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新しい生活
ラガダー地方へ出発
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「場所を確認することくらいで得るものが何も無かったわ」
薫はデイザス地方から帰って一旦王城の宮廷魔道士部屋に顔を出した後、家に帰ってからそう言うのであった。
「まぁ、そう言うなよ。わざわざこっちの仕事を一旦休んで、おまけに休みも削ってわざわざ出かけたんだろ?」
「そんなこと言ったってこの国には娯楽もないし、この旅で貴族とも会わなかったし、情報交換もできなかったのよ。愚痴りたくもなるわよ」
「戦力は測れたんだろ?」
「先代筆頭宮廷魔道士の書き記した通りだったわ」
得るものがあまりなかったことについて薫の落胆は大きい。文句を言って発散している感じだ。
「次の場所では何か得てきたいわね」
*
その頃、ミネルバとカッテリーナはよく気分が悪くなっていた。
「つわりね」
妊娠しているとよくなる症状だそうな。
「時期が過ぎれば落ち着くわ。それまでは大変だろうけど頑張ってね」
薫は、ミネルバとカッテリーナの背中をさすりながらそう優しく言うのであった。
それから薫は1日休んで旅の疲れを落としながらミネルバとカッテリーナと話をし、翌日、登城した。
「…と、デイザス地方の魔道士団は、先代の書き記した通りの実力でした。まだ、ラガダー地方、アサトラス地方への訪問も予定していますので、引き続き、予定調整をお願いします」
得るものが無かったと言いながら、それを言ってしまうと宮廷魔道士の士気が落ちてしまう。十分得る者があった体にして挨拶をした薫なのであった。
それから不在の間に溜まった仕事をこなす薫。そうは言っても二郎の決裁で大丈夫なものはすでに済ませてあるのでたいした量ではない。今日1日で終わるだろう。
次の日の薫は、旅先で読んだ本で覚えたとか言って空を飛び始めた。今日は他の宮廷魔道士に空の飛び方を教えている。結局先代に言われた通り、便利な魔法があれば団員に教えているのであった。それから次に向かうラガダー地方への日程の相談をしていた。
それから1週間ほどして、旅支度を終えた薫が、王城正面へ来ている。例の宮廷魔法師団所有の一番豪華な馬車も停まっている。
「では、ラガダー地方へ向けて出発します」
「おう。留守は任せな」
薫は馬車に乗り、馬車は出発する。今回も片道で4日ほどだ。お供は前回同様アヤコフにナターシルアだ。
「今日もいい天気ね。これだけ明るければ本も読みやすいわ」
薫は走り出して早々また本を読み始めるのであった。
2日目は近くに伯爵家があるということで、挨拶をしてから行くことにしている。
ドマステル領に入り、真っ直ぐ領都へ。途中で、魔法で二郎を呼び出し、領主邸へ。
「先日面会予約を入れておいたアソウ公爵夫妻だが、伯爵はご在宅か?」
「お待ちしておりました。どうぞ中へ」
アポイントメントを取っていたのですんなりと屋敷の中へ入れた。二郎と薫は応接室へ通された。程なくして領主、ラザーニーア・ペヘントスが現われた。
「ようこそおいで下さいました、アソウ夫妻。ここの領主をしておりますラザーニーア・ペヘントスと申します。どうぞよろしく」
「お会いいただきありがとうございます。私はジロウ・アソウ公爵。こちらは妻の薫です。よろしくお願いします」
挨拶が終わり、雑談に入る。この辺りは王都より海が近いので海産物の干物がよく食べられているそうな。
「ところで、アソウ公爵は位が高いとは言え新興貴族。どこかの派閥には既に入っておいでですか?」
「と、言いますと?」
聞けば、このペヘントス家。第2位の大きさを持つジャクソルト侯爵の派閥に入っているらしい。派閥への勧誘である。
「もし、どこにも入っていらっしゃらないのであれば、私が口添えして仲間になっていただくこともできますが」
「それは、リチャード・バーンクリットの娘でも入れて下さるのですか?」
「っっ!!」
薫は、最大派閥、バーンクリット公爵家の娘である。普通考えて、よその派閥へは入れない。
「リチャード・バーンクリットの娘とは?」
「私、古い名前をエリアリアーナ・バーンクリットと申しまして、リチャード・バーンクリットの娘でございます」
「っっっ!!!
