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勉強とこの世界の把握
二郎と薫、エミールのために鉱山を攻める
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「お父様、本当にお供しなくて大丈夫ですか?」
風雅は、心配しながら二郎に尋ねた。
「ああ。今回は2人でどれだけ潜れるか試したいのでな」
「心配しなくても私たちは元勇者一行よ」
「それは私もなのですが、お忘れで?」
二郎は、旅人の服にベルトを巻き、ベルトに道具類をぶら下げて、軽めの剣と、杖を腰に差し、軽めの盾を背中に背負っていた。
薫も同じように旅人の服にベルトを巻き、ベルトに道具類をぶら下げて、二郎のより軽めの剣と杖を腰に差し、軽めの盾を背中に回した出で立ちでいた。そう、
そう、二郎と薫は今日は領主夫妻の装いではなく、魔王討伐の頃の出で立ち、戦闘モードなのであった。
「はぁ。言い出したら聞かない人達なのは相変わらずですね。分かりました。二人で行ってらっしゃい。くれぐれも無茶はしないように」
「子供にそんな風に送り出されるとは思わなかったわ。まぁ、いいでしょう。今は貴族であり領主という大事な身柄。無茶はしないわ。それでは行ってきます」
「はい。行ってらっしゃい」
そして、二郎と薫はゲートを使って行ってしまった。
「あの二人はいつまで経っても普通の貴族になれないなぁ」
風雅は1人、愚痴るのであった。
二郎と薫、二人がやって来たのはザガンガ王国にある二郎が持っている領地、アレストバートの山手にあるピアルーズ鉱山。
かつて、様々な鉱石を産出し、坑夫によって賑わっていたこの鉱山は、長年鉱石を取られたことによって産出量が減少し、今は廃坑となっている。
しかし、鉱山としては産出量は心許なくても個人で使うには魅力的で、自分の装備を調えるための材料を採る目的でこの鉱山に立ち入る冒険者は結構いるのである。
先日エミールが神から錬金術の英知を授かった。その英知を実際に使えるようにするためにはその英知を元に試してみる必要がある。試すには鉱石を主とした材料が要る。
そこで二郎と薫はこの鉱山へ来て、エミールが材料を欲するときに出せるよう、この鉱山で様々な鉱物を得るためにやって来たのだ。
二郎と薫の元勇者パーティーは、坑道の中を進んでいった。30分ほど進んで、
「薫、この辺で一度調べてみようか」
「そうね。そろそろ頃合いかもね」
「それでは行くぞ!「ダド:探す」」
「探す」の魔法は、無くしたものを思い浮かべて発動すると、そのなくした物のある場所の色が変わることによって見つけやすくなるという魔法だ。
この魔法は応用範囲が広く、薬草を思い浮かべながら発動すると、雑草やその他の草花の色はそのままに、薬草だけが光って見えてその場所を知らせ、食べられるキノコを思い浮かべると、食べられない、または毒キノコはそのままに、食用に適するキノコだけが光ってその場所を知らせる。
そして今回、二郎は鉱物を思い浮かべてこの魔法を使い、見事、坑道のあちらこちらが光り出した。
「この魔法は便利だな。あちらこちらに鉱石があるぞ。俺は掘ることに専念するから薫は周りの警戒をしてくれ」
「分かったわ。力仕事だけど頑張ってね」
二郎はアイテムボックスからつるはしを取り出し、目印の場所を掘り始めた。薫は不意に魔物に襲われないよう周りを警戒する。
3時間後、
「ワハハハハハハハハ。大量だ。薫、大量だぞー」
「あなた、いいから落ち着いて」
二郎はこの3時間の間、つるはしを振るい、次々と鉱石を掘り出していき、ときには移動しながら採掘を進めていた。採れた鉱石も、鉄、銅、ニッケル、コバルト、金、銀、タングステンなど、実に様々である。何故同じ採掘場でこれだけ多くの種類が採れるのか摩訶不思議だが、エミールは様々な鉱物を欲するだろうからこれは好都合である。
