片付けるため、たまに日本へ帰って来なければならない。

 それはアントネラにとって、肉体的にしんどいのである。


 汲広くみひろとアントネラは赤ワインを買って帰り、夕食時に呑んだ。

 今度、両親に酒の好みを聞いて、一緒に呑むのもいいかも知れない。

 そんなことを思う汲広くみひろとアントネラであった。
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