仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

文字の大きさ
121 / 249
出遅れた国

風雅の結婚式

しおりを挟む
 ハンシオーガ王国の、王族が住まうナゲディデルカ城。ここでまた新たな報告が入った。


「申し上げます!」

「言ってみよ」

「はっ!西方諸国連合の軍事に関わる情報です。かの魔道士団は瞬間移動で目的地に瞬時に移動ができ、兵糧は異空間に収納できて軍行も軽快。それに空を飛んで移動することもでき、その速さは早馬の100倍との情報をつかみました」


 ハンシオーガ王国国王、ジャスパー・ウォムスレーは玉座から立ち上がった。


「そ、それはまことか」

「はい。西方諸国連合は、それを隠すこともせず、我が密偵が直に見て確認したとの情報です」

「それでは先の西方諸国連合軍とザッテリーニ連邦国軍とのいくさ、始めから結果が見えているではないか」


 数の上での西方諸国連合軍とハンシオーガ王国軍との差はジャスパー国王も把握していた。しかし、軍にそのような魔法が使える者がればハンシオーガ王国軍なんて赤子の手をひねるように軽く殲滅せんめつできるではないか。


「…これは娘を嫁にやって血縁関係を作る以前に不戦条約が先か」

「続けて申し上げます」


 一気に気が抜けたジャスパー国王は、


「申してみよ」

「はっ!先のゲート、アイテムボックス、浮遊魔法などの魔法は、西方諸国連合軍の魔道士団総長、カオル・アソウが考案したものとの情報を得た我が密偵は、そのカオル・アソウを調べたところによりますと、幼少の頃から秀才と呼び声高く、それにあの西方諸国連合各国の王族から嫁をもらっているというジロウ・アソウの妻との報告です!」


 ジャスパー国王は跳ね起き、


「ジロウ・アソウの新情報か!」


 周りの臣下はジャスパー国王のその行動にぎょっとした。


「ジロウ・アソウの話が出たので私からも報告申し上げます」

「申してみよ」

「はっ!最近、情報通信網だとか電話という通信手段が西方諸国連合およびザッテリーニ連邦国の間で結ばれたのですが、その通信手段を確立するために奔走ほんそうした中心人物としてハナカ・アソウとフウガ・アソウなる人物を特定したのですが、そのハナカ・アソウとフウガ・アソウは先に話に出ていたジロウ・アソウとカオル・アソウとの間に生まれた子供だそうです」


 これはジロウ・アソウ個人ではなくアソウ家を見張るべきか。ジャスパー国王の頭の中は計算で高速回転する。


「ジロウ・アソウの話が出たので、ついでに私からも報告申し上げます」

「申してみよ」

「はっ!ジロウ・アソウは子宝に恵まれ、その多くは王家の血を受け継ぐ者。産まれたときから縁談が後を絶たずそれは王族も含まれ、各国の上層部にジロウ・アソウの血が広まるものと思われます」


 ジャスパー国王は指示を出す。


「ジロウ・アソウ公爵を調べるのをアソウ公爵家に範囲を拡大する。それに、西方諸国連合宛てに不戦条約の打診を。できれば西方諸国連合に我々も潜り込めないか… そうすると使者を出す方が良いか。とにかく西方諸国連合に渡りをつけてくれ。あと、西方諸国連合の通信網も気になる。どういうものか調べを続けよ」

「「「はっ!」」」


 こうしてハンシオーガ王国は、情報の遅れを何とか挽回ばんかいしようと必至に情報収集に励むのであった。


     *


なんじ、ステファニー・フリーテージを妻とし、富めるときも貧するときも、久しく愛し続けることを誓うか」

「誓います」

なんじ、フウガ・アソウを夫とし、富めるときも貧するときも、久しく愛し続けることを誓うか」

「誓います」


 ここは教会。風雅ふうがとステファニー・フリーテージとの結婚式の真っ最中である。


「それでは指輪の交換を」


 風雅ふうがはステファニーの左手薬指に指輪をはめる。

 ステファニーも風雅ふうがの左手薬指に指輪をはめる。


「それでは誓いのキスを」


 そして2人はそっと口づけを交わすのであった。


「新郎新婦が退出します。盛大な拍手でお見送り下さい」

「「「「「パチパチパチパチ」」」」」


 そこで二郎が、


「ささやかながら我が屋敷で軽食をご用意しております。ご都合の付く方はご参加願います」


 この世界にブーケトスなどのイベントはない。誓いを立てて、結婚指輪の交換、そして口づけをしたら式はおしまいである。

 二郎は麻宗邸にゲートを開き、列席者を誘導する。


「ジロウ君まない。これから重要な会議なんだ。私は王城へ送ってもらえるかな?」


 アハンハルト王国王太子、アンニヨロ・アルキバンはそう告げた。


「分かりました。王城へお送りします。少々お待ちください」


 そして、列席者を麻宗邸に誘導した後、アンニヨロを王城へ送り届け、二郎も麻宗邸に帰るのであった。

 式の列席者は、麻宗家の面々と、パーサー・ルイジアンヌ、アヴァリン・ルイジアンヌ、ザガンガ王国王太子夫妻、カンデラル・ザビエル、ミリアラ・ザビエル、タンザナティア王国王太子夫妻、ジューディス・アントワリッチ、カメルラ・アントワリッチ、ジルベチア王国王太子夫妻、そして、アンニヨロ・アルキバン、フィリナーレ・アルキバン、アハントルト王国王太子夫妻であった。


「最近おとなしかったハンシオーガ王国の者が活発に動いているようだな」


 ジューディス王太子がそんなことを言った。


「ハンシオーガ王国と言うと、ザッテリーニ連邦国の東の?」

「そう。その国。何でも国王の崩御ほうぎょで国が荒れていて、外に目を向けられるようになってきたということは国内が安定してきたということかな?」


 このときは知らなかった。麻宗家がハンシオーガ王国国王、ジャスパー・ウォムスレーに目をつけられていることを。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...