秀才、エリアリアーナ・バーンクリット様ですか?」
「私からは秀才とは申したことはございませんが、よくその様におっしゃる方がいらっしゃいます」
はっきり言って、先方、ラザーニーアさんの情報収集不足である。
「ですので、他の派閥へ入れと仰っても…」
「しっ、失礼致しました!」
そう言って、謝られたものの、その後の話は特におかしな事もなく進み、お暇することにした。
「それでは私は旅の途中ですので、失礼致します。また何かありましたらよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
別れを告げて、馬車に戻る。まだ陽は高い。次の宿場町を目指す。
「まさか他所の派閥に勧誘されるとは思わなかったわ」
「ラザーニーアさんのところへは情報が入らないのかな?大丈夫か?」
自分のことよりラザーニーアさんを心配する二郎と薫なのであった。
薫はデイザス地方から帰って一旦王城の宮廷魔道士部屋に顔を出した後、家に帰ってからそう言うのであった。
「まぁ、そう言うなよ。わざわざこっちの仕事を一旦休んで、おまけに休みも削ってわざわざ出かけたんだろ?」
「そんなこと言ったってこの国には娯楽もないし、この旅で貴族とも会わなかったし、情報交換もできなかったのよ。愚痴りたくもなるわよ」
「戦力は測れたんだろ?」
「先代筆頭宮廷魔道士の書き記した通りだったわ」
得るものがあまりなかったことについて薫の落胆は大きい。文句を言って発散している感じだ。
「次の場所では何か得てきたいわね」
*
その頃、ミネルバとカッテリーナはよく気分が悪くなっていた。
「つわりね」
妊娠しているとよくなる症状だそうな。
「時期が過ぎれば落ち着くわ。それまでは大変だろうけど頑張ってね」
薫は、ミネルバとカッテリーナの背中をさすりながらそう優しく言うのであった。
それから薫は1日休んで旅の疲れを落としながらミネルバとカッテリーナと話をし、翌日、登城した。
「…と、デイザス地方の魔道士団は、先代の書き記した通りの実力でした。まだ、ラガダー地方、アサトラス地方への訪問も予定していますので、引き続き、予定調整をお願いします」
得るものが無かったと言いながら、それを言ってしまうと宮廷魔道士の士気が落ちてしまう。十分得る者があった体にして挨拶をした薫なのであった。
それから不在の間に溜まった仕事をこなす薫。そうは言っても二郎の決裁で大丈夫なものはすでに済ませてあるのでたいした量ではない。今日1日で終わるだろう。
次の日の薫は、旅先で読んだ本で覚えたとか言って空を飛び始めた。今日は他の宮廷魔道士に空の飛び方を教えている。結局先代に言われた通り、便利な魔法があれば団員に教えているのであった。それから次に向かうラガダー地方への日程の相談をしていた。
それから1週間ほどして、旅支度を終えた薫が、王城正面へ来ている。例の宮廷魔法師団所有の一番豪華な馬車も停まっている。
「では、ラガダー地方へ向けて出発します」
「おう。留守は任せな」
薫は馬車に乗り、馬車は出発する。今回も片道で4日ほどだ。お供は前回同様アヤコフにナターシルアだ。
「今日もいい天気ね。これだけ明るければ本も読みやすいわ」
薫は走り出して早々また本を読み始めるのであった。
2日目は近くに伯爵家があるということで、挨拶をしてから行くことにしている。
ドマステル領に入り、真っ直ぐ領都へ。途中で、魔法で二郎を呼び出し、領主邸へ。
「先日面会予約を入れておいたアソウ公爵夫妻だが、伯爵はご在宅か?」
「お待ちしておりました。どうぞ中へ」
アポイントメントを取っていたのですんなりと屋敷の中へ入れた。二郎と薫は応接室へ通された。程なくして領主、ラザーニーア・ペヘントスが現われた。
「ようこそおいで下さいました、アソウ夫妻。ここの領主をしておりますラザーニーア・ペヘントスと申します。どうぞよろしく」
「お会いいただきありがとうございます。私はジロウ・アソウ公爵。こちらは妻の薫です。よろしくお願いします」
挨拶が終わり、雑談に入る。この辺りは王都より海が近いので海産物の干物がよく食べられているそうな。
「ところで、アソウ公爵は位が高いとは言え新興貴族。どこかの派閥には既に入っておいでですか?」
「と、言いますと?」
聞けば、このペヘントス家。第2位の大きさを持つジャクソルト侯爵の派閥に入っているらしい。派閥への勧誘である。
「もし、どこにも入っていらっしゃらないのであれば、私が口添えして仲間になっていただくこともできますが」
「それは、リチャード・バーンクリットの娘でも入れて下さるのですか?」
「っっ!!」
薫は、最大派閥、バーンクリット公爵家の娘である。普通考えて、よその派閥へは入れない。
「リチャード・バーンクリットの娘とは?」
「私、古い名前をエリアリアーナ・バーンクリットと申しまして、リチャード・バーンクリットの娘でございます」
「っっっ!!!
秀才、エリアリアーナ・バーンクリット様ですか?」
「私からは秀才とは申したことはございませんが、よくその様におっしゃる方がいらっしゃいます」
はっきり言って、先方、ラザーニーアさんの情報収集不足である。
「ですので、他の派閥へ入れと仰っても…」
「しっ、失礼致しました!」
そう言って、謝られたものの、その後の話は特におかしな事もなく進み、お暇することにした。
「それでは私は旅の途中ですので、失礼致します。また何かありましたらよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
別れを告げて、馬車に戻る。まだ陽は高い。次の宿場町を目指す。
「まさか他所の派閥に勧誘されるとは思わなかったわ」
「ラザーニーアさんのところへは情報が入らないのかな?大丈夫か?」
自分のことよりラザーニーアさんを心配する二郎と薫なのであった。
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