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巻き戻った世界
喪失は人を変える
しおりを挟む一応ではありますが護衛付きなら会っても良いよと言われたので、ほっとしています。
いえ、ほっとしていいのでしょうか?だって、あの方の幸せを願っていたのに関わってしまうなんて……。
「メグ?」
声をかけられて、ハッとして顔を上げる。
せっかく今この時を許されたのに、集中しないのはもったいない。そう思いながら笑顔を作った。
そんな私を見て彼は瞳を細めた。その目には光がないように見える。あれ、私の好きな人はお日様みたいな笑顔だった気がするのだけれど、という疑問を持った瞬間に彼は口を開いた。
「君にそんな顔をさせているのは誰だ?懸案事項があるのなら言ってくれ。君を失うくらいであれば、他の人間などいなくなってしまった方がマシだ」
思いのほか低い声で、「君に暗い顔させるやつ殺しとく?(意訳)」と言うジェリーに目を点にする。
思わず後ろのお付きの方々へ目を向けると、二人とも青い顔で首を左右に振っていた。心当たりはないらしい。
「私はその、あなたや家族を破滅に追い込むことが怖いだけです」
「すまない、私のせいだったか。だが、もう王族でないのだから以前のように君に危害が加えられる事はないはずだよ」
そんなことがあれば犯人はみんな消してしまうか地の果てまで二人で逃げよう、なんて歌うように言うジェリーを見ながら少し遠い目をしてしまった。
思い詰めてない?これ。
「ジェリー、あなたに何があったのですか?」
これは根本的な悩みを解決しないといけないと思い、そう尋ねる。詳しいことまでは聞いていなかったので。というか、前回と今、どっちが原因でしょうか?
そして光を映さない瞳でにっこり笑う彼の詳しい話を聞いて後悔した。聞くんじゃなかった。
察してはいたけれど、あくまでも穏やかな声で人生を語る彼は私が願ったように「幸せ」にはなってくれなかったらしい。
それどころか、思ったより辛い思いをしていたらしくって頭を抱えた。拝啓当時の王家の怖い皆様、我らの大切な第二王子とか言っておられませんでしたか!?
「そもそも、君のいない人生なんて意味がないということに早く気がつくべきだったよ」
あ、これダメだわ。
そう思った瞬間手を掴まれた。
「君に見合う男になれるように早く冒険者ランクを上げるね」
花が咲くような笑顔になったのを見て気が遠くなりそうだったけれど、「無理はなさらないでください」と一応口に出せた。早くって頑張って大怪我とかしてほしくないので。それにしても、普通の笑顔はやっぱり素敵である。
おかしいな。私は好きな人に幸せに生きてほしいだけだったのに。
私が怯えながら国を出たように、1回目の人生での喪失はジェリーを変えてしまったのだと思う。
そのことを悲しく思う反面、そこまで想ってもらえているということに仄暗い喜びも感じた。
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