二人は坑道の中で、休憩を兼ねて昼食を摂り、食休みの後、また二郎だけハイテンション、薫は呆れながら、夕方になるまで採掘を再開するのであった。
その頃風雅は、
「領主夫妻自らを、採掘場で働かせることは二度とあってはなりません」
「そうですな。幸い予算は割けます。この状況を早急に改善しなければなりません」
風雅とアレストバートの代官のアーザガ・ハリゾエッティは、通常業務を一旦休止して、麻宗家のために鉱山で採掘する者と、鉱山で採れない鉱物の買い付け先の選定に、その日は大忙しなのであった。
採掘が終わり、二郎と薫は、風雅に今日の採掘の終わりを知らせるため、アレストバートの麻宗邸に戻っていた。
「お父様、お母様、ご無事でのお帰り、安心致しました」
「風雅よ、お前は心配性だな!」
「風雅、いっぱい採れたのよ!足りなくなったらまた来るわ」
風雅はしたり顔で、
「それには及びません。人を雇ったり、仕入れ先の商人を手配しましたので、こちらから定期的に鉱物をお送り致します。領主夫妻自ら採掘していただく必要はありません」
「何!」
「なんですって!?」
こうして領主夫妻自ら出向いての鉱物の採掘は終わり、風雅の手配によって二度と二人は採掘に出かけることは無くなったのであった。
「今帰った」
「「「「「「お帰りなさいませ、お父様、お母様」」」」」」
二郎と薫はアハントルト王国の首都にある麻宗邸へ帰って来た。
「エミールや、鉱物をいっぱい採ってきたぞ。後で分けてやる。錬金術の鍛錬に使うが良い」
「それに、兄の風雅が錬金術の鍛錬に必要な材料の手配をしてくれたわ。欲しい材料は遠慮無く言ってちょうだいね」
「ありがとうございます。お父様、お母様」
エミールはこの配慮に大層喜んだ。
これはエミールに限ったことでは無い。エミールが新しい技術を習得すると、夜にそれを家族に教えてくれる。今、アハントルト王国の首都にある麻宗邸に住んでいる家族の全員が、できることが増えるのだ。
エミールを中心とした家族の成長を喜ぶ二郎なのであった。
風雅は、心配しながら二郎に尋ねた。
「ああ。今回は2人でどれだけ潜れるか試したいのでな」
「心配しなくても私たちは元勇者一行よ」
「それは私もなのですが、お忘れで?」
二郎は、旅人の服にベルトを巻き、ベルトに道具類をぶら下げて、軽めの剣と、杖を腰に差し、軽めの盾を背中に背負っていた。
薫も同じように旅人の服にベルトを巻き、ベルトに道具類をぶら下げて、二郎のより軽めの剣と杖を腰に差し、軽めの盾を背中に回した出で立ちでいた。そう、
そう、二郎と薫は今日は領主夫妻の装いではなく、魔王討伐の頃の出で立ち、戦闘モードなのであった。
「はぁ。言い出したら聞かない人達なのは相変わらずですね。分かりました。二人で行ってらっしゃい。くれぐれも無茶はしないように」
「子供にそんな風に送り出されるとは思わなかったわ。まぁ、いいでしょう。今は貴族であり領主という大事な身柄。無茶はしないわ。それでは行ってきます」
「はい。行ってらっしゃい」
そして、二郎と薫はゲートを使って行ってしまった。
「あの二人はいつまで経っても普通の貴族になれないなぁ」
風雅は1人、愚痴るのであった。
二郎と薫、二人がやって来たのはザガンガ王国にある二郎が持っている領地、アレストバートの山手にあるピアルーズ鉱山。
かつて、様々な鉱石を産出し、坑夫によって賑わっていたこの鉱山は、長年鉱石を取られたことによって産出量が減少し、今は廃坑となっている。
しかし、鉱山としては産出量は心許なくても個人で使うには魅力的で、自分の装備を調えるための材料を採る目的でこの鉱山に立ち入る冒険者は結構いるのである。
先日エミールが神から錬金術の英知を授かった。その英知を実際に使えるようにするためにはその英知を元に試してみる必要がある。試すには鉱石を主とした材料が要る。
