仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

文字の大きさ
148 / 249
勉強とこの世界の把握

二郎と薫、エミールのために鉱山を攻める

しおりを挟む
「お父様、本当にお供しなくて大丈夫ですか?」


 風雅ふうがは、心配しながら二郎に尋ねた。


「ああ。今回は2人でどれだけもぐれるか試したいのでな」

「心配しなくても私たちは元勇者一行よ」

「それは私もなのですが、お忘れで?」


 二郎は、旅人の服にベルトを巻き、ベルトに道具類をぶら下げて、軽めの剣と、杖を腰に差し、軽めの盾を背中に背負せおっていた。

 かおるも同じように旅人の服にベルトを巻き、ベルトに道具類をぶら下げて、二郎のより軽めの剣と杖を腰に差し、軽めの盾を背中に回した出で立ちでいた。そう、

 そう、二郎とかおるは今日は領主夫妻のよそおいではなく、魔王討伐の頃の出で立ち、戦闘モードなのであった。


「はぁ。言い出したら聞かない人達なのは相変わらずですね。分かりました。二人で行ってらっしゃい。くれぐれも無茶はしないように」

「子供にそんな風に送り出されるとは思わなかったわ。まぁ、いいでしょう。今は貴族であり領主という大事な身柄みがら。無茶はしないわ。それでは行ってきます」

「はい。行ってらっしゃい」


 そして、二郎とかおるはゲートを使って行ってしまった。


「あの二人はいつまでっても普通の貴族になれないなぁ」


 風雅ふうがは1人、愚痴ぐちるのであった。



 二郎とかおる、二人がやって来たのはザガンガ王国にある二郎が持っている領地、アレストバートの山手にあるピアルーズ鉱山。

 かつて、様々な鉱石を産出し、坑夫によって賑わっていたこの鉱山は、長年鉱石を取られたことによって産出量が減少し、今は廃坑となっている。

 しかし、鉱山としては産出量は心許こころもとなくても個人で使うには魅力的で、自分の装備を調えるための材料を採る目的でこの鉱山に立ち入る冒険者は結構いるのである。

 先日エミールが神から錬金術の英知を授かった。その英知を実際に使えるようにするためにはその英知を元に試してみる必要がある。試すには鉱石を主とした材料がる。

 そこで二郎とかおるはこの鉱山へ来て、エミールが材料をほっするときに出せるよう、この鉱山で様々な鉱物を得るためにやって来たのだ。


 二郎とかおるの元勇者パーティーは、坑道の中を進んでいった。30分ほど進んで、


かおる、この辺で一度調べてみようか」

「そうね。そろそろ頃合いかもね」

「それでは行くぞ!「ダド:探す」」


 「探す」の魔法は、無くしたものを思い浮かべて発動すると、そのなくした物のある場所の色が変わることによって見つけやすくなるという魔法だ。

 この魔法は応用範囲が広く、薬草を思い浮かべながら発動すると、雑草やその他の草花の色はそのままに、薬草だけが光って見えてその場所を知らせ、食べられるキノコを思い浮かべると、食べられない、または毒キノコはそのままに、食用に適するキノコだけが光ってその場所を知らせる。

 そして今回、二郎は鉱物を思い浮かべてこの魔法を使い、見事、坑道のあちらこちらが光り出した。


「この魔法は便利だな。あちらこちらに鉱石があるぞ。俺は掘ることに専念するからかおるは周りの警戒をしてくれ」

「分かったわ。力仕事だけど頑張ってね」


 二郎はアイテムボックスからつるはしを取り出し、目印の場所を掘り始めた。かおるは不意に魔物に襲われないよう周りを警戒する。


 3時間後、


「ワハハハハハハハハ。大量だ。かおる、大量だぞー」

「あなた、いいから落ち着いて」


 二郎はこの3時間の間、つるはしを振るい、次々と鉱石を掘り出していき、ときには移動しながら採掘を進めていた。採れた鉱石も、鉄、銅、ニッケル、コバルト、金、銀、タングステンなど、実に様々である。何故同じ採掘場でこれだけ多くの種類が採れるのか摩訶不思議だが、エミールは様々な鉱物を欲するだろうからこれは好都合である。

 二人は坑道の中で、休憩をねて昼食をり、食休みの後、また二郎だけハイテンション、かおるあきれながら、夕方になるまで採掘を再開するのであった。


 その頃風雅ふうがは、


「領主夫妻自らを、採掘場で働かせることは二度とあってはなりません」

「そうですな。幸い予算は割けます。この状況を早急に改善しなければなりません」


 風雅ふうがとアレストバートの代官のアーザガ・ハリゾエッティは、通常業務を一旦休止して、麻宗家のために鉱山で採掘する者と、鉱山で採れない鉱物の買い付け先の選定に、その日は大忙おおいそがしなのであった。


 採掘が終わり、二郎とかおるは、風雅ふうがに今日の採掘の終わりを知らせるため、アレストバートの麻宗邸に戻っていた。


「お父様、お母様、ご無事でのお帰り、安心いたしました」

風雅ふうがよ、お前は心配性だな!」

風雅ふうが、いっぱい採れたのよ!足りなくなったらまた来るわ」


 風雅ふうがはしたり顔で、


「それには及びません。人を雇ったり、仕入れ先の商人を手配しましたので、こちらから定期的に鉱物をお送りいたします。領主夫妻自ら採掘していただく必要はありません」

「何!」

「なんですって!?」


 こうして領主夫妻自ら出向いての鉱物の採掘は終わり、風雅ふうがの手配によって二度と二人は採掘に出かけることは無くなったのであった。



「今帰った」

「「「「「「お帰りなさいませ、お父様、お母様」」」」」」


 二郎とかおるはアハントルト王国の首都にある麻宗邸へ帰って来た。


「エミールや、鉱物をいっぱい採ってきたぞ。後で分けてやる。錬金術の鍛錬に使うが良い」

「それに、兄の風雅ふうがが錬金術の鍛錬に必要な材料の手配をしてくれたわ。欲しい材料は遠慮無えんりょなく言ってちょうだいね」

「ありがとうございます。お父様、お母様」


 エミールはこの配慮に大層喜んだ。

 これはエミールに限ったことでは無い。エミールが新しい技術を習得すると、夜にそれを家族に教えてくれる。今、アハントルト王国の首都にある麻宗邸に住んでいる家族の全員が、できることが増えるのだ。

 エミールを中心とした家族の成長を喜ぶ二郎なのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...