天才怪盗の社会奉仕(エリート怪盗だった俺が問題だらけの学園で事件を解決します)

ハルサメ

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ミネルヴァの梟、探る

第13話

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説得という交渉をする。反射的に頭の中でスイッチが入れ替わる。もはや職業病だ。

「ちょっといいか?」

 俺の言葉に、しかし群れの中で反応した者はいなかった。そう今の彼女らはそんな場合ではない、群れの中心に注意を向けているのだ。

 人だかりの中心には一人の女子生徒がおり、怯えた様子で体を縮めていた。顔を見て同じクラスの高坂という女子生徒だと思い出す。その人だかりは、高坂を囲むように形成されている。イジメの現場、と言われても言い訳できないだろう。

「悪いが、ちょっといいか?」

 心でため息をつきながら、俺はもう一度声を出す。先ほどより低く、そして大きな声で。今度は反応が返ってきた。いくつもの視線が向けられる中、人ごみから一人が歩み出る。

「何か用かしら?」

 鋭い目の、勝気そうな顔立ち。その女子生徒は、威嚇するように俺を睨んだ。とげを感じさせるその声音は、先ほど聞こえてきた怒鳴り声と一致した。

「悪いけど今は部外者の相手をしている暇はないの。分かったら引っ込んでてちょうだい」

 まるで犬でも追い払うかのような態度だ。相当頭に血が上っているようだ。

「そう言われても、分室として場を収めるのが仕事なんでな」

「あなた分室の!?」

 女子生徒の表情が一変し、今までの好戦的なものから一気に牙が削がれた。分室、パシリと侮っていたが、その名前には別の意味でもあるのだろうか。思わぬ形だったが、女子生徒が急に大人しくなると、それに応じて周囲の人間も落ち着きを取り戻し始める。そしてその人だかりから新たな人間を歩み出る。

「わざわざ来てもらって申し訳ないね。私は女バスの部長の白鳥だよ」

 さきほどとは違い今度は温和そうな雰囲気の、そして胸の大きい女子生徒だ。

「ところで君は初めて見るけど、本当に分室の人間なの?」

「今日からのド新人なんだ。信用できないなら、あちらに先輩がいるが?」

 白鳥部長は俺が指差した先のあーやに目を向け、そして呟いた。

「君塚さんか……なら大丈夫だろう」

「何が大丈夫なんだ?」

「ん、いや。女バスの事情を知っている人が来たんだってこと」

 自虐的に笑う部長を、その後ろで部員が心配そうに見つめていた。

「ごめんなさいッ! ごめんなさいッ!!」

 その部員の奥から、泣き声が混ざった懺悔の言葉が発せられる。声の主は高坂だった。

「私が……また私が……」

 その高坂を複数の部員が睨むように見るが、それを部長が嗜め、床に座り込んでいる高坂の傍に腰を下ろし、肩を優しく抱いた。それを見て、今回の件が高坂のミスによって生まれたのであろう事は容易に想像できる。

「一先ず落ち着いたようですね」

 事態を見守っていたあーやが近寄ってくる。まぁ俺の手柄ってわけでは無いがな。

「一応な。んで、この後はどうなるんだ?」

「先ほど成美さんが先生からマスターキーを受け取ってきました。今日のところはこれでロッカーを開けて、中に入っている鍵を学園側に預けて終わりになります」

 ただの部停では無く、部室の鍵も没収とは徹底して反省を促すって事か。

「んじゃこれはこれで終わりって事か」

 目の前では白鳥部長が成美さんから受け取ったロッカーのマスターキーを使い、ロッカーの開錠を行っていた。その周囲では意気消沈し、絶望に打ちひしがれている部員の重い空気が、少し離れているこっちにまで侵食していた。

「今回もやはり高坂さんですか」

「そんな常習犯なのか?」

「まぁ五回のうち三回があの子だからねぇ。うちの学校で一年生で一軍に入れるほどの実力を持ってる半面、実生活、特に忘れ物とかが凄く多い子なんだよ。だからあんまり先輩からは良く思われていない、というか呆れられてるって感じ?」

 それでこの件でトドメってことか。流石にここまで問題を起こして、何食わぬ顔で部活に参加できる訳が無い。ご愁傷様だな。そして部活についても、こればかりはどうしようもない。インターハイに出られない事は無いだろうが、その前に練習ができない事は相当の痛手に――と、何か騒がしいぞ?

 思案していた俺の耳にざわめきの音が入ってきた。見ると、先ほどまでお通夜だった女バスの部員たちの中に、どよめきが生まれていた。
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