そこで二郎と薫はこの鉱山へ来て、エミールが材料を欲するときに出せるよう、この鉱山で様々な鉱物を得るためにやって来たのだ。
二郎と薫の元勇者パーティーは、坑道の中を進んでいった。30分ほど進んで、
「薫、この辺で一度調べてみようか」
「そうね。そろそろ頃合いかもね」
「それでは行くぞ!「ダド:探す」」
「探す」の魔法は、無くしたものを思い浮かべて発動すると、そのなくした物のある場所の色が変わることによって見つけやすくなるという魔法だ。
この魔法は応用範囲が広く、薬草を思い浮かべながら発動すると、雑草やその他の草花の色はそのままに、薬草だけが光って見えてその場所を知らせ、食べられるキノコを思い浮かべると、食べられない、または毒キノコはそのままに、食用に適するキノコだけが光ってその場所を知らせる。
そして今回、二郎は鉱物を思い浮かべてこの魔法を使い、見事、坑道のあちらこちらが光り出した。
「この魔法は便利だな。あちらこちらに鉱石があるぞ。俺は掘ることに専念するから薫は周りの警戒をしてくれ」
「分かったわ。力仕事だけど頑張ってね」
二郎はアイテムボックスからつるはしを取り出し、目印の場所を掘り始めた。薫は不意に魔物に襲われないよう周りを警戒する。
3時間後、
「ワハハハハハハハハ。大量だ。薫、大量だぞー」
「あなた、いいから落ち着いて」
二郎はこの3時間の間、つるはしを振るい、次々と鉱石を掘り出していき、ときには移動しながら採掘を進めていた。採れた鉱石も、鉄、銅、ニッケル、コバルト、金、銀、タングステンなど、実に様々である。何故同じ採掘場でこれだけ多くの種類が採れるのか摩訶不思議だが、エミールは様々な鉱物を欲するだろうからこれは好都合である。
二人は坑道の中で、休憩を兼ねて昼食を摂り、食休みの後、また二郎だけハイテンション、薫は呆れながら、夕方になるまで採掘を再開するのであった。
その頃風雅は、
「領主夫妻自らを、採掘場で働かせることは二度とあってはなりません」
「そうですな。幸い予算は割けます。この状況を早急に改善しなければなりません」
風雅とアレストバートの代官のアーザガ・ハリゾエッティは、通常業務を一旦休止して、麻宗家のために鉱山で採掘する者と、鉱山で採れない鉱物の買い付け先の選定に、その日は大忙しなのであった。
採掘が終わり、二郎と薫は、風雅に今日の採掘の終わりを知らせるため、アレストバートの麻宗邸に戻っていた。
「お父様、お母様、ご無事でのお帰り、安心致しました」
「風雅よ、お前は心配性だな!」
「風雅、いっぱい採れたのよ!足りなくなったらまた来るわ」
風雅はしたり顔で、
「それには及びません。人を雇ったり、仕入れ先の商人を手配しましたので、こちらから定期的に鉱物をお送り致します。領主夫妻自ら採掘していただく必要はありません」
「何!」
「なんですって!?」
こうして領主夫妻自ら出向いての鉱物の採掘は終わり、風雅の手配によって二度と二人は採掘に出かけることは無くなったのであった。
「今帰った」
「「「「「「お帰りなさいませ、お父様、お母様」」」」」」
二郎と薫はアハントルト王国の首都にある麻宗邸へ帰って来た。
「エミールや、鉱物をいっぱい採ってきたぞ。後で分けてやる。錬金術の鍛錬に使うが良い」
「それに、兄の風雅が錬金術の鍛錬に必要な材料の手配をしてくれたわ。欲しい材料は遠慮無く言ってちょうだいね」
「ありがとうございます。お父様、お母様」
エミールはこの配慮に大層喜んだ。
これはエミールに限ったことでは無い。エミールが新しい技術を習得すると、夜にそれを家族に教えてくれる。今、アハントルト王国の首都にある麻宗邸に住んでいる家族の全員が、できることが増えるのだ。
エミールを中心とした家族の成長を喜ぶ二郎なのであった。
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